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COLUMN

普通借家と定期借家の違い|更新・解約・賃料を解説

普通借家契約と定期借家契約の違いを借地借家法にもとづき解説します。更新の有無、正当事由、中途解約、賃料改定、再契約の実務を、オーナーと入居者の双方の視点から比較表と判断表で整理しました。契約類型の選び方や事前説明書面などの注意点まで、契約前に押さえるべき要点が一度でわかります。国土交通省・法務省の一次資料にもとづく実務ガイドです。

最終更新: 約14分で読めます

賃貸の契約書を見て「定期建物賃貸借」という文字に戸惑ったことはありませんか。普通借家契約は正当事由がない限り更新され住み続けられるのに対し、定期借家契約は契約で定めた期間が満了すると更新されず確定的に終了します。この記事は、これから部屋を借りる方と、所有物件をどちらの契約で貸すか迷うオーナーの双方に向けて、借地借家法にもとづく違いと実務上の判断材料を整理するものです。契約後に「更新できると思っていた」「途中で解約できなかった」という行き違いを防ぐために、契約前に押さえておきたい要点をまとめました。

この記事のポイント

  • 普通借家は法定更新が原則で、オーナーからの更新拒絶には「正当事由」が必要です。
  • 定期借家は期間満了で確定的に終了し、更新はありません。ただし双方合意による再契約は可能です。
  • 定期借家の成立には、書面での契約と、契約前の「事前説明書面」の交付・説明が必須です。
  • 中途解約や賃料改定の扱いは両者で大きく異なり、契約類型の選択が長期の収益と暮らしを左右します。

普通借家と定期借家の違いを一目で理解する

まず結論から整理します。両者の最大の違いは「契約が更新されるかどうか」です。普通借家契約は期間が満了しても原則として更新され、入居者は住み続けられます。定期借家契約は期間満了とともに更新されずに終了し、住み続けるには貸主・借主双方の合意による再契約が必要です。この一点が、賃料水準・中途解約・立ち退きのしやすさといった実務上の違いへ波及します。

項目普通借家契約定期借家契約
根拠借地借家法 第26〜28条借地借家法 第38条
契約期間1年以上(1年未満は期間の定めなしとみなされる)自由に設定可(1年未満も有効)
更新原則更新(法定更新あり)更新なし・期間満了で終了
貸主からの終了正当事由が必要正当事由は不要(期間満了で終了)
契約の方式口頭でも成立(書面が一般的)書面(または電磁的記録)+事前説明書面が必須
賃料水準の傾向相場どおり相場よりやや低めの例が多い
賃料の減額請求特約で排除できない(強行規定)賃料改定特約で増減請求を排除できる
中途解約解約条項があれば可能原則不可(一定要件で例外あり)
再契約―(更新で継続)双方合意があれば可能
普通借家契約と定期借家契約の主な違い(借地借家法および国土交通省の資料をもとに作成)

定期借家制度は2000年(平成12年)3月1日に施行されました。従来の普通借家では、正当事由の壁や賃料改定の硬直性から貸主が収益を見通しにくく、良質な住宅ストックの有効活用が進みにくいという指摘があり、その解消を目的に導入された経緯があります(国土交通省「定期建物賃貸借」)。

普通借家契約とは?入居者が守られる「法定更新」の仕組み

普通借家契約とは、期間が満了しても原則として契約が更新される、入居者保護に厚い契約類型です。借地借家法は、貸主が更新を拒むには「正当事由」を必要とし、単に「期間が来たから」という理由での立ち退き要求を認めていません。

更新拒絶には正当事由と通知が必要

貸主が更新を拒む場合、期間満了の1年前から6か月前までの間に、借主へ更新拒絶の通知をしなければなりません。この通知がなければ、従前と同じ条件で契約が更新されたものとみなされます。これを「法定更新」と呼びます。さらに通知をしても、正当事由がなければ更新拒絶は認められません。正当事由は、貸主・借主それぞれが建物を使用する必要性、これまでの経過、建物の利用状況、立退料の提供などを総合的に考慮して判断されます(借地借家法 第26〜28条)。

