不動産を所有するオーナーにとって、相続対策は避けて通れない課題です。遺言書がなければ、大切な財産が本来相続させたい人に渡らない可能性もあります。本記事では、不動産相続における遺言書の必要性、種類、書き方のルール、注意点を解説します。
なぜ不動産相続に遺言書が必要なのか?
遺言書が必要な最大の理由は、相続人間の揉めごとを回避するためです。遺言書がない場合、法定相続人が集まって遺産分割協議を行いますが、遺産分割事件は年々増加傾向にあります。
特に遺言書が必要な人
- 不動産所有者:不動産は現金と異なり分割が難しく、揉めごとの原因になりやすい
- 遺産配分を自分で決めたい人:遺言書の指定は法定相続分より優先される
- 法定相続人がいない人:遺言書がなければ財産は国のものになる
- 相続させたくない人がいる人:廃除や相続分ゼロの指定が可能
遺言書にはどのような種類があるのか?
遺言書には3種類あり、それぞれ異なるルールがあります。
自筆証書遺言
遺言者が全文を自書し、日付・氏名を記載して押印する遺言書です。
- メリット:費用がかからない、いつでも作成可能
- デメリット:形式不備で無効になるリスク、紛失・改ざんの可能性
2020年7月から法務局での保管制度が開始され、紛失リスクの軽減が可能になりました。
公正証書遺言
公証人が遺言者の意思に基づいて作成する遺言書です。
- メリット:形式不備のリスクがない、原本が公証役場に保管される
- デメリット:公証人手数料がかかる、証人2人以上が必要
不動産相続では、確実性の高い公正証書遺言が推奨されます。
秘密証書遺言
遺言の内容を秘密にしたまま、その存在を公証人に証明してもらう方法です。実務上はほとんど利用されていません。
不動産相続の遺言書はどのように書くのか?
不動産を遺言書に記載する際は、正確な情報を盛り込むことが重要です。
不動産の記載方法
遺言書には登記簿謄本の記載どおりに、以下の情報を正確に記載します。
- 土地:所在、地番、地目、地積
- 建物:所在、家屋番号、種類、構造、床面積
- マンション:一棟の建物の表示に加え、専有部分の表示
住所と登記上の所在地は異なることがあるため、必ず登記簿謄本を確認しましょう。
遺言書の基本的な書き方
- 「遺言書」と表題を記載
- 相続人と相続させる財産を明確に記載
- 遺言執行者を指定(手続きをスムーズに進めるため)
- 日付を正確に記載(「吉日」等は無効)
- 署名・押印(実印が推奨)
不動産相続の遺言書で注意すべきポイントとは?
不動産特有の注意点を押さえておきましょう。
遺留分への配慮
遺言書で特定の相続人に全財産を相続させても、他の法定相続人には遺留分(法定相続分の1/2)を請求する権利があります。遺留分を侵害する遺言は、紛争の原因になりかねません。
共有名義の回避
不動産を複数の相続人で共有すると、売却や活用に全員の同意が必要となり管理が困難になります。できるだけ単独で相続させるか、代償分割を検討しましょう。
相続税の考慮
不動産の相続税評価額を事前に把握し、資産戦略を含めた総合的な相続対策を行いましょう。
定期的な見直し
不動産の売却・取得があった場合や、家族構成が変わった場合は遺言書の見直しが必要です。
遺言書作成の流れ
- 財産の棚卸し:所有する不動産・金融資産をリスト化
- 相続人の確認:法定相続人を戸籍謄本で確認
- 分配方針の決定:誰に何を相続させるか決定
- 遺言書の作成:自筆証書または公正証書で作成
- 保管:法務局保管制度または公証役場で保管
よくある質問(FAQ)
Q. 遺言書は何歳から作成すべきですか?
不動産を所有した時点で作成を検討すべきです。年齢に関係なく、予期せぬ事態に備えることが重要です。
Q. 遺言書は何度でも書き直せますか?
はい。日付の新しい遺言書が優先されるため、状況の変化に応じて何度でも更新可能です。
Q. 公正証書遺言の作成費用はどのくらいですか?
財産の価額に応じた公証人手数料が必要です。不動産の評価額が5,000万円の場合、手数料は約2万9,000円程度です。
Q. 遺言書がなくても不動産相続はできますか?
可能ですが、法定相続人全員による遺産分割協議が必要となり、合意に至らない場合は家庭裁判所での調停・審判に発展するリスクがあります。