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COLUMN

団塊世代の後期高齢者化と空き家急増|2026年問題をオーナーが知るべき理由

2026年、団塊世代全員の後期高齢者化が完了し、空き家急増が新たな局面へ。900万戸超の現状から2043年の予測まで、地主・不動産オーナーが今とるべき行動を解説します。

最終更新: 約14分で読めます

2025年、団塊世代(1947〜1949年生まれ)全員が75歳以上の後期高齢者となりました。この人口動態の転換点が、日本の住宅市場にどれほど深刻な影響をもたらすか、不動産オーナーの皆さまは正確に把握されているでしょうか。空き家問題は今まさに「構造的な新フェーズ」に突入しており、法制度の強化も加わって、行動しない選択肢はもはや許されない状況になっています。

2026年、空き家問題が新しいフェーズに入る理由とは?

総務省「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年時点で日本全国の空き家数は900万2千戸に達し、空き家率は13.8%となりました。これは住宅約7戸に1戸が空き家という計算です。2018年調査比で51万3千戸増加しており、この数値だけを見ても深刻さは伝わるかもしれません。しかし、問題の本質はこれが「これから本格化する」という点にあります。

2025年を起点として、75歳以上になった団塊世代が施設入居や死亡によって持ち家を手放すペースが、これまでとは比較にならないほど加速します。その住宅の多くが相続されても活用されず、全国の空き家ストックへと吸収されていく——このメカニズムが、2026年以降を真の「空き家急増時代」にするのです。

地主や不動産オーナーの皆さまが保有する物件に隣接する空き家が増えれば、地域の資産価値にも直接影響します。また、ご自身が相続する側・される側として、この問題と無縁ではいられません。だからこそ、今この時点で正確な現状認識と具体的な対応策を持つことが求められています。

データが示す空き家急増の現実とは?

令和5年調査が示す「900万戸」の衝撃

総務省が2024年に公表した「令和5年住宅・土地統計調査」の結果は、改めて数字の重みを確認させてくれます。空き家900万2千戸の内訳を見ると、賃貸・売却用など流通を前提とした空き家が460万戸前後であるのに対し、いわゆる「その他の空き家」(腐朽・放置型で利活用の見込みが薄いもの)が385万戸を超えています。この「その他の空き家」こそが、近隣の治安・景観・資産価値を脅かすタイプです。

東京都だけを見ても空き家は深刻な課題です。しかし都市部は需要がある分、まだ対処の選択肢が多い。問題が最も深刻なのは、地方・郊外において空き家率が既に20%を超えるエリアが続出し始めている点です。

2040年代に向けた推計:空き家率25%という未来

民間シンクタンクの推計はさらに厳しい将来像を示しています。野村総合研究所(2024年6月公表)は、2043年には日本全体の空き家率が約25%に達すると予測しています。4戸に1戸が空き家という社会です。

日本総合研究所(2025年3月公表)の試算では、「その他空き家」(腐朽・放置型)が2043年に約600万戸に達し、現在の1.5倍を超える水準になるとしています。これらの予測の根拠となっているのが、死亡者数の増加です。2024〜2040年代にかけて、団塊世代の大量相続が発生し、親世代の持ち家が子世代へ移転しますが、子世代の多くはすでに自分の住まいを持っています。地方・郊外の実家は「引き取り手のない住宅」として市場に滞留していくのです。

なぜ「2026年以降」が分水嶺なのか——団塊世代の後期高齢者化と住宅

団塊世代が動かす住宅市場

団塊世代の総人口は約800万人といわれており、この世代の特徴は自宅所有率の高さにあります。高度経済成長期からバブル期にかけて住宅を取得した世代であり、戸建て・マンションを問わず持ち家比率が高い層です。

75歳以上になると、身体的な理由や家族の意向から施設入居を検討するケースが急増します。また、この年齢層は年間の死亡者数も増加段階に入ります。内閣府「令和7年版高齢社会白書」によれば、2025年時点の65歳以上人口は約3,619万人、高齢化率は29.4%と過去最高を更新しています。団塊世代全員の後期高齢者移行が完了した2025年以降、住宅市場への影響は毎年累積的に拡大していきます。

相続と「空き家連鎖」の仕組み

問題の核心は、相続が発生しても空き家が解消されないメカニズムにあります。子世代はすでに都市部に自宅を持っているため、地方・郊外の親の家を受け継いでも活用できません。売りたくても価格がつかない、貸したくても需要がない、解体するにも費用がかかる——この「出口のない三重苦」によって、相続空き家が全国に積み上がっていくのです。

2024年4月に施行された相続登記の義務化は、この問題に直接関係しています。法務省「相続登記の申請義務化について」が示す通り、相続発生から3年以内に登記申請をしなければ10万円以下の過料の対象となります。登記を怠ると「所有者不明土地」化するリスクも生じ、いずれ行政代執行や特定空家の指定につながる可能性もあります。相続する側も「知らなかった」では済まない時代になっています。

法制度の強化:空き家を放置するとどうなるのか?

