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賃貸管理手数料の相場【2026年版】料率分布と交渉術を解説

賃貸管理手数料の全国平均は区分単身4.24%・一棟非木造4.80%。「家賃の5%」は上位25%の水準です。料率分布・別途費用・交渉材料を実測データで解説。

最終更新: 約32分で読めます

賃貸管理を委託すると、年間でいくら払うことになるのか。この記事は、その一点を数字で確かめたいアパート・マンションのオーナーと、これから物件を買う方に向けて書いています。結論から申し上げると、賃貸管理手数料の全国平均は区分・単身向けで家賃等の4.24%、一棟・非木造で4.80%です。よく言われる「家賃の5%」は平均ではなく、上位25%にあたる水準です(IREM JAPAN/日本賃貸住宅管理協会「第13回 全国賃貸住宅実態調査報告書(2025年版)」)。ここに消費税が別途かかり、原状回復や消防点検は手数料の外に出ます。本記事では、料率の分布、別途費用の実額、年間の手残り、そして料率を下げる交渉の材料までを、一次データと契約書の条文にひもづけて整理します。

この記事のポイント

  • 管理手数料の中央値は区分・単身向けで4.17%、一棟・非木造で5.00%。物件タイプで相場は2ポイント以上動きます。
  • 居住用の家賃は消費税非課税ですが管理報酬は課税です。料率5%なら実質5.5%の負担になります。
  • 原状回復工事のオーナー負担は1戸あたり年額で平均3.6万〜3.9万円。手数料より別途費用のほうが金額の振れ幅は大きくなります。
  • 料率1%の差は家賃1,200万円の物件で年12万円、10年で120万円。ただし運営費全体で見ると管理手数料は約2割にすぎません。
  • 値下げ交渉の前に、登録業者か、業務管理者がいるか、定期報告が来ているかを確認します。令和7年度の一斉立入検査では168社中118社が是正指導を受けています。

賃貸管理手数料の相場は家賃の何%か|2026年時点の実測データ

賃貸管理手数料の相場は、物件タイプによって平均2.83%から4.80%まで分かれます。有効回答40,979件を集計した実測値があり、そこには「5%」以外の分布がはっきり出ています。まず自分の物件がどのタイプに当たるかを決めてから、数字を読んでください。

物件タイプ別の管理手数料率(PMフィー)の分布

IREM JAPAN(全米不動産管理協会 日本支部)と公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が実施した「第13回 全国賃貸住宅実態調査報告書(2025年版)」は、有効回答40,979件から賃貸管理手数料割合(PMフィー)を集計しています。全国値は次のとおりです。

物件タイプ調査数平均値25%値中央値75%値
区分・単身向け26,3474.24%3.66%4.17%5.00%
区分・ファミリー向け2,5412.83%1.94%2.50%3.53%
一棟・木造9044.49%4.00%5.00%5.00%
一棟・非木造2,5874.80%4.50%5.00%5.00%

出典:IREM JAPAN・日本賃貸住宅管理協会「第13回 全国賃貸住宅実態調査報告書(2025年版)」の全国値。

一棟物件は木造・非木造とも中央値が5.00%で、75%値も5.00%に張り付いています。一棟の場合、5%はごく標準的な水準だと言えます。一方で区分・ファミリー向けは平均2.83%、中央値2.50%と明確に低く出ています。1戸あたりの家賃が高いほど定率報酬の絶対額が大きくなるため、料率のほうが抑えられやすい構造だと読めます。

「家賃の5%」は平均ではなく上位25%の水準です

区分・単身向けの75%値がちょうど5.00%です。つまり区分マンションを1戸ずつ委託しているオーナーにとって、5%は「4件に1件しか払っていない上限側の料率」ということになります。平均は4.24%、中央値は4.17%ですから、5%の契約書を持っている方は、まず0.5〜0.8ポイント分の余地がある位置にいると考えて差し支えありません。

