郵便物の受け取り拒否は、未開封であれば誰でも無料でできます。郵便物に「受取拒絶」と書いた付箋やメモを貼り、押印または署名を加えて、配達担当者に渡すかポストへ投函すれば、そのまま差出人へ返送されます。ただし、一度開封した郵便物、受領印を押した書留、裁判所からの特別送達は拒否できないなど、いくつかの例外があります。本記事では、日本郵便の公式ルールをもとに、郵便物を受け取り拒否する正しいやり方と、知らないと損をする注意点を整理します。
この記事のポイント
- 未開封の郵便物は「受取拒絶」と書いて押印または署名すれば、無料で差出人へ返送できます
- 手続きができるのは名あて人本人のみで、一度でも開封すると受け取り拒否はできません
- 普通郵便・ゆうメール・DMは対象で、書留は受領印を押す前、代引きは受け取る前が拒否の期限です
- ゆうパックは郵便物ではなく荷物のため、拒否した後は差出人が処分を指図する仕組みになります
- 裁判所からの特別送達は拒否できず、無視すると不利になるため必ず受け取ってください
郵便物の受け取り拒否とは?未開封なら使える返送制度
郵便物の受け取り拒否(受取拒絶)とは、自分あてに届いた配達物の受け取りを断り、差出人へ返送させる手続きです。日本郵便の公式サイトでも手順が案内されており、特別な申請書や手数料は必要ありません。付箋一枚で完結する、身近な制度です。
利用できるのは、その郵便物の名あて人(宛名の本人)だけです。家族あての郵便物を、本人の意思確認なしに勝手に受け取り拒否することはできません。同居する家族あての不要なDMであっても、まずは本人に確認するのが原則です。
受け取り拒否は、身に覚えのないダイレクトメール、勧誘の手紙、関わりたくない相手からの郵便物などに有効です。返送されたことで、差出人側も「この住所には届かない」と認識するため、しつこいDMへの意思表示としても機能します。
受取拒絶とは?受け取り拒否との違いと正式な文言
受取拒絶とは、日本郵便が付箋やメモへの記載を求めている指定の文言そのものです。日本郵便の案内は「受取拒絶」の文字と、受け取りを拒絶した方の押印または署名の2点を記載するよう定めています。一方「受け取り拒否」は、同じ手続きを指す日常的な言い方です。
ここが実務で混乱しやすい部分です。日本郵便自身も、説明文やQ&Aの見出しでは「受取拒否」という言葉を使っています。心当たりのない代金引換について「受取拒否できます」と案内しているのがその例です。つまり会話や問い合わせでは「受取拒否」で通じますが、付箋に書く文字は「受取拒絶」という使い分けになります。
さらに、約款の条文では別の言い回しが使われます。内国郵便約款は「受取りを拒んだとき」、ゆうパック約款は「荷受人が荷物の受取りを怠り若しくは拒んだとき」と表現し、「受取拒絶」という語は条文に登場しません。窓口で交わす言葉、付箋に書く文字、約款の条文用語が三層に分かれている、と理解しておくと迷いません。
| 表現 | 使われる場面 | 意味・位置づけ |
|---|---|---|
| 受取拒絶 | 付箋・メモへの記載 | 日本郵便が記載を求めている指定の文言 |
| 受取拒否 | 窓口・電話・案内文 | 同じ手続きを指す通称。日本郵便の案内文でも使用 |
| 受取りを拒んだとき | 内国郵便約款・ゆうパック約款 | 返還や処分の取り扱いを定める条文上の表現 |
| 受領遅滞 | 民法413条 | 債権者が履行の受領を拒む場合の規定。郵便の手続きとは別の概念 |
民法の「受領遅滞」と混同しないでください。こちらは債務の履行を受けることを拒んだ場合に、保存義務の程度や増加費用の負担を定めた規定です。郵便物を返送する手続きとは目的も効果も異なります。郵便の受取拒絶は、あくまで配達物を差出人へ戻すための取り扱いであり、契約上の責任を消す手段ではありません。
郵便物を受け取り拒否するやり方|手順を3ステップで解説
受け取り拒否の手順はとてもシンプルです。日本郵便が案内している方法にそって、次の3ステップで進めます。ポイントは「未開封のまま」「受取拒絶と明記」「押印または署名」の3点です。
ステップ1|付箋やメモに「受取拒絶」と書き、押印または署名する
付箋または小さなメモ用紙に、「受取拒絶」の文字をはっきりと書きます。あわせて、受け取りを拒絶する本人の押印または署名を加えます。この押印・署名が、名あて人本人の意思であることを示す部分です。赤ペンを使うと配達担当者が判別しやすくなります。
ステップ2|郵便物に貼り付ける(開封は厳禁)
