外国人と賃貸借契約を結ぶときに必要な書類は、国土交通省のチェックシートで14項目・3区分に整理されています。日本人との契約と本当に違うのは、在留カード、資格外活動許可書、勤労資格証明書、銀行の送金証明書という4つの書類と、そこから読み取る「在留期限」だけです。
この記事は、外国人からの入居申込を受けたオーナー様と管理会社の担当者に向けて、何を集め、どこを見て、契約期間を何年で切るかという3つの判断に答えます。2026年6月14日から在留カードの様式が変わり、券面から「在留期間」の表記が消えました。この変更に触れずに本人確認の手順を組むと、いま現場で提示されるカードに対応できません。数字と手順は、すべて国土交通省・出入国在留管理庁の一次資料から引いています。
この記事のポイント
- 必要書類は国土交通省の公式チェックシートで14項目・3区分(本人/仕事・学校/収入・給与)に整理されており、14か国語版がそのまま使えます。
- 在留カードは券面を見るだけでは足りず、失効情報照会と読取アプリケーションの2段構えで確認します。2026年6月14日以降の新様式では「在留期間」が券面に載りません。
- 契約期間は在留資格ごとの在留期間から逆算します。永住者は無期限、留学は4年3月以内、特定技能1号は3年を超えない範囲と、幅が大きく異なります。
- 家賃債務保証は登録123者・言語対応52者・認定12者の3層構造で、外国人受入れで実際に当たれるのは言語対応52者です。
- 家賃8万円のワンルームなら初期費用は約37万〜40万円、オーナーが受けられる保証限度額は最大384万円(月額賃料の48ヶ月分)になります。
- 国籍のみを理由とした入居拒否は不当な差別に当たるおそれがあり、過去に慰謝料の支払いが命じられた事例があります。
外国人の賃貸契約に必要な書類は14項目|国土交通省チェックシート準拠
必要書類の答えは、国土交通省が「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」の資料編として公開している入居審査必要書類チェックシートにあります。この様式は、確認したい目的に応じて書類を3つの区分に分け、全部で14項目を並べたものです。日本語と英語が同じ紙面に並んでおり、ふりがな付きで書かれています。オーナー様や担当者が独自にリストを作る必要はなく、この1枚に該当項目をチェックして渡せば、それがそのまま案内書になります。
大切なのは、14項目すべてを毎回集めるわけではないという点です。該当する項目にチェックを入れて渡す設計になっており、会社員なら在学証明書は不要、留学生なら源泉徴収票は出てきません。
【一覧表】必要書類チェックリスト14項目
| 区分 | No./書類名 | 何を確認するための書類か | 日本人契約との差分 |
|---|---|---|---|
| 本人を確認します | ① パスポート | 氏名・生年月日・国籍と、日本への入国記録 | 日本人の運転免許証・健康保険証に相当します |
| ② 在留カード | 在留資格、在留期間の満了日、就労制限の有無、資格外活動許可の有無 | 外国人契約に固有。契約期間を決める根拠になります | |
| あなたの仕事/学校を確認します | ③ 勤務証明書 | 勤務先と在籍の事実 | 日本人でも求めることがあります |
| ④ 在学証明書 | 通学先と在籍の事実 | 日本人の学生と同様です | |
| ⑤ 勤労資格証明書 | いまの在留資格でその仕事に就けること | 外国人契約に固有。転職直後の申込で効きます | |
| ⑥ 資格外活動許可書 | 留学・家族滞在の方がアルバイト収入を得てよいこと | 外国人契約に固有。留学生の収入評価に必要です | |
| 収入・給料を確認します | ⑦ 源泉徴収票 | 前年の年収 | 日本人と同じです |
| ⑧ 給与明細書 | 直近の月収 | 日本人と同じです | |
| ⑨ 納税証明書 | 所得と納税の実績 | 日本人と同じです | |
| ⑩ 前年度の確定申告の写し | 個人事業主・経営者の所得 | 日本人と同じです | |
| ⑪ 給与支払(予定)の証明書 ※これから仕事を始める人 | 入社前でも見込まれる収入 | 来日直後の申込で使います | |
| ⑫ 銀行の送金証明書 | 母国の家族などからの仕送り | 外国人契約に固有。留学生の支払原資になります | |
| ⑬ 奨学金支給証明書 | 奨学金という定期収入 | 留学生の支払原資になります | |
| ⑭ 預貯金の証明(通帳のコピー) | 手元資金の残高 | 収入が細い場合の補強材料です |
