東京都品川区の武蔵小山エリアで、総事業費約963億円にのぼる大規模再開発が動き出しています。地上39階建て・約145mの複合タワーを核に、パルム商店街の賑わいを次世代へ継承する街づくりが計画されています。2025年11月に再開発組合の設立が認可され、2033年度の竣工を目指すこのプロジェクトの全容を整理します。
小山三丁目第1地区第一種市街地再開発事業の概要

PRタイムズより引用
小山三丁目第1地区第一種市街地再開発事業は、東京都品川区小山三丁目に位置する約1.4haの区域を対象とした市街地再開発事業です。東急目黒線「武蔵小山」駅の南東側に広がるこのエリアは、木造住宅が密集する地域として防災面の課題を長年抱えてきました。
事業の検討は2011年8月に密集整備の検討協議会が設立されたことに始まります。翌2012年5月には準備組合が発足し、地域住民と関係者による長期的な議論が重ねられました。その後、2022年3月に「武蔵小山賑わい軸地区地区計画」が都市計画決定され、同年7月には市街地再開発事業としても都市計画決定を受けています。そして2025年11月27日に東京都より組合設立認可が下り、同年12月23日に組合設立総会が開催されました。
参加組合員には三菱地所レジデンス株式会社と日鉄興和不動産株式会社が名を連ね、特定業務代行者として株式会社大林組が参画しています。大手デベロッパーとゼネコンが連携する体制は、プロジェクトの規模と信頼性を物語っています。
A-1街区・A-2街区の計画詳細
本事業は、A-1街区とA-2街区の2つの街区で構成されています。建築物の敷地面積は約11,280平方メートル、延床面積は合計約127,000平方メートルにおよびます。それぞれの街区が異なる役割を担うことで、高層住宅と商業機能のバランスを取る設計思想が見て取れます。
A-1街区:地上39階・約145m、住宅約850戸の複合タワー
A-1街区は、地下2階・地上39階建て、高さ約145mの複合タワーです。延床面積は約114,630平方メートルで、住宅約850戸を中心に、店舗・生活支援施設・駐車場が入る計画となっています。武蔵小山エリアではパークシティ武蔵小山ザタワーに続く大規模タワーマンションとなり、街のスカイラインを大きく変える存在になるでしょう。
低層部には商業施設が配置され、パルム商店街からの人の流れを自然に取り込む動線が計画されています。住宅フロアでは多世代対応の間取りが想定されており、単身者からファミリー層まで幅広い居住ニーズに応える構成です。
A-2街区:地上3階・約20mの低層棟
A-2街区は、地下2階・地上3階建て、高さ約20mの低層棟です。延床面積は約9,220平方メートルで、店舗や生活支援施設を中心とした構成になっています。高層タワーのA-1街区とは対照的に、周辺の既存市街地との調和を意識した低層設計が採用されています。
この低層棟の存在が、再開発エリアと既存の街並みとの「緩衝帯」として機能する点は注目に値します。急激な景観変化を避けながら、新旧の街並みをつなぐ役割を担います。
パルム商店街の魅力を継承する「賑わい先導地区」の街づくり
武蔵小山といえば、全長約800mのアーケードを誇るパルム商店街が街の顔です。本再開発事業は、このパルム商店街の入口に面した立地にあり、商店街の賑わいをどう継承するかが計画の核心となっています。
品川区の「武蔵小山街並み誘導指針」では、武蔵小山駅と旧平塚小学校跡地(スクエア荏原)をつなぐ軸を「賑わいの軸」と位置づけています。本事業地はその起点にあたる「賑わい先導地区」として、街全体の回遊性を高める要の役割を期待されています。
具体的には、2階レベルにギャラリー・デッキが整備され、歩行者の回遊性を立体的に向上させる計画です。デッキレベルの歩行者通路は幅員3メートルから3.5メートルで複数ルートが設けられ、商店街との行き来がスムーズになります。さらに、広場1号(約350平方メートル)、広場2号(約500平方メートル)、広場3号(約480平方メートル)の計約1,330平方メートルにおよぶ広場空間が整備されます。イベントや憩いの場として、地域コミュニティの結節点になることが期待されます。