「受取拒絶」と書いた付箋を、郵便物の表面に貼り付けます。この時点で絶対に開封しないことが最大の注意点です。開封した郵便物は、日本郵便のルールで受け取り拒否ができなくなります。中身が気になっても、拒否するなら封を切ってはいけません。
ステップ3|配達担当者へ渡す・窓口へ持参・ポストへ投函する
準備ができたら、次のいずれかの方法で戻します。配達担当者に直接手渡す、郵便窓口へ持参する、または郵便ポストへ投函する、の3通りです。どの方法でも差出人へ返還され、返送にかかる費用は受取人が負担する必要はありません。手間も費用もかからないのが、この制度の利点です。
郵便物の受け取り拒否の書き方|付箋の記載例と避けたい3つの文言
付箋に書くべきことは2つだけです。「受取拒絶」の文字と、受け取りを拒絶した方の押印または署名。日本郵便が求めているのはこの2点で、日付、理由、住所、差出人名の書き写しは不要です。書式や用紙の指定もありません。
印鑑の種類、インクの色、付箋の大きさについても日本郵便は特に定めていません。実務上は、配達担当者が仕分けの際に見落とさないよう、郵便物の表面の見やすい位置に貼るのが確実です。押印の代わりに署名でも同じ扱いになります。
ケース別の記載例
自分あてかどうか、宛名に氏名があるかどうかで、書く内容と手続きそのものが変わります。
| 届いた郵便物 | 付箋に書く内容 | 押印・署名 | 手続きの種類 |
|---|---|---|---|
| 自分あての普通郵便・DM・ゆうメール | 受取拒絶 | 必要 | 受取拒絶 |
| 特別あて所配達郵便物(氏名の記載がなく住所あて) | 受取拒絶 | 不要 | 受取拒絶 |
| 同居家族あての郵便物 | 本人が「受取拒絶」と記載 | 本人が押印・署名 | 受取拒絶(名あて人本人のみ) |
| 自分あてではない郵便物が誤って配達された | 誤配達である旨 | 不要 | 誤配達の申出(郵便法42条1項) |
| 前の居住者あてが繰り返し届く | 付箋ではなく郵便局へ連絡 | 該当なし | 居住確認の依頼 |
2行目の「特別あて所配達郵便物は押印・署名が不要」という点は、あまり知られていません。特別あて所配達郵便は、受取人の氏名が記載されていなくても住所や居所が書かれていればその住所へ届けるサービスで、外装に「転送不要」「特別あて所配達」といった表示があります。氏名で本人を特定していない郵便物のため、拒絶する側の押印や署名も求められない仕組みです。
書いてはいけない3つの文言
次の3つは、善意で書いても別の処理につながります。
- あて所に尋ねあたりません:これは受取人が居住していない場合に、日本郵便が差出人へ返す際に付す返還理由の表示です。自分あての郵便を拒絶するときに書く言葉ではありません。
- 誤配達:自分あての郵便物にこの表示をすると、郵便法42条1項にもとづく誤配達の申出として扱われます。受取拒絶とは処理の流れが変わります。
- 開封後に書いた受取拒絶:日本郵便は郵便物等の開封後は受け取りを拒絶できないと明示しています。封を切った時点で、この手続きは使えません。
迷ったときの判断はシンプルです。宛名が自分なら「受取拒絶」、宛名が他人なら「誤配達」。この2つを取り違えなければ、大きな間違いは起きません。引っ越し前後で郵便物が混在しやすい時期の整理は、引っ越し・転居時の手続きと郵便物の整理もあわせて確認しておくと迷いません。
受け取り拒否できる郵便物・できない郵便物の一覧
受け取り拒否は、すべての配達物に使えるわけではありません。日本郵便が配達する郵便物が対象で、種類や状態によって可否や期限が変わります。まずは下の一覧で全体像を確認してください。
| 郵便物の種類 | 受け取り拒否 | 期限・条件 |
|---|---|---|
| 普通郵便(定形・定形外) | できる | 未開封であれば配達後でも可 |
| ゆうメール | できる | 未開封であれば普通郵便と同じ扱い |
| ダイレクトメール(DM) | できる | 未開封であれば可 |
| 書留・レターパックプラス(対面) | 受領前ならできる | 受領印・署名をすると以後は不可 |
| 代金引換(代引き) | 受け取る前ならできる | 支払い・受領後は郵便局では対応不可 |
| ゆうパック | できる | 受領前が原則。受領後は4条件をすべて満たす場合のみ可 |
| 特別送達(裁判所などの書類) | できない | 法律上、拒否は認められない |
| 宅配便・信書便のメール便 | 日本郵便では不可 | 配達した事業者へ直接連絡 |
ゆうメールやレターパックも受け取り拒否できる?