出典:国土交通省「入居審査必要書類チェックシート」(外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン 資料編)。同シートは日本語・英語・中国語・韓国語・スペイン語・ポルトガル語・ベトナム語・ネパール語・タイ語・インドネシア語・ミャンマー語・カンボジア語・タガログ語・モンゴル語の14か国語で提供されています。
日本人の契約と決定的に違う4つの書類
14項目のうち、日本人の入居審査には登場しないのは②在留カード、⑤勤労資格証明書、⑥資格外活動許可書、⑫銀行の送金証明書の4つです。残りの10項目は、日本人の審査でも見ている書類と役割が変わりません。「外国人だから書類が倍かかる」というのは、実務の感覚としては正確ではありません。増えるのは4点です。
この4点は、それぞれ違う問いに答えています。在留カードは「いつまで日本にいられるか」、勤労資格証明書は「その在留資格でその仕事をしてよいか」、資格外活動許可書は「アルバイト収入を収入として数えてよいか」、銀行の送金証明書は「日本国内の給与以外に支払原資があるか」という問いです。審査を厳しくするための書類ではなく、日本人の審査では自動的に埋まっている情報の穴を埋める書類だと捉えると、確認作業の意味がはっきりします。
特に見落としが多いのが⑥資格外活動許可書です。留学や家族滞在の在留資格には就労制限があり、資格外活動許可を受けて初めてアルバイト収入が生まれます。許可の有無は在留カードの券面にも記載されますので、申込書のアルバイト収入と券面の記載が食い違っていないかを突き合わせます。
書類が揃わないケースの代替手段
実務でよくつまずくのは、次の3つの場面です。いずれも、代わりに何を見るかが決まっています。
- 来日直後で源泉徴収票がない:⑦の代わりに⑪給与支払(予定)の証明書を出してもらいます。チェックシートにも「これから仕事を始める人」という注記が付いており、入社前提の申込を想定した項目です。あわせて⑭預貯金の証明で当面の支払能力を見ます。
- 勤務開始前で給与明細がない:⑪に加えて③勤務証明書または雇用契約書で、勤務先と契約の事実を押さえます。在留資格が「技術・人文知識・国際業務」で、勤務内容がその資格に合っているかが気になる場合は、⑤勤労資格証明書を追加します。
- 留学生で定期収入が奨学金だけ:⑬奨学金支給証明書と⑫銀行の送金証明書を組み合わせます。仕送りと奨学金の合計で家賃を賄えるかを見る形になり、この場合は家賃債務保証の利用が判断を大きく助けます。
書類が1つ足りないことを理由に申込を止めると、代替手段が使えたはずの申込者まで逃すことになります。目的(本人・就労・収入)ごとに代替が利く構造を押さえておくと、審査の柔軟性が上がります。入居審査の基本的な考え方は賃貸物件の入居審査の基準と落ちる原因の整理でも解説しています。
在留カードの確認手順|2026年6月から券面の記載事項が変わりました
在留カードは、券面を目で見るだけでは確認として不十分です。出入国在留管理庁は、有効な在留カード番号を使った偽変造カードの作成事案が発生していることを明示しており、券面の見た目だけでは判別できない偽造が現に存在します。そのうえ2026年6月14日から券面の記載事項が変わりましたので、確認手順そのものを更新する必要があります。
券面を見るだけでは足りない理由と、2段構えの確認
出入国在留管理庁は、偽変造対策として2つの無料ツールを公開しています。役割が違いますので、両方を通すのが基本の形です。
- 在留カード等読取アプリケーション:カードのICチップに記録された氏名・生年月日・顔写真などを読み取り、券面の印字と突き合わせます。これで券面が改ざんされていないかが分かります。Windows・macOS・Android・iOSで配布されており、パソコンで使う場合は非接触型ICカードリーダライタが要ります。
- 在留カード等番号失効情報照会:カード番号と有効期間を照会し、そのカードが失効していないかを調べます。これでカードがいまも生きているかが分かります。2025年11月14日以降は、読取アプリケーションから失効情報照会を利用できるようになりました。
この2つは代替関係ではありません。読取アプリケーションだけでは「本物だが失効済み」のカードを見抜けませんし、失効情報照会だけでは「有効な番号を流用した偽造カード」を見抜けません。出入国在留管理庁自身も、アプリを利用する場合は併せて失効情報照会を利用するよう案内しています。両方の導線は出入国在留管理庁「在留カード等読取アプリケーション/失効情報照会 サポートページ」にまとまっています。なお読取アプリケーションを使う際は、他の身分証明書と同じように本人の同意を得たうえでカードの提示を受けることが前提です。
2026年6月14日に運用開始した新様式・特定在留カードへの対応
