賃貸併用住宅は、自宅部分が延床面積の2分の1以上あるかどうかで、使えるローン、住宅ローン控除の対象額、売却時の特別控除の範囲がまとめて変わります。この一点が、収支のすべての前提になります。
この記事は、これから賃貸併用住宅を建てるかどうかを決める方に向けて、2026年時点の一次情報だけで「自分のケースの数字」を出せるようにまとめたものです。国税庁の工事費用表による構造別・地域別の建築費、総務省の公的家賃データを使った利回り計算、そして最もつまずきやすい面積按分のルールを、計算例つきで整理します。感覚的な「相場」ではなく、出典のある数字で判断していただくことを狙いにしています。
この記事のポイント
- 自宅割合が延床の2分の1を下回ると、住宅ローン商品が使えず投資用不動産ローンの扱いになり、住宅ローン控除も適用外になります。
- 一方で固定資産税の住宅用地特例は自宅割合ではなく居住割合で決まります。賃貸住戸も居住部分ですので、住戸数だけ小規模住宅用地の枠(1戸200㎡)が広がります。
- 【フラット35】は第三者に賃貸する目的の物件には利用できず、非住宅部分は借入対象外です。賃貸併用住宅では民間の住宅ローンか専用商品を探すことになります。
- 2026年8月資金受取分の【フラット35】(借入期間21年以上35年以下)の最も多い金利は年3.290%です。金利1%前提の収支計画はもう成り立ちません。
- 国税庁の工事費用表では、東京都の鉄筋コンクリート造は1㎡あたり431千円(坪換算で約142万円)です。地域と構造で建築費は倍近く違います。
- 令和8年度税制改正で住宅ローン減税は5年延長されましたが、省エネ性能が低い「その他住宅」の新築は原則として支援対象外です。
賃貸併用住宅とは|「自宅1/2以上」が最大の分岐点になる理由
賃貸併用住宅とは、同じ建物のなかにオーナー自身の住まいと、第三者に貸し出す賃貸住戸が共存する住宅です。住まいと収益物件という2つの性格を1棟で持つため、制度の適用も自宅部分と賃貸部分に分けて考えることになります。
自宅割合で変わる5つのこと
賃貸併用住宅を検討するときに最初に決めるべきなのは、間取りでも構造でもなく、延床面積に占める自宅部分の割合です。この数字が、次の5つの制度に関わってきます。ただし後述するとおり、固定資産税だけは判定の基準が異なりますので、まとめて覚えないことが大切です。
- ローンの種類:たとえばスルガ銀行の賃貸併用住宅ローンでは、自己居住部分が50%以上なら住宅ローン商品、50%未満なら投資用不動産ローン商品での取扱いと案内されています(スルガ銀行「賃貸併用住宅ローン」)。
- 住宅ローン控除:床面積の2分の1以上を専ら自己の居住の用に供していることが適用要件です。下回れば控除はゼロになります。
- 固定資産税:ここだけは基準が違います。住宅用地の特例は自宅割合ではなく居住割合(賃貸住戸を含む)で判定され、住戸数に応じて小規模住宅用地の枠が広がります。
- 相続税:自宅部分と賃貸部分で小規模宅地等の特例の枠が別になり、しかも完全併用はできません。
- 売却時:居住用財産の3,000万円特別控除が使えるのは、自分の居住の用に使っていた部分に限られます。
つまり自宅割合は、設計上の好みではなく税務と金融の分岐点です。私たちが相談を受けるとき、最初に確認するのもこの数字です。
一般の注文住宅・一棟アパートとの違い
役割で整理すると違いがはっきりします。注文住宅は住むための建物で収益を生みません。一棟アパートは収益のための建物で、自分は住みません。賃貸併用住宅はその中間にあり、住居費を家賃で薄めながら資産を持つという設計思想の建物です。
だからこそ、一棟アパートと同じ利回りを期待すると落胆します。収益を生まない自宅部分に投資額の半分以上を割り当てている以上、投資効率で一棟賃貸に勝つことは構造的に難しいからです。判断すべきは「利回りが高いか」ではなく、「自分が支払うはずだった家賃と比べて有利か」という点です。
賃貸併用住宅の費用相場|2026年時点の構造別・地域別の建築費
建築費は業界の「坪いくら」ではなく、公的な統計値から出発することをおすすめします。
国税庁の工事費用表で見る構造別・地域別の1㎡単価
国税庁が災害による住宅の損失額を計算するために公表している工事費用表は、地域別・構造別の1㎡あたり工事費用を示したもので、見積書を比較する基準線として使えます。下表は「地域別・構造別の工事費用表(1㎡当たり)【令和7年分用】」から主要地域を抜き出し、坪単価(1坪=3.30578㎡)に換算したものです。
| 地域 | 木造 | 鉄骨造 | 鉄骨鉄筋コンクリート造 | 鉄筋コンクリート造 |
|---|---|---|---|---|
| 全国平均 | 217千円/㎡(約71.7万円/坪) | 314千円/㎡(約103.8万円/坪) | 334千円/㎡(約110.4万円/坪) | 338千円/㎡(約111.7万円/坪) |
| 東京都 | 230千円/㎡(約76.0万円/坪) | 384千円/㎡(約126.9万円/坪) | 404千円/㎡(約133.6万円/坪) | 431千円/㎡(約142.5万円/坪) |
| 神奈川県 | 217千円/㎡(約71.7万円/坪) | 355千円/㎡(約117.4万円/坪) | 378千円/㎡(約125.0万円/坪) | 361千円/㎡(約119.3万円/坪) |
| 千葉県 | 217千円/㎡(約71.7万円/坪) | 321千円/㎡(約106.1万円/坪) | 335千円/㎡(約110.7万円/坪) | 359千円/㎡(約118.7万円/坪) |
