マンションやアパートなどの集合住宅では、地震や火災に備えた避難経路の確保が不可欠です。特に高層階の建物では、避難はしごは住民の命を守る重要な設備として消防法で設置基準が定められています。
本記事では、避難はしごの種類・設置基準・使い方・点検義務から、住民への説明ポイントまで、管理者として押さえるべき情報を網羅的に解説します。
避難はしごの4つの種類と特徴
| 種類 | 特徴 | 設置場所 |
|---|---|---|
| ハッチ用吊り下げはしご | バルコニーの床下に格納。ハッチを開けるとはしごが出る。マンションで最も一般的 | バルコニー床下 |
| 固定はしご | 建物に固定設置。常時使用可能なタイプと伸縮式がある | 建物外壁 |
| 立てかけはしご | 緊急時に取り出して建物に立てかけて使用。後付けが難しい場合に有効 | 別途保管 |
| 吊り下げはしご | ベランダの手すりから壁に沿って吊り下げて使用。専用の箱に収納 | ベランダ付近 |
消防法による避難はしごの設置基準
避難はしごの設置基準は消防法施行令第25条で定められています。マンション・アパートは建物用途区分の「5項(ロ)共同住宅」に該当し、建物の2階以上または地階に設置が必要です。
設置義務は建物の用途・収容人員・階数によって異なります。避難はしごは6階以上にも設置可能ですが、避難ロープや避難タラップは階数制限があるため注意が必要です。
避難はしごの設置が免除される3つのケース
主要構造物が耐火構造であることを前提に、以下のいずれかに該当する場合は設置が免除されます。
ケース①:避難階段+2方向避難の確保
- 直通階段が避難階段または特別避難階段になっている
- バルコニーからの避難が有効、または2方向避難が可能
- 内装が準不燃、またはスプリンクラー設置済み
- 耐火構造の壁・床で区画されている
ケース②:バルコニー経由の避難確保
- 外気に面するバルコニーが避難上有効に設置されている
- バルコニーから地上への避難手段が確保されている
ケース③:直通階段+収容人員30人未満
- 各住戸から直通階段に直結し、開口部が特定防火設備
- 直通階段が避難階段または特別避難階段に該当
- 収容人員が30人未満
ハッチ用吊り下げはしごの使い方|4ステップ
ステップ1:ハッチを開ける
チャイルドロック(チェーンやフック)を解除してからハッチを持ち上げます。ロック解除前に無理に開けると指を挟む危険があるため、慌てずに操作してください。
ステップ2:蓋を固定する
ハッチを90度まで開くと自動固定されます。上側の蓋と同時に下側の蓋も開くタイプがほとんどです。全開にしないとはしごを降ろせないので、必ず固定されるまで開いてください。
ステップ3:はしごを降ろす
ストッパーのボタンを押してはしごを降ろします。降ろす前に必ず下の階に人がいないか確認してください。はしご付近に障害物があると降ろせません。
ステップ4:はしごを降りる
ステップ部分を両手で掴みながら1段ずつ降ります。注意点:
- スニーカーを履く(スリッパ・サンダル・裸足は危険)
- 荷物は先に下に落とす(背負ったまま降りると引っかかる)
- 両手ではしごを掴む(片手での降下は厳禁)
避難はしご使用時の5つの注意点
①荷物のサイズに注意
開口部の有効幅は人1人分程度です。大きな荷物を持って降りると引っかかるだけでなく、バランスを崩して落下する危険があります。
②下の階の安全確認を必ず行う
はしごを降ろす前に、下の階に人や障害物がないか必ず確認します。
③子どもは紐や抱っこ紐で固定
赤ちゃんや小さな子どもは抱っこ紐やロープでしっかり固定してから降ります。片手で子どもを抱えてはしごを降りることは絶対に避けてください。
④蓋を開ける時は慌てない
チャイルドロックの存在を忘れて無理に開けると指を挟むケガにつながります。
⑤軍手とスニーカーを常備する
ステンレス製のはしごは夏場に高温になり、火傷の恐れがあります。バルコニーに軍手とスニーカーを備えておくよう住民に伝えましょう。
避難はしごの点検義務と費用
点検頻度
消防法第17条の3の3により、避難はしごを含む消防用設備は消防設備士または消防設備点検資格者による定期点検が義務付けられています。
- 機器点検:6ヶ月に1回
- 総合点検:1年に1回
点検費用の目安
アパート・マンションの消火器具・火災報知器・避難器具等の設備点検で約35,000円程度が目安です。業者によって算出方法が異なるため、複数社から見積もりを取ることをおすすめします。
適切な点検が行われているかの確認方法
- 作業員が免状を所持しているか確認
- 全階で点検が実施されているか確認
- 報告内容が実際の点検結果と一致しているか確認
住民に伝えるべき4つのポイント
- はしご周辺に物を置かない — 緊急時にはしごを降ろせなくなる
- 開口部の幅を事前に確認 — どの程度の荷物なら通れるか把握しておく
- 夏場は高温に注意 — 軍手・スニーカーの常備を推奨
- 蓋の上で遊ばせない — 通常のコンクリートと強度が異なり、振動が下階に響く
避難はしご以外の避難器具
| 器具 | 特徴 | 設置可能階 |
|---|---|---|
| 緩降機 | ロープを体に装着し、自重で一定速度で降下 | 2階以上 |
| 救助袋 | 布製の袋の中を滑り降りる(垂直式・斜降式) | 2〜10階 |
| 滑り台 | 短時間で多人数を避難させられる | 2階以上 |
| 避難用タラップ | 階段状で手すり付き。安定した姿勢で避難可能 | 地下・2〜3階 |
| 避難橋 | 隣接建物への橋。事前に相互許可が必要 | 隣接建物間 |
| 避難ロープ | 結び目付きロープで降下。腕力が必要 | 2階のみ |
| すべり棒 | 垂直の棒を滑り降りる。速度調整が難しい | 2階のみ |
まとめ
避難はしごは、マンション住民の安全を守る重要な防災設備です。消防法の設置基準を正しく理解し、定期点検を確実に実施するとともに、住民への使い方の周知を徹底することが大家さん・管理組合の責務です。
INA&Associates株式会社では、防災設備の管理を含む包括的な賃貸管理サービスを提供しております。避難器具の設置や点検に関するご相談もお気軽にお問い合わせください。