木造建築の建築費は1平方メートルあたり約23.3万円(坪あたり約76.9万円)で、鉄筋コンクリート造の約41.0万円に対しておよそ4割安い水準です。これは国土交通省「建築着工統計調査報告(令和7年計分)」の総括表から、工事費予定額を着工床面積で割って算出した実数値です。
「木造は安い」「木は環境に良い」という説明は数多くありますが、いくら安いのかを一次データで示した記事はほとんどありません。この記事は、これから家を建てる方、賃貸物件や非住宅の建物を木造で計画する事業者の方に向けて、構造別の坪単価、税金と保険の差、2025年4月に施行された法改正、2026年度に使える補助金までを、すべて公的資料の数値で整理したものです。感覚ではなく金額と制度で判断したい方に読んでいただきたい内容です。
この記事のポイント
- 木造の㎡単価は約23.3万円、RC造は約41.0万円。木造はRC造の約57%で、差は約43%です(建築着工統計 令和7年計より算出)。
- 令和7年の新設住宅着工740,667戸のうち木造は433,974戸(58.6%)、床面積では66.4%を占めます。
- 一方で非住宅建築物の木造率は9.6%、4階建て以上の中高層は0.1%以下にとどまり、木造ビルはまだ市場の入口にあります。
- 法定耐用年数は木造22年・RC造47年。築22年超の中古木造は簡便法で4年償却となり、年間の償却額は新築木造の約2.7倍になります。
- 2026年度は「みらいエコ住宅2026事業」でGX志向型110万円(寒冷地125万円)などの補助があり、長期優良住宅とZEH水準住宅では古家除却で20万円が加算されます。
木造建築の費用はいくらか|構造別の坪単価を一次データで比較する
結論から申し上げると、木造の建築費は1㎡あたり約23.3万円、坪あたり約76.9万円です。同じ計算方法で求めた鉄筋コンクリート造は1㎡あたり約41.0万円、坪あたり約135.5万円になります。差は㎡あたり約17.7万円、率にして約43%です。
構造別の㎡単価・坪単価【数値表①】
国土交通省の建築着工統計調査報告(令和7年計分)の総括表には、構造別の着工床面積と工事費予定額が掲載されています。この2つを割り算すると、その年に実際に着工された建物の平均的な単価が求められます。推計値ではなく、申請ベースの集計値から導いた数字です。
| 構造 | 着工床面積 (千㎡) | 工事費予定額 (億円) | ㎡単価 | 坪単価 | 木造=100 |
|---|---|---|---|---|---|
| 木造 | 41,562 | 96,648 | 約23.3万円 | 約76.9万円 | 100 |
| 鉄骨造 | 33,834 | 125,643 | 約37.1万円 | 約122.8万円 | 160 |
| 鉄筋コンクリート造(RC造) | 18,437 | 75,550 | 約41.0万円 | 約135.5万円 | 176 |
| 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) | 1,076 | 5,160 | 約48.0万円 | 約158.6万円 | 206 |
| 非木造 計 | 54,291 | 208,171 | 約38.3万円 | 約126.8万円 | 165 |
| 建築物 計 | 95,853 | 304,818 | 約31.8万円 | 約105.1万円 | 137 |
出典:国土交通省「建築着工統計調査報告(令和7年計分)」総括表より算出(工事費予定額÷着工床面積、坪換算は1坪=3.30578㎡)。
この単価の読み方と前提
数値表①の単価は、確認申請時の工事費予定額を集計したものです。したがって土地代、外構工事、設計監理料、登記費用や住宅ローン関連費といった諸費用は含まれていません。実際に支払う総額は、この単価から求めた金額よりも大きくなります。
もう一つ押さえておきたいのは、この単価が住宅だけの数字ではないという点です。倉庫や工場のように単価の低い用途も、病院や商業施設のように単価の高い用途も同じ集計に含まれています。木造は住宅の比率が高く、RC造やSRC造は事務所や共同住宅の比率が高いため、単価差には用途構成の違いも織り込まれています。構造そのものの価格差を厳密に取り出した数字ではない、という前提で使うのが誠実な読み方です。