この強い保護があるため、入居者にとって普通借家は「腰を据えて長く暮らせる」契約です。一方でオーナーにとっては、いったん貸すと簡単には返してもらえない契約でもあります。将来的に建て替えや自己利用を予定している物件では、この点が制約になります。所有物件をどの管理方式・契約形態で運用するか迷う場合は、自己管理・管理委託・サブリースの特徴を比較した賃貸管理の方法もあわせて検討すると判断がしやすくなります。

更新料は法律上の義務ではない

更新時に更新料(賃料の1か月分程度が目安)を求められることがありますが、これは法律上の義務ではなく、契約書の特約と地域慣行にもとづくものです。首都圏など一部地域で広く見られる一方、慣行のない地域もあります。金額が高すぎない範囲であれば特約は有効と扱われるのが一般的です。契約前に更新料の有無と金額を必ず確認しておくことが、後の行き違いを防ぐ第一歩になります。

定期借家契約とは?期間満了で確定的に終了する契約

定期借家契約とは、契約で定めた期間の満了により、更新されることなく確定的に終了する契約です(借地借家法 第38条)。貸主は正当事由がなくても、期間満了をもって建物の明け渡しを求められます。この「終わりが決まっている」点が、普通借家との根本的な違いです。

成立には「書面」と「事前説明」が欠かせない

定期借家契約が有効に成立するには、次の要件を満たす必要があります。国土交通省は要件を明確に示しています。

  • 契約期間を定めること
  • 公正証書などの書面によって契約を締結すること
  • 契約締結前に、貸主が契約書とは別に「事前説明書面」を交付し、更新がなく期間満了で終了する旨を説明すること

この事前説明を欠くと、「更新がない」という定めそのものが無効になり、普通借家契約として扱われてしまいます。オーナーにとっては、手続きの一つの抜けが契約類型を覆す重大な落とし穴です。なお2022年5月18日施行の改正により、借主の承諾があれば、契約書面も事前説明書面も電磁的記録・電子メール等で提供できるようになりました。ただし紙での交付を求められた場合は、貸主は書面で交付する必要があります(法務省「定期建物賃貸借契約書等の電子化」)。

期間満了の前には「終了通知」が要る

契約期間が1年以上の定期借家では、貸主は期間満了の1年前から6か月前までの間に、借主へ期間満了により契約が終了する旨を通知しなければなりません。この通知を怠ると、貸主は期間満了を借主に対抗できず、通知をした日から6か月を経過してはじめて終了を主張できます。定期借家であっても、放置すれば予定どおりに明け渡しを受けられない点に注意が必要です(国土交通省「定期建物賃貸借Q&A」)。

中途解約・賃料改定・再契約はどう違うのか

更新の有無と並んで、実務で差が出るのが「途中でやめられるか」「賃料を変えられるか」「もう一度契約できるか」の3点です。ここを理解しておくと、契約後の想定外を大きく減らせます。

中途解約:定期借家は原則不可、ただし例外がある

普通借家では、契約に中途解約条項があれば、予告期間を置いて解約できるのが一般的です。定期借家は期間内の解約が原則できません。契約期間分の賃料支払いを求められる場合もあります。ただし例外として、床面積200平方メートル未満の居住用建物で、転勤・療養・親族の介護その他のやむを得ない事情により生活の本拠として使うことが難しくなった場合、借主は解約を申し入れることができ、申入れから1か月の経過で契約が終了します。事業用物件やこの要件を満たさないケースでは、この法定の解約権は使えません。