ただし、この差だけで会社を乗り換える判断はおすすめしません。後述するとおり、料率の外側にある別途費用と空室期間のほうが、年間の手残りには大きく効きます。

消費税は別途かかります|居住用家賃は非課税、管理報酬は課税

見落とされやすいのがここです。国税庁タックスアンサーNo.6226のとおり、住宅の貸付けは消費税が非課税です(貸付期間が1か月未満の場合や旅館業に該当する場合などを除きます)。入居者から受け取る家賃には消費税が乗りません。ところが管理会社に支払う管理報酬は課税取引です。国土交通省の「賃貸住宅標準管理受託契約書」も、頭書(4)で報酬を「家賃及び共益費(管理費)の○%(別途、消費税)」と定めています。

したがって料率5%の契約は、実際の支払いでは5.5%になります。しかも居住用賃貸だけを営むオーナーの売上は非課税売上ですから、支払った消費税を仕入税額控除で取り戻すことは原則としてできません。消費税分はそのまま経費として残ります。この扱いは事業構成によって変わるため、詳細は顧問税理士にご確認ください。

その「管理費」は誰が誰に払うお金か|3つの用語を切り分ける

「管理費の相場」という言葉は、まったく違う3つのお金に使われています。オーナーが管理会社に払う管理委託手数料、入居者が貸主に払う管理費・共益費、分譲マンションの区分所有者が管理組合に払う管理費・修繕積立金です。混同したまま金額を比べても答えは出ません。

3つの「管理費」の支払先・課税区分・根拠

名称支払う人受け取る人金額の目安消費税主な根拠
管理委託手数料物件オーナー賃貸住宅管理業者家賃等の2.83〜4.80%(物件タイプ別の全国平均)課税(別途)賃貸住宅管理業法/賃貸住宅標準管理受託契約書 頭書(4)
管理費・共益費入居者貸主(オーナー)物件ごとに設定。共用部の電気代・清掃費等に充当居住用は家賃と一体で非課税賃貸借契約/国税庁No.6226
管理費・修繕積立金(分譲)区分所有者管理組合月/戸あたり平均 管理費11,503円・修繕積立金13,054円管理組合への支払いは対価性の判断による区分所有法/令和5年度マンション総合調査

1行目だけがオーナーの支出であり、この記事の主題です。2行目は入居者からの収入であって費用ではありません。3行目は自分が住む、あるいは所有する分譲マンションの話で、賃貸経営に出す場合は「収入から差し引く固定費」として登場します。

分譲マンションの管理費は月額平均11,503円、修繕積立金は13,054円

国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」(令和6年6月21日公表、管理組合1,589件から回収)によると、駐車場使用料等からの充当額を除いた月/戸当たりの管理費の平均は11,503円、修繕積立金の平均は13,054円です。充当額を含む総額でみると管理費17,103円、修繕積立金13,378円になります。

所有する分譲マンションを賃貸に出す場合、この2つは家賃から確実に出ていきます。管理会社に払う委託手数料が家賃8万円の4%で3,200円だとすれば、管理費・修繕積立金の合計約2.5万円のほうが7倍以上重い固定費です。同じ調査では、管理費等を3か月以上滞納している住戸があるマンションが30.1%あることも報告されています。

管理手数料に含まれる業務と、別途費用になる業務

手数料に何が含まれるかは、会社ごとの営業トークではなく契約書の条文で決まります。国土交通省の賃貸住宅標準管理受託契約書は、第4条で管理報酬を、第5条で「管理業務に要する費用」を分けて定めています。この2条が線引きの正体です。

標準管理受託契約書 第4条と第5条が引く線

第4条は「甲は、乙に対して、管理業務に関して、頭書(4)の記載に従い、管理報酬を支払わなければならない」と定めます。甲がオーナー、乙が管理会社です。続く第5条は「甲は、前条の報酬のほか、頭書(5)の記載に従い、乙が管理業務を実施するのに伴い必要となる費用を負担するものとする」と定めています。報酬の外側に費用が積まれる構造が、契約書自体に書かれているということです。

区分該当する内容契約書上の位置
管理報酬に含まれる業務家賃等の徴収・送金、設備管理、点検・清掃等の手配、クレーム処理、契約更新手続き、退去受付と立会い検査、敷金精算、次の募集に向けた改修工事の手配頭書(3)の管理業務欄でチェックした項目/第4条
報酬とは別に負担する費用空室管理時の水道光熱費、更新手数料、原状回復工事費、法定点検の実費、共用部の修繕費など頭書(5)「管理業務に要する費用」/第5条・第6条(立替費用の償還)