| 埼玉県 | 217千円/㎡(約71.7万円/坪) | 314千円/㎡(約103.8万円/坪) | 334千円/㎡(約110.4万円/坪) | 354千円/㎡(約117.0万円/坪) |
| 大阪府 | 217千円/㎡(約71.7万円/坪) | 314千円/㎡(約103.8万円/坪) | 334千円/㎡(約110.4万円/坪) | 338千円/㎡(約111.7万円/坪) |
坪単価換算は当社が計算したものです。注目すべきは地域差です。木造は全国平均と東京都でほとんど差がないのに対し、鉄筋コンクリート造は全国平均111.7万円/坪に対し東京都142.5万円/坪と約1.3倍の開きがあります。都市部で防音性を優先して鉄筋コンクリート造を選ぶなら、この差が総事業費に数千万円単位で効きます(出典:国税庁)。
建築費は5年で2割上がっている
もう一つ押さえたいのが建築費の推移です。国税庁「建物の標準的な建築価額表」は、建築着工統計の工事費予定額を床面積で割った1㎡あたり単価を年次で示しています。
| 建築年 | 木造・木骨モルタル造 | 鉄骨造 | 鉄筋コンクリート造 | 鉄骨鉄筋コンクリート造 |
|---|---|---|---|---|
| 令和元年 | 170.1千円/㎡ | 228.8千円/㎡ | 285.6千円/㎡ | 363.3千円/㎡ |
| 令和2年 | 172.0千円/㎡ | 230.2千円/㎡ | 276.9千円/㎡ | 279.2千円/㎡ |
| 令和3年 | 172.2千円/㎡ | 227.3千円/㎡ | 288.2千円/㎡ | 338.4千円/㎡ |
| 令和4年 | 176.2千円/㎡ | 241.5千円/㎡ | 277.5千円/㎡ | 434.4千円/㎡ |
| 令和5年 | 204.1千円/㎡ | 281.1千円/㎡ | 314.3千円/㎡ | 366.7千円/㎡ |
令和元年から令和5年までで、木造は約20.0%、鉄骨造は約22.9%、鉄筋コンクリート造は約10.0%上昇しています(国税庁「建物の標準的な建築価額表」)。数年前に取った見積りをそのまま資金計画に使うと、着工時点で数百万円の不足が出る計算になります。建築費上昇の背景については、建築費高騰局面での投資判断の考え方もあわせてご覧ください。
延床180㎡モデルで総事業費を組み立てる
ここからは、記事全体で使う共通モデルを置きます。敷地200㎡、延床180㎡(自宅100㎡+賃貸2戸で80㎡)、自宅割合55.6%という設計です。土地は取得済み、または2,400万円で取得したものとします。
| 項目 | 木造(全国平均単価) | 鉄骨造(全国平均単価) | 鉄筋コンクリート造(東京都単価) |
|---|---|---|---|
| 建築費(延床180㎡) | 3,906万円 | 5,652万円 | 7,758万円 |
| 諸費用(建築費の10%と仮定) | 約391万円 | 約565万円 | 約776万円 |
| 土地 | 2,400万円 | 2,400万円 | 2,400万円 |
| 総事業費 | 約6,700万円 | 約8,620万円 | 約1億930万円 |
建築費は前掲の工事費用表の単価に180㎡を掛けたものです。諸費用(設計料、登記費用、火災保険、外構、地盤改良など)は建築費の10%と置いた仮定値ですので、実際の見積りで置き換えてください。この一手間を省くと、後の利回り計算がすべてずれます。
自宅単体と比べていくら増えるか
住宅金融支援機構の「2025年度【フラット35】利用者調査結果」(令和8年7月24日公表、借換えを除く35,553件)によると、平均所要資金は注文住宅4,262万円(前年度比+326万円)、土地付注文住宅5,313万円(同+306万円)、平均世帯年収は注文住宅719万円、土地付注文住宅742万円でした(住宅金融支援機構)。上の木造モデル約6,700万円は、土地付注文住宅の平均より約1,400万円多い水準です。この差額を家賃収入で回収できるかどうかが、賃貸併用住宅の成否を決めます。
賃貸併用住宅の利回りは何%になるか|公的データの家賃で計算する
結論から申し上げると、公的統計の平均家賃を使って計算すると、賃貸部分だけで見た表面利回りは4%台前半、総事業費に対しては2%前後に着地します。一棟アパートの8〜10%という数字を期待して検討を始めると、現実との落差に驚くことになります。
表面利回りと実質利回りの定義
- 表面利回り=年間家賃収入 ÷ 投資額 × 100
- 実質利回り=(年間家賃収入 - 年間諸経費)÷(投資額 + 取得時諸費用)× 100
賃貸併用住宅では「投資額」の取り方で数字が大きく変わります。総事業費全体で割れば低く、賃貸部分に按分した額で割れば高く出ます。どちらか一方だけを見せる資料は判断材料になりません。差し引く諸経費は、管理委託料、固定資産税・都市計画税、火災保険料、修繕積立、空室損失、税理士報酬などです。
総務省の家賃データを置いた利回り計算
総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」によれば、民営借家の1か月あたり家賃は木造54,409円、非木造68,548円(いずれも全国平均)です。借家全体の平均は59,656円で、2018年比7.1%の増加となっています(総務省統計局)。この数字を先ほどのモデルに当てはめます。
| 項目 | 木造モデル | 鉄骨造モデル |
|---|---|---|
| 想定家賃(1戸あたり月額) | 54,409円 | 68,548円 |
