「更新のお知らせが届いたけれど、結局いくら払うのか」。賃貸にお住まいの方から、2年に一度そう相談をいただきます。この記事は、更新料と更新事務手数料の実額を知りたい方、更新のタイミングで家賃を交渉したい方、そして更新費用が用意できず困っている方に向けて、国土交通省・総務省・国税庁・厚生労働省の一次データだけを使って「自分の家賃だといくらになるか」を計算できる形に整理したものです。2026年時点で公開されている最新の数字と、それが何年の調査なのかも併せてお示しします。
結論を先にお伝えします。更新料の相場は全国一律ではなく、地域によって賃料の0か月分から1.4か月分まで開きがあります。都道府県別の更新料を横断的に調べた公的データは国土交通省が平成19年(2007年)6月に公表した実態調査が最後で、それによれば平均は東京1.0か月・神奈川0.8か月・大阪0か月です。一方、貸主に払う更新料とは別に仲介・管理会社へ払う「更新事務手数料」は、令和7年度(2025年度)の調査で44.4%の世帯に発生しており、その約7割が賃料ちょうど1か月分でした。
この記事のポイント
- 更新料の相場は「賃料1〜2か月分」ではありません。国土交通省の一次データでは、16都道府県すべてで平均1.4か月以下、多くは0.5か月前後です。
- 更新時に払うお金は更新料だけではなく、更新事務手数料・火災保険料・家賃債務保証の更新保証料の合計4種類を確認する必要があります。
- 三大都市圏の平均家賃83,381円で試算すると、2年更新の現金支出は大阪型で83,381円、東京型で166,762円、京都型で200,114円と、地域で2倍以上の差が出ます。
- 更新時の家賃交渉には借地借家法32条という法的根拠があります。ただし民営家賃は2026年6月時点で前年同月比プラス0.6%と動きが小さく、大幅減額より「据え置き」の方が現実的です。
- 更新料が払えないとき、住居確保給付金は家賃が支給対象で更新料は対象外です。更新料そのものは貸主・管理会社との分割相談で対処する道筋に分けて考えます。
更新料の相場はいくらか|都道府県別の徴収割合と平均月数
更新料の相場を知りたいときに最初に見るべきなのは、国土交通省が平成19年6月29日に公表した「民間賃貸住宅に係る実態調査(不動産業者)」です。日本賃貸住宅管理協会の会員である賃貸住宅管理会社934社に調査票を配布し、204社から回答を得た(回収率21.8%)調査で、一時金に関する設問は有効回答175社を集計しています。都道府県ごとの更新料の徴収割合と平均月数を横断的に示した公的データは、2026年8月時点で私たちが確認できた範囲では、これ以外に見当たりません。
16都道府県の更新料 徴収割合と平均月数
集計対象は、平成17年4月から平成18年3月までに契約した物件です。「割合」はその都道府県で更新料を徴収している物件の割合、「平均(月)」は徴収している場合の賃料に対する月数です。
| 都道府県 | 更新料を徴収する割合 | 平均(賃料の月数) |
|---|---|---|
| 北海道 | 28.5% | 0.1か月 |
| 宮城 | 0.2% | 0.5か月 |
| 東京 | 65.0% | 1.0か月 |
| 神奈川 | 90.1% | 0.8か月 |
| 埼玉 | 61.6% | 0.5か月 |
| 千葉 | 82.9% | 1.0か月 |
| 長野 | 34.3% | 0.5か月 |
| 富山 | 17.8% | 0.5か月 |
| 愛知 | 40.6% | 0.5か月 |
| 京都 | 55.1% | 1.4か月 |
| 大阪 | 0% | 該当なし |
| 兵庫 | 0% | 該当なし |
| 広島 | 19.1% | 0.2か月 |
| 愛媛 | 13.2% | 0.5か月 |
| 福岡 | 23.3% | 0.5か月 |
| 沖縄 | 40.4% | 0.5か月 |
出典:国土交通省「民間賃貸住宅に係る実態調査(不動産業者)」平成19年6月・有効回答175社(報道発表資料)
この表から読み取れることは3つあります。第一に、神奈川90.1%・千葉82.9%・東京65.0%と首都圏では更新料がほぼ標準装備である一方、大阪と兵庫は0%で慣習そのものが存在しません。第二に、徴収割合の高さと金額の高さは一致しません。神奈川は9割の物件で徴収しますが平均は0.8か月で、東京の1.0か月より低くなっています。第三に、最も高いのは京都の1.4か月です。京都は徴収割合こそ55.1%と中位ですが、払う場合の金額は全国で最も重くなります。
「賃料1〜2か月分」は本当か|一次データでは大半が0.5か月前後
更新料の相場として「賃料1〜2か月分」という説明を見かけますが、上記の一次データと照らすと、この幅は実態より高めです。16都道府県のうち1か月を超えるのは京都の1.4か月だけで、1.0か月ちょうどが東京と千葉、残る11地域は0.1〜0.8か月に収まっています。「2か月分」に相当する数値は、この調査のどの都道府県にも存在しません。