なお国土交通省が内閣府消費者委員会に提出した資料(令和8年6月16日)では、管理業務の主な流れとして家賃集金、設備管理、クレーム処理、送金、契約更新手続き、退去手続き、敷金精算、改修工事の8段階が示されています。見積書を比べるときは、この8段階のどこまでが報酬の中かを1行ずつ突き合わせてください。契約前の確認手順は賃貸管理委託契約書で確認すべき6項目にまとめています。

別途費用の実額目安(1戸あたり年額・全国)

「別途費用がかかる」とだけ書かれても判断はできません。IREM第13回調査は、1戸あたりの年額として実測値を出しています。

費用項目物件タイプ調査数平均値中央値75%値
原状回復工事費のオーナー負担一棟・木造1,07136,596円23,750円40,246円
原状回復工事費のオーナー負担一棟・非木造1,81438,626円26,724円45,876円
消防点検一棟・木造2164,509円4,125円5,500円
消防点検一棟・非木造1,5873,895円3,333円5,133円

いずれも1戸あたりの年額です。退去が発生した年だけの請求額ではなく、入替のない部屋も含めてならした金額である点に注意してください。10戸のアパートなら、原状回復だけで年38万円前後がオーナー負担として動きます。管理手数料を1ポイント削るより、原状回復の査定と施工単価を見直すほうが金額のインパクトは大きくなります。

原状回復については、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」が、経過年数を考慮して賃借人負担を軽減する考え方と、施工単位を最低限度とする原則を示しています。どこまでが入居者負担でどこからがオーナー負担かは、原状回復工事の範囲と借主負担の線引きで実務的に整理しています。

契約前に頭書(4)と頭書(5)を突き合わせる

確認の手順はシンプルです。頭書(4)で料率と「別途、消費税」の記載を見て、頭書(5)で何が費用として列挙されているかを読み、頭書(3)の管理業務チェック欄と照らします。標準管理受託契約書のコメントは、頭書(5)の例として「空室管理時の水道光熱費や更新手数料」を挙げています。ここが空欄のまま契約すると、後から出てくる請求の根拠が曖昧になります。

仲介手数料と広告料(AD)は管理手数料とは別の法的枠組みです

管理手数料の話に、仲介手数料や広告料(AD)を混ぜてはいけません。管理報酬は賃貸住宅管理業法と管理受託契約の世界の話ですが、仲介手数料は宅地建物取引業法の報酬告示で上限が法定されています。ここを分けると、「管理手数料無料」の会社が何で稼いでいるのかが見えます。

貸借の媒介・代理で受け取れる報酬の上限

根拠は昭和45年建設省告示第1552号(最終改正 令和6年6月21日 国土交通省告示第949号、2024年7月1日施行)です。金額はいずれも消費税相当額を含みます。

取引形態報酬の上限条項
貸借の媒介(依頼者双方からの合計)借賃1か月分の1.1倍以内第四
居住用建物の貸借の媒介(一方から)0.55倍以内。依頼を受けるにあたり承諾を得ている場合を除く第四 後段
貸借の代理借賃1か月分の1.1倍以内第五
長期の空家等の貸借の媒介2.2倍以内。借主から受ける報酬が借賃1か月分の1.1倍以内(居住用は承諾を得ている場合を除き0.55倍以内)であることが条件第九
長期の空家等の貸借の代理2.2倍以内第十
依頼者の依頼によって行う広告の料金報酬規制の対象外第十一① ただし書

「手数料無料」の収益源が広告料になる仕組み

報酬告示 第十一①は「第二から第十までの規定によるほか、報酬を受けることができない。ただし、依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額については、この限りでない」と定めています。広告料だけが上限規制の外に置かれているため、仲介報酬を借主から0.55倍しか取れない代わりに、貸主であるオーナーから広告料を受け取る商慣行が成立します。