また、木造と鉄骨を組み合わせた混構造は、主要構造部の区分に応じて集計されます。「木造部分だけ安い」という切り分けは統計上できません。構造の選び方そのものを整理したい場合は、木造・鉄骨・RCの実務比較をまとめた建物構造の種類と選び方もあわせてご覧ください。
注文住宅で建てる場合の建設費シミュレーション【計算例②】
実際に家を建てる方が支払う金額に近いのは、住宅金融支援機構の「2025年度フラット35利用者調査」です。融資実行された案件の実額が集計されているため、着工統計よりも実勢に近い数字になります。
| 地域 | 住宅面積 | 建設費 | ㎡単価 | 坪単価 |
|---|---|---|---|---|
| 全国 | 118.4㎡(約35.8坪) | 4,259.8万円 | 約36.0万円 | 約118.9万円 |
| 首都圏 | 121.6㎡(約36.8坪) | 4,761.5万円 | 約39.2万円 | 約129.4万円 |
| 近畿圏 | 117.5㎡(約35.5坪) | 4,269.8万円 | 約36.3万円 | 約120.1万円 |
| 東海圏 | 121.0㎡(約36.6坪) | 4,348.8万円 | 約35.9万円 | 約118.8万円 |
| その他地域 | 116.5㎡(約35.2坪) | 4,012.6万円 | 約34.4万円 | 約113.9万円 |
| 北海道 | 129.8㎡(約39.3坪) | 4,613.0万円 | 約35.5万円 | 約117.5万円 |
出典:住宅金融支援機構「2025年度フラット35利用者調査」注文住宅 第1表(全国の集計件数3,889件、2026年7月24日公表)より算出。
着工統計の木造単価23.3万円/㎡に対し、フラット35の注文住宅は36.0万円/㎡です。この差は水増しではなく、外構・付帯工事・設備グレード・設計監理料が含まれるかどうかの違いによるものです。予算を組むときは、坪単価の宣伝値ではなく、この36万円/㎡前後という実勢値を出発点にすると計画が崩れにくくなります。坪単価の内訳をさらに細かく確認したい方は、注文住宅の坪単価の算出方法と比較ポイントが参考になります。
同じ面積をRC造で建てた場合との差額
全国平均の118.4㎡を、数値表①の構造別単価にそのまま当てはめると次のようになります。
- 木造:23.3万円/㎡ × 118.4㎡ = 約2,759万円
- 鉄骨造:37.1万円/㎡ × 118.4㎡ = 約4,393万円(木造との差 約1,634万円)
- RC造:41.0万円/㎡ × 118.4㎡ = 約4,854万円(木造との差 約2,095万円)
一方、フラット35の実勢値4,259.8万円を基準に、RC造と木造の単価比(41.0÷23.3=約1.76倍)を掛けると約7,500万円となり、差額は約3,200万円まで広がります。前者は工事費予定額ベース、後者は諸経費込みの実勢ベースですから、実際の差はこの2つの間に収まると考えるのが現実的です。おおむね2,000万円から3,000万円の開きがある、というのが一次データから言える範囲です。
この差額は、そのまま土地予算や設備グレード、あるいは自己資金の温存に振り向けられます。木造を選ぶ経済的な意味は、ここにあります。
木造はどれくらい選ばれているのか【数値表②】
令和7年に着工された新設住宅740,667戸のうち、木造は433,974戸で58.6%を占めます。床面積で見るとさらに比率が上がり、66.4%が木造です。日本の住宅は、いまも3棟に2棟近くが木で建てられています。
| 区分 | 戸数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 新設住宅 合計 | 740,667戸 | 100% |
| 木造 | 433,974戸 | 58.6% |
| 鉄筋コンクリート造 | 204,927戸 | 27.7% |
| 鉄骨造 | 94,482戸 | 12.8% |
| (工法別)ツーバイフォー | 91,512戸 | ― |
| (工法別)プレハブ | 88,877戸 | ― |