2026年6月14日から、マイナンバーカードの機能を付けた「特定在留カード」の運用が始まり、同時に特定在留カードでない在留カードも新様式に切り替わりました。オーナー様と管理会社にとって影響が大きいのは、券面の記載事項が減ったことです。
| 項目 | 2026年6月13日までに交付されたカード | 2026年6月14日以降に交付されたカード |
|---|---|---|
| 在留資格 | 券面に記載 | 券面に記載(変更なし) |
| 在留期間の満了の日 | 券面に記載 | 券面に記載(変更なし) |
| 就労制限の有無 | 券面に記載 | 券面に記載(変更なし) |
| 資格外活動許可の有無 | 券面に記載 | 券面に記載(変更なし) |
| 在留期間(3年・5年などの長さ) | 券面に記載 | 券面から削除。ICチップにのみ記録 |
| 許可の種類・許可年月日・交付年月日 | 券面に記載 | 券面から削除。ICチップにのみ記録 |
| 16歳未満の顔写真 | 非表示 | 1歳以上16歳未満も表示 |
| 永住者・高度専門職2号のカード有効期間 | 交付の日後7年 | 交付の日後10回目の誕生日まで(18歳未満は5回目) |
出典:出入国在留管理庁「特定在留カード交付申請について」および「在留カードとマイナンバーカードの一体化Q&A」
実務上の結論はシンプルです。契約期間を決めるために見る「在留期間の満了の日」は、新様式でも券面に残っています。ですから、契約設計に必要な情報は従来どおり券面から読めます。消えたのは「在留期間が3年か5年か」という長さの表記であり、これは更新の頻度を推し量る補助情報にあたります。
ただし、券面から消えたこの「在留期間」「許可の種類」「許可年月日」は、現時点では読取アプリケーションでも表示されません。出入国在留管理庁は、これらの項目を表示できる改修版を2026年9月を目途にリリースする予定と案内しています。それまでは、長さの確認に手間をかけるより、満了日を起点に契約期間を組む運用に切り替えるほうが現実的です。
もう1点、提示されるカードが3種類に増えたことも押さえておきたい変化です。旧様式の在留カード、新様式の在留カード、特定在留カードのいずれも有効で、旧様式は有効期限まで使えますので切替を求める必要はありません。特定在留カードの取得は任意で、在留カードとマイナンバーカードを2枚持ち続けることもできます。窓口では「どれが正しいカードか」ではなく「提示されたカードが有効か」を見る姿勢が求められます。
【比較表】在留資格別の在留期間と契約期間の決め方
契約期間は、在留カードの満了日と在留資格の性質の2つから決めます。永住者のように在留期間が無期限の方と、留学のように4年3月を超えない範囲で個別指定される方とでは、同じ2年契約でも意味がまったく違うからです。以下は入管法別表に基づく在留期間と、そこから導かれる契約設計の考え方です。
| 在留資格 | 在留期間(入管法上の区分) | 契約期間の考え方 | 更新時に再確認する書類 |
|---|---|---|---|
| 永住者 | 無期限 | 期間の制約を考える必要はなく、日本人と同じ設計で問題ありません | 在留カード(カード自体には有効期間があります) |
| 日本人の配偶者等 | 5年、3年、1年または6月 | 通常の2年契約で無理がありません | 在留カード |
| 定住者 | 5年、3年、1年、6月または個別指定(5年以内) | 通常の2年契約で無理がありません | 在留カード |
| 技術・人文知識・国際業務 | 5年、3年、1年または3月 | 2年契約が基本。満了日が1年以内なら更新前提の説明を先に行います | 在留カード、勤務証明書または勤労資格証明書 |
| 経営・管理 | 5年、3年、1年、6月、4月または3月 | 2年契約が基本。事業の継続性もあわせて見ます | 在留カード、確定申告の写し |
| 特定技能2号 | 3年、2年、1年または6月 | 2年契約が基本。家族帯同があるため入居人数の取り決めを明確にします | 在留カード、勤務証明書 |
| 特定技能1号 | 個別指定(3年を超えない範囲)。通算在留期間に上限があります | 満了日を起点に組み、更新の見込みを勤務先に確認してから決めます | 在留カード、勤務証明書 |
| 家族滞在 | 個別指定(5年を超えない範囲) | 扶養者の在留期限に連動しますので、扶養者側の満了日も確認します | 在留カード(本人・扶養者双方)、資格外活動許可書 |
| 留学 | 個別指定(4年3月を超えない範囲) | 在学期間と満了日の短いほうに合わせます。卒業時期の退去を想定します | 在留カード、在学証明書、資格外活動許可書 |
出典:出入国在留管理庁「在留資格一覧表」、特定技能1号の通算在留期間については同庁「通算在留期間」
