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アパート経営で相続税対策|評価減の仕組みと注意点

アパート経営が相続税対策になる仕組みを、貸家建付地・小規模宅地の特例・債務控除から解説。現金相続との比較や空室・借入リスク、成功のポイントまで正直にお伝えします。

最終更新: 約10分で読めます

アパート経営は、日本の税制上、相続税対策として認められた有効な手段のひとつです。同じ資産価値であっても、現金のまま相続するのとアパートに組み替えて相続するのとでは、相続税評価額に大きな差が生まれます。私自身、不動産の取得から管理までを一貫して手がけるなかで、この評価差を正しく理解しないまま対策に踏み切り、かえって資産を毀損してしまう方を数多く見てきました。本記事では、その仕組みと実践のポイントを、メリットだけでなくリスクも含めて正直に解説します。

アパート経営はなぜ相続税対策になるのか

アパート経営が節税につながる理由は、感覚的な「なんとなくお得」ではなく、相続税評価のルールに根拠があります。現金は額面がそのまま評価額になりますが、不動産は評価方法が異なるため、実際の取得額よりも低く評価される余地があります。この評価差こそが、アパート経営による相続税対策の本質です。ここでは、その節税を支える3つの仕組みを順に整理します。

貸家建付地としての土地の評価減

アパートが建つ土地は「貸家建付地」として評価されます。評価額は原則として「路線価による自用地評価額 ×(1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)」で算出され、更地よりも低くなります。借地権割合は土地ごとに30〜90%の範囲で定められ、住宅地では60〜70%が目安、借家権割合は全国一律で原則30%です。入居者がいることで土地の自由な処分が制約される分、評価が下がるという考え方です。

小規模宅地等の特例による減額

賃貸物件が建つ土地は「貸付事業用宅地等」として、小規模宅地等の特例の対象になり得ます。一定の要件を満たせば、200㎡までの部分について評価額を50%減額できます。ただし、相続開始前おおむね3年以内に新たに貸付事業を始めた宅地は原則として対象外となるなど、適用には細かな要件があります。駆け込みでの取得は特例が使えない可能性があるため、早めの検討が欠かせません。

借入金による債務控除

アパートを借入で建てた場合、相続開始時に残っているローン残高は、原則として相続財産から差し引ける「債務控除」の対象になります。建物は時価より低い固定資産税評価額で評価される一方、借入金は残高がそのまま控除されるため、この差が評価圧縮につながります。ただし、これは「借金をすれば得をする」という話ではありません。返済は家賃収入で行うものであり、借入は節税の手段であると同時に、長期にわたって背負う責任でもあります。

現金相続とアパート経営の比較シミュレーション

仕組みだけでは実感が湧きにくいため、簡略化した比較で評価差のイメージをつかみましょう。ここでは子ども1人・配偶者なし、5,000万円の資産を相続するケースを想定します。なお、これはあくまで考え方を示す概算であり、実際の税額は土地の路線価・面積・特例要件によって大きく変わります。

項目現金5,000万円を相続アパートに組み替えて相続(概算)
相続税評価額の目安5,000万円(額面どおり)建物・土地の評価減で圧縮
基礎控除3,000万円 + 600万円 × 法定相続人1人 = 3,600万円
課税遺産総額の目安約1,400万円基礎控除以下となる場合もある
相続税の目安約160万円大幅減、条件次第で0円も

同じ5,000万円でも、現金のままか不動産に組み替えるかで税負担が変わり得ることが分かります。ただし、評価が下がるということは、それだけ流動性や換金性を手放すということでもあります。節税額だけを見て判断するのではなく、家族が本当に不動産を引き継げるのかまで含めて考えることが大切です。

アパート経営で相続税対策を行うメリット

幅広い土地で活用しやすい

アパートは、工業専用地域や一部の市街化調整区域などを除けば、多くの用途地域で建築が可能です。木造や軽量鉄骨造を選べば建築コストを抑えやすく、比較的小さな土地でも土地活用の選択肢になります。相続で受け継いだ土地を遊ばせておくより、収益を生む資産へ転換できる点は大きな利点です。