ゆうメールは、未開封であれば普通郵便と同じように受け取り拒否できます。ポスト投函型のレターパックライトも同様です。一方、受け取りにサインが必要なレターパックプラスや書留は、受領印や署名をした瞬間に「受け取り完了」となり、その後は拒否できません。対面で受け取る郵便は、印を押す前に配達員へ「受け取りません」と伝えるのが唯一のタイミングです。
なお、「これは郵便物ではありません」と表示された宅配業者のメール便や、他社が配達する荷物は、日本郵便の管轄外です。この場合は、配達した事業者へ直接連絡して対応を依頼してください。
ゆうパックの受け取り拒否|郵便物とは戻り方も費用も違う
ゆうパックも受け取り拒否できます。ただし拒否した後の扱いは郵便物とまったく違います。配達時に「受け取りません」と伝える点は同じでも、その荷物が差出人へ自動的に返るとは限らないためです。
理由は、ゆうパックが郵便物ではなく「荷物」だからです。日本郵便は郵便物を内国郵便約款で、ゆうパックをゆうパック約款で扱っており、後者は「荷物の運送に適用されます」と定めています。郵便法にもとづく郵便の取り扱いではなく、運送契約として処理される点が出発点になります。
郵便物の場合、受取人に交付できない郵便物は差出人に返還すると内国郵便約款87条1項が定めており、拒絶すればそのまま戻ります。一方ゆうパックは、荷受人が受取りを拒んだとき、日本郵便は遅滞なく差出人に対して相当の期間を定め、荷物の処分について指図を求めることになっています(ゆうパック約款15条1項)。返送するか、別の場所へ届けるか、廃棄するかを差出人が決める仕組みです。
費用の負担も異なります。この指図の請求と、指図に従って行った処分に要した費用は差出人の負担です(同条2項)。着払ゆうパックを受取人が拒絶した場合も、返送した際の着払運賃は差出人が支払います。受け取らなかった側に請求が回ることはありません。
| 比較項目 | 郵便物(普通郵便・DM等) | ゆうパック |
|---|---|---|
| 根拠となる約款 | 内国郵便約款 | ゆうパック約款 |
| 拒否した後 | 差出人へ返還される | 差出人に処分の指図を求める |
| 費用の負担 | 受取人の負担なし | 差出人の負担(指図・処分の費用) |
| 差出人が応じない場合 | 差出人が受取りを拒めば日本郵便に帰属 | 予告のうえ3か月保管後、第三者立会いで売却等の処分 |
| 差出人が途中で止められるか | 取戻し請求による | 指図権は受取人へ引き渡した時点で消滅 |
表の最終行は、荷物を受け取ってしまった後の話です。差出人が持つ指図の権利は、荷受人に荷物を引き渡した時に消滅すると定められています(ゆうパック約款17条2項)。受け取った瞬間に、差出人側からも荷物の流れを止められなくなるという意味です。中身に心当たりがないなら、受け取る前に判断してください。
受領印を押した後でもゆうパックを受取拒否できる4条件
受領印を押した後は拒否できないのが原則ですが、日本郵便は例外を4つの条件で示しています。4つすべてを満たす場合に限り、受け取り後でも受取拒否ができます。
- 企業、病院、集合住宅など、多人数が集合する場所の受付で、管理人等の本人以外が受領印を押して配達されたものであること
- 受領後、遅滞なく受取拒否の申出があること
- 開封しておらず、封かんに異常がないこと
- 配達証明、特別送達、代金引換を利用していないこと
この例外は、賃貸管理の現場と直結します。管理人室のあるマンションで、管理人が入居者あてのゆうパックを代わりに受け取る運用は珍しくありません。入居者が「頼んでいない荷物だ」と言った場合、封を開ける前に申し出れば、まだ戻せる可能性が残っているということです。逆に、いったん開封してしまえばこの道は閉じます。管理人が代理受領する物件では、この4条件を受付の手順書に一行入れておくだけで、トラブルの解決策が一つ増えます。
受け取り拒否したその後はどうなる?相手にバレる・伝わるのか
受け取り拒否をすると、その郵便物は差出人へそのまま返還されます。破棄されるわけではなく、「受取拒絶」と書かれた付箋が付いた状態で、送った本人の手元に戻ります。ここが、受け取り拒否のもう一つの重要なポイントです。