管理手数料が無料または極端に低い会社は、この広告料と、退去のたびに発生する原状回復工事の手配報酬が主な収益源になっていることがあります。構造として否定すべきものではありません。ただし入替が起きるほど収益が増える仕組みである以上、長期入居を促す動機は弱くなります。年間の総支払額で比べるときは、料率だけでなく直近2年の広告料と原状回復費の実績を合算して見てください。

2024年7月施行「長期の空家等」の特例で上限が2.2倍に

2024年7月1日から、長期間にわたって使われておらず今後も使われる見込みのない宅地・建物については、貸借の媒介・代理の報酬上限が借賃1か月分の2.2倍まで引き上げられました(告示第九・第十)。長く空いている郊外物件や築古戸建てを貸し出す場合、仲介会社に通常より高い報酬を提示できる余地が制度として用意されたことになります。空室が長期化している物件をお持ちなら、値下げより先に検討する選択肢です。

管理手数料は年間いくらになるか|NOIまで落とした収支計算例

ここからは金額に落とします。家賃10万円の部屋が10戸、年間の満室賃料1,200万円という前提で、料率別の年額、消費税込みの実質負担、そして運営費と空室損を引いた後の手残りまでを順に計算します。

計算例1:料率別の年額と、消費税込みの実質負担

料率位置づけ年間手数料消費税10%実質年額
4.17%区分・単身向けの中央値500,400円50,040円550,440円
4.24%区分・単身向けの平均値508,800円50,880円559,680円
4.80%一棟・非木造の平均値576,000円57,600円633,600円
5.00%一棟物件の中央値・75%値600,000円60,000円660,000円

4.17%と5.00%の差は年99,600円、消費税を含めると年109,560円です。相場表の左端と右端で、年10万円強が動きます。

計算例2:運営費率21.81%・空室率1.34%を織り込んだ手残り

同じIREM第13回調査は、一棟・非木造の全国値としてNOI率77.53%、空室率1.34%、運営費率21.81%を示しています(調査数6,861)。NOI率は営業純利益を総潜在収入で割った値です。この3つを満室賃料1,200万円に当てはめると、次のようになります。

  • 満室賃料(総潜在収入):12,000,000円
  • 空室損(1.34%):▲160,800円
  • 運営費(21.81%):▲2,617,200円 … このうち管理手数料は4.80%で576,000円
  • 営業純利益(NOI率77.53%):約9,303,600円

3つの比率はそれぞれ独立に集計された平均値のため、合計は厳密には100%になりません。ここではNOI率から直接求めた約930万円を目安として扱っています。この物件から、さらに借入返済と所得税・住民税が引かれて手残りになります。

注目していただきたいのは構成比です。運営費262万円のうち、管理手数料は約22%にすぎません。料率を1ポイント下げても年12万円、運営費全体の4.6%分しか動かない計算です。残りの8割にあたる原状回復、法定点検、共用部の修繕、募集費用のほうに、削減余地も失敗のリスクも大きく残っています。

もう一点、空室率1.34%という数字の読み方に注意が必要です。これは管理会社が管理している物件のデータであり、市場全体より良い値が出ます。総務省「令和5年住宅・土地統計調査」では、空き家900万2千戸・空き家率13.8%のうち、賃貸用の空き家が443万6千戸あります。母集団側にはこれだけの空室が積み上がっているという前提で、自分の物件の稼働率を見てください。空室が続く物件への打ち手は自主管理・管理委託・サブリースの比較とあわせて検討する価値があります。

計算例3:手数料率1%の差は10年で120万円

年間満室賃料1,200万円の物件で、料率1ポイントは年12万円、消費税を含めると年13万2,000円です。10年では120万円、税込で132万円になります。区分マンション1戸(家賃8万円・年96万円)でも、1ポイントは年9,600円、10年で9万6,000円です。

金額としては小さくありません。しかし、その1ポイントを削った結果として入居募集の優先順位が下がり、空室期間が年間で1か月延びれば、10戸の物件では家賃10万円分、つまり年10万円が失われます。削減額と機会損失は、同じ桁で釣り合ってしまうということです。この釣り合いを理解したうえで交渉に入ります。

