解体費用の坪単価は、木造で3〜5万円、鉄骨造で4〜6万円、RC造で6〜8万円が実務上の目安です。これに対し、国が補助金の算定で認める除却工事費の上限は、木造36,000円/㎡(約11.9万円/坪)、非木造51,000円/㎡(約16.9万円/坪)と定められています(国土交通事務次官通知「令和8年度における住宅局所管事業に係る標準建設費等について」令和8年4月7日)。この2つの数字の間に、あなたの建物の総額があります。
この記事は、相続した実家を解体するか迷っている方、古くなった木造アパート1棟の出口を考えているオーナー、そして区分所有マンションの再生を検討している管理組合の役員に向けて書いています。「坪単価いくらか」だけでは判断できません。賃貸アパートなら入居者を退去させるコストが本体工事費を上回ることがありますし、区分所有マンションは所有者一人では解体できません。更地にした後は固定資産税の負担も増えます。以下では、坪数別の総額表、建物タイプ別の比較、費用の内訳計算例、法手続き、補助金の実額、そして解体後の税金までを一次情報付きで整理します。
この記事のポイント
- 木造の実勢坪単価は3〜5万円。国が補助算定で認める上限は木造36,000円/㎡・非木造51,000円/㎡で、実勢はその半分以下に収まることが多い
- 延床70坪(約231㎡)の木造住宅なら本体工事は210〜350万円が目安。ただし残置物・外構・整地・仮設・諸経費で総額はさらに上振れする
- 賃貸アパートは、入居者の立退き交渉と空室化に要する期間・費用が最大の変数になる(借地借家法第26条〜第28条)
- 区分所有マンションは1戸だけの解体はできない。令和8年4月1日施行の改正区分所有法で、取壊し決議が原則4/5・一定の客観的事由があれば3/4の多数決で可能になった
- 更地化すると住宅用地特例が外れる。評価額3,000万円・200㎡の土地なら固定資産税は7.0万円→最大29.4万円(4.2倍)。しかも負担調整措置で段階的に上がるため、巷でいう「6倍」にはならない
解体費用の坪単価はいくらか(2026年8月時点)
解体費用は「坪単価 × 延床面積」で本体工事費を出し、そこに付帯工事と諸経費を積み上げて総額になります。まず基準になる坪単価から確認します。
公的な上限単価:木造36,000円/㎡・非木造51,000円/㎡
民間の相場情報は根拠が示されないことが多いのですが、国が補助金を算定するときに使う公的な上限単価は明文化されています。国土交通事務次官通知「令和8年度における住宅局所管事業に係る標準建設費等について」(令和8年4月7日 国住備第768号・国住整第201号・国住市第177号)の第9「不良住宅等除却費」は、除却工事費の1㎡当たりの額について、木造住宅・木造建築物は36,000円、非木造住宅・非木造建築物は51,000円を超える場合はその額を上限とすると定めています。
| 区分 | 公的な上限単価(㎡) | 坪換算 | 実勢の目安坪単価 |
|---|---|---|---|
| 木造 | 36,000円/㎡ | 約11.9万円/坪 | 3〜5万円/坪 |
| 非木造(鉄骨造) | 51,000円/㎡ | 約16.9万円/坪 | 4〜6万円/坪 |
| 非木造(RC造) | 51,000円/㎡ | 約16.9万円/坪 | 6〜8万円/坪 |
左の2列は国土交通事務次官通知(令和8年4月7日)に基づく公的な上限で、右列は民間の解体工事で実際に提示されることが多い水準です。右列は公的統計ではないため、あくまで見積書を読むときの物差しとして使ってください。
実勢が公的上限より低くなる理由と、上限に近づくケース
公的上限は、密集市街地の危険な空き家など、条件が悪い物件まで補助できるように高めに設定されています。一方、前面道路が4m以上あり重機が入る郊外の木造住宅なら、坪3万円台で収まることも珍しくありません。
逆に上限に近づくのは、次のような条件が重なる場合です。前面道路が狭く重機が入らず手壊し(手作業による解体)が増える。隣家との離隔が数十センチしかなく、養生と作業に手間がかかる。地下室や深い基礎がある。産業廃棄物の処分場が遠く運搬距離が長い。これらは坪単価そのものを1.5倍以上に押し上げます。
2026年の工事費動向:労務単価は14年連続で上昇