つまり、受け取りを拒否したことは原則として差出人に伝わります。付箋に書いた押印や署名も一緒に返るため、「誰が」「受け取りを拒否したか」が相手に分かる仕組みです。ただし後述のとおり、差出人があらかじめ棄却を請求している大量DMでは例外があります。しつこいDMや勧誘に対しては、この明確な意思表示が抑止力になります。しかし、相手を刺激したくない事情がある場合は、伝わることを前提に判断する必要があります。
受け取り拒否は相手に通知されるのか
日本郵便から差出人へ、電話や書面で個別に通知が行くわけではありません。あくまで、拒否の付箋が付いた郵便物そのものが返送されることで、結果として相手に伝わります。返送のタイミングは配達状況によりますが、通常は数日から一週間程度で差出人へ戻ります。
ダイレクトメール(DM)の受け取り拒否|宛名の有無で対応が変わる
ダイレクトメールは受け取り拒否できます。ただしDMには3つのタイプがあり、宛名の有無で手続きも効果も変わります。届いたDMの表面を見て、自分の氏名が印字されているかどうかをまず確認してください。
| DMのタイプ | 宛名 | 受取拒絶 | 押印・署名 | 止めるための実効策 |
|---|---|---|---|---|
| 宛名ありの個別DM | 氏名あり | できる | 必要 | 差出人へ配信停止を申し出る |
| 特別あて所配達郵便 | 住所のみ(氏名なし) | できる | 不要 | 差出人へ申し出る |
| タウンメール・タウンプラス(全戸配布) | 宛名なし | 前提が成り立たない | 該当なし | 差出人へ申し出る |
3行目のタウンメール(配達地域指定郵便)は、指定した地域の全戸に届けるサービスで、あて名の記載を省略することが利用条件になっています。荷物版のタウンプラスも同じ考え方です。名あて人が存在しないため、「受け取りを拒絶した方の押印または署名」という受取拒絶の前提そのものが成り立ちません。ポストに入る宛名なしのチラシ型DMが止まらないのは、この仕組みによります。
もう一つ、知っておく価値のある例外があります。受取拒絶しても差出人に戻らないDMがあることです。内国郵便約款91条1項は、差出人が差出しの際に「その郵便物が返還されるときは事業所においてこれを棄却すること」をあらかじめ請求できると定めています。対象は郵便区内特別郵便物、つまり同一差出人が同一の郵便区内へ同時に100通以上差し出す割安なDMです。この請求がされていると、拒絶した郵便物は差出人へ返らず、郵便局で棄却されます。
つまり近隣店舗からの大量DMに限っては、受取拒絶の意思が相手に伝わらないことがあるのです。「拒否すれば必ず相手に届く」と考えていると、何度拒絶しても止まらない理由が見えません。この場合は、差出人へ直接申し出るほうが早く確実です。
DMを恒久的に止めるには|個人情報保護法にもとづく利用停止請求
日本郵便の側に、特定の差出人からのDMを恒久的に止める制度はありません。止める交渉相手は、郵便局ではなく差出人です。そして差出人に対しては、個人情報保護法にもとづく請求という手段があります。
個人情報保護委員会は、ガイドラインQ&Aで具体例を示しています。DMの送付を受けた本人が送付の停止を求める意思を表示したにもかかわらず、事業者がDMを繰り返し送付している場合、本人は利用停止等を請求できるという事例です。法35条5項の要件を満たすときは、事業者に保有個人データの利用停止または消去の義務が生じます。
あわせて、事業者は個人情報の取扱いに関する苦情を適切かつ迅速に処理するよう努める義務も負っています(法40条1項)。同委員会は、利用停止等の請求に理由がない場合であっても、DM停止の要求を苦情として扱ったうえで適切に処理するよう努めなければならない、としています。一度の口頭連絡ではなく、停止を求めた事実を記録に残すことが効きます。日付、連絡方法、担当者名を控えておいてください。
賃貸管理の現場では、この判断が毎月のように出てきます。入居中の方あてのDMは、たとえ大量に届いても管理会社が処理する対象ではありません。退去した方あてのDMは、後述する管理会社の対応にそって郵便局へつなぎます。拒否できるのは名あて人本人だけという原則が、ここでも判断の軸になります。
代引き(代金引換)郵便物を受け取り拒否する方法