更新のお知らせに賃料2か月分の更新料が記載されていた場合、それは地域の平均から大きく離れた水準だということになります。後述する最高裁判決は、更新料の額が賃料や更新期間に照らして高額に過ぎる場合を例外として扱っていますので、まず契約書の更新料条項をご確認いただき、金額と根拠を管理会社に説明してもらう価値があります。
データが平成19年で止まっている理由と、読み替えるときの注意点
この調査のあとに同種の全国横断データが見当たらない理由は、更新料が法令に根拠のない商慣習だからです。国土交通省の「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集(再改訂版)」(令和4年3月)は、更新料について「法令上根拠となる規定がなく、必ずしも全国的な慣習でもないことから、国土交通省の賃貸住宅標準契約書においては記載がありません」と明記しています。制度ではないため、継続的な統計調査の対象になっていないのです。
そのため、この表は「2026年の相場表」ではなく「地域ごとの慣習の強さを示す地図」として読むのが適切です。約20年前の調査ですから、割合や月数が当時から動いている可能性はあります。実額を知りたい場合は、この表で自分の地域の水準感を掴んだうえで、手元の賃貸借契約書に書かれた更新料条項の金額を正とみなしてください。契約書に更新料の定めがなければ、更新時に更新料を請求される根拠はありません。
更新のときに実際にいくら払うのか|費用の内訳と計算例
更新時の出費は更新料だけではありません。実務上は更新料・更新事務手数料・火災保険料・家賃債務保証の更新保証料の4つが同じタイミングで請求されます。支払先も法的性格も異なりますので、まず内訳を分けて把握することが、金額の妥当性を判断する出発点になります。
更新時に発生する4つの費用の比較
| 費用 | 支払先 | 相場の根拠となる一次データ | 消費税(居住用/事業用) | 法的根拠 | 交渉の余地 |
|---|---|---|---|---|---|
| 更新料 | 貸主(大家) | 国交省 平成19年調査。東京1.0か月・神奈川0.8か月・大阪0か月など | 非課税/課税 | 法令上の根拠なし。契約書の条項が根拠 | あり。地域相場と乖離していれば説明を求められる |
| 更新事務手数料 | 仲介会社・管理会社 | 令和7年度住宅市場動向調査。発生44.4%、うち1か月ちょうど69.7% | 課税(役務の対価) | 法令上の根拠なし。委託・媒介の実費として請求 | あり。作業内容の内訳を確認できる |
| 火災保険料 | 保険会社(代理店経由が多い) | 商品ごとに異なり公的統計なし | 非課税(保険料) | 契約上の加入義務が特約に書かれていることが多い | あり。保険会社の指定は原則できない |
| 家賃債務保証の更新保証料 | 家賃債務保証会社 | 商品ごとに異なり公的統計なし | 非課税(信用保証料) | 保証委託契約に基づく | 限定的。契約が続く限り発生する |
この4つのうち、火災保険料と更新保証料には全国的な公的統計が存在しません。したがって金額の妥当性は、保険証券と保証委託契約書に書かれている実額と更新周期でご確認ください。なお消費税の扱いは、火災保険料も家賃債務保証の保証料も非課税です。国税庁は非課税となる取引として「保険料」と「信用保証料」を挙げています(No.6201 非課税となる取引)。ただし保証会社の請求書に事務手数料が別建てで記載されている場合、その部分は役務の対価として課税されます。家賃債務保証の費用構造については、家賃保証料の相場と料金体系の見方で詳しく整理しています。
更新料と更新事務手数料の区別については、国の調査票が明確に線を引いています。令和7年度住宅市場動向調査の調査票には「更新手数料には、大家に支払う更新料は含まず、仲介業者に支払う更新に関する事務手数料のみを記載してください」という注記があります。更新料は貸主への一時金、更新事務手数料は業者への役務の対価という整理です。請求書に「更新料」としか書かれていない場合は、どちらがいくらなのかを分けて示してもらうことをおすすめします。
更新事務手数料の最新実態(令和7年度住宅市場動向調査)
更新まわりで最も新しい一次データが、国土交通省の令和7年度住宅市場動向調査です。令和8年(2026年)7月に報告書が公表されました。民間賃貸住宅入居世帯の調査票配布数は600、回収数590(回収率98.3%)、調査期間は令和7年9月1日から12月9日まで、対象は2024年4月から2025年3月に住み替えを行った世帯です。ここで一点ご注意いただきたいのは、民間賃貸住宅の調査対象は三大都市圏に限られているという点で、全国平均ではありません。
| 項目 | 令和7年度の結果 |
|---|---|
| 更新手数料の有無 | あり44.4%/なし37.3%/無回答18.3% |
| 更新手数料の月数 | 1か月ちょうど69.7%/1か月未満11.8%/1か月超2か月未満12.6% |
