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空室・空き家の固定資産税リスク管理|特定空家で最大6倍になる仕組みと対策

空室や空き家でも固定資産税は課税されます。放置して特定空家等や管理不全空家等の勧告を受けると住宅用地特例が外れ、土地の固定資産税は最大約6倍に。軽減の仕組みと稼働維持・活用・売却の判断基準を、総務省・国交省の一次情報をもとにオーナー向けに整理します。

最終更新: 約17分で読めます

空室や空き家であっても、所有しているだけで土地・建物には固定資産税(市街化区域なら都市計画税も)が課税されます。そして最も注意すべきは、放置して「特定空家等」や「管理不全空家等」に指定され、市区町村から勧告を受けた場合です。勧告を受けると土地の「住宅用地特例」が外れ、土地の固定資産税の課税標準が最大で6倍(都市計画税は3倍)に膨らむおそれがあります。だからこそ、稼働を維持するか、活用するか、売却・解体で手放すかを早めに判断することが、空室・空き家の固定資産税リスク管理の要になります。

この記事のポイント

  • 空室・空き家でも固定資産税と都市計画税は課税され、使っていなくても所有者に納税義務があります。
  • 住宅が建つ土地は住宅用地特例で軽減されており、小規模住宅用地(200平方メートル以下)は固定資産税の課税標準が6分の1、都市計画税は3分の1になります。
  • 空家等対策特別措置法に基づき特定空家等・管理不全空家等に指定され勧告を受けると、この特例が外れ、土地の固定資産税負担が最大で約6倍に増えるおそれがあります。
  • 税額の実際の上がり幅は負担調整措置や自治体の設定によって変わるため、金額は目安として捉え、自治体の課税明細で確認することが大切です。
  • リスク管理の基本は「稼働維持・活用・売却/解体」の三択を、物件の状態・立地・手元資金から早めに選ぶことです。

空室・空き家でも固定資産税はかかるのか?

結論から申し上げると、空室でも空き家でも固定資産税はかかります。固定資産税は、その年の1月1日時点で土地・家屋・償却資産を所有している人に課される市町村税です。入居者がいるかどうか、実際に住んでいるかどうかは課税の有無に関係しません。所有権がある限り、使っていない不動産にも毎年課税されます。

まず押さえておきたいのは、空室と空き家では、リスクの意味合いが少し異なるという点です。空室は「賃貸に出しているが今は借り手がいない状態」であり、稼働率を戻せば収益に転じます。一方の空き家は「そもそも人が住んでおらず、活用も止まっている状態」で、放置期間が延びるほど税と管理の両面で負担がじわじわと重くなります。空室対策の詳しい考え方は、空室が埋まらない賃貸物件に共通する原因と解決策もあわせてご覧ください。

固定資産税・都市計画税の基本の仕組み

固定資産税の税額は、次の式で計算します。

固定資産税額 = 課税標準額 × 標準税率1.4%

課税標準額は、原則として固定資産の評価額をもとに決まります。総務省の資料でも、固定資産税の標準税率は1.4%と示されており、市町村はこれと異なる税率を条例で定めることもできます。評価額は3年ごとの評価替えで見直され、そのつど税額も変動します。自分の物件の評価額や課税標準は、毎年春に届く課税明細書、または市区町村の固定資産課税台帳で確認できます。

市街化区域内の土地・家屋には、これに加えて都市計画税が課税されます。都市計画税の税率は上限0.3%で、これも自治体によって差があります。固定資産税と都市計画税は一枚の納税通知書でまとめて請求されるため、「固定資産税」と一括りに語られがちですが、軽減の割合が別々に決まっている点は後ほど詳しく整理します。評価額そのものの調べ方は、固定資産税評価額の計算式・調べ方の解説が参考になります。

「空室だから減税される」という誤解

ときどき、「空室なら収益がないので固定資産税も安くなるはず」という声を聞きます。しかし、固定資産税は収益に対してではなく、資産の保有そのものに対して課される税です。稼働していなくても税額は変わりません。むしろ空室・空き家は、収入が止まっているのに税と管理費だけが出ていく「持ち出し」の状態になりやすく、キャッシュフローの観点ではもっとも避けたい局面だといえます。

住宅用地特例とは?空き家が受けている軽減の正体

空き家の固定資産税を理解するうえで欠かせないのが「住宅用地特例」です。これは、住宅が建っている土地について、固定資産税・都市計画税の課税標準額を大きく引き下げる制度です。総務省の資料によると、軽減割合は次のとおり定められています。

