不動産の繁忙期は3月です。首都圏の賃貸マンション成約件数は1〜3月期が7〜9月期の約1.4倍、中古マンションの売買成約は3月が最多で1月が年間最少です。市区町村間移動者数は3月が8月の約2.6倍に達します。ただし「繁忙期」の中身は賃貸・売買・引っ越しで1〜2ヶ月ずれます。「閑散期を狙えば安い」と聞いても、いつ動くべきかは決まりません。本記事では国土交通省・総務省統計局・東日本不動産流通機構(レインズ)の月別データを、借りる人・売る人・貸す人の立場別に読み替えます。
この記事のポイント
- 「不動産の繁忙期」は3つの別現象を指し、賃貸の成約は1〜3月期、売買は3月、引っ越しは3月中旬〜4月上旬が山です。
- 首都圏の賃貸マンション成約件数は2025年1〜3月期43,607件、7〜9月期31,002件で約1.4倍の差です。
- 中古マンションの売買成約は2年続けて3月が最多・1月が最少で、「1〜3月がまるごと繁忙期」は誤りです。
- 東京23区の賃貸マンション成約㎡単価は2年余りで約14%上昇し、待つ間の賃料上昇が交渉益を打ち消す場面もあります。
- 不動産会社の業務量が薄い「暇な時期」は7〜9月と11月です。
不動産の繁忙期・閑散期はいつ?賃貸・売買・引っ越しで答えが違う
不動産の繁忙期を一語では答えられません。賃貸の成約、売買の成約、引っ越しの実行という3つの指標は、山も谷も別の月に来るからです。「1〜3月が繁忙期、7〜8月が閑散期」と覚えると判断を誤ります。
区別すべきは不動産会社の業務量と成約・入居の実数です。業務量が積み上がるのは1〜3月で間違いありません。しかし実数では1月が売買でも移動者数でも年間最少級で、「忙しいのに決まっていない」月です。決着は3月に来ます。
| 指標 | 出典 | 最も多い月・期 | 最も少ない月・期 | 本記事で使う倍率 |
| 首都圏 賃貸居住用マンションの成約件数 | 東日本レインズ | 2025年1〜3月期 43,607件 | 2025年7〜9月期 31,002件 | 1〜3月期は7〜9月期の約1.4倍 |
| 首都圏 中古マンションの成約件数 | 東日本レインズ | 2025年3月 4,991件 | 2025年1月 3,242件 | 月別の実数で比較(後掲) |
| 全国 市区町村間の移動者数 | 総務省統計局 | 2025年3月 90.5万人 | 2025年11月 31.0万人 | 3月は8月の約2.6倍 |
| 全国 都道府県間の移動者数 | 総務省統計局 | 2025年3月 51万8,532人 | 2025年8月 16万1,506人 | 3月は8月の約3.2倍 |
| 大手引越事業者6社の引越件数 | 国土交通省 | 3月 | 通常月 | 3月は通常月の約2倍 |
表の4つの倍率はすべて別の指標です。約1.4倍はレインズの賃貸マンション成約件数、約2.6倍と約3.2倍は総務省の移動者数、約2倍は国交省の引越件数です。
また、賃貸の成約ピークは引っ越しのピークより約1ヶ月早い点も見落とされます。「不動産の閑散期と引っ越し業者の閑散期は同じ」と言われますが、契約が薄い時期と人が動かない時期は1〜2ヶ月ずれます。
賃貸の繁忙期・閑散期|首都圏の成約件数は1〜3月期が7〜9月期の約1.4倍
賃貸の閑散期は7〜9月期です。首都圏の賃貸居住用マンションの成約件数は、2025年1〜3月期が43,607件、7〜9月期が31,002件でした。1〜3月期は7〜9月期の約1.4倍で、アパートでは約1.6倍です。
| 期 | マンション成約件数 | アパート成約件数 |
| 2025年1〜3月 | 43,607件 | 21,133件 |
| 2025年4〜6月 | 35,728件 | 13,586件 |
| 2025年7〜9月 | 31,002件 | 12,953件 |
| 2025年10〜12月 | 32,031件 | 14,327件 |
| 2026年4〜6月 | 30,293件 | 13,199件 |
成約件数は「募集在庫が動いた量」と読めます。母数が3割違えば、選べる幅と交渉の通りやすさは入れ替わります。
