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COLUMN

原状回復とは?居住用・事業用の違いとトラブルを防ぐポイント

原状回復の定義を居住用・事業用別に解説。費用負担のルールやトラブルを防ぐチェックポイント、入居中の注意点も紹介。退去時の不安解消にお役立てください。

最終更新: 約5分で読めます

賃貸物件における「原状回復」は、退去時のトラブルで最も多いテーマの一つです。原状回復は居住用と事業用で考え方が大きく異なり、借主と貸主で認識にズレが生じやすいため、正しい知識が欠かせません。本記事では、原状回復の定義から費用負担のルール、トラブルを防ぐポイントまで詳しく解説します。

原状回復とは?正しい意味を理解しよう

原状回復とは、賃貸物件の退去時に入居した状態に戻すことを指す不動産用語です。「現状回復」と混同されやすいですが、「現状」は「今の状態」であり意味が異なります。正しくは「原状(もとの状態)」です。

ただし、居住用物件の場合は文字通り「もとの状態に戻す」ことではありません。ガイドラインでは、経年劣化や通常の生活に伴う自然消耗は原状回復義務に含まれないと明確化されています。

居住用物件の原状回復はどう定められている?

居住用物件の原状回復義務は、「通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損」の復旧に限定されています。国土交通省のガイドラインでは、損耗を以下のように区分しています。

区分内容費用負担
A経年劣化・通常損耗貸主負担
B借主の故意・過失、善管注意義務違反による損耗借主負担
A+B経年劣化に借主の過失が加わったもの借主負担(経過年数を考慮)

例えば、冷蔵庫の設置による床の凹みは通常損耗(貸主負担)ですが、家具の移動で床を傷つけた場合は借主負担になります。居住用の賃貸借契約には消費者契約法が適用されるため、通常損耗の借主負担を求める特約は無効と判断される可能性があります。

事業用物件の原状回復は居住用とどう違う?

事業用物件の原状回復は、経年劣化や通常損耗を含めて借主が負担するのが基本です。居住用とは大きく異なるポイントです。

事業用物件の特徴

  • 原則として「入居時の状態に戻す」義務がある
  • 使用目的が多様なため、統一的な基準が少ない
  • 契約や特約で個別に原状回復の範囲が定められる
  • 施工業者が指定されている場合、費用が高額になりやすい

事業用物件の原状回復費用の目安

オフィス規模坪単価の目安
小・中規模(〜100坪)2〜5万円前後
大規模(100坪〜)5〜10万円前後

原状回復のトラブルを防ぐために何をすべき?

原状回復は金銭が絡むためトラブルになりやすいですが、契約時・入居時・入居中・退去時の各段階で適切な対策を取ることで回避できます

契約時に気をつけること

1. 賃貸借契約書を隅々まで確認する

原状回復に関する条項と特約を必ず確認しましょう。事業用物件では特約が有効とされるため、内容の確認が特に重要です。具体的な負担範囲やおおよその金額について説明を求めましょう。

2. 入居確認を細かく行う

退去時のトラブルの多くは、入居時からあった損耗か入居中の損耗かで争いになるケースです。家具を搬入する前に部屋の状態を写真(日付入り)で記録しておくことが有効です。設備の稼働確認も早めに行いましょう。

3. 退去時の精算書を吟味する

精算書にサインする前に以下をチェックしましょう。

  • 本来貸主が負担すべき箇所が請求されていないか
  • 一部の傷に対して部屋全体の修繕が請求されていないか
  • 経過年数が考慮された金額になっているか

入居中に気をつけること

不具合は必ず管理会社に報告する

善管注意義務として、設備の不具合を報告する義務があります。水漏れやエアコンの故障を放置すると善管注意義務違反となり、原状回復費用を請求される可能性があります。どんな小さな不具合でも早めに管理会社に連絡しましょう。

一般的な原状回復の負担例

借主負担になるケース貸主負担になるケース
タバコのヤニ・焦げ跡家具の設置による床の凹み
ペットによる傷・臭い日照による壁紙の変色
掃除を怠ったカビ・油汚れ画鋲程度の穴
DIYによる改造跡網戸の張り替え(経年劣化)

よくある質問(FAQ)

Q. 原状回復と現状回復の違いは?

「原状回復」が正しい不動産用語で「もとの状態に戻す」意味です。「現状回復」は「今の状態を回復する」意味になり、賃貸借契約における法律用語としては正しくありません。

Q. 居住用物件で経年劣化分は請求される?

いいえ。国土交通省のガイドラインにより、経年劣化や通常損耗の修繕費は賃料に含まれるものとされ、借主に請求することはできません。

Q. 事業用物件の原状回復費用が高すぎる場合は?

まず貸主と話し合いを行い、折り合いがつかない場合は専門家を交えた交渉や裁判に発展するケースもあります。施工業者が指定されていない場合は、複数社から見積もりを取ることも可能です。

Q. 入居確認は何をチェックすべき?

床・壁の傷や汚れ、設備の稼働状況を家具搬入前に確認し、日付入りの写真で記録しましょう。不具合があれば管理会社にすぐ連絡してください。

Q. 精算書にサインした後でも異議申し立てできる?

不当な請求であれば返還請求は可能ですが、裁判費用がかかる場合もあります。サイン前の確認が最も重要です。

Daisuke Inazawa, President & CEO of INA&Associates Inc.

著者

代表取締役社長 / CEOINA&Associates株式会社

INA&Associates株式会社 代表取締役社長。首都圏・近畿圏を中心に不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントを統括。収益不動産投資戦略と超富裕層向け不動産コンサルティングを専門領域とする。

稲澤 大輔(いなざわ・だいすけ)は、INA&Associates株式会社の代表取締役社長(CEO)。大阪本店・東京営業所を拠点に、首都圏・近畿圏における不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントの三事業を統括する。

専門領域は、収益不動産の投資戦略立案、賃貸経営の収支最適化、超富裕層(UHNWI)・機関投資家向け不動産コンサルティング、およびクロスボーダー不動産投資。国内外の投資家に対し、データと長期視点に基づくアドバイザリーを提供している。

「企業の最も重要な資産は人財である」を経営理念に掲げ、人財投資カンパニーとして持続可能な企業価値の創造に取り組む。経営者として、変化の時代におけるリーダーシップのあり方と組織文化についても積極的に発信を続けている。

合格・取得資格は11種:宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、管理業務主任者、賃貸不動産経営管理士、行政書士、個人情報保護士、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者。

  • 宅地建物取引士
  • 公認不動産コンサルティングマスター
  • マンション管理士
  • 管理業務主任者
  • 賃貸不動産経営管理士
  • 行政書士
  • 個人情報保護士
  • 甲種防火管理者
  • 競売不動産取扱主任者
  • マンション維持修繕技術者
  • 貸金業務取扱主任者