2025年末時点で最も多い在留資格は永住者の94万7,125人で、在留期間無期限の層です。次いで技術・人文知識・国際業務が47万5,790人、留学が46万4,784人と続きます。つまり申込者のかなりの部分は、契約期間の制約をほとんど考えなくてよい層です。全員を一律に「在留期限が短いリスク層」として扱うのは、実態から離れています。
在留期限が契約期間より短いときの実務
満了日が契約期間の途中に来る場合、選択肢は2つあります。
普通借家契約のまま、更新時に在留カードを再提示してもらう方法が第一です。在留期間の更新は入居者側の手続きであり、更新が認められれば新しい在留カードが交付されます。契約書または覚書に「更新時に在留カードの写しを提出する」旨を入れておけば、確認のタイミングを制度化できます。満了日がまだ先の段階で解約を求める必要はありません。
もう1つは定期借家契約で満了日に合わせる方法ですが、慎重にご検討ください。定期借家は期間満了で確定的に終了しますので、在留期間が更新されて住み続けたい方にも、再契約に応じない限り退去してもらうことになります。期限を切ること自体が目的化すると、優良な入居者を短期で手放しかねません。私たちは、更新確認の運用を整えたうえで普通借家を選ぶほうが、長期的な稼働率には効くと考えています。
家賃債務保証をどう選ぶか|登録123者・言語対応52者・認定12者の3層
「日本在住の連帯保証人がいない」という論点は、家賃債務保証で実務的に解決できます。ただし「保証会社を使う」と言ったとき、その保証会社がどの層に属するかで意味が変わります。国土交通省が公表している事業者一覧は3層に分かれています。
【比較表】家賃債務保証の3層
| 区分 | 事業者数 | 国の関与 | 外国人受入れ上の意味 |
|---|---|---|---|
| 登録家賃債務保証業者 | 123者(2026年3月31日時点) | 国土交通省の告示に基づく登録制度に登録した事業者 | 母集団。財産的基礎や業務内容の要件を満たした事業者です |
| 外国人の言語対応サポートを行っている登録家賃債務保証業者 | 52者(2025年12月31日時点) | 登録業者のうち、言語対応サポートの実施を国土交通省が一覧で公表 | 実際に当たるべき先。登録業者のおよそ4割にあたります |
| 認定家賃債務保証業者 | 12者(2026年7月31日時点) | 住宅確保要配慮者が利用しやすい事業者として国土交通大臣が認定 | 要配慮者の受入れに前向きな事業者。数は少数です |
出典:国土交通省「登録家賃債務保証業者一覧」、「外国人の言語対応サポートを行っている登録家賃債務保証業者一覧」、「認定家賃債務保証業者一覧」
実務で意識したいのは、真ん中の52者です。契約時や入居中の多言語サポートを行う事業者がこれだけ公表されている事実は、「外国人だと保証会社が付かない」という思い込みを崩します。一覧から社名と本社所在地を見て、管理エリアで使える先を数社選んでおくのが現実的な準備です。保証会社の仕組みそのものは家賃保証会社とは何かを整理した記事で解説しています。
2025年10月施行の認定家賃債務保証業者制度で何が変わったか
認定家賃債務保証業者制度は、住宅確保要配慮者が利用しやすい家賃債務保証業者を国土交通大臣が認定する仕組みで、住宅セーフティネット法の改正(令和6年法律第43号)により創設され、2025年10月1日に施行されました。外国人は住宅確保要配慮者に含まれます。
この改正では、居住サポート住宅の認定制度の創設、終身建物賃貸借の利用促進、残置物処理の推進も柱に盛り込まれました。オーナー様の視点で言えば、「貸したあとに何かあったとき、誰が受け止めるのか」という不安に制度側から手当てが入ったということです。残置物の撤去・保管・処分の費用を保証範囲に含む商品も出ており、入居者が突然帰国した場合の実務負担は以前より軽くなっています。
【計算例】家賃8万円のワンルームで初期費用と保証料はいくらになるか
「費用を丁寧に説明する」と言われても、いくらになるかを示せなければ説明にはなりません。令和7年度住宅市場動向調査の実額を使い、家賃8万円のワンルームを想定して具体的に積み上げます。
同調査によると、民間賃貸住宅に入居した世帯の月額家賃は平均83,381円・中央値74,000円、共益費は平均月額4,837円です。敷金・保証金があった世帯は51.9%で、そのうち月数は「1ヶ月ちょうど」が64.4%。礼金があった世帯は43.1%で、そのうち「1ヶ月ちょうど」が73.4%。仲介手数料があった世帯は48.0%で、そのうち「1ヶ月ちょうど」が69.7%でした。
初期費用の内訳
| 項目 | 金額 | 根拠 |
|---|---|---|
| 前家賃(1ヶ月) | 80,000円 | 想定家賃 |
| 共益費(1ヶ月) | 4,837円 | 調査の平均月額 |
