不動産の売買には、売主と買主が契約内容に合意して締結する不動産売買契約が必要です。一度契約を結ぶと簡単には解除できないため、正しい知識を身につけてから臨むことが重要です。本記事では、不動産売買契約の基本知識・契約書のチェックポイント・契約解除の種類までわかりやすく解説します。
不動産売買契約とは何か?基本的な特徴を解説
不動産売買契約とは、不動産の売買において契約内容に売主と買主の双方が合意することで締結される契約です。以下の3つの基本的な特徴があります。
契約内容は当事者間で自由に決定できる
不動産売買契約の内容は、法令違反や公序良俗に反しない範囲で自由に決められます。そのため、契約は自己責任で締結するものという認識が重要です。重要項目で不明瞭な条件があると、契約後にトラブルが発生するリスクがあります。
売主が不動産会社の場合は契約内容に制限がある
売主が宅地建物取引業者の場合、宅地建物取引業法に基づき契約内容の一部が制限されます。これは買主が不利な契約を結ばないようにするための保護規定です。
消費者契約法が適用される場合がある
事業者と消費者間の取引では消費者契約法が適用されます。消費者が契約内容を誤認した場合や不利益な項目がある場合に、契約の取り消しや無効化が可能です。ただし、個人でも事業目的で契約した場合は保護の対象外となります。
不動産売買における「契約不適合責任」とは?
契約不適合責任とは、売買成立後に契約内容と実際の取引が適合しなかった場合に売主が負う責任です。買主は以下の請求が可能です。
- 補修請求:契約内容に適合するよう修繕を求める
- 代金減額:補修に応じてもらえない場合
- 損害賠償:売主に責任がある場合に限る
- 契約解除:軽微な不適合を除く
契約不適合責任の期間
民法上は不適合の事実が発覚してから1年以内に申し出ることが必要です。しかし実務上、個人間取引では引き渡しから2〜3ヶ月、売主が不動産会社の場合は引き渡しから最低2年以上とすることが宅建業法で定められています。
特約による責任範囲の限定
一般の不動産売買では、責任を負う範囲や期間を限定する特約を設けることが可能です。売主が一切責任を負わない特約も可能ですが、買主にとって不利になるため契約前に内容をよく確認しましょう。
不動産売買契約書でチェックすべき10のポイントとは?
契約書の内容を入念にチェックし、疑問点は必ず解消してから契約を締結しましょう。
1. 売買する不動産の表示内容
不動産登記簿に基づいた内容が正確に記載されているか確認します。
2. 売買代金・手付金の金額と支払日
手付金の目的(証約手付・解約手付・違約手付)と金額の妥当性をチェックします。
3. 土地の実測と代金精算
登記簿の面積と実測値に差がある場合、代金精算が行われるかどうかを確認します。
4. 所有権の移転と引き渡し時期
引っ越し予定を考慮し、無理のないタイミングになっているか確認します。
5. 付帯設備の引き継ぎ内容
何を引き継ぎ、何が撤去されるのかを明確にし、設備の不具合も確認します。付帯設備の引き継ぎはトラブルが起きやすいため要注意です。
6. 負担の消除
抵当権や賃借権などが完全に抹消された状態で引き渡されることを確認します。
7. 公租公課の精算
固定資産税・都市計画税・管理費などの精算内容と計算方法を確認します。
8. 手付解除の条件
手付解除できる期間と条件を確認します。双方の合意で手付解除を認めない契約も可能です。
9. 危険負担の取り決め
天災により建物が損壊した場合の取り決めを確認します。通常は売主が修復して引き渡しますが、修復困難な場合は買主が無条件で契約解除できます。
10. 契約不適合責任と契約違反による解除
責任範囲・期間・違約金の金額(相場は売買代金の20%)を確認しましょう。反社会的勢力排除の条項も忘れずにチェックしてください。
不動産売買契約の手付金はいくら必要か?