| 優先したいこと | 動く時期 | 得られるもの | 引き受けるトレードオフ |
| 選択肢の多さ | 1〜3月 | 成約件数が最多で、募集在庫も年間で最も厚い時期 | 検討時間が短く、条件交渉は通りにくい |
| 条件交渉の余地 | 7〜9月 | 成約が最少で空室が滞留しやすい | 母数が約3割少なく駅近・築浅が残りにくい |
| 初期費用の総額 | 7〜9月・11月 | 一時金や引っ越し料金の調整余地が出る | 猛暑期の内見と作業の負担 |
| 4月入居が確定している | 前年12月〜1月に着手 | 在庫が出そろう前に優先順位を作れる | 早すぎる申込は入居前の家賃負担が生じる |
比較は家賃だけで行わないほうが確実です。月額が数千円下がっても、初期費用次第で年間支出は逆転します。賃貸契約の初期費用の内訳と抑え方で、時期で動かせる項目を確認してください。
動く月を決めたら、次は入居日からの逆算です。内見・入居審査・退去通知に必要な日数は家探しはいつから始めるか(逆算スケジュール)にまとめています。
不動産売却の繁忙期は3月|「1月も繁忙期」は誤解
不動産売却の繁忙期は3月です。賃貸と違い四半期ではなく単月で山が立ちます。注意すべきは1月が年間で最も成約が少ない月である点で、「1〜3月が繁忙期」は売買に当てはまりません。
| 月 | 2025年 成約件数 | 2026年 成約件数(6月まで公表) |
| 1月 | 3,242件(年間最少) | 3,343件(年間最少) |
| 2月 | 4,152件 | 4,241件 |
| 3月 | 4,991件(年間最多) | 5,001件(年間最多) |
| 4月 | 3,950件 | 3,903件 |
| 5月 | 3,841件 | 3,709件 |
| 6月 | 4,299件 | 4,241件 |
| 7月 | 3,979件 | — |
| 8月 | 3,553件 | — |
| 9月 | 4,475件 | — |
| 10月 | 4,222件 | — |
| 11月 | 4,435件 | — |
| 12月 | 3,975件 | — |
2年続けて3月が最多・1月が最少という形が再現しました。中古戸建も同様で、2025年は3月2,196件が最多、1月1,279件が最少です。
売主にとって意味があるのは成約日ではなく着手日です。媒介契約から広告開始、内見、交渉、契約、決済と進むため、3月成約なら前年10〜12月の媒介契約が要ります。1月に相談を始めると市場に出るのが2月中旬になり、買主が最も動く時期を半分見送ります。
もう一つ、9月と11月にも売買の山があります。2025年は9月4,475件、11月4,435件で3月に次ぐ水準でした。秋の第2ピークは賃貸や引っ越しでは見えませんが売買では実在し、3月を逃した次の出口は9月、着手は6〜7月です。不動産価格指数から売却タイミングを見極める方法と併せて確認すると、市況と季節性を切り分けて判断できます。媒介契約をいつ結ぶかの逆算は、INAの無料相談でもご一緒します。
引っ越しのピークは3月・4月|移動者数は8月の約2.6倍
引っ越しが最も集中するのは3月中旬から4月上旬です。総務省統計局の住民基本台帳人口移動報告では、2025年の市区町村間移動者数は3月90.5万人、8月34.9万人で約2.6倍です。都道府県間では3月51万8,532人、8月16万1,506人と約3.2倍に開きます。
| 月 | 市区町村間移動者数(2025年) |
| 1月 | 32.7万人 |
| 2月 | 35.7万人 |
| 3月 | 90.5万人 |
| 4月 | 68.4万人 |
| 5月 | 38.3万人 |
| 6月 | 37.2万人 |
| 7月 | 39.8万人 |
| 8月 | 34.9万人 |
| 9月 | 36.8万人 |
| 10月 | 38.0万人 |
| 11月 | 31.0万人 |
| 12月 | 35.8万人 |
この表は思い込みを2つ崩します。「夏が閑散期」に対し7月は39.8万人で年間3位です。「秋が第2の繁忙期」に対し9月36.8万人・10月38.0万人は7月を下回り、本当に静かなのは11月と1月です。