| 敷金(1ヶ月) | 80,000円 | 敷金ありのうち64.4%が1ヶ月ちょうど |
| 礼金(1ヶ月) | 80,000円 | 礼金ありのうち73.4%が1ヶ月ちょうど |
| 仲介手数料(1ヶ月+消費税10%) | 88,000円 | 仲介手数料ありのうち69.7%が1ヶ月ちょうど |
| 保証料(初回50%の場合) | 40,000円 | 国土交通省ガイド掲載のD社例 |
| 保証料(初回80%の場合) | 64,000円 | 同ガイド掲載のE社例 |
| 初期費用の合計 | 372,837円〜396,837円 | 保証料50%〜80%の幅 |
出典:国土交通省「令和7年度 住宅市場動向調査報告書」(2026年7月)、国土交通省・日本賃貸住宅管理協会「《大家さん、不動産事業者のための》外国人の受入れガイド」
家賃8万円の部屋を借りるのに、入居前におよそ家賃4.7ヶ月分が必要になる計算です。海外では敷金相当のデポジットのみという国も多く、礼金にあたる慣行を持つ国は限られます。この数字を先に見せるほうが、礼金の説明を言葉で重ねるより誤解が減ります。なお保証料の算定基礎は事業者により異なり、家賃のみの場合と共益費等を含む月額賃料の場合があります。
保証料と、オーナーが受けられる保証限度額
国土交通省のガイドには、実在する保証会社2社のサービス例が金額付きで掲載されています。入居者が払う保証料と、オーナーが受け取れる保証の上限は、次のように対応しています。
| 項目 | D社の例 | E社の例 |
|---|---|---|
| 初回保証料 | 月額賃料の50%〜75%(家賃8万円なら40,000〜60,000円) | 月額賃料の80%(家賃8万円なら64,000円) |
| 継続保証料 | 年間10,000円 | 年間10,000円 |
| 保証限度額 | 月額賃料の48ヶ月分(家賃8万円なら384万円) | 月額賃料の24ヶ月分(家賃8万円なら192万円) |
| 保証範囲 | 月額賃料(家賃・管理費・共益費・駐車場等)、電気・ガス・水道代、残置物撤去・保管・処分の費用、訴訟費用 等 | |
| サポート内容 | 契約時・入居中の多言語サポート、入居中の生活サポート、残置物撤去・保管・処分 | 契約時・入居中の多言語サポート、入居中のトラブル相談、残置物撤去・保管・処分 |
| 入居者の4年間の負担合計 | 70,000円(初回50%+継続10,000円×3年) | 94,000円(初回80%+継続10,000円×3年) |
ここで注目していただきたいのは、保証限度額が48ヶ月分と24ヶ月分で倍違う点です。家賃8万円なら384万円と192万円の差になります。滞納が長期化し、明渡しの訴訟費用や残置物処理まで発生した場合、この差がそのままオーナー様の手残りに効きます。保証料の安さは入居者にとっての魅力ですが、オーナー様が見るべきは限度額と保証範囲です。相場観は家賃保証料の仕組みと料金体系の解説もあわせてご覧ください。
なお令和7年度住宅市場動向調査では、契約時に困った経験の第2位が「連帯保証人の確保」でした。出入国在留管理庁の在留外国人に対する基礎調査でも、生活上の困りごととして「家を借りるときの保証人について」が19.3%を占めています。保証会社の活用は、オーナー様のリスク対策であると同時に、入居者側の最大級の悩みを解く手段でもあります。
入居審査で越えてはいけない一線|国籍だけを理由にした拒否は不当な差別のおそれ
国土交通省と日本賃貸住宅管理協会が作成した「外国人の受入れガイド」は、Q&A形式で次のように明記しています。外国人であることを理由として入居を拒否すると、不当な差別に当たるおそれがあります。過去に、国籍のみを理由に入居を拒否したことで、慰謝料の支払いが命じられた事例があります。
これは倫理の話であると同時に、経営上のリスクの話です。「外国人不可」という条件設定を漫然と続けることは、法的な争いを招く可能性を抱えたまま、募集対象を自分で狭めているということでもあります。
差別を受けた場面の1位は「家を探すとき」という現実
出入国在留管理庁の令和7年度「在留外国人に対する基礎調査」(有効回答8,874件、回答率45.5%、調査期間2025年10月17日〜11月9日)では、差別を受けた場面として「家を探すとき」が19.4%で最多でした。差別を受けた相手では「住宅不動産関係者」が23.8%で3番目に多く挙がっています。前年度調査に引き続き、住まい探しが最も摩擦の起きる場面になっています。
この数字は、ここで丁寧に対応できる会社とオーナーには、まだ大きな余地が残っているとも読めます。同調査の自由記述には、長く日本に住んでいても賃貸契約のたびに日本人の保証人を求められ、住宅を見つけること自体が大きなストレスになっているという声が寄せられています。
