2026年度、宮益坂地区市街地再開発組合は権利変換計画認可の手続きを進めており、着工まであと1年半という局面を迎えています。総事業費約2,431億円、地上33階・高さ約180mという巨大複合施設が2031年に竣工すれば、渋谷東口エリアの都市構造は根本から変わります。不動産投資家・オーナーにとって、今この「仕込み期間」に何を見ておくべきか、プロジェクトの全容と市況データをもとに整理します。
宮益坂地区再開発とは――渋谷東口「第2ステージ」の幕開け?
渋谷駅周辺の大規模再開発は長年、西口・南口エリアを中心に進んできました。しかし渋谷駅東側の宮益坂エリアは、急峻な地形と老朽化した市街地が入り組み、都市基盤の整備が遅れていました。その課題解決に向けて、2015年に宮益坂地区まちづくり検討協議会が発足し、約10年にわたる官民連携の取り組みが積み重ねられてきました。
2023年4月12日に渋谷区が都市計画を決定し(渋谷区告示第129号)、2025年4月30日には東京都知事による組合設立認可が下りました。施行者は宮益坂地区市街地再開発組合であり、事業協力者・参加組合員として東急株式会社とヒューリック株式会社が名を連ねています。宮益坂交差点付近の約1.4haという計画地に、渋谷東口の「顔」となるランドマークが誕生します。
プロジェクトの全容――3街区構成・総事業費2,431億円?
本事業は、A・B・Cの3街区で構成されています。中核となるA街区は地上33階・塔屋2階・地下3階、高さ約180m、延床面積約192,057㎡という規模を誇ります。機能構成は高層階にホテル(国際水準の宿泊滞在施設)、中層階にオフィス、低層階に大ホール・カンファレンス施設と産業育成支援施設を配置し、地下には店舗と駐車場が入ります。
B街区は地上7階・地下2階、延床面積約8,490㎡の商業施設棟です。C街区は地上2階・地下1階、延床面積約754㎡で、地区内の御嶽神社を建替え・再整備する区画となります。総事業費は約2,431億4,080万円(うち工事費は約1,750億9,990万円)に上ります。設計は三菱地所設計・日本設計による共同体(宮益坂開発設計共同体)が担い、デザインアーキテクトにはMOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO(原田真宏・原田麻魚)が起用されています。
歩行者ネットワークの再編――駅との一体化と街の開放?
本事業が単なる超高層ビル建設にとどまらない理由は、渋谷駅との多層的な歩行者接続にあります。地下広場と上空通路を組み合わせることで、渋谷駅東口改札からA街区・B街区へのシームレスな動線が確保されます。これにより現在の宮益坂エリアが持つ「駅からの分断感」が解消され、東口エリア全体の回遊性が格段に高まります。
さらに渋谷区が推進する大山街道環境整備事業と連携し、宮益坂自体を歩行者中心の空間へと再整備する計画も組み込まれています。完成時期は2031年9月と、同年度に完成予定の渋谷スクランブルスクエア第Ⅱ期(中央棟・西棟)と重なります。東口と西口の双方が同時に生まれ変わることで、渋谷駅周辺全体の都市価値が底上げされると見込まれます。
事業スケジュールと現在の進捗(2026年3月時点)?
現時点のフェーズは「権利変換計画認可」の手続き中です。2026年度中に認可が下りる見通しで、その後2027年10月の着工、2031年9月の竣工というスケジュールが続きます。主要マイルストーンをまとめると以下のとおりです。
- 2025年4月30日:市街地再開発組合設立認可(東京都知事)
- 2026年度(現在):権利変換計画認可手続き中
- 2027年10月:着工予定
- 2031年9月:竣工予定
投資判断の観点から見れば、着工前の「静かな仕込み期間」は今年度から2027年にかけての約2年間です。竣工後にエリア価値が顕在化してからでは、割安な取得機会を逃す可能性があります。この点は、後述する市況データと合わせて考えると重要な示唆を与えます。
渋谷エリアの不動産市況と投資インパクト?
宮益坂地区の再開発を語る上で、周辺の地価・賃料動向は欠かせない背景データです。2025年公示地価によれば、渋谷区の住宅地は前年比+7.0%、商業地は前年比+7.3%の上昇を記録しました。渋谷駅エリアの平均公示地価は約961万円/㎡(前年比+12.87%)に達しており、都内でもトップクラスの地価水準を維持しています。
オフィス賃料面でも渋谷地区は際立った動きを見せています。都心5区のなかで平均賃料の上昇率が最も高く、前年比+8.24%という水準です。加えて2026〜2028年の大規模オフィス供給量は年間約60万㎡と、2024〜2028年の年間平均82万㎡を下回る見通しです。供給が絞られる局面で宮益坂地区の大型オフィスフロアが加わることで、周辺の需給構造はさらにタイトな方向へ動く可能性があります。
なお本事業は国家戦略特区の認定を受けており、国際水準ホテル・大ホール・カンファレンス機能の整備が特定事業として位置づけられています。産業育成支援施設にはスタートアップや国際ビジネス交流拠点としての機能も担わせる計画で、「世界をリードする国際ビジネス交流都市・東京渋谷」の実現に向けた官民連携の核となります。
渋谷駅周辺再開発の全体像については、渋谷駅周辺再開発の全体像と不動産価値への影響もあわせてご参照ください。
オーナーが取るべきアクション?