| 年間家賃収入(賃貸2戸) | 約130.6万円 | 約164.5万円 |
| 総事業費 | 約6,700万円 | 約8,620万円 |
| 賃貸部分への按分投資額(80/180) | 約2,980万円 | 約3,830万円 |
| 賃貸部分の表面利回り | 約4.4% | 約4.3% |
| 総事業費に対する利回り | 約1.9% | 約1.9% |
鉄骨造モデルで実質利回りも出してみます。管理委託料を家賃の5%(約8.2万円)、固定資産税・都市計画税15万円、火災保険3万円、修繕積立16万円、空室損失を家賃の10%(約16.5万円)とすると、諸経費は年約58.7万円です。差し引いた手取りは約105.8万円となり、賃貸部分に対する実質利回りは約2.8%になります。
なお、この計算は全国平均の家賃をそのまま使った保守的な想定です。ご自身のケースでは、建築予定地の募集賃料に置き換えて再計算してください。
期待利回りとの突き合わせ
この4%台が高いのか低いのか、プロの投資家が求める水準と並べます。日本不動産研究所「第54回 不動産投資家調査」(2026年4月現在、2026年5月27日公表)の賃貸住宅一棟の期待利回りは次のとおりです。
| 調査地区 | ワンルームタイプ | ファミリータイプ |
|---|---|---|
| 東京・城南 | 3.6% | 3.7% |
| 大阪 | 4.2% | 4.3% |
| 福岡 | 4.5% | 4.5% |
| 札幌 | 4.9% | 5.0% |
| (参考)本記事の賃貸併用住宅モデル | 賃貸部分の表面利回り約4.3〜4.4%/総事業費ベース約1.9% | |
出典は日本不動産研究所「第54回 不動産投資家調査」です。同調査によると、東京・城南の期待利回りはワンルームタイプで3.6%、ファミリータイプで3.7%と、いずれも前回から0.1ポイント低下しています。
賃貸部分だけを切り出せば地方都市の期待利回りと同水準ですが、総事業費で見ると2%を切ります。この差が、賃貸併用住宅が「投資商品」ではなく「住居費の圧縮手段」である理由です。利回り計算と失敗要因の関係は、賃貸経営の失敗パターンと成功条件でも詳しく整理しています。
1戸空くと収入が半分になるという構造
賃貸併用住宅の空室リスクは、一棟アパートとは性質が違います。賃貸戸数が1〜2戸しかないため、1戸空けば収入は半減し、分散が効きません。
市場環境も厳しさを増しています。令和5年住宅・土地統計調査では、全国の空き家は900万2千戸、空き家率13.8%と、いずれも過去最多・過去最高でした。このうち賃貸用の空き家は443万6千戸で、共同住宅の空き家の78.5%(394万7千戸)が賃貸用の空き家です。
先ほどの鉄骨造モデルで、2戸のうち1戸が3か月空いた場合を計算します。家賃減収が68,548円×3か月=約20.6万円、原状回復費と広告料を合わせて約17万円とすると、影響額は年間で約37.6万円です。年間家賃収入164.5万円の約23%が消える計算になります。この金額を吸収できる家計かどうかが、着工前の判断材料になります。
面積按分のすべて|制度ごとに「何で按分するか」が違う
賃貸併用住宅でいちばん誤解が多いのが按分です。制度ごとに按分の基準も、分岐点となる割合も違います。まず全体像を1枚の表で押さえてください。
面積按分ルール早見表(7制度)
| 制度 | 按分の基準 | 自宅割合1/2の分岐で何が変わるか | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 住宅ローン控除 | 居住用部分の床面積 ÷ 家屋の総床面積。土地も同じ割合で按分 | 床面積の1/2以上を自己居住に使っていないと、控除自体が受けられない | 租税特別措置法施行令26条7項、措置法関係通達41-27 |
| 固定資産税の住宅用地特例 | 敷地面積 × 住宅用地の率(居住割合で決まる)。居住割合=居住部分の床面積÷延べ床面積で、賃貸住戸も居住部分に含む | 自宅割合では変わらない。店舗・事務所を併設して居住割合が1/2未満になったときに率が0.5へ下がる | 地方税法(自治体の住宅用地特例) |
| 新築住宅の固定資産税減額 | 住戸ごとに床面積で判定(1戸あたり120㎡まで) | 自宅割合ではなく各住戸の床面積要件(原則40㎡以上)で判定 | 地方税法(令和8年度税制改正で延長・要件緩和) |
| 不動産取得税の課税標準控除 | 住戸ごと。1戸につき1,200万円(認定長期優良住宅は1,300万円) | 自宅割合ではなく戸数で効く。各戸40㎡以上240㎡以下が条件 | 国土交通省・各都道府県 |
| 必要経費・減価償却 | 賃貸部分の床面積割合が原則。合理的であれば他の方法も可 | 自宅部分に対応する経費は必要経費にならない | 所得税の不動産所得の計算 |
| 小規模宅地等の特例 | 特定居住用330㎡・80%減/貸付事業用200㎡・50%減。調整算式で限度面積を判定 | 自宅面積が大きいほど貸付事業用の枠を圧迫し、完全併用できない | 国税庁 No.4124 |
| 売却時の3,000万円特別控除 | 居住用部分の床面積割合で家屋・敷地を按分 | 居住用部分がおおむね90%以上なら全体を居住用として扱える | 国税庁 No.3452 |
この表だけでも、按分を「1つのルール」だと思って設計すると、どこかで取りこぼしが出ることがわかります。
住宅ローン控除の按分計算
