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飯田橋駅東地区再開発、スケジュール見直しの背景と駅周辺一体整備の全体像

飯田橋駅東地区第一種市街地再開発事業は当初2026年竣工予定でしたが、権利変換計画が未認可のまま大幅に遅延しています。2025年7月策定の基盤整備計画を踏まえ、スケジュール遅延の背景と駅周辺3地区一体のまちづくり全体像を解説します。

最終更新: 約10分で読めます

飯田橋駅東地区第一種市街地再開発事業は、地上26階・高さ約130mの複合タワーを整備する千代田区内の大規模プロジェクトです。2026年3月現在、権利変換計画は未認可のまま着工にも至っておらず、当初2026年11月としていた竣工予定から大幅に遅れています。2025年7月には「飯田橋駅周辺基盤整備計画」が正式策定され、スケジュール遅延の構造的背景と、駅周辺3地区一体のまちづくりの全体像がようやく明確になってきました。

飯田橋駅東地区再開発の事業概要

飯田橋駅東地区第一種市街地再開発事業は、千代田区飯田橋三丁目6番ほかに位置し、施行区域面積は約0.7haです。2021年6月に千代田区が都市計画決定を行い、翌2022年10月には東京都が飯田橋駅東地区市街地再開発組合の設立を認可しました。総事業費は約367億円に上ります。

計画される建物は地下2階・地上26階・塔屋2階建て、高さ約130m、延べ面積は約46,500m²です。容積率は1,100%と高密度であり、低層部に商業・公益施設、中層部(3〜20階)に各フロア約1,400m²超のオフィス、高層部(22〜26階)に住宅が入る複合用途で計画されています。参加組合員は三菱地所、三菱地所レジデンス、大和ハウス工業、清水建設の4社です。清水建設は2011年から事業協力者として関与しており、三菱地所は2017年に準備組合へ加入するなど、長期にわたる体制構築が続いてきました。

飯田橋駅東地区第一種市街地再開発事業 完成予想図
飯田橋駅東地区第一種市街地再開発事業 完成予想図(出典:東京都都市整備局「飯田橋駅東地区第一種市街地再開発事業」

スケジュール遅延の背景 — なぜ着工が進まないのか

当初計画では2023年9月着工・2026年11月竣工というスケジュールが想定されていました。しかし2026年3月時点で権利変換計画の認可はいまだ得られておらず、既存建物の解体工事すら始まっていません。新たな竣工時期について組合から公式な発表はなく、大幅な遅延が確定的となっています。

遅延の背景には、飯田橋駅が抱える複雑な構造があります。JR中央・総武線、東京メトロ東西線・有楽町線・南北線、都営大江戸線の計5路線が乗り入れるターミナルであり、地下・地上に入り組んだ鉄道インフラが駅周辺に密集しています。再開発ビルの工事は、これらの鉄道施設と物理的に近接するため、JR東日本・東京メトロとの技術的な協議が不可欠です。しかも単なる個別調整にとどまらず、東京都・千代田区・新宿区・文京区の行政機関も巻き込んだ広域的な合意形成が求められてきました。

だからこそ、再開発事業単体では工事計画を確定させられず、駅前広場や歩行者デッキなど都市基盤整備の計画が定まるのを待つ必要がありました。その基盤整備計画が2025年5月に案として公表され、同年7月に正式策定されたことで、ようやく調整の土台が整ったといえます。

飯田橋駅周辺基盤整備計画の策定(2025年7月)

2025年7月30日に東京都が公表した「飯田橋駅周辺基盤整備計画」は、東京都・千代田区・新宿区・文京区・JR東日本・東京メトロが参加する「飯田橋駅周辺基盤整備推進会議」が策定したものです。この計画は、駅周辺の回遊性・利便性・安全性を高めるための都市基盤整備を定めています。