しかし、商店街との共存は計画だけでは実現しません。再開発後の低層部に入るテナント構成や、商店街既存店舗との連携施策が、街の魅力を維持できるかどうかの鍵を握ります。今後の具体的なテナント計画や商店街組合との協議の動向に注目が必要です。
密集市街地更新と防災性向上の仕組み
武蔵小山駅周辺は、品川区が定める木造住宅密集地域のひとつです。老朽化した木造建築が密集し、地震時の倒壊や火災延焼のリスクが指摘されてきました。本再開発事業は、こうした防災課題を根本から解決するための都市更新としても位置づけられています。
道路整備は事業の重要な柱です。補助第26号線の拡幅(幅員約12.5メートルから13.5メートル、延長約128メートル)が実施されます。あわせて、地区幹線道路である特別区道I-第218号線の拡幅(幅員約8.0メートル、延長約108メートル)も行われます。これにより、緊急車両の通行や避難経路の確保が大幅に改善されます。
加えて、区画道路(特別区道I-第163号線)の整備、防災広場と防災備蓄倉庫の導入も計画に盛り込まれています。地下車路の整備により、商店街周辺における歩行者と車両の交錯を抑制する点も見逃せません。歩道状空地の整備と合わせ、日常の安全性と災害時の防災性を同時に高める設計です。
だからこそ、この再開発は単なる住宅供給プロジェクトとしてではなく、エリア全体の安全性を底上げする防災事業として評価すべきでしょう。不動産オーナーにとっても周辺地域の資産価値に影響する重要な動きです。
事業スケジュールと今後の注目ポイント
現在の事業スケジュールは以下のとおりです。
- 2025年11月: 再開発組合設立認可(済)
- 2027年度: 権利変換計画認可(予定)
- 2029年度: 工事着手(予定)
- 2033年度: 竣工(予定)
2027年度に予定されている権利変換計画の認可は、地権者の権利がどのように新しい建物に置き換えられるかを確定する重要な節目です。この段階で事業計画の具体的な内容がより明確になります。
工事着手から竣工まで約4年間を見込んでおり、工事期間中は周辺の交通や生活環境への影響も想定されます。武蔵小山エリアで不動産の売買や賃貸を検討している方は、このスケジュールを念頭に置いた判断が求められます。
むしろ注目すべきは、竣工後の街の姿です。約850戸の住宅供給は周辺の賃貸市場や中古マンション市場に少なからず影響を与えます。一方で、商業施設の充実や防災性の向上はエリア全体の魅力を高める要素です。需給バランスと街の付加価値向上の両面から、長期的な視野で市場動向を見守ることが重要です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 武蔵小山・小山三丁目再開発のタワーマンションはいつ頃入居開始になりますか?
現時点のスケジュールでは2033年度の竣工が予定されています。入居時期は竣工後となりますが、具体的な分譲開始時期や価格帯については、参加組合員である三菱地所レジデンスおよび日鉄興和不動産からの今後の発表をお待ちください。
Q2. パルム商店街への影響はありますか?
本事業はパルム商店街の入口に面しており、商店街の賑わいを継承する「賑わい先導地区」として計画されています。2階レベルのデッキ整備や約1,330平方メートルの広場空間により、商店街への回遊性はむしろ向上する設計です。工事期間中の一時的な影響は想定されますが、完成後は商店街との相乗効果が期待されます。
Q3. 周辺の不動産価格への影響はどう見ればよいですか?
大規模再開発は一般的にエリアのブランド価値を高め、周辺不動産の価格にプラスの影響を与える傾向があります。しかし、約850戸の新規住宅供給は周辺の中古マンション市場に競合として作用する可能性もあります。購入・売却のタイミングは、事業スケジュールと市場環境を総合的に判断することが大切です。
Q4. 総事業費963億円の財源はどのように賄われますか?
第一種市街地再開発事業では、保留床の処分金(分譲住宅や商業床の売却益)が主な財源となります。加えて、国や東京都、品川区からの補助金が活用されます。参加組合員として三菱地所レジデンスと日鉄興和不動産が参画しており、事業の資金的な裏付けは確保されています。