出典:国土交通省「建築着工統計調査報告(令和7年計分)」。木造の着工床面積は37,788,977㎡で、新設住宅全体(56,885千㎡)の66.4%にあたります。なお令和7年の新設住宅着工戸数は前年比6.5%減で、3年連続の減少となりました。
工法別に見ると、ツーバイフォー(木造枠組壁工法)が91,512戸、プレハブが88,877戸です。ツーバイフォーは壁・床・屋根を一体の面で構成するため耐震性と気密性を確保しやすく、部材と施工手順が標準化されている分だけ品質のばらつきが出にくいという特徴があります。在来軸組工法は間取り変更や増改築への対応力が高く、将来のリフォームを見据えるなら有力な選択肢です。この2つは優劣ではなく、何を優先するかで選び分けるものです。
木造ビル・非住宅木造はいまどこまで来ているか【数値表③】
「木造ビルは事業として成立するのか」という問いへの現時点の答えは、低層の非住宅であれば十分に選択肢になり、4階建て以上ではまだ例外的、というものです。数字で確認します。
| 区分(令和7年着工分) | 木造率 |
|---|---|
| 低層(3階建て以下)住宅 | 83.5% |
| 低層(3階建て以下)非住宅 | 16.2% |
| 低層住宅を除く建築物 | 6.6% |
| 中高層(4階建て以上)住宅 | 0.2% |
| 中高層(4階建て以上)非住宅 | 0.1%以下 |
| 非住宅建築物 全体 | 9.6%(木造床面積 約2,660千㎡) |
| 公共建築物(令和6年度) | 15.9%(うち低層 33.4%) |
出典:木材利用促進本部「令和7年度 建築物における木材の利用の促進に向けた措置の実施状況の取りまとめ」(令和8年3月27日)。
低層住宅の83.5%に対し、低層非住宅は16.2%です。店舗、事務所、福祉施設、倉庫といった建物では、まだ8割以上が非木造で建てられています。裏を返せば、ここが最も伸びしろの大きい領域です。中高層木造の着工床面積は約31,000㎡で、全体から見ればごくわずかですが、10年前にはほぼゼロだった領域が動き始めています。
技術的な到達点としては、地上11階・高さ44mの高層純木造耐火建築物「Port Plus」が2022年に竣工しています。地上の構造部材(柱・梁・床・壁)をすべて木材で構成した建物で、木造で中高層ビルを成立させられることを実証した事例です(出典:大林組 2022年5月20日発表)。ただし、これは現時点では標準解ではなく先端事例です。事業計画に落とすなら、まずは3階建て以下の非住宅から検討するのが堅実な入口になります。木造3階建ての共同住宅については、木造3階建て共同住宅「木三共」の適用条件とコストメリットで条件を整理しています。
事業者が使える制度:木材利用促進協定と補助事業
非住宅木造には、事業者側のインセンティブも用意されています。建築物木材利用促進協定は、民間事業者が国や地方公共団体と協定を結び、木材利用の取組方針を共有しながら安定調達を進める仕組みです。国との協定は令和7年12月末時点で28件、令和8年3月16日までにさらに3件が締結されています。
あわせて、林野庁は建築物の木造化・木質化に活用可能な補助事業・制度等の一覧を公表しています。令和8年度予算・令和7年度補正版が掲載されているほか、相談先として「建築物の木造化・木質化支援事業コンシェルジュ」も設けられています。使える制度は年度ごとに入れ替わりますので、企画段階で最新版を確認しておくと計画の自由度が変わります。
2025年4月の法改正で木造住宅の建て方はどう変わったか
木造住宅を建てる方にとって、いま最も影響が大きいのは2025年4月に施行された改正建築基準法と改正建築物省エネ法です。確認申請で提出する図書が増え、省エネ基準への適合が全ての新築で義務になりました。さらに壁量基準の経過措置は2026年3月31日で終了しており、2026年4月に着工する建物からは新基準が完全に適用されています。
4号特例の見直しと新2号・新3号建築物への再編
| 項目 | 改正前(4号建築物) | 改正後・新2号建築物 | 改正後・新3号建築物 |
|---|---|---|---|