解体費は人件費と運搬・処分費で構成されるため、建設労働市場の動きがそのまま効きます。国土交通省が公表した「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」(令和8年2月17日)によると、今回の改定で全国全職種の単純平均は前年度比4.5%の引き上げ、全国全職種加重平均値は25,834円/日となり、平成25年度の改定から14年連続の引き上げで初めて25,000円を超えました。
つまり、数年前の見積書や古い相場記事の金額をそのまま当てはめると、実際より低く見積もることになります。相場は上振れ方向にあると考えて資金計画を立てるのが現実的です。
【坪数別】延床20〜70坪の解体費用シミュレーション
延床面積と構造が決まれば、本体工事費のレンジはその場で計算できます。下の表は実勢の目安坪単価に延床坪数を掛けたもので、付帯工事と諸経費は含みません。
| 延床面積 | 木造(3〜5万円/坪) | 鉄骨造(4〜6万円/坪) | RC造(6〜8万円/坪) |
|---|---|---|---|
| 20坪(約66㎡) | 60〜100万円 | 80〜120万円 | 120〜160万円 |
| 30坪(約99㎡) | 90〜150万円 | 120〜180万円 | 180〜240万円 |
| 40坪(約132㎡) | 120〜200万円 | 160〜240万円 | 240〜320万円 |
| 50坪(約165㎡) | 150〜250万円 | 200〜300万円 | 300〜400万円 |
| 70坪(約231㎡) | 210〜350万円 | 280〜420万円 | 420〜560万円 |
70坪の家を解体するといくらか
延床70坪は231.4㎡です。木造なら本体工事費は210〜350万円が目安になります。参考として、この面積に国の公的上限単価を当てはめると231.4㎡×36,000円=約833万円となり、実勢はその4分の1から2分の1程度に収まる計算です。
ただし70坪クラスの住宅は、敷地も広く、ブロック塀・カーポート・庭木・物置・浄化槽といった付帯物が多いのが通例です。付帯工事と諸経費で本体工事費の2〜4割が上乗せされることを想定し、木造70坪なら総額250〜500万円程度を初期の資金計画に置いておくと、見積比較の際に判断を誤りにくくなります。
【建物タイプ別】戸建て・アパート・マンションの費用比較
検索されている「アパート 解体 費用」「マンション 解体費用」は、戸建てとは別の論点を含みます。工事費だけでなく、解体に着手できる状態にするまでの手続きが違うからです。
| 建物タイプ | 延床の目安 | 坪単価の目安 | 工期の目安 | 特有の追加費用 | 着工前に要る意思決定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 木造戸建て | 25〜50坪 | 3〜5万円 | 1〜2週間 | ブロック塀・庭木・浄化槽・物置 | 所有者(共有なら全員)の合意 |
| 木造アパート(1棟) | 50〜100坪 | 3〜5万円 | 2〜4週間 | 戸数分の残置物処分、外部階段・共用廊下、駐車場舗装 | 全戸の退去完了。立退き交渉と補償が前提 |
| 軽量鉄骨アパート(1棟) | 50〜120坪 | 4〜6万円 | 3〜5週間 | 鉄骨の切断・搬出、基礎が深い場合の掘削増 | 同上 |
| RC造マンション(1棟) | 150坪以上 | 6〜8万円 | 2〜4か月 | 圧砕機の大型化、騒音振動対策、コンクリート廃材の運搬量 | 区分所有なら取壊し決議等(原則4/5) |
木造アパート2階建て8戸・延床200㎡の内訳計算例
坪単価だけを見ていると、見積書が届いたときに金額の差が説明できません。木造アパート2階建て8戸・延床200㎡(約60.5坪)を例に、項目ごとに積み上げてみます。
| 項目 | 内容 | 金額の試算 |
|---|---|---|
| 本体解体工事 | 60.5坪 × 4万円/坪 | 242万円 |
| 残置物処分 | 8戸分の家財・寝具・家電(1戸あたり約10万円) | 80万円 |
| 外構解体 | ブロック塀約30m、駐車場アスファルト、外部階段基礎、ゴミ置場 | 60万円 |
| 整地 | 敷地約350㎡の粗整地・転圧 | 35万円 |
| 仮設養生 | 外周足場と防音シート、散水設備 | 40万円 |