賃貸管理会社との手数料交渉|何を材料に、いつ、どこまで

手数料交渉は「安くしてほしい」と伝える場ではなく、業務量と報酬の対応関係を組み直す場です。数字を持って臨めば、管理会社も根拠のある回答を返せます。感覚で切り出すと、値下げの代わりに何が減るのかが曖昧なまま合意してしまいます。

交渉前に揃える4つの数字

  1. 自物件の現行料率と、そこに消費税が乗った実額。契約書の頭書(4)で確認します。
  2. 同じ物件タイプの中央値と75%値。区分・単身向けなら4.17%と5.00%、一棟・非木造なら5.00%と5.00%です。
  3. 別途費用の直近2年の実績額。原状回復、広告料、法定点検、共用部修繕を1戸あたり年額に直します。
  4. 直近2年の空室期間と入替回数。募集にかかった日数と、再募集時の家賃の変動幅もあわせて記録します。

この4つが揃うと、話の順序が変わります。「相場より高い」ではなく「当物件は入替が2年で1件、平均空室日数は21日。この稼働水準で75%値の料率を払う根拠を確認したい」と言えるようになります。

交渉のタイミングは解約予告期間から逆算します

標準管理受託契約書 第21条は、「甲又は乙は、その相手方に対して、少なくとも○か月前に文書により解約の申入れを行うことにより、この契約を終了させることができる」と定め、第2項で「甲は、○か月分の管理報酬相当額の金員を乙に支払うことにより、随時にこの契約を終了させることができる」としています。実際の契約書では、この○に3か月などの数字が入っています。

つまり、更新月の直前に切り出しても選択肢がありません。契約更新日から解約予告期間をさかのぼった時点が、交渉を始める期限です。予告期間が3か月なら、更新の4〜5か月前に着手します。条件が折り合わない場合に他社へ移る現実的な余地を残しておくことが、交渉を対等にします。実際に会社を変える場合の段取りは賃貸管理会社の変更手順を参照してください。

料率を下げた分、どの業務が削られるかを確認します

料率を下げれば、管理会社の1戸あたりの採算も下がります。何も変わらないまま安くなることは、通常はありません。値下げの提案を受けたら、頭書(3)の管理業務欄のどのチェックが外れるのかを、その場で書面に落としてもらってください。よくあるのは、巡回清掃の頻度、滞納督促の初動日数、退去立会いの実施主体、深夜のクレーム一次受付の4点です。

特に滞納督促と退去立会いは、削られた影響が数か月後に金額として返ってきます。督促の初動が遅れれば回収率は下がり、立会いをオーナー自身が担えば移動時間という見えない負担が増えます。安さの代償がどこに現れるかを、契約前に言葉にしておくことが大切です。

定率から定額報酬への切り替えという選択肢

もうひとつの現実的な着地点が、報酬体系そのものの変更です。標準管理受託契約書のコメント第4条①は、「頭書(4)で記載する管理報酬額は家賃等の〇%を想定しているが、地方部の家賃等が低額な物件の場合、1棟あたり〇円といった定額報酬も想定されることから、当該欄の金額は実情に応じて記載すること」と明記しています。定額報酬は例外ではなく、国が想定している選択肢です。

定率と定額のどちらが有利かは、家賃水準と将来の賃料改定の見通しで決まります。家賃を上げていける立地なら定額のほうがオーナーに有利ですし、家賃下落が見込まれる物件なら定率のほうがリスクを分担できます。同コメントは、清掃・修繕等の報酬を別に設けている場合に報酬欄を複数設けることも妨げていません。「一律○%」以外の設計ができることを知っているかどうかで、交渉の幅は変わります。

「安さ」より先に確認する法令上の適格性|賃貸住宅管理業法

料率を比べる前に済ませておくべき確認があります。賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(賃貸住宅管理業法)は、サブリース規制が2020年12月15日、登録制度が2021年6月15日に施行されました。この法律に照らして、その会社が適格かどうかを見ます。

登録業者かどうか(管理戸数200戸以上は登録義務)