心当たりのない代金引換(代引き)の郵便物は、受け取り拒否できます。配達時に、配達担当者へ「受け取りません」と伝えれば、代金を支払わずに返送できます。ここで大切なのは、中身が不明なら支払う前に判断することです。
すぐに判断できないときは、その場で受け取りを保留できます。この場合、郵便物は一度郵便局へ持ち帰られ、連絡を待つ扱いになります。保留による保管期間は1週間です。注文した家族がいないか、身内に確認する時間を確保できます。
最も注意したいのは、一度受け取って代金を支払うと、郵便局では返品・返金に応じてもらえない点です。受け取り時に押した受領印は「支払いと受領の完了」を意味します。詐欺が疑われる場合でも、郵便局を通した返金はできず、差出人との直接交渉や警察への相談が必要になります。心当たりのない代引きは、支払う前に止めるのが鉄則です。
なお、契約していないのに一方的に商品を送りつける「送りつけ商法」への対策も強化されています。消費者庁によると、2021年7月6日の特定商取引法改正で、注文していないのに届いた商品は、受け取ってしまっても直ちに処分できるようになりました。改正前のような一定期間の保管義務はなく、代金を支払う義務もありません。誤って支払った場合も、契約は成立していないため返金を求められます。
特別送達は受け取り拒否できない|無視しても手続きは進む
裁判所などから届く「特別送達」は、受け取り拒否ができません。特別送達は、訴状や支払督促といった法律上重要な書類を確実に届けるための郵便で、民事訴訟法にもとづく手続きとして扱われます。「知らなかった」では済まされない書類が入っています。
受け取らなくても送達は完了する(民事訴訟法106条3項)
正当な理由なく受け取りを拒んだ場合、その場所に書類を差し置くだけで送達が完了したものとして扱われます(民事訴訟法106条3項、差置送達)。玄関先に置かれた時点で「届いた」ことになるため、拒否しても手続きは止まりません。むしろ内容を確認しないまま期限を過ぎ、反論の機会を失うだけです。
居留守を使っても、住所不明でも進む
受け取らない相手に対して、法律は三段構えで送達を成立させます。どの段階でも、受け取っていない側に不利に進む点が共通しています。
| 状況 | 使われる方法 | 根拠 | いつ送達完了とみなされるか |
|---|---|---|---|
| その場で受け取りを拒んだ | 差置送達 | 民訴法106条3項 | その場所に差し置いた時点 |
| 不在が続き受け取らない | 付郵便送達 | 民訴法107条 | 裁判所が書留郵便を発送した時点(受け取らなくても完了) |
| 住所が分からない | 公示送達 | 民訴法110条 | 裁判所の掲示を始めた日から2週間の経過 |
つまり「受け取らなければ裁判が始まらない」ということは起こりません。出頭も答弁もしないまま期日を迎えれば、相手の主張がそのまま認められた判決が出ます。
賃貸オーナーの立場では逆に働く
この仕組みは、家賃を滞納した入居者に明渡しを求める側から見ると味方になります。被告が訴状を受け取らずに居留守を使っても、付郵便送達に切り替えれば手続きは進み、判決を得られます。「相手が受け取らないから訴訟にならない」という心配は不要です。
逆にオーナー・管理会社側が被告になる場面——たとえば敷金返還請求や原状回復の争い——では、受け取り拒否は自分の首を絞めるだけです。裁判所からの郵便は、内容がどうであれ必ず受け取ってください。
受け取り拒否しても通知の効力は消えない|民法97条2項
受け取り拒否が効かないのは、裁判所からの特別送達だけではありません。民法97条2項により、正当な理由なく受け取りを拒めば、通知は届いたものとみなされる場面があります。ここは受け取る側にとっても、送る側にとっても重要な分かれ目です。
民法97条1項は、意思表示はその通知が相手方に到達した時から効力を生ずると定めています。そして同条2項が、相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は通常到達すべきであった時に到達したものとみなすと続けます。受け取らないことで到達を防ぐ、という発想が通らない構造になっているわけです。
不動産の実務でこれが最も表れるのが、内容証明郵便による通知です。賃料の催告、契約解除の意思表示、更新拒絶の通知。いずれも「相手に届いたかどうか」が効力の分かれ目になります。入居者が内容証明の受け取りを拒んでも、催告や解除の効力が当然に失われるわけではありません。