| 諸経費 | 各種届出、道路使用許可、近隣挨拶、マニフェスト管理、現場管理費 | 45万円 |
| 合計 | - | 502万円 |
この試算では、本体工事費242万円に対し付帯工事と諸経費が260万円と、ほぼ同額になっています。坪単価だけで「242万円くらいだろう」と考えていると、資金計画が倍近くずれます。なお金額は実勢の目安レンジに基づく試算であり、公的統計ではありません。国の公的上限単価で計算すると本体部分は200㎡×36,000円=720万円が上限となります。
アパートの出口を検討する段階では、解体して更地で売るのか建て替えるのかで必要資金が変わります。建て替えを選択肢に入れる場合は、アパート建て替え費用の相場と収支計画の立て方もあわせて確認すると、解体費を含めた総投資額で比較できます。
RC造マンションの解体費が跳ね上がる要因
RC造の坪単価が木造の倍近くになるのは、単に硬いからではありません。圧砕機を載せる重機が大型化し、その重機を搬入できる道路と敷地が必要になります。市街地では騒音・振動の規制が厳しく、低騒音型機械や散水・防音パネルの追加が求められます。そして最も効くのがコンクリート廃材の量です。同じ延床面積でも木造の数倍の重量が出るため、運搬車両の台数と処分費がそのまま費用に跳ね返ります。
さらに、鉄筋を切断しながら躯体を解体するため工期が長く、その間の仮設費・現場管理費も積み上がります。2〜4か月の工期は、そのまま金利負担や機会損失にもなります。
賃貸アパートは「空にするコスト」が本体工事費を上回ることがある
アパート解体の見積もりを取る前に、決着させておく必要があるのが入居者の退去です。1戸でも居住が続いていれば工事に着手できません。
立退きと借地借家法の正当事由
期間の定めがある建物賃貸借では、貸主は期間満了の1年前から6か月前までの間に更新拒絶の通知をしなければ、従前と同じ条件で更新したものとみなされます(借地借家法第26条第1項)。期間の定めがない場合は、解約の申入れの日から6か月の経過で終了します(同第27条第1項)。
そして、この通知や解約申入れには「正当の事由」が要ります。同法第28条は、貸主・借主双方が建物の使用を必要とする事情のほか、賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況および現況、そして貸主が明渡しの条件としてまたは明渡しと引換えに借主に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければすることができない、と定めています。
実務上は、この「財産上の給付」=立退料が交渉の中心になります。金額は建物の老朽度合い、借主の使用状況、代替物件の有無で大きく変わるため一律の相場はありませんが、引越費用・仲介手数料・敷金礼金・家賃差額といった実費の積み上げが出発点になります。8戸のアパートで全戸を対象にすれば、本体解体工事費242万円を上回る規模になることは十分あり得ます。通知書の書き方や交渉の進め方は、入居者への立ち退き依頼の正当事由と交渉の流れで具体的に整理しています。
自然減耗を待つ場合の時間コスト
立退料を抑える代わりに、退去が出た住戸を募集停止にして自然に空室化を待つ方法もあります。この場合、費用は下がりますが時間がかかります。8戸のアパートで年間の退去が2戸なら、完全空室まで数年を要する計算です。
その間、稼働戸数は減り続ける一方で、固定資産税・保険料・共用部の維持管理費は変わりません。損益分岐を割った後の保有期間が長引くほど、立退料を払って一括で空にした場合との差は縮まります。どちらが有利かは、想定される立退料の総額と、空室化を待つ期間の逸失家賃を並べて比較すれば数字で判断できます。
区分所有マンションは所有者単独では解体できない
「マンション 解体費用」を調べている方のうち、区分所有の1戸を所有している方にお伝えしたいのは、自分の専有部分だけを解体することはできない、という点です。建物は一体であり、取壊しは区分所有者全体の意思決定を要します。
改正区分所有法の3つの決議(令和8年4月1日施行)
従来、建物・敷地の一括売却や建物の取壊しには区分所有者全員の同意が必要で、事実上困難でした。国土交通省住宅局「令和7年マンション関係法改正とこれからのマンション管理」によると、改正区分所有法では、建替えと同等の多数決で次の3つを行える制度が新設され、令和8年4月1日から施行されています。