宮益坂地区の竣工は2031年9月です。ただし、エリア価値の先行評価は竣工の2〜3年前から始まるのが通常の市場動向です。今動いておくべき具体的なアクションとして、以下の3点を提示します。
1. 宮益坂周辺のポートフォリオ見直し 渋谷東口エリアに既存物件をお持ちの場合、再開発完成後を見据えた賃料設定の見直しや長期保有方針の確認が必要な時期です。競合新規物件の竣工前に入居者との関係強化・設備更新を検討しておくことで、空室リスクを低減できます。
2. 周辺エリアへの新規取得検討 明治通り沿いや宮益坂から徒歩圏内の住宅・商業系物件は、ランドマーク竣工後の需要増を取り込める立地です。現在はまだ「再開発の確実性に対するプレミアム」が限定的な局面であり、着工(2027年)前のエントリーが長期的な優位性につながります。
3. 最新スケジュールのモニタリング 権利変換計画認可のタイミングや施工体制の確定情報は、投資判断の重要な起点となります。渋谷区公式サイトや組合の公告を定期的に確認し、進捗に応じてアクションを調整することが重要です。
また、東京都心の再開発が不動産価値に与える定量的な影響については、東京都心再開発が不動産価値に与える影響|虎ノ門・渋谷・品川の投資分析で詳しく解説しています。
私の考え
宮益坂地区の再開発は、単に一棟の超高層ビルが完成するという話ではないと私は考えています。渋谷駅東側という長年「取り残されてきた」エリアが、国家戦略特区のもとで国際ビジネス交流拠点へと生まれ変わります。渋谷という都市の第2ステージを象徴するプロジェクトだと言えるでしょう。
私が注目しているのは、MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIOによるデザインアーキテクチャーの方向性です。渋谷の地形的特性を活かした設計が周辺街区との連続性を生み出せれば、宮益坂交差点付近の様相は大きく変わります。ホテルや大ホールを目的とした国内外の訪問者が恒常的に集まるエリアへと変貌し、周辺住宅・商業物件への波及効果は竣工後5〜10年のスパンで確実に現れるでしょう。
一方で、長期的視野で見ると注意すべき点もあります。2031年に向けてオフィス需給のタイト化が見込まれる反面、竣工後の大量供給が渋谷地区の平均賃料を下押しするリスクも否定できません。信頼と正直な情報提供を重んじる立場から申し上げると、「再開発=必ず値上がり」という単純な論理ではなく、個別物件の立地・築年・競合関係を精緻に検証した上で投資判断することが重要です。
今が「仕込み期間」であることは間違いありませんが、だからこそ長期的視野に基づく慎重かつ積極的な戦略が問われます。
まとめ
宮益坂地区第一種市街地再開発事業は、総事業費2,431億円・高さ約180m・2031年9月竣工という渋谷東口最大のプロジェクトです。2026年度に権利変換計画認可が見込まれる今、着工前の仕込み期間として市場の注目度が高まっています。
- 施行者:宮益坂地区市街地再開発組合(事業協力:東急・ヒューリック)
- A街区:地上33階・高さ約180m・延床面積約192,057㎡(オフィス・ホテル・大ホール等)
- 総事業費:約2,431億4,080万円
- 着工:2027年10月/竣工:2031年9月
- 渋谷区商業地地価:前年比+7.3%、渋谷地区オフィス賃料:前年比+8.24%
- 国家戦略特区認定・国際ビジネス交流拠点としての機能整備
渋谷東口という長年の課題エリアに、官民が2,400億円超を投じて取り組む本事業は、不動産市場において2020年代後半から2030年代前半にかけての渋谷エリア全体の価値形成に大きく影響します。投資判断の前提として、スケジュールと市況の変化を継続的に追うことが求められます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 宮益坂地区再開発の竣工はいつですか?
2031年9月の竣工を予定しています。現在(2026年3月)は権利変換計画認可の手続き中で、2027年10月の着工に向けて準備が進んでいます。
Q2. 宮益坂地区再開発に参加する企業はどこですか?
施行者は宮益坂地区市街地再開発組合です。事業協力者・参加組合員として東急株式会社とヒューリック株式会社が参画しており、設計は三菱地所設計・日本設計の共同体(宮益坂開発設計共同体)が担っています。デザインアーキテクトはMOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIOです。
Q3. 渋谷東口エリアの地価はどのくらい上昇していますか?
2025年公示地価によれば、渋谷区商業地は前年比+7.3%の上昇を記録し、渋谷駅エリアの平均公示地価は約961万円/㎡(前年比+12.87%)に達しています。再開発の進展が地価上昇の一因となっていると考えられます。
Q4. 宮益坂地区再開発と渋谷スクランブルスクエアとの関係は?
渋谷スクランブルスクエア第Ⅱ期(中央棟・西棟)も2031年度完成予定であり、宮益坂地区再開発と竣工時期が重なります。東口と西口が同時に刷新されることで、渋谷駅周辺全体の回遊性と都市価値の底上げが期待されています。