| 郵便の種類 | 受け取りを拒んだときの扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 特別送達(訴状・支払督促) | その場所に差し置いた時点で送達完了 | 民事訴訟法106条3項 |
| 内容証明郵便(催告・解除通知) | 通常到達すべきであった時に到達したものとみなされる | 民法97条2項 |
| 普通郵便・DM | 差出人へ返還。法的効力の問題は生じない | 内国郵便約款87条1項 |
| 心当たりのない代金引換(送りつけ商法) | 売買契約が成立しておらず、代金を支払う必要はない | 特定商取引法59条 |
この違いは、その郵便が「単なる案内」なのか「法律上の意思表示」なのかで決まります。DMを拒絶しても失うものはありません。しかし催告書や解除通知を拒めば、内容を知らないまま期限だけが過ぎていきます。差出人の名前に見覚えがなくても、封筒が内容証明の様式であれば、受け取って中身を確認してください。
オーナー・管理会社の側から見ると、この規定は手続きを前に進める根拠になります。入居者が催告書の受け取りを拒み続けても、通知の効力そのものは維持されます。ただし、実際の訴訟では到達をどう立証するかが論点になるため、配達記録を残せる方法を選んでおくことが前提です。具体的な進め方は、家賃滞納への対応と内容証明郵便の書き方と、家賃滞納から明渡しに至る法的手続きの流れで整理しています。
【大家・管理会社向け】他人あての郵便物をどう扱うか
賃貸管理の実務でいちばん相談が多いのが、「自分あてではない郵便物」の扱いです。退去した入居者あての郵便、前居住者あてのDM、空室に届き続ける請求書。良かれと思ってやった処理が違法になることがあるため、線引きを正確に押さえておく必要があります。
やってはいけないこと2つ
1つ目は、名あて人以外が受け取り拒否の手続きをすることです。受取拒絶ができるのは名あて人本人だけです。オーナーや管理会社が入居者あての郵便を勝手に拒否して返送することはできません。
2つ目は、開封です。他人あての封書を故意に開けると信書開封罪(刑法133条)にあたり、1年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金が定められています。親告罪のため被害者の告訴が必要ですが、告訴されれば刑事事件になります。「中身を見て転送先を判断しよう」という善意も、開けた時点で線を越えます。
なお配達前の郵便物については郵便法77条が別に定めており、こちらは3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金とさらに重くなっています。なお懲役と禁錮は2025年6月1日施行の改正で廃止され、拘禁刑に一本化されています。郵便受けに配達された後は「取扱中」ではなくなるため刑法の適用になる、という整理です。
状況別の正しい対応
| 届いた郵便物 | 正しい対応 | やってはいけないこと |
|---|---|---|
| 入居中の入居者あて | そのまま郵便受けへ。触らない | 代わりに受け取り拒否する/開封する |
| 退去した入居者あて | 未開封のまま、配達を担当する郵便局へ連絡して居住確認を依頼する | 開封する/破棄する/自分で転送する |
| 前居住者あてのDM | 同上。誤配達の場合は「誤配達」と表示してポストへ投函する(郵便法42条1項) | 捨てる(他人の郵便物の廃棄にあたる)/「あて所に尋ねあたりません」と書き足す |
| 空室・オーナーあての代引き | 身に覚えがなければ受け取らない | とりあえず受け取って支払う |
| 裁判所からの特別送達 | 必ず受け取って内容を確認する | 拒否する/放置する |
退去者には転居届を案内する
退去者あての郵便が届き続ける根本原因は、本人が転居届を出していないことです。日本郵便の転居・転送サービスに届け出れば、旧住所あての郵便物が届出日から1年間、新住所へ無料で転送されます。