| 決議の種類 | 内容 | 多数決要件 |
|---|---|---|
| 建替え決議 | マンションを取り壊し、新たなマンションを建築 | 原則4/5。一定の客観的事由がある場合は3/4(政令指定災害による被災の場合は2/3) |
| 建物敷地売却決議 | マンションと敷地を一括して売却 | |
| 建物取壊し敷地売却決議 | マンションを取り壊した上で敷地を売却 | |
| 取壊し決議 | マンションの取り壊し |
多数決割合を3/4に引き下げる「一定の客観的事由」は、①耐震性の不足、②火災に対する安全性の不足、③外壁等の剝落により周辺に危害を生ずるおそれ、④給排水管等の腐食等により著しく衛生上有害となるおそれ、⑤バリアフリー基準への不適合、の5類型です。基準の詳細は法務省令で規定されます。
あわせて、建替え決議等がされた場合に金銭補償を前提として賃貸借等を終了させる制度も創設されました。賃貸に出している住戸を持つ区分所有者は、賃借人に対して賃貸借の終了により通常生ずる損失の補償金を支払う義務を負い、賃借人は補償金の提供を受けるまで明渡しを拒めます。
解体費用の内訳:本体工事以外に何がいくらかかるか
見積書の比較でつまずくのは、この内訳の粒度が業者ごとに違うからです。項目ごとに何が含まれるかを押さえておきます。
残置物処分・外構・地中障害物・整地・仮設・諸経費
- 残置物処分:家具・家電・寝具・衣類など。建設リサイクル法質疑応答集は、家具や家電製品は工事の発注者が排出者として事前に処分しておくべきものとし、残されている場合は発注者に事前撤去を依頼しなければならないとしています。業者に任せると一般廃棄物・産業廃棄物として割高になります。
- 外構解体:ブロック塀、門扉、駐車場舗装、庭石、樹木、物置、浄化槽。坪単価には含まれないのが通例で、数十万円単位になります。
- 地中障害物:以前の建物の基礎、古い浄化槽、廃棄物、井戸。掘ってみるまで分からないため、見積段階では「発見時に別途協議」となります。ここを追加費用の発生条件として契約書に明記しておくかどうかで、後のトラブルが変わります。
- 整地:解体後の仕上げレベルによって金額が変わります。転圧して平らにするだけか、砕石を敷くか、売却に備えて見栄えを整えるか。造成工事の種類と費用相場を押さえておくと、整地の見積が妥当かを判断しやすくなります。
- 仮設養生:足場と防音シート、粉じん対策の散水。隣家との距離が近いほど手間が増えます。
- 諸経費:届出、道路使用許可、近隣挨拶、廃棄物のマニフェスト管理、現場管理費。総額の1割前後が目安です。
アスベスト調査と除去費用の目安
2006年以前に施工された建物では、アスベスト含有建材が使われている可能性があります。国土交通省「アスベスト対策Q&A」は、アスベスト含有吹付け材の除去費用について、処理面積別の目安を次のように示しています。
| アスベスト処理面積 | 除去費用の目安 |
|---|---|
| 300㎡以下 | 2.0万円/㎡ 〜 8.5万円/㎡ |
| 300㎡〜1,000㎡ | 1.5万円/㎡ 〜 4.5万円/㎡ |
| 1,000㎡以上 | 1.0万円/㎡ 〜 3.0万円/㎡ |
同Q&Aは、この単価が2007年1月から12月における施工実績データより算出されたものであること、部屋の形状・天井高さ・固定機器の有無などの施工条件により処理費に大きな幅が出ること、特に300㎡以下では費用の幅が非常に大きくなることを注記しています。あくまで桁を把握するための数字として使ってください。
解体前に確認しておきたい法手続きと業者の資格
解体は着工前の届出が法定されています。しかも一部は発注者(施主)自身の義務です。知らずに進めると工事が止まります。
| 手続き | 対象規模 | 義務を負う人 | 期限・時期 |
|---|---|---|---|
| 建設リサイクル法の届出 | 建築物の解体は床面積80㎡以上(新築・増築は500㎡以上、修繕・模様替は請負代金1億円以上、建築物以外の工作物は500万円以上) | 発注者(施主)または自主施工者 | 工事着手の7日前までに都道府県知事へ |
| 分別解体等・再資源化等の実施 | 同上 | 受注者 | 工事期間中 |