国土交通省は2026年1月28日、物流・自動車局貨物流通事業課から引越時期の分散を求める報道発表を出しました。「3月の引越件数は通常月の約2倍」とされ、「例年の最繁忙期である3月中旬〜4月上旬については、ドライバーおよび車両の両方の観点から対応が難しくなってきております」と記されています。件数の根拠は全日本トラック協会による大手引越事業者6社へのヒアリングです。
同じ発表には、時期をずらした利用者の声として「3月末の土日の引越と比べて、引越代金が安くなった」「3月の最終週から引越時期をずらすことで、予約が取りやすくなった」が載っています。ただし金額差は示されていません。「繁忙期は閑散期の何倍」という目安に公的な裏付けはなく、断定を避けます。確実なのは、3月最終週と4月第1週を外すだけで予約の取りやすさが変わることです。
2026年は「閑散期まで待てば安い」が成立しにくい理由
2026年の賃貸市場では、半年待って交渉するより、いま決めたほうが総額で有利になる場面が出ています。待つ間に市場賃料そのものが上がっているからです。
東京23区の賃貸マンション成約賃料は、2024年1〜3月期の10.4万円から2026年4〜6月期は13.2万円です。㎡単価は同じ2年余りで3,410円から3,899円へ約14%上昇しました。季節性を除いた同じ4〜6月期の比較でも、㎡単価は2025年3,705円から5.2%上がっています。一方で首都圏の成約件数は同期間で35,728件から30,293件へ15.2%減りました。取引が細っているのに単価は上がる、空室不足の市場特有の形です。
| 判断材料 | 待つ判断が合理的な場合 | いま決める判断が合理的な場合 |
| 待機期間中の住居費 | 実家など待機コストがほぼゼロ | 現住居の家賃を払い続ける・二重に負担する |
| エリアの募集賃料の動き | 直近1年で横ばい、募集が積み上がっている | 直近1年で㎡単価が上がり募集数が減っている |
| こだわりの数 | 条件が緩く残った部屋でも選べる | 駅距離・階数・築年など譲れない条件が3つ以上 |
| 交渉で狙える額 | 月額の数%を超える調整余地が見えている | 下がっても数千円で待機分の上昇に届かない |
計算の形は単純です。「交渉で下がる月額 × 契約期間」と、「待機月数 × 待機中の住居費」+「その間の市場賃料の上昇分」を並べる。この引き算がプラスにならないなら、待つ理由はありません。閑散期が有利という前提は、市場賃料が動かない時代の経験則です。
閑散期に条件交渉を通すための判断材料と伝え方
閑散期の交渉で結果を分けるのは、熱意ではなく材料です。オーナーが判断しているのは「この条件で決めなかったら、あと何ヶ月空室が続くか」だからです。
| 交渉項目 | 通りやすい条件 | 根拠として使えるもの | オーナー側の受け止め |
| 賃料の減額 | 募集開始から3ヶ月以上経過し相場より高い | 同エリア・同築年帯の成約賃料と㎡単価 | 以後の賃料水準が下がるため抵抗が最も強い |
| 礼金の減額・撤廃 | 繁忙期を越えて残っている部屋 | 募集開始日からの経過月数 | 一時金なので賃料水準を守れ、応じやすい |
| フリーレント | 入居希望日まで日数がある | 空室のまま経過する見込み月数 | 空室損の付け替えで済み合意しやすい |
| 設備の追加・更新 | 築年が古く競合に見劣りする | 近隣の同条件物件の設備仕様 | 資産に残るため中長期で受け入れやすい |
伝え方も材料の有無で変わります。「安くしてください」ではなく、「募集開始から4ヶ月経過し、同じ築年帯の成約賃料は㎡あたり◯円です。礼金をなくしていただければ今週中に申し込みます」と伝えます。オーナーが稟議を通せる形で渡すほど話は早く進みます。家賃の値下げ交渉を成功させる材料の集め方で、集めるべきデータを整理しています。
なお、フリーレントは無条件に得とは限りません。短期解約違約金とセットのことが多く、2年未満の退去で免除分を返す契約もあります。合意前に条項を確認してください。