国土交通省の資料によると、管理戸数200戸以上の事業者には国土交通大臣への登録が義務づけられており、登録件数は令和7年7月31日時点で9,987件です。200戸未満は任意登録ですが、登録業者の3割から4割は登録義務のない200戸未満の事業者が占めています。つまり、規模が小さくても登録している会社は相当数あります。登録の有無は国土交通省の登録業者一覧で確認できます。

業務管理者の選任・重要事項説明・分別管理・定期報告

確認するのは次の5点です。

  • 業務管理者が営業所ごとに選任されているか。賃貸不動産経営管理士または宅地建物取引士のルートで資格要件を満たす者は、令和7年7月31日時点で106,678名です。
  • 管理受託契約の締結前に重要事項説明を受けたか(法第13条)。口頭の説明だけでなく書面の交付があったかを確認します。
  • 契約締結時の書面が交付されたか(法第14条)。登録年月日・登録番号の記載があるかまで見ます。
  • 家賃等が分別管理されているか(法第16条)。標準管理受託契約書には頭書(7)「家賃、敷金、共益費その他の金銭における分別管理の方法」として、管理会社の固有財産と分けて管理する方法を記載する欄があります。
  • 委託者への定期報告が届いているか(法第20条)。苦情や修繕がない月でも報告は必要です。

立入検査で多い是正指導事項から読む注意すべき兆候

国土交通省が内閣府消費者委員会に提出した資料(令和8年6月16日)によれば、令和7年度の全国一斉立入検査は168社に対して実施され、うち118社に是正指導が行われました(同資料によれば令和6年度は187社に実施)。17件以上確認された是正指導事項は次のとおりです。

是正指導事項根拠条文件数
管理受託契約の締結時の書面の交付義務違反法第14条62件
締結前の書面の交付(重要事項説明)義務違反法第13条43件
賃貸住宅管理業者の帳簿の備付け等義務違反法第18条32件
特定転貸事業者の書類の閲覧義務違反法第32条23件
従業者証明書の携帯等義務違反法第17条22件
委託者への定期報告義務違反法第20条17件

件数の上位を占めるのは、書面の交付と記載事項の不備です。同資料が挙げる具体例も、登録年月日・登録番号の未記載、入居者への周知に関する事項の記載漏れ、帳簿への契約年月日の未記載といった記載事項の不備が中心でした。前年度にあたる令和6年度の検査結果について、国土交通省は是正指導を行った127社すべてで是正等がなされたことを確認したと公表しています(指導率67.9%)。一方で同省は、法令違反が確認された事業者に業務停止などの監督処分を行った事例も公表しています。契約書面が整っていない会社は、料金の説明も整っていない可能性が高いという読み方はできます。手数料の見積書より先に、重要事項説明書と定期報告書の実物を見せてもらうことをおすすめします。関連する法令の全体像は日本の賃貸管理に関する法規制ガイドにまとめています。

なお、管理を委託するオーナー自体は増え続けています。国土交通省の同資料によると、賃貸住宅の管理を自ら全て実施する所有者は平成4年度の75.0%から令和5年度は28.8%に減り、業者に委託する割合は25.0%から71.2%に増えました。委託が当たり前になったからこそ、委託先の質を見分ける目が問われます。

サブリースの手数料は何が違うのか

サブリース(特定賃貸借契約)は、管理委託と同じ土俵の「手数料が高いプラン」ではありません。契約の性質そのものが違います。管理委託は業務の委任ですが、サブリースは管理会社が借主になる転貸借です。この違いが、費用よりも家賃決定権と法的リスクの側に効いてきます。

管理委託・サブリース・自主管理の比較

比較項目管理委託サブリース自主管理
オーナーの費用家賃等の2.83〜4.80%+消費税(IREM第13回調査の全国平均)借り上げ家賃と満室想定賃料の差額。公的な料率統計はない手数料は不要。労力と時間は自己負担
空室リスクの所在オーナー原則サブリース業者。ただし家賃減額により実質的にオーナーへ移るオーナー
家賃の決定権オーナー実務上は業者主導。減額請求権が法律上認められているオーナー
入居者の選定オーナーが最終判断サブリース業者オーナー
主な法的リスク契約書面の不備、業務範囲の解釈違い借地借家法第32条の減額請求、借り上げ家賃の免責期間、大規模修繕・原状回復の負担法定点検の失念、滞納・トラブル対応の遅れ
根拠となる規制賃貸住宅管理業法(登録・業務管理者・重要事項説明・分別管理・定期報告)特定賃貸借契約の規制(誇大広告等の禁止、不当な勧誘の禁止、重要事項説明、書面交付、書類の閲覧)個別の法令(消防法・建築基準法等)を自ら管理

