六本木五丁目西地区で計画されている第一種市街地再開発事業は、総延べ面積約108万m2、総事業費約8,000億円という国内最大級の都市開発プロジェクトです。地上66階・高さ327mのオフィス棟と地上70階・高さ288mの住宅棟からなるツインタワーが、六本木の街並みを一変させようとしています。
2025年度にはすでに既存建物の解体工事に着手しており、計画は着実に前進しています。本記事では、不動産投資家・オーナーの皆さまに向けて、2026年3月時点の最新動向と港区エリアの不動産価値への影響を分析します。
六本木五丁目西地区再開発の計画概要とは?
六本木五丁目西地区第一種市街地再開発事業は、森ビルと住友不動産が事業協力者として参画する大規模プロジェクトです。「安全安心で緑豊かな丘陵都市」をコンセプトに掲げ、六本木交差点の南西側に広がる約8haの区域を対象としています。
計画の中核をなすのは、2棟の超高層タワーです。A-1街区には地上66階・地下8階・高さ327mの超高層ビルが建設され、オフィス、ホテル、店舗、展望施設などの複合用途で構成されます。延べ面積は約79.4万m2に達します。一方、B街区には地上70階・地下5階・高さ288mの超高層タワーマンションが計画されています。共同住宅約850戸のほか店舗や事務所を含み、延べ面積は約23.9万m2です。
注目すべきは、2棟を合わせた総延べ面積が約108万m2に上り、総事業費が約8,000億円に達する見込みである点です。これは現在の六本木ヒルズ(約76万m2)を約1.4倍も上回る規模です。国内の再開発事業として過去最大級の事業費となります。完成すれば東京都心に新たなランドマークが誕生することになります。
2008年3月に準備組合が設立され、2024年4月8日に都市計画決定が行われました。同年11月には東京都環境局による環境影響評価書が公開されています。2026年度の本体着工、2030年度の竣工を目指して事業が進められています。
なぜ327m・288mのツインタワーが注目されるのか?
A-1街区の高さ327mは、東京タワー(333m)にわずか6m差で迫る数字です。現在、東京で最も高いビルは麻布台ヒルズ森JPタワー(325.4m)ですが、六本木五丁目西地区のA-1街区はこれをさらに上回ります。完成時には日本一の高さを誇る超高層ビルとなる可能性があります。
また、B街区の288mは住宅用途としては国内最高レベルの高さです。六本木ヒルズレジデンスの約43階・約186mと比較しても、階数・高さともに大幅に上回ります。展望施設も設けられる計画であり、六本木の新たなシンボルとしての存在感は極めて大きいと言えます。
こうした超高層建築は、単なるランドマークとしてだけでなく、周辺エリア全体のブランド価値を押し上げる効果があります。麻布台ヒルズの開業後に周辺の地価上昇が確認された事例を見ても、この傾向は明らかです。
2026年最新動向:解体着手と建築費高騰の影響
六本木五丁目西地区の再開発は、2025年度に既存建物の解体工事に着手しました。解体を含めた工事期間は約60カ月と見込まれており、2030年度の竣工予定は維持されています。計画段階から実行段階へと移行した大きな節目です。
森ビルの辻慎吾社長は2026年3月の日本経済新聞のインタビューで、工事に向けた大詰めの局面にあることを明らかにしました。しかし、建築費の高騰が事業計画に大きな影響を与えている現実も浮き彫りになっています。
建設分野全体のコストは2021年1月比で25〜29%上昇しています。労務コストと資材コストの高騰が主因であり、いわゆる「2024年問題」「2025年問題」による人手不足がさらに拍車をかけています。2026年以降は緩やかに落ち着く見通しがあるものの、大幅な値下げは見込めない状況です。
こうした環境下で、総事業費は約8,000億円に達する見込みです。森ビルは中間期決算説明会で建築費がなおも上昇中であることを率直に認め、建物の用途を含めた設計の変更にも言及しています。当初計画からの修正が行われる可能性があります。
投資家としてはこの点を注視する必要があります。建築費の上昇は分譲住宅の販売価格やオフィス賃料の設定にも跳ね返ってくるからです。ただし、森ビルは麻布台ヒルズにおいても同様の課題を乗り越えて竣工に至った実績があります。プロジェクト自体が中止される可能性は低いと見ています。
港区・六本木エリアの不動産価値はどう変わるのか?