| 石綿事前調査結果の報告 | 解体は床面積の合計80㎡以上、改修は請負金額税込100万円以上、特定の工作物は税込100万円以上、船舶は総トン数20トン以上の鋼製船舶 | 元請業者 | 着工前に電子システムで報告 |
| 工作物石綿事前調査者による事前調査 | 特定工作物の解体等の作業ほか | 調査を行う者 | 令和8年1月1日以降に着工する工事から |
| 建物滅失登記 | 建物が滅失したとき | 表題部所有者または所有権の登記名義人 | 滅失の日から1か月以内 |
届出義務者が発注者である点は見落とされがちです。建設リサイクル法質疑応答集(国土交通省)は、デベロッパーが施主から依頼を受けて工事を発注した場合でも「施主が発注者として届出を行う必要がある」としています。実務では業者が代行することが多いのですが、責任の所在は発注者にあります。
解体工事業登録と建設業許可の使い分け
業者選定で最初に確認するのは資格です。東京都都市整備局の解説によると、請負金額500万円以上の家屋解体工事には建設業許可(解体工事業)が必要で、それ未満であれば解体工事業の登録で対応できます。登録は5年間有効で、更新は有効期間満了日の2か月前から30日前までに行います。登録要件には、主務省令で定める基準に適合する技術管理者の選任が含まれます。
見積書に建設業許可番号または解体工事業登録番号が記載されているか、工事を行う都道府県で登録されているかを確認してください。金額が最も安い業者が、この要件を満たしていないケースがあります。
解体費用を抑える現実的な手段
自治体の補助金は「率」と「単価上限」の2方式がある
老朽危険空き家の除却には、多くの自治体が補助制度を設けています。ただし設計思想が2通りあり、どちらかで受け取れる額が変わります。工事費に対する補助率で決まるタイプと、延床面積×㎡単価で上限が決まるタイプです。
| 自治体・制度 | 補助率 | 上限額 | 主な要件 |
|---|---|---|---|
| 松山市 老朽危険空家除却事業(令和8年度) | 補助対象経費(税抜)の4/5 | 100万円(島しょ部160万円) | 不良度判定100点以上、直近1年以上未使用 |
| 江東区 木造住宅の除却助成(令和8年度) | 除却工事費の1/2 | 100万円 | 昭和56年5月31日以前に建築された木造等で耐震性が不十分、令和8年4月1日〜令和9年1月29日受付 |
| 宇都宮市 老朽危険空き家除却費補助金(令和8年度) | 対象額の2/3 | 70万円(対象額は延床面積×11,000円/㎡と実費の低い方) | 昭和56年5月31日以前建築等、世帯の合計所得818万円以下 |
| 貝塚市 木造空き家除却補助制度 | 除却費用等の8/10 | 50万円(延床面積×20,000円/㎡と50万円の低い方) | 不良住宅基準で評点100点以上、概ね1年以上の空き家 |
| 品川区 不燃化特区支援事業 | ㎡単価方式 | 木造36,000円/㎡・上限1,800万円/軽量鉄骨造51,000円/㎡・上限2,550万円(令和8年7月1日増額) | 不燃化特区内の老朽建築物等 |
金額差が大きいのは、原資の仕組みが違うからです。国土交通省「空き家再生等推進事業【除却事業タイプ】」では、助成対象費用は「除却工事費+除却により通常生ずる損失の補償費」×8/10で、除却工事費には1㎡当たりの上限単価があります。負担割合は、地方公共団体が事業主体の場合で国費2/5・地方公共団体2/5・残る1/5も地方公共団体、民間が事業主体の場合で国費2/5・地方公共団体2/5・民間1/5です。つまり自治体の持ち出し分をどこまで積むかで、住民が受け取れる額が変わります。
アスベスト調査についても補助制度を設けている自治体があります。手続きの流れは次のとおりで、いずれも交付決定前の契約・着工は対象外になる点が共通です。
相見積もりで比較すべき10項目
「複数社から見積もりを取る」だけでは金額差の理由が分かりません。次の10項目が見積書のどこに書かれているかを揃えて比較すると、安い見積が本当に安いのかを判断できます。
| 確認項目 | 見積書のどこを見るか |
|---|---|
| 1. 延床面積の算定根拠 | 数量欄の「㎡」または「坪」。登記簿と一致しているか |