| 月額家賃 | 平均83,381円/中央値74,000円(首都圏94,068円・中京圏63,447円・近畿圏71,965円) |
| 共益費 | 平均4,837円 |
| 敷金・保証金 | あり51.9%(うち1か月ちょうど64.4%) |
| 礼金 | あり43.1%/なし45.8%(ありのうち1か月ちょうど73.4%) |
| 仲介手数料 | あり48.0%/なし37.1%(ありのうち1か月ちょうど69.7%) |
| 賃貸契約の種類 | 普通借家92.5%/定期借家2.0% |
出典:国土交通省「令和7年度 住宅市場動向調査報告書」(令和8年7月・民間賃貸住宅入居世帯 有効回収590、三大都市圏)
読み方のポイントは、更新手数料が「発生する世帯は半分弱、発生すれば賃料1か月分」という分布になっていることです。つまり更新事務手数料は、金額そのものより「あるかないか」で総額が大きく変わる費目です。更新の案内が届いたら、まずこの項目の有無を確認してください。
家賃83,381円で試算する2年更新シミュレーション
実額のイメージを掴んでいただくため、令和7年度調査の三大都市圏平均家賃83,381円を共通の土台にして、更新料の月数だけを地域ごとに入れ替えて計算します。更新事務手数料は同調査で最も多かった賃料1.0か月分としています。
| 地域パターン(更新料の平均月数) | 更新料 | 更新事務手数料(1.0か月) | 2年更新時の合計 |
|---|---|---|---|
| 大阪・兵庫型(0か月) | 0円 | 83,381円 | 83,381円 |
| 埼玉・愛知・福岡型(0.5か月) | 41,691円 | 83,381円 | 125,072円 |
| 神奈川型(0.8か月) | 66,705円 | 83,381円 | 150,086円 |
| 東京・千葉型(1.0か月) | 83,381円 | 83,381円 | 166,762円 |
| 京都型(1.4か月) | 116,733円 | 83,381円 | 200,114円 |
同じ家賃でも、地域の慣習の違いだけで2年ごとの支出が83,381円から200,114円まで、2.4倍の開きが生まれます。首都圏の実際の平均家賃は94,068円ですので、首都圏で更新料・更新事務手数料が1.0か月ずつの物件にお住まいであれば、2年ごとの更新費用は188,136円という水準になります。
2年ごとに現金で必要になる額は、この合計に火災保険料2年分と家賃債務保証の更新保証料を足した金額です。この2つは公的な相場データがありませんので、保険証券と保証委託契約書に書かれた実額を足して、ご自身の総額を出してください。更新の3か月前には、この総額を手元資金として見込んでおくと慌てずに済みます。
更新料に消費税はかかるか(居住用は非課税、事業用は課税)
更新料の消費税の扱いは、その建物が住宅用か事業用かで分かれます。国税庁のタックスアンサーNo.6225は、住宅に係る賃貸借契約の締結や更新に伴う保証金・権利金・敷金・更新料などのうち返還しないものは非課税とし、事務所など事業用の建物についてはこれらを課税対象としています。
したがって、お住まいの部屋の更新料に消費税が上乗せされていれば、それは誤りの可能性があります。見分け方は簡単で、更新のご案内に記載された更新料の金額が「家賃の月数×家賃」ちょうどになっているかを確認するだけです。家賃83,381円で更新料1.0か月なら83,381円であるべきで、91,719円のように1.1倍されていれば消費税が加算されています。一方、更新事務手数料は業者の役務の対価ですから、こちらに消費税がかかるのは正しい処理です。
出典:国税庁「No.6225 地代、家賃や権利金、敷金など」(令和7年4月1日現在法令等)
更新料はなぜ発生するのか|法的根拠と最高裁判例
更新料に法律上の根拠はありません。支払義務が生じるのは、賃貸借契約書に更新料条項が書かれている場合に限られます。ここを押さえておくと、更新の場面で何を確認すべきかが明確になります。
国の標準契約書に更新料の記載はない
国土交通省は賃貸借契約のひな型として「賃貸住宅標準契約書」を公表していますが、そこに更新料の項目はありません。同省の「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集(再改訂版)」(令和4年3月・賃貸借トラブルに係る相談対応研究会)は、その理由を更新料に法令上の根拠となる規定がなく全国的な慣習でもないためと説明しています。つまり更新料は、国が標準と考える契約条件には含まれていない、地域慣習に基づく上乗せ項目だということです。
最判平成23年7月15日|争点は消費者契約法10条だった
更新料条項の有効性は長く争われ、下級審の判断も分かれていました。決着をつけたのが最高裁第二小法廷平成23年7月15日判決(民集65巻5号2269頁)です。争点は、更新料条項が消費者契約法10条に違反して無効となるかどうかでした。