区分面積の範囲固定資産税の課税標準都市計画税の課税標準
小規模住宅用地住宅1戸あたり200平方メートル以下の部分評価額の6分の1評価額の3分の1
一般住宅用地200平方メートルを超える部分評価額の3分の1評価額の3分の2

ポイントは、この軽減が「住宅が建っている土地」に対して認められている、という点です。つまり、古くて誰も住んでいない空き家であっても、住宅として建物が残っていれば、その土地は住宅用地特例の対象になり、更地よりも土地の税負担が軽く抑えられています。空き家を壊さずに残しておく人が多い理由の一つが、この特例です。

なぜ更地より建物付きの土地のほうが安いのか

更地(建物のない土地)には住宅用地特例が適用されません。そのため、同じ広さ・同じ評価額でも、更地は住宅が建つ土地に比べて固定資産税の課税標準が高くなります。老朽化した空き家を解体して更地にした途端、翌年から土地の固定資産税が跳ね上がって驚く、という相談は少なくありません。更地・空き地の税負担の考え方は、更地の固定資産税と土地活用戦略の解説で具体的に整理しています。

ただし、「壊さないほうが得」と単純に決めつけるのは危険です。次に説明するとおり、空き家を放置したまま状態が悪化すると、建物を残していても住宅用地特例そのものが外れてしまう制度があるからです。

特定空家等・管理不全空家等に指定されると何が変わるのか

空き家の税負担を左右する最大の分岐点が、空家等対策の推進に関する特別措置法(空家対策特別措置法)です。この法律は平成27年に施行され、令和5年12月13日には改正法が施行されて、規制の網が一段と広がりました。ここで登場するのが「特定空家等」と、改正で新設された「管理不全空家等」という二つの区分です。

特定空家等・管理不全空家等とは

特定空家等とは、そのまま放置すれば倒壊など著しく保安上危険となるおそれのある状態、著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われず著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全のために放置が不適切な状態にある空き家を指します。要するに、すでに周囲に危険や迷惑を及ぼしている、あるいは及ぼしかねない空き家です。

これに対し、令和5年の改正で加わった管理不全空家等は、適切な管理が行われないことにより、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態の空き家を指します。特定空家等の一歩手前の段階です。改正前は特定空家等に至って初めて行政が動けましたが、改正後は「予備軍」の段階から指導・勧告ができるようになり、税の優遇が外れるタイミングも早まった、という点が実務上とても重要です。

助言・指導から勧告・命令・代執行までの流れ

行政の対応は、いきなり重い措置に飛ぶわけではありません。おおむね次の順で段階的に進みます。

  • 助言・指導:状態の改善を促す最初の働きかけ。
  • 勧告:指導しても改善しない場合に、期限を示して具体的な対応を求める段階。この勧告を受けた時点で、土地の住宅用地特例が外れます。
  • 命令:勧告に従わない場合の法的な命令。従わなければ過料の対象になり得ます。
  • 行政代執行:それでも放置される場合に、行政が所有者に代わって解体などを行い、その費用を所有者に請求する最終手段。

国土交通省の資料でも、勧告を受けると当該空き家の敷地にかかる固定資産税等の住宅用地特例が解除され、所有者は空き家にかかる税の軽減を受けられなくなる、と示されています。特定空家等だけでなく、管理不全空家等でも勧告に至れば特例が外れる点が、令和5年改正の核心です。

特例が外れると税額はどう変わるのか

住宅用地特例が外れると、土地の課税標準の軽減がなくなります。小規模住宅用地であれば、固定資産税の課税標準は6分の1から本来の評価額へ戻るため、課税標準ベースで最大6倍になります。都市計画税も3分の1から本来の額へ戻り、こちらは3倍です。イメージとしては次のとおりです。

状態固定資産税の課税標準(小規模住宅用地)都市計画税の課税標準
通常(特例あり)評価額 × 6分の1評価額 × 3分の1
勧告後(特例なし)評価額 × 1(=最大6倍)評価額 × 1(=最大3倍)

負担が増えるタイミングも押さえておきたい点です。固定資産税はその年の1月1日時点の状況で課税されるため、勧告を受けても、その効果は原則として次の賦課期日(翌年の1月1日)を基準にした課税から反映されます。裏を返せば、勧告を受けても年内に状態を是正し、勧告が撤回されれば、特例を保てる可能性があるということです。行政は段階を踏んで動くので、助言・指導の通知が届いた時点で対応すれば、勧告や特例除外に進む前に食い止める余地は十分にあります。「通知が来てから慌てる」のではなく、「通知が来る前に手を打つ」姿勢が、結果的に税負担を最も軽くします。