| 2. 残置物処分の有無と数量 | 「残置物処分」の行。一式でなく数量と単価が入っているか |
| 3. 外構・ブロック塀・樹木 | 付帯工事欄。塀の延長m、樹木の本数が明記されているか |
| 4. 地中障害物の扱い | 備考欄または特記事項。発見時の協議方法と単価の目安 |
| 5. アスベスト事前調査費と除去費 | 調査費が別建てか本体込みか。除去は「発見時別途」か含むか |
| 6. 仮設足場・養生 | 仮設工事欄。外周m²と防音シートの仕様 |
| 7. 廃棄物のマニフェスト | 諸経費欄または特記。マニフェスト写しの提出可否 |
| 8. 整地の仕上げレベル | 整地欄。粗整地・転圧・砕石敷きのどれか |
| 9. 近隣挨拶・道路使用許可 | 諸経費欄。誰が申請し、費用は誰が負担するか |
| 10. 追加費用の発生条件と支払条件 | 契約約款・特記事項。着手金の割合と支払時期 |
自分でできる範囲を切り分ける
残置物を自分で処分すれば、業者経由より安く済むことが多くあります。自治体の粗大ごみ収集や家電リサイクル券を使い、工事着手までに室内を空にしておく方法です。前述のとおり、建設リサイクル法の質疑応答集も家財の事前処分は発注者の役割としています。
加えて、繁忙期(年度末の1〜3月)を外す、工期に余裕を持たせて業者のスケジュールに合わせる、といった調整も単価に効きます。ただし、値引き交渉の結果として届出や養生、マニフェスト管理が省かれる形になっては本末転倒です。下げてよいのは手間の配分であって、法定の手続きではありません。
解体後にかかる税金と、解体費用の税務上の扱い
更地化で固定資産税はどこまで上がるか(最大4.2倍。「6倍」ではない)
住宅が建っている土地には住宅用地特例が適用され、200㎡以下の小規模住宅用地は固定資産税の課税標準が価格の1/6、都市計画税は1/3になります(総務省「固定資産税の概要」、東京都主税局)。解体して更地にすると、この特例が外れます。
ここで「6倍になる」と言われますが、正確ではありません。総務省の資料によると、住宅用地以外の宅地(商業地等)の課税標準額には評価額×70%という法定上限が設けられているためです。さらに、そこへ一気に届くわけでもありません。評価額3,000万円・200㎡の土地で計算してみます。
| 区分 | 解体前(小規模住宅用地) | 更地・法定上限まで達した場合(価格の70%) | 更地・負担調整の引上げ上限(価格の60%) |
|---|---|---|---|
| 固定資産税 | 3,000万円×1/6×1.4%=7.0万円 | 3,000万円×70%×1.4%=29.4万円 | 3,000万円×60%×1.4%=25.2万円 |
| 都市計画税 | 3,000万円×1/3×0.3%=3.0万円 | 3,000万円×70%×0.3%=6.3万円 | 3,000万円×60%×0.3%=5.4万円 |
| 合計(年額) | 10.0万円 | 35.7万円 | 30.6万円 |
固定資産税だけを見れば7.0万円→最大29.4万円で4.2倍、都市計画税を含めた合計では10.0万円→最大35.7万円で約3.6倍です。ただしこれは上限に達したときの姿で、更地にした翌年度からいきなりこの額になるとは限りません。
効いてくるのが負担調整措置です。東京都主税局の資料によると、商業地等では、価格に対する前年度課税標準額の割合(負担水準)が60%未満の土地は、前年度課税標準額に価格×5%を加えた額まで段階的に引き上げられ、その引上げは価格の60%で止まります。負担水準60%以上70%以下は据置き、70%超は法定上限の70%まで引き下げられます。この措置は令和8年度まで継続することが決まっています。つまり、負担水準が低い土地では上表の中央列ではなく右列が実質的な着地点になり、そこへ数年かけて近づいていきます。
東京23区では、都税条例により商業地等の負担水準の上限(課税限度額)を65%とする減額措置が継続されており、小規模住宅用地の都市計画税は税額の1/2が軽減されます。何年で上限に達するかは前年度課税標準額と価格の関係で変わるため、実額は土地が所在する市区町村の資産税担当課(東京23区は都税事務所)で確認してください。