2023年改正空家等対策特措法のポイント

国土交通省は2023年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」を改正し(令和5年法律第50号)、「管理不全空家」という新たなカテゴリを設けました。従来の「特定空家」(危険・倒壊リスクあり)よりも手前の段階、つまり「このまま放置すれば将来的に問題になる」と行政が判断した空き家を「管理不全空家」として指定できるようになったのです。

この指定を受けると、固定資産税の住宅用地特例(土地の固定資産税を最大6分の1に軽減する措置)が解除されます。実質的に固定資産税が最大6倍相当に跳ね上がる可能性があるということです。今まで「放置していてもコストはかからない」と思っていたオーナーには、大きな誤算となります。

相続登記義務化が空き家オーナーに与える影響

相続登記義務化の施行により、「親から受け継いだが住む予定もなく、売るつもりもない」という受動的な空き家保有は、法的リスクを伴うものになりました。登記をしなければ過料の対象になるだけでなく、登記上の所有者が不明なまま物件が放置されると、市区町村が特定空家・管理不全空家の勧告を出そうとしても相手が特定できず、問題が長期化します。最終的に行政代執行となれば、その費用が相続人に請求されるケースも生じています。

空き家の活用・投資という観点では別の可能性も開けています。しかし活用を検討するためにも、まず登記を正しく整理することが大前提です。

地域格差の現実:都市部と地方・郊外で異なるシナリオとは?

空き家問題は「全国一律」ではありません。地域によってシナリオが大きく異なることを、オーナーは認識しておく必要があります。

都市部(東京・大阪・名古屋など主要都市の中心部)では、人口流入が続いており住宅需要が維持されています。空き家が発生しても賃貸・売却のいずれかの手段で流動化できる可能性が高く、適切な管理・リフォームを施せば資産価値を維持しやすい環境です。

一方、地方・郊外エリアは全く異なる状況です。人口減少と高齢化の二重圧力を受け、賃貸需要は低く、売却価格も下落傾向にあります。相続した実家を売ろうとしても買い手がつかない、更地にしても土地の需要がないという状況が現実化しています。こうしたエリアの空き家は、管理コストだけが発生し続ける「負の資産」になるリスクを抱えています。

オーナーが保有するエリアの特性を正確に把握し、それに応じた戦略を早期に立案することが、資産を守る上での第一歩です。

オーナーが今とるべきアクション

アクション①:保有物件の現状確認

まず手をつけるべきは、現在保有・相続予定の物件が「管理不全空家」に該当するリスクがないかの確認です。定期的な巡回・清掃・修繕が行われているか、雑草の繁茂・外壁の破損・ポストへのチラシ堆積などの外見上の劣化が進んでいないかをチェックしてください。行政から勧告が届いてからでは遅く、固定資産税の特例解除が遡及適用されるケースもあります。

アクション②:相続計画の前倒し

団塊世代のご両親が存命の方は、今のうちに相続計画を整理しておくことをお勧めします。相続登記の義務化に対応するためにも、誰がどの不動産を引き継ぐかを生前に明確にしておくことが重要です。遺言書の作成、家族信託の活用、生前贈与の検討など、選択肢は複数あります。専門家(司法書士・税理士・弁護士)との連携を早期に始めることが、後のコスト・トラブルを大きく削減します。

アクション③:活用か売却かの早期判断

「とりあえず持っておく」という先送り戦略は、空き家問題の文脈では最もリスクが高い選択です。管理コストが積み上がり、建物は老朽化し、税負担が増す可能性があります。むしろ、活用(賃貸・リノベーション)か売却かを早期に判断し、動き出すことが長期的な資産保全につながります。市況が良い今のうちに売却を決断することも、有力な選択肢の一つです。

アクション④:専門家・管理会社との連携

遠方の実家や複数の物件を抱えるオーナーにとって、信頼できる管理会社との連携は空き家リスクを抑える現実的な方法です。管理会社は定期巡回や建物維持管理を担うだけでなく、賃貸活用・売却の提案も行います。一人で抱え込まず、専門家・管理会社のネットワークを早期に構築することをお勧めします。

私の考え:「2026年」を転換点として前向きに捉える

空き家急増という課題を前に、私が感じるのは「危機」と同時に「再編の機会」です。日本の住宅ストックが抱える非効率性——需要のない地域の過剰供給と、需要のある地域での良質な住宅不足——が同時進行しており、この構造的な歪みを修正する必要性は誰もが認識しています。

だからこそ、今行動するオーナーには先行者優位が生まれます。管理不全になる前に売却・活用を判断したオーナーは、適正な価格で動けます。逆に後手に回ると、市場に物件が溢れ出てから動くことになり、選択肢が狭まります。