大規模再開発は周辺エリアの不動産価値に長期的な影響を及ぼします。六本木五丁目西地区の再開発がもたらす影響を、最新の地価データとともに分析します。
地価への上昇圧力:2026年の公示地価によると、港区の平均地価は551万8,395円/m2(前年比+14.99%)に達しました。住宅地は平均257万7,333円/m2(+12.66%)、商業地は平均622万9,411円/m2(+10.97%)と、いずれも二桁の上昇率を記録しています。港区は東京都内で4番目に高い公示地価です。六本木ヒルズの開業(2003年)前後で周辺の公示地価が大幅に上昇した経緯を踏まえると、今回の再開発はさらなる上昇圧力となる可能性があります。
賃料水準の底上げ:約79.4万m2のオフィス床面積は港区全体のオフィス供給に影響を与えます。一方で、ホテルや展望施設、商業施設の集積により街の集客力が高まれば、周辺の既存物件の賃料も底上げされる効果が期待できます。
住宅市場への波及:約850戸のタワーマンションが供給されますが、288mという圧倒的な高さと六本木の立地を考えると、超富裕層向けの価格帯が想定されます。これにより、周辺の高級マンション市場全体の価格水準が引き上げられる可能性があります。
交通インフラの改善:計画では六本木駅との接続強化、バリアフリー動線の整備、駅まち広場の創出が含まれています。こうした都市基盤の整備は、エリア全体の利便性と不動産価値の向上に寄与します。
なお、全国の公示地価も2026年は平均+2.8%上昇し、バブル後最大の伸びを記録しました。投資マネーの流入が地価を押し上げる構図が続いており、六本木エリアにもこの追い風が吹いています。
不動産オーナー・投資家が今検討すべきポイントとは?
六本木五丁目西地区の再開発を踏まえ、不動産オーナー・投資家が検討すべき事項を整理します。
六本木周辺の物件保有を継続する判断:再開発の完成(2030年度予定)に向けてエリアの価値は上昇基調が続くと予想されます。港区の地価が前年比+14.99%と大幅に上昇している状況も踏まえると、六本木・麻布・赤坂エリアに物件を保有するオーナーにとっては、短期的な売却よりも中長期的な保有が有利になる局面です。
大規模供給による一時的な需給緩和への備え:オフィス床約79.4万m2の新規供給は、竣工時に港区のオフィス市場に一定のインパクトを与えます。とくに築古のオフィスビルオーナーは、リノベーションや差別化戦略を検討しておくことが重要です。
投資タイミングの見極め:解体工事が着手され、工事期間60カ月のカウントダウンが始まりました。着工前から竣工までの期間は、周辺の不動産価格が段階的に織り込まれていく時期にあたります。再開発の進捗情報を注視しながら、取得タイミングを見定めることが大切です。
建築費高騰の影響を織り込む:建設コストの上昇は新築物件の販売価格を押し上げ、結果として既存物件の相対的な価値を高める側面があります。だからこそ、インフレ・建築費高騰時代の出口戦略を見据えた資産運用が求められます。
私の考え
六本木五丁目西地区の再開発は、東京の都市開発史に新たな1ページを刻む事業だと考えています。総延べ面積108万m2、総事業費約8,000億円、高さ327mという数字は、東京が引き続きアジアの国際都市として競争力を持ち続ける意思の表れです。
私が注目しているのは、この再開発が「オフィス」「住宅」「ホテル」「商業」「展望施設」という多機能を一つの街区に集約している点です。これは単なる建物の建設ではなく、街そのものを創造する取り組みです。森ビルが六本木ヒルズで培った「ヴァーティカル・ガーデンシティ(立体緑園都市)」の思想をさらに進化させたものと言えます。