国税庁は質疑応答事例「店舗併用住宅を新築した場合」で、按分の実例を示しています。土地300㎡(うち120㎡は貸駐車場)を6,000万円で購入し年末残高4,000万円、家屋の総床面積180㎡(1階店舗90㎡・2階住居90㎡)を3,000万円で新築し年末残高2,000万円というケースです。この場合、控除の対象となる住宅借入金等は家屋分1,000万円+土地分1,200万円=2,200万円と計算されます(国税庁 質疑応答事例、令和7年8月1日現在の法令等に基づく)。
これを賃貸併用住宅に置き換えます。延床180㎡(自宅100㎡)、居住割合55.6%、家屋分の借入年末残高4,000万円、土地分の借入年末残高2,000万円というモデルです。
- 居住割合を出す:100㎡ ÷ 180㎡ = 55.6%
- 家屋分を按分する:4,000万円 × 55.6% = 約2,222万円
- 土地分を按分する:2,000万円 × 55.6% = 約1,111万円
- 控除対象額を合計する:2,222万円 + 1,111万円 = 約3,333万円
- 控除額を計算する:3,333万円 × 0.7% = 約23.3万円(年間)
13年間の累計では約303万円です。ただし控除額は所得税額(および控除しきれない分の住民税の一部)が上限ですので、使い切れるかは所得次第です。
按分しなくてよい例外|おおむね90%ルール
租税特別措置法関係通達41-29には、41-27で計算した居住用部分の床面積または土地等の面積が、家屋の床面積または土地等の面積のおおむね90パーセント以上であるときは、その全部を居住の用に供する部分として住宅ローン控除を適用できる旨が定められています(国税庁 措置法関係通達 第41条関係)。
賃貸1戸だけを小さく併設する設計なら、この例外に入る可能性があります。ただし90%を超える設計では賃貸収入がごくわずかになり、賃貸併用住宅として組む意味は薄くなります。実務では「按分するのが原則」と考えておくのが安全です。
固定資産税は「住宅用地の率」で決まる
固定資産税の住宅用地特例は、自宅割合ではなく居住割合で決まります。併用住宅の敷地では、居住割合に応じて決まる「住宅用地の率」を敷地面積に掛けた面積だけが住宅用地になります。
ここで注意していただきたいのは、居住割合の分子は「自宅部分」ではなく「居住部分」だという点です。賃貸住戸も人が住む部分ですので居住部分に入ります。つまり店舗や事務所を併設しない賃貸併用住宅であれば、自宅割合が40%でも30%でも居住割合は100%で、住宅用地の率は1.0になります。「自宅を1/2以上にしないと固定資産税の軽減が半分になる」という説明を見かけますが、それは1階を店舗にするなど非住宅部分がある場合の話です。
| 家屋の区分 | 居住割合 | 住宅用地の率 |
|---|---|---|
| 専用住宅 | 全部 | 1.0 |
| 併用住宅(地上4階建て以下) | 1/4以上1/2未満 | 0.5 |
| 1/2以上 | 1.0 | |
| 併用住宅(地上5階建て以上) | 1/4以上1/2未満 | 0.5 |
| 1/2以上3/4未満 | 0.75 | |
| 3/4以上 | 1.0 |
居住割合が1/4未満の併用住宅の敷地は、階数にかかわらず住宅用地に該当しません。そのうえで、住宅用地と認められた部分に次の特例率が適用されます。
| 住宅用地の区分 | 固定資産税 | 都市計画税 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地(住宅1戸あたり200㎡以下の部分) | 課税標準を価格の1/6に | 課税標準を価格の1/3に |
| 一般住宅用地(200㎡を超える部分) | 課税標準を価格の1/3に | 課税標準を価格の2/3に |
特例率は住宅1戸ごとに設定されます。つまり自宅1戸+賃貸2戸の3戸構成なら、小規模住宅用地の枠は200㎡×3戸=600㎡まで広がります。これは賃貸併用住宅の見落とされがちな利点です(大阪市「住宅用地の課税標準の特例措置」)。
住戸数で土地の税額はどれだけ変わるか
自宅割合ではなく住戸数が効きますので、その差を計算しておきます。敷地300㎡、土地の価格(評価額)4,500万円(1㎡あたり15万円)、地上2階建てというモデルで、自宅だけの専用住宅と、自宅1戸+賃貸2戸の賃貸併用住宅を比べます。固定資産税率1.4%、都市計画税率0.3%として、負担調整措置は考慮しない簡略計算です。
| 項目 | 自宅だけの専用住宅(1戸) | 賃貸併用住宅(自宅1戸+賃貸2戸) |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地の枠 | 200㎡×1戸=200㎡ | 200㎡×3戸=600㎡ |
| 敷地300㎡の内訳 | 小規模200㎡+一般100㎡ | 300㎡すべてが小規模 |
| 固定資産税の課税標準 | 3,000万円×1/6+1,500万円×1/3=1,000万円 | 4,500万円×1/6=750万円 |
| 固定資産税額(1.4%) | 約14.0万円 | 約10.5万円 |
| 都市計画税の課税標準 | 3,000万円×1/3+1,500万円×2/3=2,000万円 | 4,500万円×1/3=1,500万円 |
| 都市計画税額(0.3%) | 約6.0万円 | 約4.5万円 |
| 合計(年額) | 約20.0万円 | 約15.0万円 |
賃貸住戸を2つ足すだけで、土地の固定資産税・都市計画税が年間約5.0万円下がります。35年では175万円の差です。敷地が広いほど、また住戸数が多いほどこの効果は大きくなります。実際の税額は自治体の評価と負担調整措置で変わりますので、設計段階で市区町村の担当課にご確認ください。