| 対象 | 木造2階建て以下かつ延べ面積500㎡以下 等 | 木造2階建て、または木造平屋建てで延べ面積200㎡超 | 木造平屋建てかつ延べ面積200㎡以下 |
| 構造関係図書 | 審査省略 | 提出・審査あり | 審査省略(設計者による適合確認は必要) |
| 省エネ関係図書 | 提出不要 | 提出・審査あり | 審査省略(省エネ基準適合は義務) |
| 省エネ基準適合 | 努力義務 | 義務 | 義務 |
出典:国土交通省「4号特例見直し 3つのポイント」および「2025年4月から ルールを改正します! 全ての新築で省エネ基準適合を義務化」。
実務上の影響は明確です。木造2階建ての住宅は新2号建築物に分類され、これまで審査が省略されていた構造関係図書と省エネ関係図書を提出することになりました。設計側の作業量が増えるため、確認申請に要する期間と設計監理料は改正前より増える傾向にあります。契約前のスケジュールと見積りを、改正後の前提で組み直しているかを確認しておきたいところです。
省エネ基準適合の義務化と建物の重量化
2025年4月以降に着工する全ての新築建築物は、省エネ基準への適合が義務になりました。断熱材の増量や高性能サッシ、太陽光発電設備の搭載により、建物は以前より重くなります。重くなれば地震時に建物へ働く力も大きくなるため、必要な耐力壁の量も見直されました。省エネと構造は切り離せない関係にあります。省エネ性能の等級や表示の読み方は、ZEH住宅の仕組みと補助金制度の解説で確認できます。
壁量計算の見直しと2026年3月31日で終了した経過措置
従来の壁量基準は、屋根を「重い屋根」「軽い屋根」の2区分に分け、区分ごとに一律の必要壁量を定めていました。改正後は、建築物の実況に応じて必要な壁量を算定する方式に見直されています。太陽光パネルや厚い断熱材を採用した建物ほど、求められる耐力壁は増えます。
この新基準には経過措置が設けられていましたが、令和8年3月31日で終了しました。2026年4月以降に着工する木造建築物は、例外なく新しい壁量基準で設計されます(出典:国土交通省「木造建築物における省エネ化等による建築物の重量化に対応するための必要な壁量等の基準について」)。少し前に取得した見積りやプランをお持ちの場合は、新基準で再計算されているかを設計者に確認しておくと安心です。
木造のデメリットを数値で確認する【比較表①】
木造の弱点は「なんとなく不安」という形では語れません。金額として現れるのは、法定耐用年数と火災保険の構造級別の2点です。ここは正直にお伝えします。
| 項目 | 木造 | 鉄骨造(骨格材4mm超) | 鉄筋コンクリート造 |
|---|---|---|---|
| 法定耐用年数(住宅用) | 22年 | 34年 | 47年 |
| 定額法償却率 | 0.046 | 0.030 | 0.022 |
| ㎡単価(着工統計) | 約23.3万円 | 約37.1万円 | 約41.0万円 |
| 火災保険の構造級別 | 原則H構造(省令準耐火構造ならT構造) | 原則T構造 | 共同住宅はM構造、戸建はT構造 |
| 1年あたり償却額(建物3,000万円) | 138万円 | 90万円 | 66万円 |
出典:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」、同「No.2100 減価償却のあらまし」、住宅金融支援機構「省令準耐火構造の住宅とは」、損害保険料率算出機構「2025年度(2024年度統計)火災保険・地震保険の概況」。
法定耐用年数22年の意味と、実際の建物寿命との違い
法定耐用年数22年は、税務上どの期間で建物の取得費を経費にするかを定めた数字であって、22年で建物が使えなくなるという意味ではありません。適切に設計・施工され、定期的に手入れされた木造住宅は、数十年から100年単位で使われています。
ただし、金融機関の融資期間や、売却時の建物評価にはこの22年が影響します。築年数が進んだ木造は建物評価がゼロに近づき、価格の大部分が土地で決まる状態になります。木造を長期保有する場合は、この評価の落ち方を前提にした資金計画が必要です。詳しくは木造物件の法定耐用年数と減価償却が投資利回りに与える影響で整理しています。
減価償却の計算例【計算例①】