賃料改定:普通借家の減額請求権は特約で消せない

普通借家では、賃料が近隣相場に比べて不相当になったとき、貸主・借主とも賃料の増減を請求できます(借地借家法 第32条・借賃増減請求権)。この減額請求権は強行規定とされ、「減額しない」という特約では排除できません。これに対し定期借家では、賃料の改定に関する特約を定めれば、増減請求権を排除できます。オーナーには賃料を固定して収益を見通しやすいという利点があり、借主には相場が下がっても減額を求めにくいという側面があります。賃料改定の考え方は、賃料減額ガイドラインと民法改正の影響を整理した解説もあわせて読むと理解が深まります。

再契約:定期借家は「更新」ではなく「新規契約」

定期借家は更新されませんが、貸主・借主の双方が合意すれば、あらためて再契約を結び、引き続き同じ物件に住み続けることができます。再契約は法的には新しい契約であり、事前説明書面の交付など定期借家の手続きを最初からやり直す必要があります。「再契約できるから普通借家と同じ」ではなく、再契約に応じるかどうかは貸主の判断にゆだねられている点を、借主は理解しておく必要があります。

オーナー視点:普通借家と定期借家をどう選ぶか

オーナーにとっての選択は「安定した長期入居を重視するか、期間満了で確実に返してもらえる柔軟性を重視するか」に集約されます。次の判断表を、物件の将来計画に照らして使ってみてください。

状況・目的向いている契約理由
長く安定して貸したい・空室を避けたい普通借家入居者が定着しやすく、募集も比較的容易
数年後に建て替え・売却・自己利用の予定がある定期借家期間満了で正当事由なく明け渡しを受けられる
転勤中の自宅を留守番的に貸したい(リロケーション)定期借家帰任時期に合わせて確実に戻せる
賃料を一定期間固定して収益を見通したい定期借家賃料改定特約で減額請求を排除できる
家賃滞納・トラブル入居者を契約更新時に整理したい定期借家更新がないため関係を確定的に終了できる
オーナー向け:物件の将来計画から見た契約類型の選び方

定期借家は柔軟性が高い一方、入居者募集では「いつか出ていく必要がある」点が敬遠され、普通借家より賃料をやや下げないと決まりにくい傾向があります。私たちがオーナーの相談を受けるときも、目先の柔軟性だけでなく、空室リスクと賃料水準を含めた総合的な採算で判断することをおすすめしています。短期の効率だけでなく、長期の入居者との信頼関係まで見据えることが、結果として安定経営につながります。契約形態の選択に迷う場合は、オーナーが重視すべき賃貸管理会社の選び方を参考に、実務を任せられるパートナーへ早めに相談することをおすすめします。

入居者視点:定期借家物件を検討するときの確認点

入居者にとって定期借家は「安く借りられる代わりに、いつまで住めるかが決まっている」契約です。仮住まいや期間限定の転勤・単身赴任には適しますが、長く腰を据えたい方は契約前の確認が欠かせません。契約前に、次の点をチェックしておきましょう。

  • 契約が「普通借家」か「定期借家」か(重要事項説明書と契約書名を確認)
  • 契約期間と、期間満了後に再契約の可能性があるか
  • 中途解約の可否と、可能な場合の予告期間・違約金
  • 賃料改定に関する特約の有無(相場が下がっても減額を求めにくいか)
  • 更新料・再契約料など、契約時以外に発生する費用
  • 退去時の原状回復・敷金精算の範囲

特に「短期の予定が延びる可能性がある」方は、再契約の可否を口頭ではなく契約書で確認しておくと安心です。退去時に多いのが敷金や原状回復をめぐる行き違いです。契約前の段階で、原状回復の負担範囲とトラブルを防ぐポイントや、敷金が返ってくる条件と原状回復ガイドラインの知識まで押さえておくと、契約から退去までの見通しが立てやすくなります。

契約時の手順と見落としやすい注意点

契約類型の違いを理解したら、実際の契約手続きで押さえるべき順序を確認しましょう。オーナー・入居者のどちらにとっても、以下の流れを踏むことが行き違いの予防になります。