手付金とは、契約の履行を保証する意味で買主が売主に支払うお金です。
手付金の3つの種類
- 証約手付:契約締結の証として交付
- 解約手付:解約の代償として支払う手付(買主都合なら放棄、売主都合なら倍額返還)
- 違約手付:債務不履行時に違約金として没収
手付金の相場
一般的な相場は売買代金の5〜20%です。売主が不動産会社の場合は法律により売買代金の20%以内と定められています。金額が少なすぎると解約されやすく、多すぎると契約が成立しにくくなるため、相場を目安にしましょう。
不動産売買契約に必要な書類は何か?
契約のタイミングごとに必要な書類が異なります。
売買契約時
売主・買主ともに身分証明書と印鑑が必要です。売主は住民票・印鑑証明書・固定資産税納税通知書・建築確認済証・設備表・物件状況等報告書なども準備します。
決済時
身分証明書・印鑑・印鑑証明書・住民票に加え、売主は登記識別情報(権利証)・抵当権抹消書類も必要です。
引き渡し時
登記識別情報・印鑑証明書・住民票・固定資産評価証明書・司法書士への委任状・鍵の引き渡しが必要となります。
不動産売買契約を締結する際の流れとは?
契約締結までの一般的な流れを把握しておきましょう。
- 媒介契約の締結:不動産会社に買主探しを依頼する
- 買い付け申し込み:購入希望者から申し込みを受け、手付金を受領する
- 契約書・重要事項説明書の打ち合わせ:内容に漏れや誤りがないか確認する
- 重要事項説明の実施:対面またはIT重説で行う
- 契約・決済・引き渡し:期日までに明け渡しができない場合は契約不履行となる
不動産売買契約の解除はどのような場合に可能か?
契約解除は簡単ではありませんが、以下の種類があります。
契約解除の主な種類
| 解除の種類 | 概要 | 違約金 |
|---|---|---|
| 手付解除 | 相手方が履行着手前に解除 | 手付金の放棄/倍返し |
| 危険負担による解除 | 天災で物件が損壊した場合 | なし(無条件解除) |
| 契約不適合責任に基づく解除 | 重大な欠陥がある場合 | なし(無条件解除) |
| 契約違反による解除 | 契約条件の不履行 | 売買代金の10〜20% |
| ローン特約による解除 | 住宅ローン審査落ちの場合 | なし(白紙解除) |
| クーリングオフ | 一定条件下で8日間以内 | なし |
| 合意解除 | 双方の合意で解除 | 合意による |
違約金なしで解除できるケース
- 相手が債務不履行の場合:期日までに引き渡しや代金支払いが行われない場合
- やむを得ない事情が発生した場合:天災・重病・死亡など
契約解除時の注意点
- 手付金放棄による解除は相手が履行する前に行うこと
- 違約金を受け取った場合は一時所得として翌年の確定申告が必要
- 買主都合の解除では仲介した不動産会社に仲介手数料相当額を請求される可能性がある
不動産売買契約は高額な取引であるため、契約書の各項目を入念にチェックし、不明点は必ず確認してから締結しましょう。万が一のトラブルに備えて、契約解除の条件も把握しておくことが大切です。
よくある質問(FAQ)
不動産売買契約書は自分で作成できますか?
法律上は個人間で作成可能ですが、専門知識が必要なため不動産会社や弁護士に依頼するのが安全です。特に契約不適合責任や特約の設定は専門的な判断が求められます。
手付金は現金で支払う必要がありますか?
一般的には現金や銀行振込で支払います。金額が大きい場合は預金小切手(預手)が使われることもあります。支払方法は契約前に確認しましょう。
IT重説(オンライン重要事項説明)は信頼できますか?
IT重説は国土交通省が正式に認めた方法であり、対面と同等の法的効力があります。遠方に住んでいる場合や日程調整が難しい場合に便利です。
契約後に住宅ローン審査に落ちた場合はどうなりますか?
ローン特約が契約に含まれていれば、違約金なしで契約を白紙に戻せます。契約時にローン特約の有無と条件を必ず確認しましょう。
契約不適合責任の「免責特約」が付いている場合、買主に不利ではありませんか?
免責特約がある場合、売主に補修や損害賠償を請求できなくなるため、買主にとっては不利です。その分、売買価格が安くなっていることが多いため、リスクとメリットを比較して判断しましょう。