節税と家賃収入を両立できる

相続税対策は本来、支出をともなう対策が多いなかで、アパート経営は節税をしながら毎月の家賃収入も見込めるという二重の効果があります。受け取った家賃を修繕積立や次世代への資金準備に回すことで、対策そのものが資産形成につながります。

事業系の土地活用より需要が読みやすい

店舗やオフィスなど事業系の活用はテナント誘致の巧拙に収益が左右されますが、住まいの需要は景気変動の影響を受けにくく、立地さえ見極めれば相対的に安定しやすい点が特徴です。とはいえ「住宅需要は必ずある」と過信するのは危険で、あくまでエリアごとの需給を冷静に見る姿勢が求められます。

見落としてはならないリスクと注意点

私たちは、信頼と正直さを何より大切にしています。だからこそ、メリットと同じ熱量でデメリットもお伝えします。相続税対策としてのアパート経営が失敗するのは、たいてい税額だけを見て事業性を軽視したときです。

空室リスクと家賃下落

評価減の効果は入居状況と連動し、空室が多ければ賃貸割合が下がって節税効果も薄れます。加えて、築年数の経過とともに家賃が下落し、返済計画が狂うことも珍しくありません。「相続税は減ったが、毎月の収支は赤字」では本末転倒です。需要のあるエリアで、長く選ばれる建物を持つことが大前提になります。

過大な借入と相続後の返済負担

節税のために身の丈を超えた借入を行うと、相続した家族が返済に苦しむことになります。借入は節税の道具であると同時に、次世代へ引き継ぐ債務でもあります。金利が上昇する局面では返済負担が増すため、余裕を持った資金計画が欠かせません。

サブリース契約の見極め

空室不安からサブリース(一括借上げ)を選ぶ方も多いですが、保証賃料は相場より一定割合低く設定されるのが通常で、収益性は下がります。また、契約期間中に保証賃料が見直される条項も一般的です。安心を得る対価としてどれだけの収益を手放すのか、契約書を精読したうえで判断してください。

相続税対策を成功させる実践ポイント

入居率を維持できる良質なアパートを選ぶ

相続時の評価減は、満室に近い状態でこそ効果を発揮します。目先の建築費の安さより、長期的に選ばれる立地・間取り・管理体制を重視することが、結果的に節税と収益の両方を守ります。これは「長期的視野」というINAの価値観そのものです。

土地は自己資金、建物は借入という組み立て

収益を生みにくい土地の取得までローンに頼ると、返済負担が重くなりがちです。土地は自己資金で、建物は借入で調達する構成が、家賃収入による返済と節税効果のバランスを取りやすい定石です。自己資金と借入の比率は、金利や収支見通しを踏まえて個別に設計します。

分割方針を遺言などで事前に定める

不動産は現金のように簡単には分けられないため、複数の相続人がいると分割トラブルの火種になります。誰がアパートを引き継ぐのかを遺言書などで明確にしておくことが、家族の平穏を守る最良の準備です。関わる全員の幸せを考えるなら、税額の最適化と同じくらい、円満な承継の設計に時間をかける価値があります。

実行までの流れと専門家の関わり方

相続税対策としてのアパート経営は、思い立ってすぐ着手するものではありません。順序を誤ると特例が使えなかったり、収支が破綻したりします。おおまかな流れは次のとおりです。

  1. 資産全体の棚卸しと相続税額の試算(現状把握)
  2. 対象となる土地の立地・需給・法規制の調査
  3. 建築計画と長期の収支・返済シミュレーション
  4. 特例適用の可否と要件の確認
  5. 分割・承継方針の設計(遺言書など)
  6. 着工・入居募集・運営開始