最高裁は、更新料は賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を持つとしたうえで、賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、更新料の額が賃料の額・賃貸借契約が更新される期間等に照らして高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法10条にいう消費者の利益を一方的に害するものには当たらないと判断しました。
ここから読み取れる実務上の意味は2つです。第一に、契約書に金額と支払時期がはっきり書かれていれば、更新料条項は原則として有効ですから、支払いを一方的に拒むのは難しいということ。第二に、「高額に過ぎる」場合は例外として扱われる余地が残されているということです。前掲の相談対応事例集も、地域の慣習や相場と著しく乖離していないかを考慮しながら貸主と相談することが重要であり、折り合いがつかない場合には調停等の申立ても考えられる、としています。
ここで一点、誤解しやすい点を補足します。この事件で有効と判断された条項は、更新料を賃料2か月分、更新される期間を1年とするものでした。つまり相場より高いというだけで条項が無効になるわけではありません。金額に納得できない場合の現実的な進め方は、無効を主張することではなく、根拠の説明を求めたうえで貸主と条件を相談することになります。
貸主が更新料を取る理由(一時金収入53.0%/長年の慣習50.4%)
交渉の材料として、貸主側の動機を知っておくと話が組み立てやすくなります。前掲の平成19年調査では、更新料を徴収する理由を有効回答117社に複数回答で尋ねています。最も多かったのは「一時金収入として見込んでいる」53.0%、次いで「長年の慣習」50.4%、「家賃が低い分の収入を確保」21.4%、「損耗を補修するための財源」20.5%でした。
つまり更新料の半分は経営上の収入計画、もう半分は慣習で成り立っています。減額を相談する際、「慣習だから」という理由に対しては地域データを示す余地がありますが、収入計画に組み込まれている部分は貸主にとって譲りにくい部分です。この構図を理解したうえで、更新料そのものより設備更新や家賃条件を含めた全体で話し合う方が、結果的にまとまりやすくなります。
契約更新の仕組み|合意更新・法定更新・定期借家の違い
更新には、当事者の合意による「合意更新」と、借地借家法の規定による「法定更新」の2つの態様があります。どちらになるかで、その後の契約期間も更新料の扱いも変わります。
なぜ2年契約が多いのか(借地借家法29条1項)
賃貸借契約の期間が2年で設定されることが多い背景には、借地借家法29条1項があります。同項は「期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす」と定めています。1年未満の契約にすると期間の定めのない契約とみなされ、貸主は解約申入れに正当事由(借地借家法28条)が必要になるため、貸主にとって管理しにくくなります。そこで1年以上、実務上は2年という期間が広く使われているのです。
法定更新になるとどうなるか(借地借家法26条)
借地借家法26条1項は、貸主が期間満了の1年前から6か月前までの間に更新をしない旨の通知(または条件を変更しなければ更新しない旨の通知)をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で更新したものとみなす、と定めています。ただし、その期間は定めがないものとされます。通知をしていた場合でも、期間満了後に借主が使用を継続し、貸主が遅滞なく異議を述べなければ同じ扱いになります(同条2項)。
実務上の意味は3つあります。第一に、更新手続きを忘れても契約が切れて追い出されることはありません。第二に、法定更新後は「期間の定めのない契約」になりますので、次の更新期日という概念自体がなくなります。第三に、法定更新の場合に更新料条項が適用されるかどうかは、契約書の文言次第です。「合意更新の場合に更新料を支払う」と書かれていれば法定更新には及ばないと読める一方、「更新の場合」と包括的に書かれていれば争点になり得ます。この一文の書きぶりを確認することが、法定更新をめぐる相談で最初に見るべき点です。
なお、更新拒絶の通知があっても、それだけで退去が必要になるわけではありません。貸主が更新を拒むには借地借家法28条の正当事由が要ります。同条は、貸主・借主が建物の使用を必要とする事情のほか、従前の経過、建物の利用状況、建物の現況、立退料等の財産上の給付の申出を総合的に考慮して判断すると定めています。
普通借家と定期借家の比較
| 項目 | 普通借家契約 | 定期借家契約 |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 借地借家法26条・28条・29条 | 借地借家法38条 |