建物価格3,000万円(建物本体のみ、土地代を除く)を賃貸用として新築した場合、定額法の償却は次のようになります。
- 新築木造:耐用年数22年・償却率0.046。3,000万円 × 0.046 = 年138万円を22年間
- 新築RC造:耐用年数47年・償却率0.022。3,000万円 × 0.022 = 年66万円を47年間
年間の経費計上額は木造がRC造の約2.1倍です。総額は同じでも、早く経費化できる分だけ保有初期の課税所得を圧縮しやすくなります。
さらに効果が大きいのが中古木造です。法定耐用年数をすべて経過した中古資産は、簡便法により「法定耐用年数×20%」で見積もります。木造なら22年×0.2=4.4年、端数を切り捨てて4年、償却率は0.250です。建物価格1,500万円の築22年超の木造を取得した場合、1,500万円 × 0.250 = 年375万円を4年間で償却できます(出典:国税庁「No.5404 中古資産の耐用年数」)。
年375万円は、新築木造3,000万円の年138万円の約2.7倍です。ただし5年目以降は償却が終わり、経費が急減して所得が跳ね上がります。出口の時期と売却益への課税まで含めて設計しないと、5年目に想定外の納税が発生します。短期の節税効果だけで判断しない、というのが実務上の要点です。
火災保険の構造級別と、省令準耐火構造という選択肢
火災保険料は建物の構造級別で決まります。M構造(コンクリート造の共同住宅など)、T構造(耐火・準耐火建築物など)、H構造(それ以外)の3区分で、木造戸建ては原則としてH構造です。H構造は3区分で最も保険料が高くなります。損害保険料率算出機構の参考純率では、最も料率の高い構造と最も低い構造の較差は2.84〜5.92倍とされています(較差は建物の所在地により異なります)。
ここに逃げ道があります。住宅金融支援機構が定める省令準耐火構造の住宅は、木造であってもT構造として扱われます。これは建築基準法の準耐火構造に準ずる防火性能を持つ構造で、外部からの延焼防止、各室防火、他室への延焼遅延の3つを柱としています。機構の仕様に基づく木造軸組工法・枠組壁工法のほか、機構が承認したプレハブ住宅や工法でも対応できます。
建築時の追加費用は発生しますが、保険は30年、40年と払い続けるものです。長期の総支払額で比較すると、省令準耐火構造にしておく判断が合理的になる場合が多くあります。見積り依頼の段階で「省令準耐火構造に対応できますか」と確認しておくと、後から変更するより費用を抑えられます。保険の設計そのものは賃貸経営の火災保険ガイドもご参照ください。
遮音・耐火・防蟻で追加費用が発生する箇所
木造で追加費用が読みにくいのは、遮音、耐火、防蟻の3点です。遮音は界壁の二重化や制振材の設置、耐火は防火被覆や燃え代設計、防蟻は薬剤処理と定期的な再施工が必要になります。いずれも「後から足す」と割高になり、設計段階で織り込めば費用は抑えられます。
木造アパートの防音については、木造アパートの騒音対策と防音リフォームの費用相場で具体的な工法と金額を整理しています。木造は柔軟性が高く、地震時に建物全体でエネルギーを吸収する挙動を示しますが、それは適切な構造設計と接合部の施工があってこそです。構造計算の中身を確認せずに「木造は地震に強い」と断じることは避けたいと考えています。
2026年度に使える補助金と実質負担額【計算例③】
2026年度の新築住宅向け補助制度は「みらいエコ住宅2026事業」です。住宅の性能区分と地域区分によって補助額が決まり、古家を除却して建てる場合は加算があります。
| 住宅の区分 | 寒冷地(1〜4地域) | 一般地域(5〜8地域) | 古家除却の加算 |
|---|---|---|---|
| GX志向型住宅 | 125万円 | 110万円 | ― |
| 長期優良住宅 | 80万円 | 75万円 | +20万円 |
| ZEH水準住宅 | 40万円 | 35万円 | +20万円 |
出典:国土交通省「みらいエコ住宅2026事業(新築)」。長期優良住宅とZEH水準住宅は子育て世帯・若者夫婦世帯が対象です。
全国平均の建設費4,259.8万円を基準にすると、実質負担額は次のようになります。