必要経費・減価償却の按分
不動産所得の計算では、建物の減価償却費、修繕費、火災保険料、固定資産税、借入金利息などを按分し、賃貸部分に対応する額だけを必要経費にします。按分基準は床面積比が原則です。合理的であれば他の基準も認められますが、いったん決めた方法は継続適用となり、年ごとに有利な方法へ変えることはできません。
青色申告を選択すれば特別控除も使えますが、賃貸戸数が少ない賃貸併用住宅では事業的規模(おおむね5棟10室)に届かず、控除額が小さくとどまることがあります。この点は税理士にご確認ください。
賃貸併用住宅と住宅ローン|2026年8月の金利で見た現実
【フラット35】は賃貸併用住宅に使えるのか
結論は「賃貸目的の部分には使えない」です。住宅金融支援機構は利用条件のなかで、「フラット35は第三者に賃貸する目的の物件などの投資用物件の取得資金にはご利用いただけません」と明記しています。さらに借入額についても「店舗、事務所などの非住宅部分に係る建設費または購入価額は借入対象外となります」とされています。
機構は転送不要郵便で残高証明書を送るなどして居住実態を定期的に確認しており、第三者への賃貸が判明した場合は借入れの全額を一括返済することになるとも記載されています(住宅金融支援機構【フラット35】ご利用条件、2026年4月1日現在)。賃貸併用住宅の資金調達で【フラット35】を前提に置くことはできません。
使えるローンの比較表
| ローンの種類 | 賃貸併用住宅での使い方 | 面積・割合の要件 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 【フラット35】 | 賃貸目的の部分には利用不可 | 一戸建て等は床面積50㎡以上、共同建ては30㎡以上。併用住宅は住宅部分の床面積が非住宅部分以上 | 投資用物件の取得資金に使えない。非住宅部分は借入対象外 |
| 民間の住宅ローン | 自宅部分について利用。金融機関により賃貸部分を含めて扱える場合がある | 自己居住部分が延床の1/2以上を求める例が一般的 | 賃貸併用住宅の取扱可否は金融機関ごとに異なる。事前確認が必要 |
| 賃貸併用住宅専用ローン | 自己居住+賃貸の建物をまとめて借りられる | 自己居住部分50%以上なら住宅ローン商品、50%未満なら投資用不動産ローン商品 | 空室時も返済は続く。融資上限は商品による |
| アパートローン | 賃貸部分について利用 | 面積要件ではなく事業性で審査 | 住宅ローンより金利水準が高くなる傾向 |
スルガ銀行の「賃貸併用住宅ローン」では、自己居住部分が50%以上なら住宅ローン商品、50%未満なら投資用不動産ローン商品での取扱いとなり、融資金額は最大6億円と案内されています。ここでも「自宅1/2」が実務上の分岐点として機能しています。アパートローンの金利水準は、アパートローンの金利相場と借入条件の見方をご覧ください。
2026年8月の金利で返済額を計算する
金利の前提が古いままの収支表は、いちばん危険な資料です。2026年8月資金受取分の【フラット35】(借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下)の借入金利は、最も多い金利で年3.290%、範囲は年3.290%〜年5.570%です。借入期間20年以下の【フラット20】は最も多い金利が年2.970%です(住宅金融支援機構【フラット35】金利情報)。全期間固定の市場水準を示す指標として、この金利で借入5,000万円・35年・元利均等返済の返済額を計算します。
| 前提金利 | 毎月返済額 | 年間返済額 | 35年間の総返済額 |
|---|---|---|---|
| 年3.290% | 約200,600円 | 約240.7万円 | 約8,426万円 |
| 年1.000%(参考・過去の低金利水準) | 約141,100円 | 約169.4万円 | 約5,928万円 |
差は年間約71万円、35年で約2,500万円です。先ほどの鉄骨造モデル(年間家賃収入164.5万円)で考えると、家賃収入をすべて返済に充てても年約240.7万円の返済には届きません。持ち出しは年間約76万円、月あたり約6.3万円になります。これを「賃貸併用住宅は赤字だ」と読むか、「月6.3万円で持ち家に住めている」と読むかが判断の分かれ目です。
金利タイプをどう選ぶか
住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2026年1月調査、回答1,237件)」では、金利タイプは変動型75.0%(2025年4月調査比マイナス4.0ポイント)、固定期間選択型14.9%(同プラス2.7ポイント)、全期間固定型10.1%(同プラス1.3ポイント)でした(住宅金融支援機構)。変動型が主流ですが、その比率は下がり始めています。
賃貸併用住宅は35年前後の長期保有を前提とする建物です。家賃は簡単には上げられない一方、変動金利は上がる可能性があります。返済額が家賃収入を上回る構造である以上、金利上昇を家賃で吸収することは期待できません。関連する論点は住宅ローンを投資に転用することの危うさでも整理しています。
2026年(令和8年)に建てる場合の税制|改正を反映した最新版
令和8年入居の住宅ローン控除
令和8年度税制改正で、住宅ローン減税は令和12年入居分まで5年延長されました。控除率は0.7%のままですが、借入限度額の体系と要件が変わっています。