| 契約方法 | 書面でなくても成立 | 公正証書等の書面(電磁的記録可)に限る |
| 更新の可否 | 更新される(法定更新あり) | 更新はなく、期間満了で終了 |
| 事前説明 | 特段の定めなし | 更新がない旨を記載した書面の交付と説明が必要。怠ると更新なしの定めは無効(38条5項) |
| 貸主が終わらせる要件 | 正当事由が必要(28条) | 正当事由は不要 |
| 終了の通知 | 期間満了の1年前〜6か月前に更新拒絶の通知(26条1項) | 期間1年以上なら、期間満了の1年前〜6か月前に終了通知(38条6項) |
| 借主からの中途解約 | 契約の特約による | 居住用かつ床面積200平方メートル未満で、転勤・療養・親族の介護等やむを得ない事情があれば解約申入れ可(38条7項) |
| 利用実態(令和7年度) | 92.5% | 2.0% |
| 更新料に相当する費用 | 更新料 | 再契約料(再契約は新規契約の扱い) |
出典:e-Gov法令検索 借地借家法、国土交通省「令和7年度 住宅市場動向調査報告書」
定期借家は制度としての認知度がまだ低く、令和7年度調査では「知っている」17.1%、「名前だけは知っている」24.6%に対し、「知らない」が54.4%を占めています。契約書の表題や第1条に「定期建物賃貸借契約」と書かれていないか、更新がない旨の説明書面を受け取っていないか。この2点を確認すれば、ご自身の契約がどちらかは判別できます。両者の違いは普通借家と定期借家の違いでさらに詳しく整理しています。
分譲賃貸の更新手続きで確認すべき3点
分譲マンションの一室を借りている場合も、更新の法律上の扱いは一般の賃貸と変わりません。ただし貸主が個人オーナーであることが多く、次の3点で違いが出やすくなります。
- 更新料条項の有無に個人差が大きい。管理会社の定型書式ではなくオーナー独自の契約書が使われている場合があり、更新料の有無も金額も物件ごとにばらつきます。契約書の該当条項を直接ご確認ください。
- 更新の窓口がどこかを事前に確かめる。マンション全体の管理組合と、賃貸借契約の管理会社は別です。更新書類の送付元と、質問先の連絡先を控えておくと手続きが滞りません。
- 管理規約の変更が更新時に反映されることがある。ペット飼育や楽器演奏、駐輪場の使用条件などが更新後の契約条件に加わる場合があります。前掲の相談対応事例集も、更新時に新たな特約が追加されたときは説明を求めてよく話し合うことが大切だとしています。
分譲賃貸そのものの特性は分譲賃貸物件のメリット・デメリットにまとめています。
更新のタイミングで家賃交渉はできるか
できます。しかも更新は、借主から家賃の話を切り出すのに最も自然なタイミングです。ただし感覚的に「高いので下げてください」と伝えても話は進みません。法的な根拠と公的な指標を添えると、貸主・管理会社の側も検討の土台を持てます。
法的根拠は借地借家法32条の借賃減額請求
借地借家法32条1項は、建物の借賃が租税その他の負担の増減、土地建物の価格の上昇や低下その他の経済事情の変動、または近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず当事者が将来に向かって借賃の増減を請求できると定めています。借主から減額を求める権利も、この条文に含まれています。
実務で使いやすいのは「近傍同種の建物の借賃との比較」です。同じ建物の別の部屋や、徒歩圏の同程度の築年・広さの物件が、今いくらで募集されているか。これが最も具体的な材料になります。ただし、一定期間賃料を増額しない旨の特約がある場合はその定めに従うこと(32条1項ただし書)、定期借家契約で賃料改定の特約がある場合は32条が適用されないこと(38条9項)にはご注意ください。条文の使い方は借地借家法32条と賃料増減請求の進め方で詳しく解説しています。
交渉材料になる公的な家賃指標
「近傍同種」の物件情報は個別に調べるしかありませんが、市場全体の動きは公的統計で確認できます。次の2つが、更新時の会話で使える客観データです。
| 指標 | 数値 | 交渉での意味 |
|---|---|---|
| 消費者物価指数 民営家賃(2026年6月・前年同月比) | +0.6%(指数101.4)/木造+0.1%(100.8)/非木造+0.8%(101.6) | 家賃は1年で1%も動いていない。値上げ提示があれば根拠を問える |
| 同 総合(2026年6月・前年同月比) | +1.7%(指数113.6) | 物価全体は上がっているが、家賃は追随していない |
| 同 公営・都市再生機構・公社家賃 | +1.0%(指数102.8) | 公的賃貸も1%程度。民間の大幅増額は説明が要る |
| 住宅・土地統計調査 民営借家(木造)2023年 | 54,409円(2018年比+4.5%) | 5年でこの伸び。1年あたりでは1%弱 |
| 同 民営借家(非木造)2023年 | 68,548円(2018年比+7.0%) | 非木造は木造より上昇が大きい |