主な整備内容は次の4点です。第一に、JR飯田橋駅東口高架下の歩行空間を拡充して、駅利用者の動線を改善します。第二に、東京メトロA2出入口の改良を含む駅前立体広場を整備します。第三に、駅東口と文京区方面を結ぶ歩行者デッキを新設します。第四に、A4出入口を改良整備します。これらの重点3事業は2033年度までの完了を目標としており、再開発ビルと駅基盤施設の一体的な完成像が見えてきました。

むしろ遅延をポジティブに捉えるとすれば、基盤整備計画との同期が実現することで、完成時にはより質の高い都市環境が形成される点です。単体の再開発ビルが先行完成するのではなく、歩行者デッキ・駅前広場・高架下空間が一体的に整備されることで、近隣オフィスや住宅からの回遊性が格段に向上します。東京都心で進む複数の再開発事例をみても、交通基盤と再開発ビルが連携した地区ほど、竣工後の不動産価値が安定して高まる傾向があります。

飯田橋駅周辺3地区の一体的まちづくり

飯田橋駅周辺では、東地区(本事業)だけでなく、複数の地区が連携してまちづくりを進めています。

飯田橋駅中央地区は、2025年6月に都市計画決定された案件で、地下3階・地上21階・高さ約108mの複合施設を計画しています。2030年代の竣工を目標としており、東地区と同様に千代田区域に位置します。東地区(26階・約130m)と中央地区(21階・約108m)が並立することで、飯田橋東口エリアには2棟の高層複合ビルが出現することになります。

飯田橋駅前地区は新宿区側で検討が進行しており、西口方面のまちづくりにつながる可能性を持っています。東口の東地区・中央地区と西口側の駅前地区が整備されることで、飯田橋駅を挟んだ東西の回遊動線が形成され、地区全体の価値向上が期待されます。

東京主要再開発プロジェクトの動向と比較しても、飯田橋は複数地区が連携しながら段階的に整備される点で、単発の再開発とは異なる複合的な地域価値の形成が見込まれます。

不動産市場への影響とオーナーが取るべきアクション

飯田橋駅東地区再開発が完成した際の不動産市場への影響は、3つの観点から整理できます。

オフィス需要の観点では、各フロア約1,400m²超の大型区画が供給される点が注目されます。中小規模のビルが集積してきた飯田橋エリアに、都心5区基準の大型オフィスが登場することで、IT・コンサルティング系企業の移転需要を取り込む可能性があります。しかし、竣工時期が2030年代前半に後ずれする見込みであるため、既存ビルへの影響は当面限定的です。

住宅需要の観点では、千代田区アドレスの高層部住宅として希少性があります。千代田区内のタワーマンション供給は絶対数が少なく、千代田区・文京区双方に近い飯田橋のポジションは、富裕層・外資系企業勤務者からの根強い需要が見込まれます。

商業・公益施設の観点では、歩行者デッキや駅前広場との接続が完成することで、駅直結の商業集積が生まれます。周辺で既存のオフィスや住宅を保有するオーナーにとっては、賃料水準の上昇圧力が継続する環境が見込まれます。

だからこそ、権利変換計画の認可時期と新たな着工・竣工スケジュールの発表を注視することが重要です。認可が出た段階で周辺エリアの動向が急速に変化することが予想されるため、現時点から情報収集を続ける姿勢が求められます。

INAの見解

飯田橋は、皇居外濠に面した水辺の景観と、JR・東京メトロ計5路線が集まる交通利便性を兼ね備えた稀有な立地です。今回のスケジュール遅延は一見するとネガティブな情報に映りますが、私は状況を慎重に見ています。

基盤整備計画の策定を経ることで、再開発ビル単体の整備ではなく、「歩行者デッキ・駅前広場・高架下空間・複数の高層ビル」が一体となった都市環境が実現することになります。これは、虎ノ門ヒルズ周辺や渋谷駅周辺で見られたような「まち全体の格上げ」と同じメカニズムです。

権利変換計画の認可が得られた段階が、周辺不動産にとっての実質的な転換点になるとみています。着工が始まれば、近隣エリアの賃料・価格形成にも影響が及びはじめるでしょう。2030年代の飯田橋を見据えた戦略的な意思決定をいまから準備することが、このエリアで資産を持つ方にとっての重要課題です。

