
2023年2月、白金高輪の空に地上45階・高さ156mのタワーが誕生しました。白金一丁目東部北地区第一種市街地再開発事業、通称「白金ザ・スカイ(SHIROKANE The SKY)」です。準備組合の発足から数えると約16年、総事業費約793億円をかけた大規模プロジェクトは、2025年2月に再開発組合の解散認可をもって正式に完了しました。この事業が白金高輪の都市構造と不動産価値に何をもたらしたのか、オーナー・投資家の視点から改めて整理します。
事業概要:浸水と老朽化が課題だった約1.7haの地区
白金一丁目東部北地区は、東京メトロ南北線・都営三田線「白金高輪駅」から徒歩わずか3〜4分の好立地にありながら、長年にわたって複数の課題を抱えていた地区でした。古川の増水による浸水被害、建築物の老朽化、そして歩行者の安全を確保できるほどの道路基盤が整っていないこと。こうした課題を放置しては、都心一等地としてのポテンシャルを十分に活かせないという問題意識が、まちづくり活動の出発点となりました。
地区面積は約1.7ヘクタール。施行者は白金一丁目東部北地区市街地再開発組合で、権利者数は285名に上ります。都市計画の決定は2013年7月、再開発組合の設立認可は2015年4月でした。その後、権利変換計画の認可(2018年3月)、建築工事の着工(2019年8月)を経て、2023年2月に工事が完了。そして2025年2月に組合解散が認可され、本事業はすべての工程を終了しました。
山手線内最大級とはどのような規模か:1,247戸・三棟構成の建築
本事業で整備された施設の規模は、都心の再開発プロジェクトとしても際立つものです。建物は3棟構成で、メインとなる東棟は地上45階・地下1階・高さ156.1m。西棟は地上19階・地下1階・高さ約70m。そして工場や医療機能を担う低層棟が地上4階・地下1階で構成されています。延べ面積は約134,998m²、住宅戸数は1,247戸、駐車場は409台を確保しています。
この1,247戸という住宅供給戸数は、山手線内側における一つの再開発事業としては最大規模の水準であり、白金高輪というエリアの人口構造と街の質感を大きく塗り替えることになりました。施工は大林組と長谷工コーポレーションによる建設共同企業体が担い、設計は梓設計が手がけています。参加組合員としては、東京建物、長谷工不動産、住友不動産、野村不動産、三井不動産レジデンシャルという国内大手5社が名を連ねており、プロジェクトの信頼性と資本力の厚さを示しています。
住・商・工・医一体型とはどのような再開発モデルか
白金一丁目東部北地区の再開発が特異だったのは、「住・商・工・医」という四つの都市機能を一体化させた点にあります。住宅と工場、そして医療施設が同一敷地内に共存するという構成は、一般的な住宅系再開発では見られない取り組みです。この地区にはもともと工場や病院が存在しており、再開発後もそれらの機能を維持・更新することが合意形成の前提となっていました。権利者285名との間で16年にわたる丁寧な協議を重ね、既存の都市機能を守りながら高密度化を図るという、まちづくりの理想に近いプロジェクトが実現しました。
公共施設の整備も注目に値します。地区幹線道路1号(幅員12〜約14m)および地区幹線道路2号(幅員10m)が新設・拡張され、歩行者の安全を確保する道路基盤が整いました。また、面積約500m²の公園も整備されています。さらに、古川沿いの立地を活かした歩行者通路が整備され、川沿いの水辺空間が市民に開かれた形となりました。従来は浸水リスクを抱えていた古川沿いのエリアが、今や都心の貴重なウォーターフロント資源として機能しています。
なお、本事業の詳細な経緯や意義については、私たちが以前まとめた「白金高輪エリア再開発が不動産価値に与える影響(2025年4月現在)」も参照いただけます。
事業完了後の地価動向と白金高輪の資産価値
白金ザ・スカイの竣工後、白金高輪エリアの地価は着実に上昇を続けています。2025年の公示地価データによれば、白金高輪駅周辺の地価は平均約220万円/m²(坪単価約728万円)に達し、前年比で約13.2%の上昇を記録しました。これは港区内でも高い上昇率であり、再開発が持続的な価値向上をもたらしていることを数字が示しています。