管理会社としては、退去手続きの案内に転居届の項目を入れておくのが最も効果的な予防策です。退去通知を受け取った時点で案内すれば、登録までの3〜7営業日も余裕をもって吸収できます。賃貸の退去通知はいつまでに出すか、手続きと費用の流れもあわせてご覧ください。退去立会いのチェックリストに一行加えるだけで、その後の郵便物対応の手間がまとめて消えます。転送期間の1年が切れると再び旧住所に戻り始めるため、長期の空室が見込まれる区画では特に効きます。
賃貸管理の現場から|受け取り拒否で気をつけたいこと
不動産管理の実務では、受け取り拒否の判断に迷う場面が少なくありません。私たちINA&Associatesが賃貸物件を管理する中でも、退去した入居者あての郵便物や、前の居住者あてのDMが届き続けるケースは頻繁に起こります。
ここで大切なのは、自分あてでない郵便物を勝手に開封しないことです。他人あての郵便を故意に開封すると、法律上の問題になります。前の居住者あての郵便物は、開封せずに配達を担当する郵便局へ連絡し、居住確認をしてもらうのが正しい対応です。オーナーや管理会社が入居者あての郵便を扱う際も、この線引きを守る必要があります。
また、事業用の郵便では、身に覚えのない請求書や代引きが「送りつけ商法」であるケースもあります。賃貸経営やオーナー業を営む方は、経費の管理と同じ感覚で、届いた郵便を安易に受け取らず、内容を確認する習慣が身を守ります。管理でお困りの点があれば、引っ越し・転居時の手続きと郵便物の整理もあわせて確認しておくと安心です。物件管理の見直しをご検討の方は、INAの無料相談もご活用ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 郵便物を受け取り拒否する費用はかかりますか?
受取人に費用は一切かかりません。「受取拒絶」と書いた付箋を貼って戻すだけで、返送料は不要です。差出人へ返還する費用も、受取人が負担することはありません。手数料や新たな切手も必要ないため、未開封のうちに手続きするのが最も簡単です。
Q2. 一度受け取った書留を、後から受け取り拒否できますか?
受領印や署名をした書留は、その時点で受け取り完了となり、後からの拒否はできません。書留を拒否したい場合は、配達時にサインをする前に「受け取りません」と配達員へ伝える必要があります。受け取ってしまった後は、差出人へ返送するには新しい封筒と切手が必要になります。
Q3. 特定の差出人からの郵便を、今後ずっと拒否する方法はありますか?
日本郵便の制度に、特定の差出人を恒久的に配達停止する仕組みはありません。届くたびに受け取り拒否を繰り返すのが基本です。DMを止めたい場合は、差出人へ直接配信停止を申し出るのが確実です。悪質な勧誘には、特定商取引法にもとづく通知を送る方法もあります。
Q4. 誤って開封してしまった他人あての郵便物は、どうすればよいですか?
郵便法42条2項は、誤ってその郵便物を開いた者はこれを修補し、その旨と氏名・住所または居所を郵便物に表示しなければならないと定めています。封を元に戻し、開けてしまった旨と自分の氏名・住所を書いてポストへ投函するか、郵便局へ連絡してください。他人あての郵便を故意に開封すると犯罪になるため、宛名は受け取り前に確認する習慣が身を守ります。
Q5. 裁判所からの郵便を受け取らなければ、裁判は止まりますか?
止まりません。その場で拒めば差置送達(民事訴訟法106条3項)で完了扱いになり、不在が続けば付郵便送達(同107条)に切り替わって裁判所が発送した時点で送達完了とみなされます。住所が分からない場合でも公示送達(同110条)があり、掲示から2週間で効力が生じます。受け取らないまま期日を迎えれば、相手の主張どおりの判決が出ます。
Q6. 管理会社が、退去した入居者あての郵便物を開けて転送先を調べてもよいですか?
いけません。他人あての封書を故意に開けると信書開封罪(刑法133条)にあたり、1年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金が定められています。正しい対応は、未開封のまま配達を担当する郵便局へ連絡し、居住確認を依頼することです。誤配達であれば「誤配達」と表示してポストへ投函します(郵便法42条1項)。なお「あて所に尋ねあたりません」は日本郵便が差出人へ返す際に付す返還理由の表示であり、受け取った側が書き足す文言ではありません。根本的な解決は、退去手続きの案内で本人に転居届を出してもらうことです。