| 同 借家(専用住宅)全体 2023年 | 59,656円(2018年比+7.1%) | 自室の家賃水準を測る全国基準 |
出典:総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)6月分」、総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 結果」
この数字が示す結論は明快です。市場家賃は年1%未満しか動いていません。したがって、更新時に大幅な減額を求める根拠を市場データから作るのは難しい一方、「据え置きでお願いしたい」あるいは「増額提示の根拠を教えてほしい」という申し出には十分な裏付けがあります。増額を提示されたときの対応は更新で家賃が値上げされたときに借主が拒否できる条件と交渉手順で整理しています。
切り出す時期と伝え方|更新通知が届く前に動く
交渉を切り出す時期は、更新のご案内が届く前、期間満了の4〜6か月前が適しています。理由は、更新通知が発送された後は条件が社内で確定しており、変更には差し戻しの手間がかかるためです。条件が固まる前に相談すれば、貸主も検討の余地を持てます。
伝え方は、次の順序が実務的です。第一に、住み続けたいという意思をはっきり伝えます。貸主にとって最大のコストは空室ですから、長期入居の意向は交渉材料そのものです。第二に、同じ建物や近隣の募集条件を具体的に示します。第三に、要望を一つに絞ります。家賃・更新料・設備更新をすべて求めると論点が散り、結論が出ません。第四に、口頭で合意した内容は更新契約書か覚書に文字で残します。
貸主にとって最も避けたいのは、退去による空室期間と次の募集費用です。この判断基準を頭に置いて話を組み立てると、無理のない着地点が見えてきます。
更新料を払い続ける場合と、更新料なし物件へ移る場合の比較
「更新料を払うより引っ越した方が得ではないか」というご相談も多くいただきます。家賃83,381円を前提に、6年間の費用で比べてみます。
まず、同じ部屋に6年住み続ける場合の更新は2回です(2年目と4年目)。前掲の試算をそのまま2倍にすると、東京・千葉型で333,524円、埼玉・愛知・福岡型で250,144円、京都型で400,228円、大阪・兵庫型で166,762円となります。
次に、引っ越す場合の持ち出しです。令和7年度調査の発生率と月数から、平均的な条件を積み上げます。
| 費目 | 発生率(令和7年度) | 発生した場合の金額(家賃83,381円・1か月) | 戻るか |
|---|---|---|---|
| 礼金 | あり43.1%/なし45.8% | 83,381円 | 戻らない |
| 仲介手数料 | あり48.0%/なし37.1% | 83,381円 | 戻らない |
| 敷金・保証金 | あり51.9% | 83,381円 | 原状回復精算後に一部または全部が戻る |
戻らないお金だけを合計すると166,762円で、これに引越運賃、旧居の原状回復精算、新居の火災保険料と保証委託料が加わります。ここから損益分岐が見えてきます。なお更新事務手数料は移り先でも更新のたびに生じ得る費目ですので、以下では更新料だけを比較します。
- 東京・千葉型(更新料1.0か月):更新料1回分83,381円に対し、引っ越しの戻らない持ち出しは166,762円。更新2回分でようやく並ぶ計算で、引越運賃を足せば住み続けた方が有利です。
- 埼玉・愛知・福岡型(0.5か月):更新料1回41,691円。6年で2回払っても83,382円ですから、引っ越しは明確に不利です。
- 京都型(1.4か月):更新料1回116,733円、2回で233,466円。戻らない持ち出し166,762円を上回りますので、4年以上住む前提なら引っ越しが選択肢に入ります。
ただし、この比較には大きな前提があります。令和7年度調査では礼金なしが45.8%、仲介手数料なしが37.1%を占めており、条件次第で引っ越しの持ち出しはゼロに近づきます。逆に言えば、引っ越しが得になるかどうかを決めるのは更新料の額そのものよりも、移り先の初期費用と家賃が下がるかどうかです。移り先の初期費用の内訳は賃貸契約の初期費用と節約する5つの方法で確認できます。
更新料が払えないときにできること
更新の請求額が用意できないとき、最もしてはいけないのは連絡をしないまま期日を迎えることです。取れる手立ては大きく3つあり、それぞれ性格が異なります。
まず管理会社・貸主に分割や減額を相談する
更新料は法令に根拠のない契約上の金銭ですから、当事者の合意で分割や減額ができます。相談の際は、支払いの意思があること、いつまでにいくら払えるか、住み続けたい意向があることの3点を具体的に伝えてください。
ここで、更新まわりのトラブルがどれくらい起きているかを示す公的データをご紹介します。国土交通省「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査(入居者)」(2019年7月31日〜8月1日実施・入居者310名のWebアンケート)です。