ここで一つ補足があります。実際の納税額がそのまま6倍になるとは限りません。土地の固定資産税には、税額の急な上昇を和らげる「負担調整措置」が設けられており、特例が外れた年からいきなり満額課税されるわけではない場合があります。また、更地化した場合と建物を残した場合とでは建物分の税の扱いも変わります。したがって、6倍・3倍という数字はあくまで課税標準ベースの目安であり、最終的な税額は物件の評価額や自治体の運用によって差が出ます。金額を見積もる際は、自治体の課税明細や窓口で確認することをおすすめします。

空室・空き家の固定資産税リスクをどう管理するか

ここからが実務です。空室・空き家の固定資産税リスク管理は、「稼働を維持する」「活用する」「売却・解体で手放す」の三つの方向から、物件の状態と立地、そして手元資金を見て選ぶことに尽きます。まずは大枠の判断軸を表で整理します。

物件の状態・立地基本方針主な手段
状態が良く賃貸需要がある稼働維持・活用入居募集の見直し、リフォーム、賃貸・事業用への転用
建物は古いが立地に需要がある活用または売却リノベーション、更地化して土地活用、現況のまま売却
需要が乏しく管理も難しい売却・処分空き家バンク登録、隣地への売却、相続土地国庫帰属制度の検討
危険な状態が進んでいる早期の解体・処分解体、専門業者への管理委託、勧告前の是正

稼働を維持する(空室対策)

賃貸物件として使える状態であれば、まず取り組みたいのが稼働維持です。空室が続く物件には、家賃設定、募集条件、物件の見せ方、管理会社の動きのいずれかに原因があることがほとんどです。空室は「立地が悪いから」で片付けず、募集の入口を一つずつ点検すると改善の糸口が見えます。稼働率が戻れば固定資産税は家賃収入で十分に賄え、税負担は「持ち出し」から「経費」へと性格が変わります。

賃貸中の物件の固定資産税は経費として扱える点も見逃せません。賃貸経営における固定資産税の位置づけは、賃貸経営の固定資産税と軽減措置の解説で確認しておくと、収支計画が立てやすくなります。空室にお悩みのオーナー様は、INAの無料相談で募集戦略の見直しからご一緒することもできます。

活用する(賃貸・事業用・空き家バンク)

今は住んでいない空き家でも、立地や状態によっては収益源に変えられます。戸建て賃貸として貸し出す、事務所やシェアスペースに転用する、駐車場として土地を使うなど、選択肢は物件ごとに異なります。活用の型と収益の考え方は、空き家活用で収益を得る方法の解説にまとめています。

自治体が運営する空き家バンクへ登録し、買い手・借り手とつなぐ方法もあります。活用によって稼働状態に戻せば、特定空家等・管理不全空家等に指定されるリスクそのものを下げられます。「税負担を減らす」ことと「資産を活かす」ことが同時に進むのが、活用という選択肢の強みです。

売却・解体で手放す

需要が乏しく、活用のあてもない空き家は、抱え続けるほど税と管理の負担が積み上がります。状態が比較的良く立地に需要があるうちに売却すれば、固定資産税・管理コスト・近隣トラブルのリスクをまとめて手放せます。売却の入口としては、空き家バンクの活用も一手です。制度の使い方は空き家バンクで売却するメリット・デメリットで整理しています。

実際のご相談でも、地方の実家を相続した方が「固定資産税が安いから」と数年空き家のまま持ち続け、劣化が進んで庭木や外壁が近隣から指摘される段階まで来てしまう、というケースは珍しくありません。この状態で解体を検討すると、解体費に加えて更地化後に上がる土地の税負担も重なり、判断がいっそう難しくなります。動けるうちに、賃貸・売却・解体の見込みを並べて比べておくことが、選択肢を狭めない鍵になります。

解体して更地にする場合は、前述のとおり住宅用地特例が外れて土地の税負担が上がる点に注意が必要です。解体費用と、更地化後に上がる税額、そして売却・活用の見込みを並べて比べ、「壊す・残す・売る」のどれが手元に多く残るかで判断します。感覚ではなく数字で比べることが、後悔しない処分につながります。

放置がもたらす税以外のリスク

空き家の放置で怖いのは、固定資産税だけではありません。むしろ税負担は、放置がもたらすリスクの一部にすぎない、と捉えておくほうが実態に近いです。

第一に、管理コストが継続的にかかります。庭木の剪定、建物の点検、通水や換気などを怠ると老朽化が早まり、結果的に是正費用や解体費用が膨らみます。第二に、近隣とのトラブルです。雑草や害虫、ごみの不法投棄、外壁材の落下などは、周辺の生活環境を損ない、特定空家等の判断材料にもなります。