| 住宅の区分 | 新築・買取再販 | 既存住宅 |
|---|---|---|
| 長期優良住宅・低炭素住宅 | 4,500万円(5,000万円)×13年 | 3,500万円(4,500万円)×13年 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円(4,500万円)×13年 | 3,500万円(4,500万円)×13年 |
| 省エネ基準適合住宅 | 2026年入居のみ2,000万円(3,000万円)×13年。2027年以降は支援対象外(2027年末までに建築確認を受けたもの等は2,000万円×10年) | 2,000万円(3,000万円)×13年 |
| その他住宅 | 原則支援対象外 | 2,000万円×10年(増改築・リフォームを含む) |
カッコ内は子育て世帯等(19歳未満の子を有する世帯、または夫婦のいずれかが40歳未満の世帯)に適用される借入限度額です。所得要件は合計所得金額2,000万円以下、床面積要件は40㎡以上(所得1,000万円超の方および子育て世帯等への上乗せ措置を利用する方は50㎡以上)となっています。また令和10年以降の入居分から、土砂災害等の災害レッドゾーンの新築住宅は適用対象外となります(国土交通省「令和8年度国土交通省税制改正概要」)。
賃貸併用住宅を検討される方に、ここで一つ強調しておきます。省エネ性能が低い「その他住宅」の新築は、原則として支援対象外です。控除額を確保したいのであれば、設計段階からZEH水準以上を狙うことが実質的な条件になります。あわせて、床面積の2分の1以上を専ら自己の居住の用に供していることと、合計所得金額2,000万円以下という要件も満たす必要があります(国税庁 No.1211-1)。床面積は店舗や事務所などの部分も含めた建物全体で判断します。
新築住宅の固定資産税減額は令和13年3月末まで延長
新築住宅の固定資産税を3年間(マンションは5年間)2分の1に軽減する特例は、令和8年4月1日から令和13年3月31日まで5年間延長されました。あわせて、対象となる住宅の床面積要件の下限が原則40㎡(現行50㎡)に緩和され、一定のハザードエリア内に所在する住宅は対象外となります。国土交通省の推計では、2,500万円の住宅を新築した場合、3年目までの固定資産税額は特例がなければ年18.2万円、特例があれば年9.1万円となり、3年間で約27万円の負担軽減効果があるとされています(国土交通省「令和8年度国土交通省税制改正概要」)。
不動産取得税は「住戸ごと」に効く
見落とされやすいのが不動産取得税です。住宅を取得した場合の税率は3%(本則4%)に軽減され、住宅を新築した場合は課税標準から1,200万円が控除されます。税率の特例の適用期限は令和9年3月31日です(国土交通省「不動産取得税に係る特例措置」)。
重要なのは、この控除が一戸につき適用されるという点です。北海道の案内では、延べ床面積が一戸につき40㎡以上240㎡以下であることを要件に、一戸につき1,200万円を上限に価格から控除されると説明されています。認定長期優良住宅を令和13年3月31日までに取得した場合は1,300万円が上限です(北海道「不動産取得税の軽減措置(新築住宅)」)。
自宅1戸+賃貸2戸の構成で各戸が40㎡以上あれば、単純計算で1,200万円×3戸=3,600万円の控除枠になります。賃貸住戸を40㎡未満で細かく刻むと、この枠を丸ごと落とすことになります。間取りを決める前に確認しておきたい論点です。要件や運用は都道府県で異なりますので、建築予定地を所管する県税事務所にご確認ください。
相続と出口|賃貸併用住宅で最も見落とされる3つの論点
貸家建付地の評価は「約20%減」ではない
相続税対策としてよく語られる貸家建付地の評価減ですが、「一律で約20%下がる」という説明は正確ではありません。国税庁の算式は次のとおりです。
貸家建付地の価額 = 自用地としての価額 - 自用地としての価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合
借地権割合は地域によって異なり、路線価図・評価倍率表で確認します。賃貸割合は、課税時期に賃貸されている各独立部分の床面積合計を家屋の各独立部分の床面積合計で割った割合です(国税庁 No.4614「貸家建付地の評価」)。借家権割合30%・賃貸割合1.0の場合、借地権割合40%なら減額率12%、50%なら15%、60%なら18%、70%なら21%です。「約20%」は借地権割合60〜70%の地域に限った話だとわかります。
さらに賃貸併用住宅には重要な制約があります。自宅部分に対応する敷地は貸家建付地になりません。自用地評価5,000万円、借地権割合60%、賃貸部分が延床の44.4%というモデルで計算すると、貸家建付地として評価される部分は5,000万円×44.4%=約2,222万円、その減額は2,222万円×0.6×0.3=約400万円です。敷地全体で見れば約8%の減額にとどまります。一棟アパートを建てた場合の900万円(18%)とは大きな差があります。相続税評価の考え方については、賃貸経営と相続税対策の関係でも解説しています。
小規模宅地等の特例は完全併用できない
小規模宅地等の特例には、特定居住用宅地等(限度面積330㎡・減額割合80%)と貸付事業用宅地等(200㎡・50%)があります。賃貸併用住宅では両方に該当し得ますが、貸付事業用宅地等を選択する場合は次の調整算式に収める必要があります。