| 項目 | 経験した割合(トラブル経験者94名の内訳・複数回答) | 発生すると深刻だと思う割合(回答者310名・5つまで選択) |
|---|---|---|
| 更新料や事務手数料の話し合いがつかなかった | 4.3%(実数4名) | 3.5% |
| 住み続けたかったが更新を拒否された | 2.1%(実数2名) | 14.5% |
| 更新時に想定外の家賃増額を求められた | 1.1%(実数1名) | 13.2% |
出典:国土交通省「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査(入居者)」(調査概要/回答者310名のうちトラブル経験ありは30.3%=94名)
実数が1〜4名と少ないため経験率は参考値として見る必要がありますが、構図ははっきりしています。更新でもめる確率は低い一方、いざ起きたときに深刻だと受け止められるのは金額より「更新を拒否される」「想定外の増額を求められる」という契約の継続に関わる事柄です。同じ調査では、管理サービスへの不満として「契約更新時の説明が不足している」を10.1%が挙げています。金額に納得できないときは、何にいくらかかっているのかの説明をまず求めてください。それが、こじれる前に解ける最短の道です。
住居確保給付金は家賃が対象で、更新料は対象外
収入の減少で家賃の支払いが難しくなっている場合、厚生労働省の住居確保給付金という制度があります。主たる生計維持者が離職・廃業後2年以内である場合、または個人の責任・都合によらず給与等を得る機会が離職・廃業と同程度まで減少している場合が対象です。市区町村ごとに定める額(生活保護制度の住宅扶助額)を上限に実際の家賃額を原則3か月間、延長は2回まで最大9か月間支給し、給付金は自治体から賃貸人や不動産仲介業者へ直接支払われます。東京都特別区の支給上限額は月額で単身53,700円、2人世帯64,000円、3人世帯69,800円です。
ほかに、直近の月の世帯収入合計額が基準額と家賃の合計を超えていないこと、世帯の預貯金合計額が基準額の6か月分(100万円を超えない額)以下であること、ハローワーク等での求職活動を行うことといった要件があります。
ここで押さえていただきたいのは、支給の対象は家賃であり、更新料そのものは対象外だという点です。したがって「家賃は住居確保給付金の申請を検討し、更新料は貸主・管理会社との分割相談で対処する」というように、2つの道筋に分けて動くのが現実的です。申請と相談の窓口はお住まいの市区町村の自立相談支援機関になります。
出典:厚生労働省 生活支援特設ウェブサイト「住居確保給付金 制度概要」
支払わずに放置した場合に起きること
更新料を払わないまま連絡も取らずにいると、次のような展開になり得ます。第一に、契約書に更新料条項がある以上、未払いは債務不履行として扱われます。第二に、家賃債務保証を利用している場合、更新保証料の未払いによって保証契約が失効し、貸主から契約上の是正を求められることがあります。第三に、契約解除や明渡しを求める手続きに進む可能性があります。
一方で、法定更新の要件を満たしていれば、更新手続きをしていないという理由だけで退去を求められることはありません。前掲の相談対応事例集も、貸主から更新を拒否された場合について「法定更新の要件が満たされていれば、退去する必要はないと考えられます」としています。払えないことと、連絡しないことは別の問題です。期日前に一報を入れることで、選べる手立ては大きく変わります。
更新時に届く書類でチェックすべき5項目
更新のご案内が届いたら、署名する前に次の5点をご確認ください。これだけで、後から気づく種類のトラブルはほぼ防げます。
- 更新料と更新事務手数料が分けて書かれているか。支払先が貸主か業者かで性格が違います。合算表記なら内訳を求めてください。
- 更新料に消費税が上乗せされていないか。居住用の更新料は非課税です。家賃×月数ちょうどになっているかを検算します。
- 家賃・共益費・契約期間に変更がないか。従前の契約書と1項目ずつ突き合わせます。増額があれば、その根拠の説明を求められます。
- 特約が追加されていないか。ペット、楽器、駐車場、原状回復の負担区分などが新たに加わっていないかを確認します。合意更新は貸主・借主の合意が原則ですが、前掲の相談対応事例集は、条件変更の通知に対して借主が明確に拒絶しないまま更新した場合は提示された条件で更新されるとしています。応じられない項目は、署名前に伝えてください。
- 火災保険と家賃債務保証の更新時期・金額が明記されているか。この2つは金額の公的相場がありませんので、証券と保証委託契約書で実額を確認します。
更新書類は、次の2年間の生活費を決める契約です。契約全体の流れと必要書類は賃貸契約の流れと必要書類で確認できます。
よくある質問(FAQ)
- Q. 賃貸の更新料はいくらですか?