オーナー・仲介会社から見た不動産の繁忙期と閑散期|募集開始日と閑散期の稼働設計
貸す側の勝負どころは、1〜3月ではなくその前の10〜12月です。1〜3月に決めたい部屋は、12月までに条件と募集図面が整っていなければ在庫が最も厚い時期に比較負けします。
| 時期 | オーナーが決めること・動くこと |
| 7〜9月 | 成約が最少の期。大規模修繕・設備更新・原状回復の単価見直しを前倒しする |
| 10〜11月 | 退去予告が増える時期。募集賃料と一時金を直近の成約実績と突き合わせて確定する |
| 12月 | 募集開始。写真・図面・設備表を差し替え、繁忙期分の広告費枠を確保 |
| 1〜3月 | 問い合わせ数と内見数を週次で確認。2月中に決まらない部屋は条件を1段変える |
| 4〜6月 | 積み残しの原因を賃料・設備・写真・内見動線のどれかに切り分ける |
判断の分岐点は2月末です。1〜3月期に決まらなかった部屋は、次に同じ厚みの需要が来るのが翌年1月で、実質1年近く空くおそれがあります。2月時点で内見がないなら、賃料か、一時金か、写真と設備表か、どれを動かすかが年間収支を左右します。満室維持のための入居者募集の進め方で、判断の順序を整理しています。
仲介会社側の季節配分も同じで、売上は1〜3月に寄り、7〜9月は薄くなります。私たちは繁忙期に人財を消耗させないよう、閑散期に物件データの整備とオーナーへの条件提案を置いています。空室が続く物件の原因分析や募集条件の見直しは、INAの無料相談をご利用ください。
不動産会社が「暇な時期」はいつか|相談・内見が通りやすいタイミング
不動産会社が暇な時期は7〜9月と11月です。成約件数・移動者数のどちらでも谷にあたり、来客も問い合わせも落ち着きます。忙しい時期は1〜3月で、3月は契約・鍵渡し・入居立会いが重なり、1件にかけられる時間は年間で最も短くなります。
注意したいのは、「暇な時期」と「成約が少ない時期」は重なるのに、「忙しい時期」と「成約が多い時期」は重ならないことです。1月は成約実数では年間最少級ですが業務量では繁忙期です。問い合わせと内見が積み上がり、決着が3月に来るためです。
時間をかけて相談したい方には閑散期の平日が向きます。同じ担当者に複数回相談でき、優先順位を一緒に整理できます。エリアの成約事例や、条件を1つ緩めた場合の候補数を出す依頼も通ります。曜日と時間帯の選び方は不動産会社の定休日と来店しやすい曜日にまとめています。
売却も同じです。3月成約なら着手は10〜12月ですが、相談自体は7〜9月にしておくほうが査定の根拠や販売戦略を落ち着いて詰められます。不動産の繁忙期に相談するのではなく、繁忙期に間に合わせるために閑散期に相談する。これが季節性を味方につける最も確実な使い方です。
よくある質問(FAQ)
不動産の繁忙期はいつですか?
3月です。ただし指標で形が違い、賃貸の成約は1〜3月期に山が来るのに対し、売買と引っ越しは3月に集中します。業務量では1〜3月が繁忙期です。
不動産売却の繁忙期はいつですか?
成約は3月がピークで、1月が年間最少です。首都圏の中古マンション成約件数は2025年・2026年とも3月が最多、1月が最少でした。3月成約には前年10〜12月の媒介契約が必要です。
賃貸の閑散期に家賃は本当に下がりますか?
下がる部屋はありますが、2026年は市場賃料自体が上がっており、待った分が相殺されることがあります。東京23区の賃貸マンション成約㎡単価は2年余りで約14%上昇しました。交渉で下がる額と待機中の住居費・賃料上昇分を比べてください。
引っ越し費用が最も高い時期はいつですか?
3月中旬から4月上旬です。国土交通省は3月の引越件数が通常月の約2倍になり、この期間はドライバーと車両の両面で対応が難しいとしています。金額差は公的統計になく断定できませんが、3月最終週を外せば予約は取りやすくなります。
不動産会社が暇な時期はいつですか?
7〜9月と11月です。成約件数と移動者数がともに谷にあたり、来店・問い合わせも落ち着きます。じっくり相談したい方はこの時期に動くと担当者の時間を取りやすくなります。