INAとして私たちが提供できるのは、単なる管理業務にとどまらない「オーナーの資産を長期視野で守る伴走支援」です。相続計画から賃貸活用、売却の判断まで、オーナーの状況に応じた具体的なアドバイスを提供できる体制を整えています。「2026年問題」は、実は長期的な資産形成を見直す絶好のタイミングでもあります。ぜひ、今がその一歩を踏み出す時だと捉えていただきたいと思います。

まとめ

  • 2025年に団塊世代全員が後期高齢者(75歳以上)に移行完了し、2026年以降は相続空き家が加速度的に増加する局面に入った
  • 2023年時点で空き家は900万2千戸・空き家率13.8%(総務省「令和5年住宅・土地統計調査」)。野村総研は2043年に空き家率約25%と予測
  • 2023年改正空家等対策特措法で「管理不全空家」指定制度が新設され、固定資産税の住宅用地特例が解除されるリスクが現実化した
  • 2024年4月施行の相続登記義務化により、相続から3年以内の登記申請が義務となり、放置は過料・所有者不明土地化のリスクをはらむ
  • 都市部と地方・郊外では空き家問題の深刻度と対応策が大きく異なる。保有エリアの特性に応じた戦略が必要
  • 「塩漬け」が最大のリスク。活用・売却・相続計画の早期判断と専門家連携が、資産を守る最善の手段

よくある質問(FAQ)

Q1. 「管理不全空家」に指定されると、具体的にどれくらい税負担が増えますか?

住宅用地には固定資産税の課税標準を小規模住宅用地で6分の1、一般住宅用地で3分の1に軽減する特例が適用されています。「管理不全空家」に指定されて勧告を受けると、この特例が解除されます。たとえば、特例適用で年間10万円だった固定資産税が、最大で60万円相当になるケースも想定されます。実際の金額は土地の面積・評価額によって異なりますので、市区町村の窓口や税理士に確認することをお勧めします。

Q2. 相続登記の義務化は、すでに相続が発生している物件にも適用されますか?

適用されます。2024年4月の施行以前に相続が発生していた物件についても、2027年3月31日までに相続登記をする必要があります(経過措置期間)。過去に登記をしないまま放置してきた物件も対象となりますので、早急に確認・手続きを進めることをお勧めします。詳細は法務省のウェブサイトまたは司法書士へご相談ください。

Q3. 地方の実家を相続する予定ですが、売れない場合はどうすればよいですか?

「売却が難しい」場合でも、いくつかの選択肢があります。①自治体の空き家バンクへの登録(移住希望者への売却・賃貸)、②リノベーションによる賃貸化(過疎地向け補助金の活用も検討)、③相続放棄(ただし他の財産も放棄になるため慎重な判断が必要)、④市区町村への寄付または空き家管理組合への委託——などです。いずれも一長一短があり、物件の状態・立地・相続人の状況によって最適解が異なります。まずは専門家への相談から始めることをお勧めします。

Q4. 自分が保有するアパートの近くに空き家が増えてきています。どんな影響がありますか?

周辺の空き家増加は、エリア全体の資産価値・賃料水準に下押し圧力をかける要因になります。特に外観が荒廃した空き家は、入居者にとっての「住みたいエリア感」を損ないます。一方で、空き家が多いエリアは地域活性化の補助金対象になりやすく、自治体・行政との連携による再生プロジェクトが動き始めるケースもあります。状況を待って見るよりも、管理会社や行政と連携して情報収集を続けることが重要です。

引用・参考資料

Daisuke Inazawa, President & CEO of INA&Associates Inc.

著者

代表取締役社長 / CEOINA&Associates株式会社

INA&Associates株式会社 代表取締役社長。首都圏・近畿圏を中心に不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントを統括。収益不動産投資戦略と超富裕層向け不動産コンサルティングを専門領域とする。

稲澤 大輔(いなざわ・だいすけ)は、INA&Associates株式会社の代表取締役社長(CEO)。大阪本店・東京営業所を拠点に、首都圏・近畿圏における不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントの三事業を統括する。

専門領域は、収益不動産の投資戦略立案、賃貸経営の収支最適化、超富裕層(UHNWI)・機関投資家向け不動産コンサルティング、およびクロスボーダー不動産投資。国内外の投資家に対し、データと長期視点に基づくアドバイザリーを提供している。

「企業の最も重要な資産は人財である」を経営理念に掲げ、人財投資カンパニーとして持続可能な企業価値の創造に取り組む。経営者として、変化の時代におけるリーダーシップのあり方と組織文化についても積極的に発信を続けている。

合格・取得資格は11種:宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、管理業務主任者、賃貸不動産経営管理士、行政書士、個人情報保護士、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者。

  • 宅地建物取引士
  • 公認不動産コンサルティングマスター
  • マンション管理士
  • 管理業務主任者
  • 賃貸不動産経営管理士
  • 行政書士
  • 個人情報保護士
  • 甲種防火管理者
  • 競売不動産取扱主任者
  • マンション維持修繕技術者
  • 貸金業務取扱主任者