- GX志向型住宅(一般地域):4,259.8万円 − 110万円 = 約4,149.8万円
- GX志向型住宅(寒冷地):4,259.8万円 − 125万円 = 約4,134.8万円
- 長期優良住宅(一般地域)+古家除却:4,259.8万円 − 95万円 = 約4,164.8万円
- ZEH水準住宅(一般地域)+古家除却:4,259.8万円 − 55万円 = 約4,204.8万円
着工日・申請期限・予算消化率から見た「間に合うか」
補助金は要件と期限の管理が全てです。押さえるべき条件は次の4つです。
- 着工日:2025年11月28日以降に基礎工事へ着手したものが対象です。
- 申請期間:第1期が2026年3月31日〜5月12日、第2期が5月13日〜12月31日です。ただし注文住宅のZEH水準住宅は2026年9月30日までとなっています。
- 出来高工事完了期限:2027年1月31日です。
- 予算:GX志向型が750億円(第1期200億円)、長期優良・ZEH水準が1,450億円(第1期400億円)です。
2026年8月6日時点の予算消化率は、GX志向型が47%、長期優良・ZEH水準が21%と公表されています(出典:国土交通省「みらいエコ住宅2026事業」)。GX志向型はすでに半分近くが消化されており、年度後半に着工を予定している場合は、予算残額の推移を月単位で確認しておく必要があります。制度は予算上限に達した時点で受付が終了しますので、着工時期の判断材料に入れておきたい情報です。
木造で建てるかどうかを決める5つのチェックポイント
- 単価の前提をそろえて比較する:坪単価の数字が、本体工事のみか、付帯工事・外構・設計監理料を含むかを確認します。前提が違う見積りを並べても比較になりません。
- 2026年4月以降の新基準で設計されているか確認する:壁量基準の経過措置は終了しています。改正前に作成されたプランや見積りは、必要壁量が不足している可能性があります。
- 省令準耐火構造の可否を初期段階で聞く:火災保険の構造級別がH構造からT構造に変わります。長期の総支払額に直結します。
- 補助金の着工日要件と申請期限を工程表に落とす:着工が2025年11月28日より前だと対象外です。工程が数週間ずれるだけで補助額がゼロになります。
- 出口の建物評価まで見る:木造は法定耐用年数22年です。売却時や借換え時に建物評価がどう扱われるかを、購入前に金融機関へ確認しておきます。
環境性能を語るときも、数字で確認できることがあります。令和6年の木材自給率は42.5%(前年比0.4ポイント減)、建築用材等に限れば52.9%(同2.4ポイント減)です。木を使うこと自体が環境負荷の低減につながるのは、伐って、使って、植えて、育てるという循環が成り立っている場合に限られます。どの木材をどこから調達するのかを設計者に確認することが、環境性能を実質のあるものにします。
まとめ|木造の価値は数字で確かめられる
木造建築の㎡単価は約23.3万円、RC造は約41.0万円で、差は約43%です。新設住宅の58.6%が木造である一方、非住宅の木造率は9.6%、4階建て以上では0.1%以下にとどまります。法定耐用年数は22年で、中古木造なら4年償却が使えます。火災保険は省令準耐火構造にすればH構造からT構造へ変わります。2026年度はGX志向型住宅で110万円から125万円の補助が受けられます。
ここまで挙げた数字は、すべて公表されている一次資料から確認できるものです。木造を選ぶかどうかは、木の質感や環境への共感だけで決める必要はありません。金額と制度で確かめたうえで、そのうえで木の心地よさを享受する。この順番のほうが、後悔の少ない選択になると私は考えています。
私たちINA&Associates株式会社は、お客様にとって不利な情報も含めてお伝えすることが、長期的な信頼につながると考えています。木造で建てるべきか、他の構造を選ぶべきかの判断でお悩みの際は、お手元の見積りと計画をもとにご相談いただければ、数字の前提から一緒に確認いたします。
よくある質問
Q1. 木造の坪単価はいくらですか