審査で見てよい項目と、見てはいけない理由の線引き
| 審査で見る項目 | 可否 | 理由 |
|---|---|---|
| 在留期間の満了日 | 見てよい | 契約期間を設計するための客観的な事実だからです |
| 収入と支払能力(源泉徴収票、送金証明書、預貯金) | 見てよい | 日本人の審査と同じ基準を適用するものだからです |
| 家賃債務保証の審査に通るかどうか | 見てよい | 滞納リスクへの備えという合理的な理由があるからです |
| 入居予定人数と同居者の続柄 | 見てよい | 物件の使用条件に関わる契約上の要素だからです |
| 就労制限・資格外活動許可の有無 | 見てよい | 収入の適法性を確認するために必要だからです |
| 国籍そのもの | 判断材料にしない | 不当な差別に当たるおそれがあり、支払能力とも無関係だからです |
線引きの原理は明快です。支払能力と契約履行に結び付く事実は見てよく、属性そのものは見ないということです。「在留期限が3ヶ月後だから2年契約は難しい」は事実に基づく判断ですが、「〇〇国籍だから不可」は属性による排除です。この2つを社内で言語化しておくと、現場の担当者が迷わなくなります。
契約前・入居中・退去時にやること|多言語ツールの使い分け
国土交通省の「外国人の受入れガイド」は、外国人入居者とのトラブルの原因を3つに整理しています。生活ルールや住宅の使用方法を理解していなかった、契約内容を十分に理解していなかった、コミュニケーションがうまく図れなかったの3つです。入居中のトラブル事例としては、ゴミ出しのルール違反、騒音による近隣トラブル、家賃滞納や無断同居が挙げられています。
3つの原因は、いずれも「伝わっていなかった」に集約されます。悪意ではなく情報の欠落が原因なら、伝える道具を用意すれば減らせます。その道具は、すでに14か国語で無料公開されています。
契約前:希望条件と必要書類を紙で共有する
- 希望条件チェックシート:家賃、場所、広さ、部屋数、和室か洋室か、一緒に住む人の数、連帯保証か保証会社か、入居希望時期、契約時の費用の上限までを入居希望者に記入してもらう様式です。物件を案内する前にこれを埋めてもらうと、条件の食い違いによる出直しが減ります。
- 入居審査必要書類チェックシート:この記事の冒頭で挙げた14項目の様式です。該当箇所にチェックを入れて渡します。
- 重要事項説明と契約書:ガイドラインには賃貸住宅標準契約書と定期賃貸住宅標準契約書(いずれも平成30年3月版)の各国語見本、入居申込書、重要事項説明書の見本が収録されています。母国語の見本を横に置いて説明すると理解度が上がります。
ガイドは対応の基本として「やさしい日本語でゆっくり、はっきりと、なるべく専門用語を使用しないで会話すること」を挙げ、通訳をしてくれる友人の同伴依頼や携帯翻訳機の利用も示しています。完璧な多言語体制を整えなくても、始められることはあります。
入居中:ルールをイラストで貼る
- 入居の約束チェックシート:ゴミ出し、騒音、禁止事項といったハウスルールを多言語で共有する様式です。契約時に読み合わせて、控えを渡します。
- 部屋探しのガイドブック:部屋の探し方、生活ルール、不動産用語をやさしい日本語と多言語で解説した冊子です。入居が決まった方に渡す資料として使えます。
- 掲示物はイラストで:ガイドは、文字だけの掲示物では理解してもらいにくいため、イラストを用いた掲示物を活用することを勧めています。「燃やすゴミ 月・木曜日」を絵と曜日で示せば、どの国籍の入居者にも同じ情報が届きます。
- 緊急連絡先を先に押さえる:入居希望者が普段関わりを持っている方の連絡先(母国の親族、日本人の友人、勤務先、通学先など)を事前に確認しておくことが、ガイドでは重要な備えとして挙げられています。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会は、これらの資料に加えて、同協会の外国人入居円滑化支援ページで「外国人住まい方ガイド」の動画を公開しています。紙より動画のほうが伝わる相手には、こちらを案内する選択肢もあります。
退去時:原状回復の考え方を入居時に伝えておく
退去時のトラブルは、退去の場面ではなく契約の場面で決まります。ガイドも「契約時に原状回復の義務があることを丁寧に説明して理解してもらうことが大切」とし、可能であれば入居時に現地で物件の状況を一緒に確認することを挙げています。ガイドラインには入退去時の物件状況及び原状回復確認リストも多言語で収録されています。
令和7年度住宅市場動向調査では、退去時に困った経験の1位が「修繕費用の不明朗な請求」、2位が「家賃、敷金の清算」でした。日本人入居者にも起きている問題を、言語の壁がある相手にはより丁寧に潰しておく、という順序で考えるのが自然です。原状回復の負担区分については原状回復の考え方とトラブルを防ぐポイントで詳しく整理しています。