サブリースの料率について「家賃の10〜20%」という数字が流通していますが、公的な統計に裏づけられた値ではありません。断定を避け、契約書に書かれた借り上げ家賃の額と改定条件で判断してください。なお、賃貸住宅管理業者886社への調査では、受託管理のみが81.8%、受託管理とサブリースの両方が16.8%、サブリースのみが1.4%で、サブリースを実施しているのは約18%です。

借地借家法第32条の減額請求権と、借り上げ家賃の免責期間

国土交通省「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」(令和5年3月31日改正)は、「家賃保証」「空室保証」といった文言に隣接する箇所に、定期的な家賃の見直しがある場合はその旨と、借地借家法第32条に基づく減額請求権があることを表示するよう求めています。同ガイドラインが重要事項説明で記載を求める内容によれば、租税その他の負担の増減、建物価格その他の経済事情の変動、近傍同種の建物の借賃との比較のいずれかにより家賃が不相当となったときは、契約の条件にかかわらずサブリース業者が減額を請求できるとされています。「30年一括借り上げ」や「○年間は減額しない」といった条項があっても、その間の家賃額が固定されるわけではありません。反対に、空室の増加や業者の経営悪化だけでは減額請求はできないとも整理されています。なお定期借家契約として結び、家賃は減額できないとの特約を定めた場合は、同条の適用はないとされています。

同ガイドラインは、新築当初の数か月間について借り上げ家賃の支払い免責期間が設定される場合、その説明を求めています。竣工から入居が進むまでの数か月、オーナーへの入金がゼロになる契約は珍しくありません。返済計画を立てるときは、この期間を織り込む必要があります。サブリース特有の論点は賃貸一括借り上げ(サブリース)の契約構造とリスクで詳しく扱っています。

大規模修繕・原状回復の費用負担は誰にあるか

同ガイドラインは、維持保全・原状回復・大規模修繕等の費用負担者と負担割合を明示するよう求め、実際には大規模修繕など一部の修繕費をオーナーが負担するにもかかわらず「原状回復費負担なし」と表示する例を、誇大広告等にあたりうるものとして挙げています。

手数料の高低を比べる前に、契約書で次の3点を確認してください。第一に、家賃の見直し時期と減額請求の条件。第二に、免責期間の有無と長さ。第三に、原状回復と大規模修繕の負担者と負担割合です。この3点が明記されていない契約は、実質的な負担額が計算できません。

手数料の比較を、パートナー選びの判断に変える

ここまでの数字を並べると、ひとつの結論が見えてきます。管理手数料は運営費の約2割であり、削減余地は年10万円台。一方で空室期間が1か月延びれば同じ額が消えるということです。だからこそ私は、料率だけで管理会社を選ぶ判断をおすすめしていません。

見るべきは、稼働率を落とさない実務力です。入居募集の初動が早いか、滞納の督促を何日以内に始めるか、退去時に原状回復の査定根拠を示せるか、そして定期報告が毎月届いているか。これらは全て人が担っています。管理の質は、最終的にその会社の人財の質に行き着きます。私たちINA&Associates株式会社が管理を「業務の代行」ではなく「資産を預かる仕事」と位置づけているのも、同じ理由からです。

今日からできることは3つあります。契約書の頭書(4)で現在の料率と消費税の記載を確認すること。直近2年の別途費用を1戸あたり年額に直すこと。そして、その2つを持って管理会社に報酬体系の考え方を尋ねることです。相場表と自分の数字が並んだとき、交渉は感情論ではなく事業判断になります。

よくある質問(FAQ)

賃貸管理手数料の相場は何%ですか?