  1. 物件募集・重要事項説明の段階で、契約類型(普通借家か定期借家か)を明示する
  2. 定期借家の場合、契約締結「前」に事前説明書面を交付し、更新がない旨を説明する
  3. 契約書(書面または借主承諾のうえ電磁的記録)で契約を締結する
  4. 契約期間・中途解約・賃料改定・再契約の条件を書面で明確にする
  5. 定期借家で期間1年以上の場合、満了の1年前〜6か月前に終了通知を行う

最も多い失敗は、定期借家で事前説明を省いてしまい、結果として普通借家扱いになるケースです。手続きの一つの抜けが、想定していた契約の効力を失わせます。契約類型の判断や書面の整備に不安がある場合は、無理に自己判断で進めず、管理会社や専門家に確認することをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q1. 定期借家契約の物件に、契約期間を超えて住み続けることはできますか?

再契約に双方が合意すれば住み続けられます。定期借家は期間満了で更新されず確定的に終了しますが、貸主・借主が合意すれば、あらためて再契約を結んで居住を続けられます。ただし再契約は新しい契約であり、応じるかどうかは貸主の判断によります。

Q2. 定期借家は普通借家より本当に家賃が安いのですか?

相場よりやや低めに設定される例が多いものの、常に安いとは限りません。「期間満了で退去が必要」という条件を補うため賃料を抑える傾向がありますが、立地や物件条件によっては相場どおりのこともあります。借りるタイミングでも条件は変わるため、賃貸物件を借りるお得な時期と相場変動の解説もあわせて確認すると判断しやすくなります。

Q3. 定期借家で、途中で引っ越したくなった場合はどうなりますか?

原則として中途解約はできません。ただし床面積200平方メートル未満の居住用建物で、転勤・療養・親族の介護などやむを得ない事情がある場合は、解約を申し入れ、1か月の経過で契約が終了します。事業用や要件を満たさない場合は、契約期間分の賃料を求められることがあります。

Q4. オーナーが数年後に自宅として使う予定がある場合、どちらの契約がよいですか?

期間満了で確実に返してほしいなら定期借家が適しています。普通借家では正当事由がなければ明け渡しを求められず、自己利用の予定が立てにくくなります。定期借家であれば、あらかじめ定めた期間の満了で、正当事由なく明け渡しを受けられます。

引用・参考資料

Daisuke Inazawa, President & CEO of INA&Associates Inc.

著者

代表取締役社長 / CEOINA&Associates株式会社

INA&Associates株式会社 代表取締役社長。首都圏・近畿圏を中心に不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントを統括。収益不動産投資戦略と超富裕層向け不動産コンサルティングを専門領域とする。

稲澤 大輔(いなざわ・だいすけ)は、INA&Associates株式会社の代表取締役社長(CEO)。大阪本店・東京営業所を拠点に、首都圏・近畿圏における不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントの三事業を統括する。

専門領域は、収益不動産の投資戦略立案、賃貸経営の収支最適化、超富裕層(UHNWI)・機関投資家向け不動産コンサルティング、およびクロスボーダー不動産投資。国内外の投資家に対し、データと長期視点に基づくアドバイザリーを提供している。

「企業の最も重要な資産は人財である」を経営理念に掲げ、人財投資カンパニーとして持続可能な企業価値の創造に取り組む。経営者として、変化の時代におけるリーダーシップのあり方と組織文化についても積極的に発信を続けている。

合格・取得資格は11種:宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、管理業務主任者、賃貸不動産経営管理士、行政書士、個人情報保護士、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者。

  • 宅地建物取引士
  • 公認不動産コンサルティングマスター
  • マンション管理士
  • 管理業務主任者
  • 賃貸不動産経営管理士
  • 行政書士
  • 個人情報保護士
  • 甲種防火管理者
  • 競売不動産取扱主任者
  • マンション維持修繕技術者
  • 貸金業務取扱主任者