白金ザ・スカイの中古流通相場(2026年3月時点)は、最低水準でも約8,200万円、上位物件では12億円を超える水準に達しており、富裕層向け物件としての評価が定着していることがわかります。もともと白金・白金台エリアは都心の高級住宅地としての評価が確立していましたが、大規模再開発によって街の質感が一段階引き上げられたことで、近隣の既存物件にも波及効果が生まれています。
東京都心の再開発が地価に与える構造的な影響については、「東京都心再開発が不動産価値に与える影響|虎ノ門・渋谷・品川の投資分析」でも詳しく論じています。
次の波:西部中地区再開発・南北線延伸が加速するエリア変容
白金高輪の変容はまだ完結していません。白金一丁目東部北地区の事業完了と前後して、すでに次の大型プロジェクトが動き出しています。
白金一丁目西部中地区第一種市街地再開発事業は、白金高輪駅から西側徒歩約3分の約1.6ヘクタールを対象とする事業です。地上39階・高さ約140m・住宅973戸を含む複合施設の整備を計画しており、2025年10月27日に着工、2030年の竣工が予定されています。施行は白金一丁目西部中地区市街地再開発組合で、東急不動産、三井不動産レジデンシャル、大成建設、大成有楽不動産、日本郵政不動産が参加組合員として参画しています。
さらに、東京メトロ南北線の延伸計画が白金高輪エリアへの注目度を一層高めています。白金高輪駅から品川駅へと南に約2.5km延伸するこのプロジェクトは、2024年11月に工事が着手され、2030年代半ばの開業を目標としています。この延伸が実現すれば、白金高輪駅の交通利便性はさらに向上し、リニア中央新幹線の始発駅となる品川駅との直結が実現します。国際競争力の観点からも、白金高輪という拠点の戦略的な位置づけが大きく変わることになるでしょう。
加えて、高輪ゲートウェイシティ(JR東日本・総事業費約6,000億円)が品川駅北側に誕生しており、白金高輪との地理的近接性を踏まえると、エリア全体の価値連動効果も期待されます。
オーナーが取るべきアクションとは何か
白金高輪エリアの変化は、この地に資産を持つオーナーにとって複数の選択肢を提示しています。
保有資産の価値再評価を行う。白金ザ・スカイの竣工と公示地価の上昇を受け、近隣物件の評価額も変動している可能性があります。定期的な査定と市場価格の確認は、資産戦略の基礎として欠かせません。白金高輪駅から徒歩圏内の物件であれば、再開発前と比較して相当の価値上昇が見込まれます。
売却タイミングを慎重に見極める。西部中地区の竣工(2030年)や南北線延伸の開業(2030年代半ば)に向けて、エリアへの注目度は中期的に高まり続ける見通しです。だからこそ、「今売るべきか・待つべきか」の判断は、単純な市況比較ではなく、自身の保有物件の特性と資産全体のポートフォリオを踏まえた上での検討が必要です。短期の価格上昇を追うよりも、長期的な価値軸で考えることが重要です。
次期再開発周辺への先行的アプローチを検討する。西部中地区の再開発が進展するにつれ、周辺の地価・賃料水準は再び上昇局面を迎える可能性があります。現時点で白金高輪の周辺物件を保有・取得しているオーナーには、その恩恵を享受できるポジションにあることを認識していただきたいと思います。
東京都心における再開発周辺の投資戦略については、「東京再開発エリア主要プロジェクト調査レポート|投資・居住適性と将来性」もあわせてご覧ください。
INAの見解
白金一丁目東部北地区の事業を振り返ったとき、私が最も着目するのは「16年」という事業期間と「285名」という権利者数です。再開発は、単に建物を建て替える行為ではありません。そこに暮らし、働き、生活の拠点を置いてきた人々の合意を積み重ねる長い営みです。工場を継続させながら住宅と医療と商業を一体化させるという発想は、単なる経済合理性だけでは成立しない、まちへの敬意なくして生まれないものでした。