着工ベースでは坪あたり約76.9万円(㎡あたり約23.3万円)です。国土交通省の建築着工統計調査報告(令和7年計分)で、木造の工事費予定額96,648億円を着工床面積41,562千㎡で割った数値です。ただしこれは確認申請時の工事費であり、外構や諸費用は含みません。実際に注文住宅を建てた方の実勢値は、フラット35利用者調査の2025年度全国平均で坪あたり約118.9万円(4,259.8万円/118.4㎡)です。
Q2. 木造とRC造で建築費はどれだけ変わりますか
㎡単価では木造23.3万円に対しRC造41.0万円で、木造はRC造の約57%、差は約43%です。全国平均の118.4㎡に当てはめると、着工統計ベースで約2,759万円と約4,854万円となり、差額は約2,095万円になります。諸費用込みの実勢ベースで試算すると差額は約3,200万円まで広がるため、おおむね2,000万円から3,000万円の開きがあると見ておくのが現実的です。
Q3. 2025年4月の法改正で工期や費用は増えますか
増える方向に働きます。従来の4号建築物が新2号建築物へ再編され、木造2階建てでも構造関係図書と省エネ関係図書の提出・審査が必要になりました。確認申請の期間と設計監理料が改正前より増える傾向にあります。さらに壁量基準の経過措置が2026年3月31日で終了したため、2026年4月以降の着工では必要な耐力壁が増え、構造材の費用も上がりやすくなっています。
Q4. 木造ビルは事業として成立しますか
低層であれば成立します。3階建て以下の非住宅の木造率は16.2%で、すでに一定の実績があります。一方で4階建て以上の中高層非住宅の木造率は0.1%以下、中高層木造全体の着工床面積も約31,000㎡にとどまり、まだ先端事例の段階です。事業として組むなら、まず3階建て以下の非住宅から検討し、建築物木材利用促進協定や林野庁の補助事業を企画段階で確認することをおすすめします。
Q5. 中古の木造を買った場合、減価償却はどうなりますか
築22年を超えた木造住宅は、法定耐用年数をすべて経過しているため簡便法が使えます。22年×20%=4.4年、端数を切り捨てて4年、償却率は0.250です。建物価格1,500万円なら年375万円を4年間で経費にできます。新築木造3,000万円の年138万円と比べて約2.7倍のペースです。ただし5年目以降は償却が終わって所得が跳ね上がるため、出口の時期と売却時の課税まで含めた計画が欠かせません。
引用・参考資料
- 国土交通省「建築着工統計調査報告(令和7年計分)」(令和8年1月30日公表)
- 同 総括表(構造別 着工床面積・工事費予定額)
- 同 記者発表資料(利用関係別・工法別の内訳)
- 住宅金融支援機構「2025年度フラット35利用者調査」(2026年7月24日公表)
- 木材利用促進本部「令和7年度 建築物における木材の利用の促進に向けた措置の実施状況の取りまとめ」(令和8年3月27日)
- 国土交通省「木造建築物における省エネ化等による建築物の重量化に対応するための必要な壁量等の基準について」
- 国土交通省「4号特例見直し 3つのポイント」
- 国土交通省「2025年4月から ルールを改正します! 全ての新築で省エネ基準適合を義務化」
- 国土交通省「みらいエコ住宅2026事業」新築の補助額
- 国土交通省「みらいエコ住宅2026事業」公式サイト(予算・申請期間・予算消化率)
- 国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」
- 国税庁 タックスアンサー No.2100「減価償却のあらまし」
- 国税庁 タックスアンサー No.5404「中古資産の耐用年数」
- 住宅金融支援機構「省令準耐火構造の住宅について」
- 住宅金融支援機構「省令準耐火構造の住宅とは」(フラット35サイト)
- 損害保険料率算出機構「火災保険参考純率」
- 損害保険料率算出機構「2025年度(2024年度統計)火災保険・地震保険の概況」(構造級別M・T・H)
- 林野庁「令和6年(2024年)木材需給表の公表について」
- 林野庁「建築物木材利用促進協定」
- 林野庁「建築物の木造化・木質化に活用可能な補助事業・制度等一覧」
- 大林組「日本初の高層純木造耐火建築物『Port Plus』」(2022年5月20日発表)