建築費高騰によるリスクは率直に認めなければなりません。しかし、六本木というエリアの持つポテンシャルと、森ビル・住友不動産という日本を代表するデベロッパーの実行力を考えれば、このプロジェクトは東京の不動産市場全体にプラスの影響をもたらすと確信しています。8,000億円という過去最大級の投資が、六本木の街にどのような価値を生み出すのか。不動産オーナーの皆さまには、この動向を注視しつつ、中長期的な視野で資産戦略を組み立てていただきたいと思います。
まとめ
六本木五丁目西地区第一種市街地再開発事業の要点を整理します。
- A-1街区:地上66階・高さ327m、オフィス・ホテル・展望施設等、延べ約79.4万m2
- B街区:地上70階・高さ288m、共同住宅約850戸・店舗等、延べ約23.9万m2
- 総延べ面積約108万m2は六本木ヒルズの約1.4倍、総事業費約8,000億円は国内再開発で過去最大級
- 事業協力者は森ビルと住友不動産
- 2025年度に解体工事着手済み、工事期間は約60カ月、2030年度竣工予定
- 建築費は2021年比25〜29%上昇しており、設計変更の可能性あり
- 港区2026年公示地価は平均551万8,395円/m2(前年比+14.99%)
- 港区・六本木エリアの地価上昇・賃料底上げが期待される
よくある質問(FAQ)
Q1. 六本木五丁目西地区の再開発はいつ完成しますか?
2030年度の竣工を目指して事業が進められています。2025年度にはすでに既存建物の解体工事に着手しており、解体を含めた工事期間は約60カ月の見込みです。ただし、建築費の高騰により、スケジュールが変更される可能性もあります。
Q2. A-1街区の高さ327mは日本一になりますか?
完成時点では日本一の高さになる可能性があります。現在の日本一は麻布台ヒルズ森JPタワー(約325.4m)ですが、A-1街区の327mはこれを約1.6m上回ります。なお、東京タワー(333m)とはわずか6mの差です。
Q3. 総事業費約8,000億円はどのくらいの規模ですか?
国内の再開発事業として過去最大級の事業費です。建築資材や労務コストの高騰が背景にあり、2021年比で建設コストが25〜29%上昇しています。森ビルは設計の一部変更も視野に入れており、最終的な事業費はさらに変動する可能性があります。
Q4. 周辺の不動産価格にはどのような影響がありますか?
大規模再開発は周辺エリアの地価上昇要因となります。港区の2026年公示地価は平均551万8,395円/m2(前年比+14.99%)と大幅に上昇しています。六本木ヒルズ開業時にも周辺地価が上昇した実績があり、今回はそれ以上の規模のため、六本木・麻布・赤坂エリア全体への波及効果が見込まれます。
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引用・参考資料
- 東京都都市整備局「六本木五丁目西地区第一種市街地再開発事業」
- 東京都環境局「六本木五丁目西地区市街地再開発事業 環境影響評価書」(2024年11月)
- 港区「市街地再開発事業に関するお知らせ」
- 日本経済新聞「森ビル辻社長、東京・六本木の新たな再開発『工事に向けて大詰め』」(2026年3月9日)
- 日刊建設工業新聞「六本木五丁目西地区再開発/工事期間は60カ月、25年度に解体着手」
- 建設通信新聞Digital「六本木五丁目西地区再開発/既存建物解体に着手」
- 日本経済新聞「公示地価2.8%上昇、バブル後最大の伸び」(2026年3月)
- 港区議会資料「六本木五丁目西地区地区計画の決定(原案)について」(令和5年9月)