(特定事業用等①+②)×200/400 + 特定居住用⑥×200/330 +(貸付事業用③+④+⑤)≦ 200㎡
敷地200㎡、自宅50%・賃貸50%のケースで確認します。特定居住用100㎡×200/330=60.6㎡、貸付事業用100㎡、合計160.6㎡で200㎡以内に収まるため、両方を適用できます。
一方、敷地330㎡で自宅2/3(220㎡)・賃貸1/3(110㎡)のケースでは、220㎡×200/330=133.3㎡+110㎡=243.3㎡となり、200㎡の枠を超えます。この場合はどちらを優先するかを選ぶことになり、減額が受けられない部分が生じます。敷地が広く自宅割合が高いほど、枠が足りなくなるという関係です(国税庁 No.4124)。
売却時の3,000万円特別控除は自己居住部分のみ
出口も按分の世界です。居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除などの適用を受けられるのは、自分の居住の用に使っていた部分に限られます。ただし居住の用に使っていた部分が全体のおおむね90パーセント以上であるときは、全体を居住の用に使っていたものとして特例を適用できます(国税庁 No.3452「店舗併用住宅を売ったときの特例」)。自宅割合55.6%のモデルなら、譲渡益のうち約55.6%だけが控除対象で、残りは通常の譲渡所得として課税されます。
買い手が限られるという出口の構造
賃貸併用住宅は、売却時に評価軸の違う2種類の買主と向き合います。自宅として見る買主は「他人が同じ建物に住んでいる」ことを敬遠し、投資家は「オーナーが住んでいた部分は利回りを生まない」と評価します。どちらからも満点をもらいにくい構造です。相続時も物理的に分割できないため共有名義になりやすく、売却や大規模修繕の判断に全員の合意が要ります。誰にどう引き継ぐかは、建てる前に決めておきたい論点です。
同じ建物に住むことで起きる摩擦
数字の話が続きましたので、生活面のリスクも整理しておきます。摩擦には、設計で減らせるものと減らせないものがあります。
- 騒音:足音、テレビの音量、子どもの声。木造では特に起きやすく、遮音材や二重床・二重天井で坪単価が数万円上がることがあります。設計で相当程度減らせます。
- 共用部分のルール:ゴミ出しの曜日、駐車場や庭の使い方。玄関・階段・動線を分離すれば接触機会が減り、摩擦も減ります。
- 苦情が直接来る/家賃滞納:管理会社を挟まないと、深夜の設備故障の連絡も滞納の督促も自分に届きます。これは設計では防げません。管理委託料は家賃の5%前後ですが、精神的な負担を考えれば見合う支出です。
賃貸併用住宅でつまずく方の多くは、収支ではなく人間関係で疲弊しています。管理を外部に委ねる前提で収支を組むことを、私はおすすめしています。
賃貸併用住宅に向く人・向かない人
3軸チェックリスト
ここまでの内容を、Yes / Noで答えられる形に落とします。
資金の軸
- 家賃収入がゼロでも、月々の返済を家計から払い続けられますか。
- 金利が2ポイント上がっても返済を続けられますか。
- 住宅ローン控除が終わる13年後の収支を試算しましたか。
- 10年後の大規模修繕費を別に積み立てられますか。
立地の軸
- 建築予定地の周辺で、想定する間取りの募集賃料を3件以上確認しましたか。
- 周辺の空室状況を、ポータルサイトの掲載件数で確認しましたか。
- 20年後もその立地に賃貸需要が残ると考えられる根拠がありますか。
- 敷地面積と用途地域から、自宅1/2以上を確保しても採算に乗る規模が建ちますか。
生活の軸
- 同じ建物に他人が住むことを、家族全員が受け入れていますか。
- 管理会社に委託する前提で収支が回りますか。
- 10年後、20年後もその家に住み続ける見通しがありますか。
- 相続時に誰がこの建物を引き継ぐか、話し合いを始めていますか。
Noが多い軸があれば、そこが最初に手当てすべき箇所です。
建てる前に確認する5つの数字
- 自宅割合:延床面積に占める自宅部分の割合。1/2を下回るとローンも税制も別世界になります。
- 想定家賃:全国平均ではなく、建築予定地の募集賃料。3件以上の実例で押さえてください。
- 適用金利:金融機関から提示された実際の金利。2026年8月時点で全期間固定は3%台です。
- 返済比率:年収に占める年間返済額の割合。【フラット35】の総返済負担率の基準は、年収400万円未満で30%以下、400万円以上で35%以下です。
- 空室3か月時の手残り:賃貸1戸が3か月空いたときに、家計からいくら出るか。
まとめ|数字で判断するための最短ルート
賃貸併用住宅は、投資商品としては一棟賃貸に劣ります。総事業費に対する利回りは2%前後で、日本不動産研究所が示す賃貸住宅一棟の期待利回り(東京・城南で3.6〜3.7%)にも届きません。それでも選ぶ価値があるとすれば、それは住居費を家賃で薄めながら資産を残せるという一点です。
判断の順序は明快です。まず自宅割合を1/2以上で固める。次に国税庁の工事費用表で建築費の当たりをつけ、地元の募集賃料で家賃を置く。そのうえで金融機関から実際の金利を取り、空室3か月のときに家計からいくら出るかを計算する。ここまでを紙一枚にまとめれば、建てるか建てないかは自ずと決まります。
私たちが大切にしているのは、デメリットも含めて透明に情報をお伝えすることです。賃貸併用住宅は短期の利益を狙う商品ではありません。長期的な視野で家族の暮らしと資産を組み立てる方にこそ、検討していただきたい選択肢だと考えています。
よくある質問
Q1. 自宅部分は延床の何%にすべきですか?