不動産の価値は、建物のスペックだけで決まるものではありません。その街がどのように人の営みを守り、育ててきたかという歴史的文脈が、長期的な資産価値の土台を形成します。白金高輪が今後も都心の高級住宅地として評価され続けるとすれば、それはこうした丁寧なまちづくりの蓄積があるからだと私は考えています。
INA&Associates株式会社は、都心高額物件の売買・管理を通じて、こうした都市変容の現場に深く関わり続けています。白金高輪エリアの資産をお持ちのオーナーの方々が、次のステージでも最良の選択ができるよう、誠実な情報提供と提案を続けてまいります。
まとめ
- 白金一丁目東部北地区第一種市街地再開発事業は、2009年から2025年まで約16年をかけて完了した総事業費約793億円の大規模プロジェクトです。
- 地上45階・高さ156.1mの東棟を含む三棟構成で、山手線内最大級の1,247戸を供給し、白金高輪の都市構造を大きく塗り替えました。
- 住・商・工・医の複合機能を維持しながら、古川沿いの歩行者通路・公園・道路基盤を整備し、防災性・歩行者環境の双方を改善しました。
- 白金高輪駅周辺の公示地価は2025年に平均約220万円/m²(前年比+13.2%)まで上昇し、竣工後の地価上昇を数字が裏付けています。
- 白金一丁目西部中地区再開発(2030年竣工予定)と東京メトロ南北線延伸(2030年代半ば開業)が次の変化の波として迫っており、エリアへの注目度は中長期的に継続します。
- 保有資産の価値再評価・売却タイミングの検討・次期開発周辺へのアプローチが、今オーナーに求められるアクションです。
よくある質問(FAQ)
Q. 白金ザ・スカイ(SHIROKANE The SKY)の完成時期はいつですか?
2023年2月1日に工事が完了しています。その後、再開発組合は2025年2月に解散認可を取得し、事業のすべての工程が正式に終了しました。
Q. 白金一丁目東部北地区再開発はなぜ16年もかかったのですか?
権利者285名との合意形成が大きな理由です。住宅・工場・医療という異なる機能を持つ権利者が混在するエリアであったため、全員の権利を守りながら事業計画をまとめるために、準備組合発足(2009年)から都市計画決定(2013年)・組合設立(2015年)・権利変換(2018年)・着工(2019年)という長い手順を踏む必要がありました。
Q. 白金高輪エリアの地価はこれからも上昇し続けますか?
白金一丁目西部中地区の再開発(2030年竣工予定)や東京メトロ南北線の品川延伸(2030年代半ば開業予定)という複数の材料が継続しており、中期的には注目度の維持・上昇が期待されます。ただし、金利動向・市場全体の調整局面・個別物件の条件によって変動するため、定期的な市場確認と専門家への相談をおすすめします。
Q. 白金高輪エリアに資産を持つオーナーは今何をすべきですか?
まずは保有資産の現在価値を把握することから始めることをおすすめします。竣工後の地価上昇を受けて、数年前の査定価格から大きく変動している可能性があります。売却・保有・次の投資へのシフトというそれぞれの選択肢を、最新のデータをもとに比較検討することが重要です。INA&Associates株式会社では、都心高額物件に特化した資産相談を承っています。
引用・参考資料
- 白金一丁目東部北地区第一種市街地再開発事業(完了)|港区
- 白金一丁目東部北地区第一種市街地再開発事業|東京都都市整備局
- 住・商・工・医複合の街づくり「白金一丁目東部北地区第一種市街地再開発事業」再開発組合設立の認可を取得|長谷工コーポレーション(2015年4月24日)
- 住・商・工複合の街づくり「白金一丁目東部北地区第一種市街地再開発事業」権利変換計画認可|長谷工コーポレーション(2018年3月30日)
- 白金一丁目東部北地区第一種市街地再開発事業(白金ザ・スカイ)実績紹介|長谷工の再開発事業
- 白金一丁目西部中地区第一種市街地再開発事業|港区
- 南北線延伸について|東京メトロ
- 東京メトロ南北線の分岐線(品川〜白金高輪)計画|東京都都市整備局