この過程では、税理士・不動産・建築・金融の知見が横断的に必要になります。ひとつの専門分野だけで判断すると、税務では最適でも事業として破綻する、といった片手落ちが起こりがちです。私たちは、取得から管理までを自社で一貫して担うからこそ、部分最適ではなく全体最適の視点で助言できると考えています。

INA&Associatesの視点とまとめ

アパート経営による相続税対策は、正しく設計すれば資産を守り、次世代へ引き継ぐ強力な手段になります。しかし、その効果は「良い賃貸経営が続くこと」を前提にしています。節税は目的ではなく、健全な資産承継の結果として得られるものだと私は考えています。

だからこそ私たちは、税額の圧縮だけを売り文句にする提案には与しません。人財こそ最大の資産であるという信念のもと、お客様一人ひとりの家族構成や想いに寄り添い、メリットもデメリットも正直にお伝えしたうえで、長く安心して持ち続けられる資産の形を一緒に描きます。不動産市況や税制の全体像については、ina-networkのカテゴリ一覧もあわせてご覧ください。

よくある質問

アパート経営はなぜ相続税対策になるのですか

アパートが建つ土地は貸家建付地として更地より低く評価され、要件を満たせば小規模宅地等の特例で200㎡まで50%の減額も受けられます。さらに建物は固定資産税評価額で評価され、借入残高は債務控除の対象になるため、現金で保有するよりも相続税評価額を圧縮しやすくなります。

借地権割合と借家権割合はどう違うのですか

借地権割合は土地ごとに相続税路線価図で30〜90%の範囲で定められる地域固有の割合で、借家権割合は原則として全国一律30%です。貸家建付地の評価減では、この2つを賃貸割合と組み合わせて計算します。

小規模宅地等の特例はどんな場合に使えますか

賃貸物件の敷地である貸付事業用宅地等について、一定の要件を満たす場合に200㎡まで50%減額できます。相続開始前おおむね3年以内に始めた貸付事業は原則対象外となるなど例外があり、相続開始から10か月以内の申告期限までに特例を記載した申告手続きを行う必要があります。詳細は税理士にご確認ください。

サブリースにすれば相続税対策として安心ですか

サブリースでも入居状況が保たれれば評価減の効果自体は得られます。ただし保証賃料は相場より低く設定されるのが一般的で収益性が下がり、保証賃料の見直し条項もあります。安心と引き換えに手放す収益を理解したうえで、収益と節税のバランスを慎重に判断してください。

Daisuke Inazawa, President & CEO of INA&Associates Inc.

著者

代表取締役社長 / CEOINA&Associates株式会社

INA&Associates株式会社 代表取締役社長。首都圏・近畿圏を中心に不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントを統括。収益不動産投資戦略と超富裕層向け不動産コンサルティングを専門領域とする。

稲澤 大輔(いなざわ・だいすけ)は、INA&Associates株式会社の代表取締役社長(CEO)。大阪本店・東京営業所を拠点に、首都圏・近畿圏における不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントの三事業を統括する。

専門領域は、収益不動産の投資戦略立案、賃貸経営の収支最適化、超富裕層(UHNWI)・機関投資家向け不動産コンサルティング、およびクロスボーダー不動産投資。国内外の投資家に対し、データと長期視点に基づくアドバイザリーを提供している。

「企業の最も重要な資産は人財である」を経営理念に掲げ、人財投資カンパニーとして持続可能な企業価値の創造に取り組む。経営者として、変化の時代におけるリーダーシップのあり方と組織文化についても積極的に発信を続けている。

合格・取得資格は11種:宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、管理業務主任者、賃貸不動産経営管理士、行政書士、個人情報保護士、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者。

  • 宅地建物取引士
  • 公認不動産コンサルティングマスター
  • マンション管理士
  • 管理業務主任者
  • 賃貸不動産経営管理士
  • 行政書士
  • 個人情報保護士
  • 甲種防火管理者
  • 競売不動産取扱主任者
  • マンション維持修繕技術者
  • 貸金業務取扱主任者