まとめ

飯田橋駅東地区第一種市街地再開発事業は、約367億円・地上26階の複合ビルを整備する大規模プロジェクトです。当初2026年11月竣工予定でしたが、複雑な駅構造と広域的な関係機関調整の必要から、権利変換計画の認可が遅れ着工に至っていません。2025年7月に基盤整備計画が正式策定されたことで、遅延の構造的背景が整理されるとともに、東地区・中央地区・駅前地区の3地区一体のまちづくり全体像が明確になりました。重点整備事業は2033年度完了を目標としており、飯田橋の都市環境は今後10年かけて大きく変容していく見通しです。


よくある質問(FAQ)

Q1. 飯田橋駅東地区再開発はいつ完成しますか?

A. 当初は2026年11月竣工予定でしたが、2026年3月時点で権利変換計画が未認可のため大幅に遅延しています。新たな竣工時期はまだ公表されていません。周辺基盤整備の重点事業が2033年度完了予定であることを踏まえると、2030年代前半の竣工が見込まれますが、正確な時期は権利変換計画の認可後に明らかになると考えられます。

Q2. 飯田橋駅東地区再開発にはどのデベロッパーが参画していますか?

A. 参加組合員は三菱地所、三菱地所レジデンス、大和ハウス工業、清水建設の4社です。清水建設は2011年から事業協力者として長年関与しており、三菱地所は2017年に準備組合へ加入しています。

Q3. 飯田橋駅周辺では他にどのような再開発が進んでいますか?

A. 東地区のほか、飯田橋駅中央地区(地上21階・高さ約108m)が2025年6月に都市計画決定されており、2030年代の竣工を目指しています。また新宿区側の飯田橋駅前地区でもまちづくりの検討が進んでいます。3地区が連携することで、駅東西を結ぶ回遊性の高いエリアが形成される見通しです。

Q4. 飯田橋駅前はどのように変わりますか?

A. 2025年7月策定の「飯田橋駅周辺基盤整備計画」により、JR東口高架下の歩行空間拡充、東京メトロA2出入口改良を含む駅前立体広場の整備、駅東口と文京区方面を結ぶ歩行者デッキの新設、A4出入口の改良が計画されています。重点3事業は2033年度までの完了を目標としています。



参考資料

Daisuke Inazawa, President & CEO of INA&Associates Inc.

著者

代表取締役社長 / CEOINA&Associates株式会社

INA&Associates株式会社 代表取締役社長。首都圏・近畿圏を中心に不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントを統括。収益不動産投資戦略と超富裕層向け不動産コンサルティングを専門領域とする。

稲澤 大輔(いなざわ・だいすけ)は、INA&Associates株式会社の代表取締役社長(CEO)。大阪本店・東京営業所を拠点に、首都圏・近畿圏における不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントの三事業を統括する。

専門領域は、収益不動産の投資戦略立案、賃貸経営の収支最適化、超富裕層(UHNWI)・機関投資家向け不動産コンサルティング、およびクロスボーダー不動産投資。国内外の投資家に対し、データと長期視点に基づくアドバイザリーを提供している。

「企業の最も重要な資産は人財である」を経営理念に掲げ、人財投資カンパニーとして持続可能な企業価値の創造に取り組む。経営者として、変化の時代におけるリーダーシップのあり方と組織文化についても積極的に発信を続けている。

合格・取得資格は11種:宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、管理業務主任者、賃貸不動産経営管理士、行政書士、個人情報保護士、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者。

  • 宅地建物取引士
  • 公認不動産コンサルティングマスター
  • マンション管理士
  • 管理業務主任者
  • 賃貸不動産経営管理士
  • 行政書士
  • 個人情報保護士
  • 甲種防火管理者
  • 競売不動産取扱主任者
  • マンション維持修繕技術者
  • 貸金業務取扱主任者