外国人入居を受け入れる意味|在留外国人412万人時代の空室対策
ここまでの手順を整える理由は、市場の規模にあります。2025年末現在の在留外国人数は412万5,395人で、前年末比35万6,418人・9.5%増となり、初めて400万人を超えました。内訳は中長期在留者385万8,499人、特別永住者26万6,896人です。
【数値表】在留外国人の規模と内訳(2025年末現在)
| 区分 | 上位 | 人数 |
|---|---|---|
| 総数 | 在留外国人数 | 4,125,395人(前年末比+356,418人、9.5%増) |
| 在留資格別 | 永住者 | 947,125人 |
| 技術・人文知識・国際業務 | 475,790人 | |
| 留学 | 464,784人 | |
| 技能実習 | 456,618人 | |
| 特定技能 | 390,296人 | |
| 国籍・地域別 | 中国 | 930,428人 |
| ベトナム | 681,100人 | |
| 韓国 | 407,341人 | |
| フィリピン | 356,579人 | |
| ネパール | 300,992人 | |
| 都道府県別 | 東京都 | 801,438人(全国の19.4%) |
| 大阪府 | 375,319人 | |
| 愛知県 | 357,800人 | |
| 神奈川県 | 317,353人 | |
| 埼玉県 | 290,937人 |
出典:出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」
在留資格別の1位が永住者であるという事実は、受入れの判断に直結します。94万人を超える方が在留期間無期限で日本に暮らしており、この層に「在留期限が心配だから」という理由は成り立ちません。人口減少が進むなかで、9.5%の伸びを示す需要層を募集対象から外し続けることは、空室対策として合理的とは言えません。受入れを稼働率の改善につなげる考え方は外国人入居者の受け入れで空室対策を実現する実践ガイドで整理しています。
住宅セーフティネット制度という制度側の後押し
外国人は、住宅セーフティネット制度における住宅確保要配慮者に含まれます。同制度では、セーフティネット専用住宅の改修への支援や入居者の負担軽減の支援が用意されており、2025年10月施行の改正で居住サポート住宅の認定制度が新設されました。登録や検索は居住サポート住宅 情報提供システムから行えます。制度の全体像は住宅セーフティネット制度を空室対策に活用する方法で解説しています。
私たちは、高齢者や外国人といった住宅確保要配慮者の受入れを、譲歩ではなく賃貸経営の選択肢の拡張だと捉えています。仕組みで受け止められるリスクは仕組みに任せ、オーナー様は入居者との関係づくりに時間を使う。それが、長期的に稼働率と資産価値の両方を支える形だと考えています。
まとめ|契約前に確認する順番
外国人との賃貸借契約は、手順を決めてしまえば日本人の契約とほとんど変わりません。順番だけ整理しておきます。
- 希望条件チェックシートを渡す:家賃、エリア、入居人数、費用の上限を紙で共有し、条件の食い違いを先に潰します。
- 在留カードを2段構えで確認する:券面で在留資格と在留期間の満了日を読み、読取アプリケーションと失効情報照会でカードの真正性と有効性を確かめます。
- 必要書類チェックシートで14項目から選ぶ:本人・仕事や学校・収入の3区分について、その申込者に該当するものだけをチェックして依頼します。
- 契約期間を満了日から逆算する:永住者なら日本人と同じ設計、留学生なら在学期間との短いほうに合わせます。
- 言語対応52者から保証会社を選ぶ:保証料の安さではなく、保証限度額と保証範囲、そして多言語サポートの有無で比べます。
- 費用を金額で示す:家賃8万円なら初期費用は約37万〜40万円という具体的な数字で説明し、敷金と原状回復の関係も入居時に伝えます。
- 入居の約束チェックシートを読み合わせる:ゴミ出しと騒音のルールを多言語で共有し、掲示物はイラストで用意します。
この7ステップのうち、外国人契約に固有なのは2と4、そして5の一部だけです。残りは、日本人の契約でも本来やっておきたい手順にすぎません。外国人の受入れを整えることは、賃貸管理そのものを整えることでもあります。
受入れ体制の構築や保証会社の選定、多言語での契約実務についてお困りのことがありましたら、INA&Associates株式会社にご相談ください。管理物件の状況に合わせて、実務に落とせる形でご提案いたします。
よくある質問(FAQ)
外国人の賃貸契約に必要な書類は日本人と何が違いますか
