単身赴任や転勤で社宅への引っ越しを検討している方は多いでしょう。社宅には様々なメリットがある一方、家具付きかどうかで準備内容が大きく変わります。本記事では社宅の種類・メリット・デメリット・家具付き社宅の活用法・家具選びのポイントを解説します。
社宅の種類とはどんなものがある?
社有社宅
企業が所有するマンションや団地をそのまま社宅として提供する形態です。手続きが少なくスムーズに入居でき、家族向け施設がある場合もあります。
借り上げ社宅
企業が法人契約した物件の中から居住者が選ぶ仕組みです。マンション・アパート・一軒家など選択肢が広く、多くの企業がこの形態を採用しています。
社員寮との違い
社員寮は主に単身者向けで食事付きが多く、社宅は世帯向けが中心です。相部屋制度のある寮はプライバシーが制限されることがあります。
借り上げ社宅と社有社宅で何が違う?会計・税務上の取り扱い
借り上げ社宅と社有社宅は、入居者から見た使い勝手だけでなく、企業側の会計処理の入口が異なります。社有社宅は建物を法人の固定資産として計上し、減価償却費・固定資産税・修繕費などが会社の経費(損金)になります。借り上げ社宅は、会社が家主と賃貸借契約を結んで従業員に又貸しする形になるため、会社が家主に支払う家賃が地代家賃として損金算入されます。
一方で、従業員から徴収すべき「賃貸料相当額」(この金額の50%以上を従業員から受け取っていれば給与として課税されない)の計算方法は、社有・借り上げのどちらでも同じ算式が使われます。国税庁のタックスアンサーは、「会社などが所有している社宅や寮などを貸与する場合に限らず、他から借りて貸与する場合でも」(1)建物の固定資産税の課税標準額×0.2%、(2)12円×総床面積(㎡)÷3.3(㎡)、(3)敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%、の合計額が賃貸料相当額になると定めています(国税庁タックスアンサーNo.2597)。つまり、社有か借り上げかによって従業員が負担すべき基準そのものが変わるわけではなく、違いは主に会社側の会計処理(資産計上して減価償却するか、家賃を経費にするか)に表れます。
社宅を利用するメリットとデメリットとは?
メリット
- コスパが良い:相場より大幅に安い家賃で入居でき、光熱費込みのケースも
- 手続きが省ける:契約書・お金のやり取りは企業が対応
- 孤独感が少ない:先輩や同僚が近くに住むため安心感がある
- 職場に近い:通勤時間の削減でプライベート時間が増える
デメリット
- 理想の物件に住めない場合がある:選択肢が限られる
- オンオフの切り替えが難しい:同僚が近隣にいるため仕事とプライベートの境界が曖昧になりやすい
家具付き社宅のメリット・デメリットとは?
メリット
- 家具一式の購入費(最低20万円〜)が不要
- 引っ越し荷物が大幅に減少
- 退去時の家具処分費用も不要
デメリット
- 好みの家具を持ち込めないため、インテリアの自由度が低い
- 中古の家具が多く、衛生面が気になる場合がある(入居前にクリーニング済みが一般的)
家具付き社宅の税務──家具・家電の貸与は家賃とは別に課税判定される
会社が社宅に家具・家電を無償または低額で貸与した場合の税務上の扱いは、社宅そのものの家賃(賃貸料相当額)の計算とは原則として別建てで評価します。国税庁の質疑応答事例「社員に家具等を貸与した場合の経済的利益」(所得税法第36条第1項・第2項に基づく取扱い)は、自社所有の家具等については定額法による減価償却費相当額に維持管理のために通常要する費用相当額を加算するなどして合理的に見積もった額を、リースを受けた家具等についてはリース料相当額を、それぞれ経済的利益として評価すると定めています。
実務上、家具・家電付き社宅の家賃が福利厚生の範囲内に収まっていれば課税問題が表面化しにくいケースも多いものの、家具・家電の貸与を社宅の家賃計算に単純に含めてよいわけではなく、原則として区分して経済的利益を評価すべき点は担当者として押さえておきたいポイントです。無償貸与や大幅な低額貸与を行う場合は、この経済的利益相当額が給与として課税される可能性がある点に留意してください。
家具なし社宅での家具選びのポイントとは?
- 大きな家具(ベッド・棚)から優先的に購入し、小物は後回しに
- 玄関・廊下・エレベーターのサイズを事前に確認して搬入可能か確認
- コンセント・TVアンテナ端子の位置を把握してからレイアウトを決定
- 色・素材のテイストを統一することでおしゃれな空間に
原状回復の負担区分──退去時に会社と従業員のどちらが払うのか
民法第621条(2020年4月1日施行の改正民法)は、賃借人の原状回復義務について「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う」と定め、通常の使用によるすり減りや経年劣化を原状回復義務の対象から明確に除外しています。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」も、原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義しており、通常損耗・経年変化は貸主負担、それを超える使用による損耗は賃借人負担という考え方を基準として示しています。
社宅もこの一般原則の延長線上にあります。借り上げ社宅の場合、家主との賃貸借契約上の借主は会社であるため、家主に対する原状回復義務自体は会社が負いますが、社内規程に基づき、従業員の故意・過失による損傷分は従業員に請求するのが一般的な運用です。社有社宅であっても考え方は同じで、通常損耗・経年変化分は会社が負担し、それを超える損傷分のみを従業員に求めるのが原則です。備え付け家具についても同様で、経年劣化による破損は会社負担、過失による破損は従業員負担という整理は、この原状回復の負担区分の考え方をそのまま反映したものです。
よくある質問(FAQ)
Q. 備え付け家具が壊れた場合は誰が負担しますか?
経年劣化による破損は会社負担、過失による破損は自己負担が原則です。入居時に状態を記録しておくことが重要です。
Q. 備え付け家具を処分・売却してもいいですか?
会社の備品であるため、無断での処分・売却は窃盗罪・横領罪に問われる可能性があります。絶対に行わないでください。
Q. 社宅の家賃はどのくらいですか?
企業によって異なりますが、市場相場の30〜50%程度が目安です。毎月の給与から自動控除されることが多いので、事前に金額を確認しましょう。
Q. 社宅内でトラブルが発生した場合はどうすればいいですか?
管理会社と会社の両方に報告するのが基本です。緊急の場合でも、まず会社の担当部署への連絡を忘れないでください。