また、建物を解体すれば家屋分の固定資産税はなくなります。ただし築古家屋の評価額は経年減点補正で下がっているため、その減少分が土地の増加分を上回るケースは多くありません。更地化後の税負担と土地活用の選択肢については、更地の固定資産税と土地活用戦略で詳しく整理しています。
取壊し費用は経費か、土地の取得価額か
解体費用の税務上の扱いは、何のために取り壊すかで変わります。国税庁タックスアンサーNo.5401によると、法人が土地とともに建物を取得し、その取得後おおむね1年以内に建物の取壊しに着手するなど、初めから建物を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかな場合は、建物の帳簿価額と取壊費用の合計額(廃材の売却収入があればそれを控除した額)を土地の取得価額に含めます。
一方、当初は建物を事業の用に供する目的で取得したものの、やむを得ない事由により使用を断念した場合は、1年以内の取壊しであっても、その合計額を取壊し時の損金として処理できるとされています。判断は個別事情に左右されるため、税理士に確認したうえで進めることをお勧めします。
相続した空き家を解体して売る場合の3,000万円特別控除
相続した実家を解体して土地を売る場合、要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できます(国税庁タックスアンサーNo.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」)。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 控除額 | 最高3,000万円。令和6年1月1日以後の譲渡で、相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上である場合は2,000万円 |
| 適用期限 | 平成28年4月1日から令和9年12月31日までの譲渡 |
| 建築時期 | 昭和56年5月31日以前に建築された家屋 |
| 売却代金 | 1億円以下 |
| 譲渡期限 | 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで |
| 取壊しの期限 | 譲渡の時から譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に家屋の全部の取壊し等を行うことでも可 |
注目したいのは最後の行です。買主が決まってから引渡し前に取り壊す形でも適用できるため、先に更地にして固定資産税の増額を1年間負担する必要がないケースがあります。解体のタイミングは、税額と売却戦略の両方から決めるべき論点です。
更地にして売るか、建物付きで売るかの判断
| 判断軸 | 更地にして売る | 建物付きで売る(古家付き土地) |
|---|---|---|
| 初期費用 | 解体費を売主が負担 | 解体費の負担なし |
| 固定資産税 | 売れるまで非住宅用地として課税 | 住宅用地特例が継続 |
| 買主の層 | 実需・事業者の双方に広がる | 解体を織り込める買主に限られる |
| 価格 | 相場に近い価格を狙いやすい | 解体費相当以上を値引き要求されやすい |
| 解体後の想定外 | 地中障害物が出れば売主が対応 | 買主のリスクとして移転 |
| 向いているケース | 整形地・接道良好・再建築可能で買主が付きやすい土地 | 再建築不可、擁壁や地中埋設物の懸念がある土地 |
「更地にすれば売れる」は半分だけ正しい判断です。解体費を先に払い、税負担が増えた状態で売却期間が長引けば、値引きに応じた方が手残りが多かったということも起こります。私たちがオーナーに助言するときは、解体費・増加する税額・想定売却期間の3つを置いて、両方のシナリオで手残りを計算してから決めることをお勧めしています。短期の損得ではなく、出口までの総額で見る姿勢が、結果として資産を守ります。
よくある質問(FAQ)
Q. 解体工事の期間はどのくらいかかりますか
木造戸建てで1〜2週間、木造アパート1棟で2〜4週間、軽量鉄骨アパートで3〜5週間、RC造マンションで2〜4か月が目安です。これに加えて、着工前に建設リサイクル法の届出(着手7日前まで)、石綿事前調査と結果報告、近隣挨拶の期間が必要になります。滅失登記は解体後1か月以内です。全体では、業者選定から登記完了まで木造戸建てで2〜3か月をみておくと計画が崩れにくくなります。