第三に、損害賠償のリスクがあります。屋根や外壁が崩れて通行人や隣家に被害を与えれば、所有者が責任を問われる可能性があります。第四に、相続との絡みです。所有者が亡くなり相続登記が済まないまま放置されると、権利関係が複雑になり、いざ売ろうとしても動けなくなります。空き家を安全に維持するための管理の勘所は、空き家管理の4つのポイントもあわせてご確認ください。

オーナーが今すぐ確認すべきチェックリスト

最後に、空室・空き家を持つオーナーが、税リスクを管理するために手元で確認したい項目を挙げます。難しい判断の前に、まず現状を数字と事実で押さえることが出発点になります。

  • 課税明細書で、土地・建物それぞれの評価額と課税標準、住宅用地特例の適用状況を確認する。
  • 市街化区域内かどうか、都市計画税がかかっているかを確認する。
  • 建物の劣化状況(屋根・外壁・雨漏り・傾き)を点検し、危険な兆候がないか記録する。
  • 自治体から助言・指導・勧告などの通知が来ていないかを確認する。
  • 周辺の賃貸・売却の相場を調べ、稼働維持・活用・売却のどれに勝機があるかを比べる。
  • 解体する場合の費用と、更地化後に上がる税額を試算しておく。
  • 相続が絡む場合は、登記の状況と共有者の意向を早めに整理する。

これらを一度棚卸しするだけで、「なんとなく放置」から「根拠を持って判断」へと一歩進めます。判断に迷う段階でご相談いただければ、稼働維持・活用・売却のどれが手元に残るか、数字を並べて一緒に検討します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 空室や空き家でも固定資産税はかかりますか?

はい、空室・空き家でも固定資産税はかかります。固定資産税はその年の1月1日時点の所有者に課され、実際に使っているかどうかは問いません。市街化区域内であれば都市計画税も加わります。収益が止まっていても税は発生するため、稼働維持や活用で持ち出しを減らす発想が大切です。

Q2. なぜ空き家の固定資産税が最大6倍になると言われるのですか?

特定空家等や管理不全空家等に指定され勧告を受けると、土地の住宅用地特例が外れるためです。小規模住宅用地では固定資産税の課税標準が6分の1から本来の額へ戻り、課税標準ベースで最大6倍になります。ただし負担調整措置や自治体の運用で実際の税額の上がり幅は変わるため、金額は目安として自治体で確認してください。

Q3. 特定空家等と管理不全空家等はどう違いますか?

管理不全空家等は、放置すれば特定空家等になるおそれのある一歩手前の状態を指します。令和5年12月施行の改正で新設され、この段階でも指導・勧告の対象になります。勧告に至れば住宅用地特例が外れるため、特定空家等になる前の早めの是正が重要です。

Q4. 解体して更地にすれば税負担は下がりますか?

必ずしも下がりません。更地には住宅用地特例が適用されないため、解体後は土地の固定資産税の課税標準が上がることが一般的です。解体費用、更地化後の税額、売却や土地活用の見込みを並べて比べ、手元に多く残る選択肢を選ぶことをおすすめします。

引用・参考資料

Daisuke Inazawa, President & CEO of INA&Associates Inc.

著者

代表取締役社長 / CEOINA&Associates株式会社

INA&Associates株式会社 代表取締役社長。首都圏・近畿圏を中心に不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントを統括。収益不動産投資戦略と超富裕層向け不動産コンサルティングを専門領域とする。

稲澤 大輔(いなざわ・だいすけ)は、INA&Associates株式会社の代表取締役社長(CEO)。大阪本店・東京営業所を拠点に、首都圏・近畿圏における不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントの三事業を統括する。

専門領域は、収益不動産の投資戦略立案、賃貸経営の収支最適化、超富裕層(UHNWI)・機関投資家向け不動産コンサルティング、およびクロスボーダー不動産投資。国内外の投資家に対し、データと長期視点に基づくアドバイザリーを提供している。

「企業の最も重要な資産は人財である」を経営理念に掲げ、人財投資カンパニーとして持続可能な企業価値の創造に取り組む。経営者として、変化の時代におけるリーダーシップのあり方と組織文化についても積極的に発信を続けている。

合格・取得資格は11種:宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、管理業務主任者、賃貸不動産経営管理士、行政書士、個人情報保護士、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者。

  • 宅地建物取引士
  • 公認不動産コンサルティングマスター
  • マンション管理士
  • 管理業務主任者
  • 賃貸不動産経営管理士
  • 行政書士
  • 個人情報保護士
  • 甲種防火管理者
  • 競売不動産取扱主任者
  • マンション維持修繕技術者
  • 貸金業務取扱主任者