- A. 地域によって賃料の0か月分から1.4か月分までの差があります。国土交通省の平成19年調査では、平均月数は東京1.0か月、神奈川0.8か月、千葉1.0か月、京都1.4か月、埼玉・愛知・福岡0.5か月、大阪・兵庫は0か月(慣習なし)です。実額はご自身の賃貸借契約書の更新料条項に書かれた金額が正になります。
- Q. 更新料はいつ払うのですか?
- A. 契約期間の満了日までに支払うのが一般的で、更新のご案内は満了の数か月前に届きます。金額が大きいため、満了の3か月前には更新料・更新事務手数料・火災保険料・更新保証料の合計を計算し、手元資金として見込んでおくと安心です。
- Q. 更新料に消費税はかかりますか?
- A. お住まいの部屋であればかかりません。国税庁タックスアンサーNo.6225により、住宅の賃貸借契約の更新に伴う更新料のうち返還しないものは非課税です。事務所など事業用建物の更新料は課税対象になります。なお、業者に払う更新事務手数料は役務の対価ですから消費税がかかります。
- Q. 更新事務手数料は更新料とは別に払うのですか?
- A. 別の費用です。更新料は貸主に払う一時金、更新事務手数料は仲介・管理会社に払う事務の対価で、国土交通省の調査票も両者を明確に区別しています。令和7年度住宅市場動向調査では更新手数料が発生した世帯は44.4%、その月数は1か月ちょうどが69.7%でした。
- Q. 法定更新になっても更新料は必要ですか?
- A. 契約書の文言次第です。更新料条項が「合意更新の場合」に限定して書かれていれば法定更新には及ばないと読めますが、「更新の場合」と包括的に書かれていれば争点になり得ます。まず契約書の更新料条項の書きぶりをご確認ください。なお法定更新後は期間の定めのない契約となり、次の更新期日という概念自体がなくなります。
- Q. 更新料の支払いを拒否できますか?
- A. 原則として難しいです。最高裁平成23年7月15日判決は、賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、更新料の額が賃料の額や更新期間等に照らして高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り有効としています。ただし、契約書に更新料の定めがなければ支払義務は生じません。
- Q. 更新のタイミングで家賃交渉はできますか?
- A. できます。借地借家法32条が借賃の減額請求を認めており、近傍同種の建物の賃料と比べて不相当となったときが根拠になります。ただし消費者物価指数の民営家賃は2026年6月時点で前年同月比プラス0.6%と動きが小さいため、大幅減額より据え置きの申し出の方が通りやすい状況です。
引用・参考資料
- 国土交通省「民間賃貸住宅に係る実態調査(不動産業者)」(平成19年6月・有効回答175社)
- 国土交通省「民間賃貸住宅実態調査の結果について」報道発表(平成19年6月29日)
- 国土交通省「令和7年度 住宅市場動向調査報告書」(令和8年7月)
- 国土交通省「住宅市場動向調査」統計情報ページ
- 国土交通省「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集(再改訂版)」(令和4年3月・賃貸借トラブルに係る相談対応研究会)
- 国土交通省「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集」掲載ページ
- 国土交通省「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査(入居者)」(2019年・入居者310名)
- 国土交通省「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査」調査概要
- 総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)6月分」
- 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」
- e-Stat「令和5年住宅・土地統計調査 借家の家賃(都道府県・21大都市別)」
- 国税庁 タックスアンサー No.6225「地代、家賃や権利金、敷金など」
- 国税庁 タックスアンサー No.6201「非課税となる取引」
- e-Gov法令検索「借地借家法」(26条・28条・29条・32条・38条)
- 厚生労働省 生活支援特設ウェブサイト「住居確保給付金 制度概要」