国土交通省のチェックシートにある14項目のうち、日本人の審査に登場しないのは4点だけです。在留カード、勤労資格証明書、資格外活動許可書、銀行の送金証明書がそれにあたります。残る10項目(パスポート、勤務証明書、在学証明書、源泉徴収票、給与明細書、納税証明書、確定申告の写し、給与支払予定の証明書、奨学金支給証明書、預貯金の証明)は、日本人の審査でも役割が同じ書類です。書類の数が大きく増えるわけではありません。
日本在住の連帯保証人がいない場合はどうすればよいですか
家賃債務保証の利用で対応できます。国土交通省は外国人の言語対応サポートを行う登録家賃債務保証業者を52者(2025年12月31日時点)公表しており、登録業者123者のおよそ4割にあたります。契約時や入居中の多言語サポート、残置物の撤去・保管・処分まで保証範囲に含む商品もあります。連帯保証人の確保は、住宅市場動向調査でも契約時に困った経験の第2位に挙がる論点で、日本人にとっても難しくなっています。保証会社の活用は外国人に限った特別扱いではありません。
在留期限が契約期間より短いときはどう契約すればよいですか
普通借家契約のまま、更新時に在留カードの写しを提出してもらう運用が基本です。在留期間が更新されれば新しい在留カードが交付されますので、更新のタイミングで再確認する旨を契約書または覚書に入れておきます。定期借家で満了日に合わせる方法もありますが、期間満了で確定的に終了するため、在留期間が更新されて住み続けたい方にも退去を求める形になります。優良な入居者を短期で手放すことになりかねませんので、慎重にご検討ください。
外国人であることを理由に入居を断ることはできますか
国土交通省と日本賃貸住宅管理協会の「外国人の受入れガイド」は、外国人であることを理由として入居を拒否すると不当な差別に当たるおそれがあり、過去に国籍のみを理由に入居を拒否したことで慰謝料の支払いが命じられた事例があると明記しています。一方で、在留期間の満了日、収入と支払能力、家賃債務保証の審査に通るかどうかといった、支払能力と契約履行に結び付く事実にもとづく判断は行えます。属性そのものではなく事実で判断する、という線引きで整理してください。
2026年6月に変わった在留カードは、どこを見ればよいですか
契約に必要な「在留資格」と「在留期間の満了の日」は、新様式でも券面に記載され続けています。券面から消えたのは「在留期間」(3年・5年といった長さ)、「許可の種類」、「許可年月日」、「交付年月日」で、これらはICチップにのみ記録されます。当面は読取アプリケーションでも表示できないと案内されていますので、満了日を起点に契約期間を組む運用が現実的です。旧様式のカードも有効期限まで有効で、切替の手続きは不要です。
引用・参考資料
- 国土交通省「入居審査必要書類チェックシート」(外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン 資料編)
- 国土交通省「希望条件チェックシート」
- 国土交通省「入居の約束チェックシート」
- 国土交通省「部屋探しのガイドブック」
- 国土交通省「外国人の民間賃貸住宅への円滑な入居について」
- 国土交通省・日本賃貸住宅管理協会「《大家さん、不動産事業者のための》外国人の受入れガイド」
- 国土交通省「登録家賃債務保証業者一覧」(2026年3月31日時点・123者)
- 国土交通省「外国人の言語対応サポートを行っている登録家賃債務保証業者一覧」(2025年12月31日時点・52者)
- 国土交通省「認定家賃債務保証業者一覧」(2026年7月31日時点・12者)
- 国土交通省「認定家賃債務保証業者制度」
- 国土交通省「令和7年度 住宅市場動向調査報告書」(2026年7月)
- 国土交通省「住宅セーフティネット制度」
- 国土交通省「住宅セーフティネット法等の一部を改正する法律について」(2025年10月1日施行)
- 国土交通省「居住サポート住宅 情報提供システム」
- 出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」
- 出入国在留管理庁「在留資格一覧表」
- 出入国在留管理庁「通算在留期間」
- 出入国在留管理庁「在留カード等読取アプリケーション/失効情報照会 サポートページ」
- 出入国在留管理庁「特定在留カード交付申請について」
- 出入国在留管理庁「在留カードとマイナンバーカードの一体化Q&A」
- 出入国在留管理庁「令和7年度 在留外国人に対する基礎調査(主な結果)」
- 出入国在留管理庁「在留外国人に対する基礎調査」
- 公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「外国人入居円滑化支援」