延床面積の50%以上を確保することをおすすめします。50%を下回ると、住宅ローン商品が使えず投資用不動産ローンの扱いになり、住宅ローン控除も適用外となり、売却時の3,000万円特別控除の対象範囲も縮むためです。本記事のモデルでは、住宅ローン控除だけで13年間に約303万円の差になります。収益性を優先して49%にするより、50%を確保したうえで賃貸戸数や間取りで工夫するほうが有利になるケースが多いと考えられます。
Q2. 【フラット35】は賃貸併用住宅に使えますか?
賃貸目的の部分には使えません。住宅金融支援機構は「フラット35は第三者に賃貸する目的の物件などの投資用物件の取得資金にはご利用いただけません」と明記しており、店舗・事務所などの非住宅部分に係る建設費・購入価額も借入対象外です。機構は居住実態を定期的に確認しており、第三者への賃貸が判明した場合は一括返済を求められます。賃貸併用住宅では、民間の住宅ローン、金融機関の賃貸併用住宅専用商品、アパートローンのいずれかを検討することになります。
Q3. 住宅ローン控除はいくら受けられますか?
年末の借入残高に居住割合を掛けた額の0.7%です。延床180㎡・自宅100㎡(居住割合55.6%)、家屋分の借入残高4,000万円・土地分2,000万円のモデルでは、控除対象額が約3,333万円、年間の控除額は約23.3万円、13年間で約303万円になります。土地の借入分も按分の対象になる点がポイントです。なお居住用部分がおおむね90パーセント以上なら、按分せず全体を居住用として扱えます。控除額は所得税額が上限ですので、所得によっては使い切れないこともあります。
Q4. 固定資産税は自宅割合でどのくらい変わりますか?
土地の固定資産税は自宅割合では変わりません。住宅用地の特例は居住割合(居住部分の床面積÷延べ床面積)で判定され、賃貸住戸も居住部分に含まれるからです。店舗や事務所を併設せず住戸だけで構成する賃貸併用住宅なら、自宅割合が何%でも居住割合は100%で住宅用地の率は1.0です。効くのは住戸数で、小規模住宅用地(課税標準1/6)の枠は住宅1戸あたり200㎡ですので、自宅1戸+賃貸2戸なら600㎡まで広がります。敷地300㎡・評価額4,500万円のモデルでは、専用住宅より年間約5.0万円安くなりました。
Q5. 相続で自宅と賃貸の両方に小規模宅地等の特例を使えますか?
限度面積の調整算式に収まる範囲でのみ併用できます。特定居住用宅地等(330㎡・80%減)と貸付事業用宅地等(200㎡・50%減)を併用する場合、「特定居住用×200/330 + 貸付事業用 ≦ 200㎡」を満たす必要があります。敷地200㎡・自宅50%なら60.6㎡+100㎡=160.6㎡で両方適用できますが、敷地330㎡・自宅2/3では243.3㎡となり枠を超えます。敷地が広く自宅割合が高いほど不利になりますので、生前に試算しておくことをおすすめします。
Q6. 賃貸併用住宅の建築費はいくらが目安ですか?
国税庁の工事費用表(令和7年分用)の1㎡あたり単価で当たりをつけるのが確実です。延床180㎡なら、全国平均単価で木造3,906万円、鉄骨造5,652万円、鉄筋コンクリート造6,084万円、東京都の単価では木造4,140万円、鉄骨造6,912万円、鉄筋コンクリート造7,758万円になります。ここに土地代と諸費用(設計料・登記・保険・外構など)が加わります。ハウスメーカーの見積りは、この公的単価と並べて確認すると過不足が見えやすくなります。
引用・参考資料
- 国税庁「地域別・構造別の工事費用表(1㎡当たり)【令和7年分用】」
- 国税庁「建物の標準的な建築価額表」
- 国税庁 質疑応答事例「店舗併用住宅を新築した場合」
- 租税特別措置法関係通達 第41条関係(41-27・41-29)
- 国税庁 No.1211-1「住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」
- 国税庁 No.4614「貸家建付地の評価」
- 国税庁 No.4124「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
- 国税庁 No.3452「店舗併用住宅を売ったときの特例」
- 国土交通省「令和8年度国土交通省税制改正概要」
- 国土交通省「住宅ローン減税」
- 国土交通省「不動産取得税に係る特例措置」
- 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」
- 住宅金融支援機構「【フラット35】ご利用条件」
- 住宅金融支援機構「【フラット35】最新の金利情報」
- 住宅金融支援機構「2025年度【フラット35】利用者調査結果」(令和8年7月24日)
- 住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2026年1月調査)」
- 日本不動産研究所「第54回 不動産投資家調査」(2026年4月現在)
- 大阪市「住宅用地の課税標準の特例措置」
- 北海道「不動産取得税の軽減措置(新築住宅)」
- スルガ銀行「賃貸併用住宅ローン」