Q. アパートを解体するまでに入居者の退去はどのくらいかかりますか
期間の定めがある契約では、更新拒絶の通知を期間満了の1年前から6か月前までの間に行う必要があり(借地借家法第26条第1項)、期間の定めがない場合は解約申入れから6か月で終了します(同第27条第1項)。通知が有効になるには第28条の「正当の事由」が要り、立退料などの財産上の給付の申出もその判断材料になります。交渉が円滑に進んでも半年から1年、戸数が多ければ1〜2年をみておくのが現実的です。
Q. 分譲マンションの自分の部屋だけを解体できますか
できません。建物は一体であり、取壊しには区分所有者の多数決による決議が要ります。令和8年4月1日施行の改正区分所有法では、取壊し決議、建物取壊し敷地売却決議、建物敷地売却決議が新設され、いずれも原則4/5の多数決で可能になりました。耐震性の不足など一定の客観的事由がある場合は3/4に引き下げられます。まずは管理組合に相談し、要除却等の認定を受けられるかを確認するところから始めます。
Q. 補助金と相見積もりは併用できますか
併用できます。むしろ補助金の申請には見積書の添付を求められるのが通例です。ただし順番が重要で、多くの自治体は交付決定前に工事契約や着手をすると補助対象外になると定めています(江東区の助成でも明記されています)。相見積もりで業者を絞り、申請して交付決定を受けてから契約する流れになります。年度ごとに受付期間と予算枠があるため、着工希望時期から逆算して早めに窓口へ相談してください。
Q. 解体後、固定資産税はいつから変わりますか
固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の1月1日です(地方税法第359条)。したがって、1月1日時点で住宅が存在していればその年度は住宅用地特例が適用され、税額が上がるのは翌年度からになります。逆に、年内に解体を終えて1月1日を更地で迎えると、翌年度から非住宅用地として課税されます。売却時期が読めない場合は、12月の解体着工を年明けにずらすだけで1年分の増額を回避できることがあります。
引用・参考資料
- 国土交通省「令和8年度における住宅局所管事業に係る標準建設費等について」(令和8年4月7日 国住備第768号ほか 国土交通事務次官通知)
- 国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」(令和8年2月17日)
- 国土交通省「アスベスト対策Q&A」
- 国土交通省「空き家再生等推進事業【除却事業タイプ】」
- 環境省「建設リサイクル法の概要」
- 国土交通省「建設リサイクル法質疑応答集」
- 厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「石綿事前調査結果報告システム」
- 厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「改正石綿則のポイント」
- 国土交通省住宅局「令和7年マンション関係法改正とこれからのマンション管理」(令和7年10月26日)
- 総務省「固定資産税の概要」
- 総務省「宅地に係る負担調整措置の仕組み」
- 東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」
- 東京都主税局「商業地等(住宅用地以外の宅地等)の固定資産税・都市計画税の負担調整措置が継続されます」
- e-Gov法令検索「不動産登記法」(第57条 建物の滅失の登記)
- 国税庁 タックスアンサーNo.5401「土地とともに取得した建物を取り壊した場合の土地の取得価額」
- 国税庁 タックスアンサーNo.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
- e-Gov法令検索「借地借家法」(第26条〜第28条)
- 東京都都市整備局「建設リサイクル法:解体工事業者のみなさんへ」
- 松山市「令和8年度 老朽危険空家除却事業」
- 江東区「木造住宅の耐震化(除却の助成)」
- 宇都宮市「老朽危険空き家除却費補助金」
- 貝塚市「木造空き家除却補助制度」
- 品川区「不燃化特区支援事業」