全国平均は区分・単身向けで4.24%、区分・ファミリー向けで2.83%、一棟・木造で4.49%、一棟・非木造で4.80%です(IREM JAPAN・日本賃貸住宅管理協会「第13回 全国賃貸住宅実態調査報告書(2025年版)」、有効回答40,979件)。中央値は区分・単身向け4.17%、一棟物件は5.00%です。区分マンションの場合、5.00%は75%値にあたる上限側の水準になります。

管理手数料に消費税はかかりますか?

かかります。居住用住宅の家賃は消費税非課税ですが(国税庁タックスアンサーNo.6226)、管理会社に支払う管理報酬は課税取引です。国土交通省の賃貸住宅標準管理受託契約書も頭書(4)で「家賃及び共益費(管理費)の○%(別途、消費税)」と定めています。料率5%の契約は実質5.5%の負担になり、家賃1,200万円の物件なら年60万円の手数料に6万円の消費税が加わります。

管理手数料は経費として計上できますか?

計上できます。国税庁タックスアンサーNo.1370は、不動産所得を「総収入金額-必要経費」で計算するものとし、必要経費に「不動産収入を得るために直接必要な費用のうち家事上の経費と明確に区分できるもの」を挙げています。管理委託手数料はこの費用に当たります。なお居住用賃貸のみを営む場合、売上が非課税売上となるため、支払った消費税を仕入税額控除で回収することは原則としてできません。個別の判断は税理士にご確認ください。

手数料の値下げ交渉はどこまで可能ですか?

区分マンションで5.00%を払っている場合、中央値の4.17%まで0.83ポイントの余地があります。年間満室賃料1,200万円なら年約10万円の差です。交渉は、契約更新日から解約予告期間(標準管理受託契約書第21条)をさかのぼった時点までに始めます。料率を下げる場合は、巡回清掃の頻度、滞納督促の初動日数、退去立会いの実施主体のどれが変わるかを書面で確認してください。定率から1棟あたり定額への切り替えも、同契約書コメント第4条①が想定する選択肢です。

サブリースと管理委託はどちらが手残りは多いですか?

公的統計でサブリースの料率が示されていないため、一般論としての比較はできません。判断材料は3つです。租税負担や経済事情の変動等で家賃が不相当となった場合は契約条件にかかわらず借地借家法第32条第1項の減額請求が可能であること、新築当初に借り上げ家賃の免責期間が設定される場合があること、大規模修繕や原状回復の費用がオーナー負担になる場合があることです(国土交通省サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン)。この3点を契約書で確認し、免責期間と修繕負担を織り込んだ実額で比べてください。

引用・参考資料

Daisuke Inazawa, President & CEO of INA&Associates Inc.

著者

代表取締役社長 / CEOINA&Associates株式会社

INA&Associates株式会社 代表取締役社長。首都圏・近畿圏を中心に不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントを統括。収益不動産投資戦略と超富裕層向け不動産コンサルティングを専門領域とする。

稲澤 大輔(いなざわ・だいすけ)は、INA&Associates株式会社の代表取締役社長(CEO)。大阪本店・東京営業所を拠点に、首都圏・近畿圏における不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントの三事業を統括する。

専門領域は、収益不動産の投資戦略立案、賃貸経営の収支最適化、超富裕層(UHNWI)・機関投資家向け不動産コンサルティング、およびクロスボーダー不動産投資。国内外の投資家に対し、データと長期視点に基づくアドバイザリーを提供している。

「企業の最も重要な資産は人財である」を経営理念に掲げ、人財投資カンパニーとして持続可能な企業価値の創造に取り組む。経営者として、変化の時代におけるリーダーシップのあり方と組織文化についても積極的に発信を続けている。

合格・取得資格は11種:宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、管理業務主任者、賃貸不動産経営管理士、行政書士、個人情報保護士、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者。

  • 宅地建物取引士
  • 公認不動産コンサルティングマスター
  • マンション管理士
  • 管理業務主任者
  • 賃貸不動産経営管理士
  • 行政書士
  • 個人情報保護士
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  • 競売不動産取扱主任者
  • マンション維持修繕技術者
  • 貸金業務取扱主任者