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造成工事の費用相場2026|国税庁の単価表で計算する方法

造成工事の費用は国税庁の公表単価で算出できます。令和8年分の東京都は400㎡・土盛1m・擁壁60mで902.8万円。都道府県別の単価差と売却時の節税額も解説。

最終更新: 約30分で読めます

山林・農地・傾斜地を宅地として使える状態に整える工事が「造成工事」です。その費用は、国税庁が毎年公表する「宅地造成費の金額表」の1㎡単価に自分の土地の面積・盛土の高さ・擁壁の長さを掛けることで、見積書を取る前に自分で概算できます。令和8年分の東京都なら整地費800円/㎡、土盛費8,000円/㎥、土止費91,800円/㎡です。

この記事は、相続や購入で手に入れた土地を「造成して活用するか、現況のまま売るか」で迷っている方に向けて書いています。費用がいくらになるのか、地域でどれだけ違うのか、許可が要る規模はどこからか、売却時に税金がどう変わるのか。この4点を、すべて公的な一次情報の数値と計算式で示します。

この記事のポイント

  • 造成費用は国税庁「宅地造成費の金額表」で概算できます。令和8年分の東京都は整地費800円/㎡、土盛費8,000円/㎥、土止費91,800円/㎡です。
  • 単価は都道府県ごとに違い、毎年改定されます。土止費は福岡県80,000円/㎡に対し東京都91,800円/㎡で、東京都は令和6年分82,000円から2年で約12.0%上がりました。
  • 400㎡・土盛り1m・擁壁60mの土地なら、東京都で総額9,028,000円(1㎡当たり22,570円)が公的な目安になります。
  • 造成費用は土地を売るときの取得費に算入できます。902.8万円を計上できれば、長期譲渡なら税額が約183.4万円下がります。
  • 宅地造成等工事規制区域内では、盛土1m超・切土2m超・面積500㎡超のいずれかに該当すると盛土規制法の許可対象になります。

造成工事とは?宅地として使える状態に整えるまでの工事の総称

造成工事とは、そのままでは建物を建てられない土地を、宅地や駐車場として利用できる状態に整えるすべての工事をまとめた呼び方です。山林の樹木を伐採し、傾斜を削り、低い部分に土を盛り、崩れないように擁壁を築き、最後に地面を平らにならす。この一連の作業が終わって、初めて建築の話が始まります。

大切なのは、造成工事が「ひとつの工事」ではなく、性質の違う5つの作業の集合だという点です。費用を読むときも、5つに分解してそれぞれの単価と数量を掛け合わせます。ここを理解しておくと、業者の見積書が高いのか妥当なのかを自分で判断できるようになります。

造成工事に含まれる5つの工事と、費用単価表との対応

国税庁の宅地造成費の金額表は、造成工事をちょうど5項目に分けて単価を定めています。工事の内容と単価表の項目は、次のように対応します。

工事内容金額表の費目単価の単位
整地凹凸のある地面を地ならしする。土盛りをした場合は、その後の地ならしも含む整地費円/㎡(整地を要する面積)
伐採・抜根樹木を伐採し、根などを除去する。整地工事で樹木を除去できる場合は計上しない伐採・抜根費円/㎡(伐採・抜根を要する面積)
地盤改良湿田など軟弱な表土に覆われた土地の地盤を安定させる地盤改良費円/㎡(地盤改良を要する面積)
土盛り道路より低い土地を、搬入した土砂で道路面の高さまで埋め立てる土盛費円/㎥(土盛りの体積)
土止め盛った土砂の流出や崩壊を防ぐ擁壁を築く土止費円/㎡(擁壁の面積)

注意していただきたいのは、土盛費だけが体積(㎥)単価で、他の4つは面積(㎡)単価だという点です。土盛費は「面積×平均の高さ×単価」で計算します。土止費も「擁壁面の長さ×平均の高さ×単価」であって、土地の面積とは無関係です。この単位の違いを取り違えると、概算が数百万円ずれます。

造成工事が必要になる土地の典型パターン

造成が必要になる土地には、はっきりした型があります。第一に、樹木が生い茂った山林です。伐採・抜根に加えて、傾斜がある場合は傾斜地としての造成費がかかります(地目が山林の土地を購入する際の法規制と災害リスクの判断も併せてご確認ください)。

第二に、市街地の農地です。畑や田を宅地にするには農地転用の許可または届出が先に必要で、水田だった土地は地盤改良を伴うことが少なくありません。第三に、傾斜地です。第四に、道路より低い位置にある土地で、この場合は土盛費と土止費という最も高額な2項目が発生します。

造成工事の費用相場|国税庁「令和8年分 宅地造成費の金額表」で見る1㎡単価

造成費用の公的な目安は、国税庁が各国税局ごとに毎年公表する「宅地造成費の金額表」で確認できます。これは相続税・贈与税で市街地農地や市街地山林を評価する際に、宅地としての価額から差し引く造成費相当額を定めたものです。地域ごと・年度ごとに国税局が実勢を踏まえて設定しているため、民間の相場記事より根拠がはっきりしています。

平坦地の造成費単価(東京都・令和8年分)

費目造成区分金額
整地費整地を必要とする面積1㎡当たり800円
伐採・抜根費伐採・抜根を必要とする面積1㎡当たり1,100円
地盤改良費地盤改良を必要とする面積1㎡当たり2,300円
土盛費他から土砂を搬入して土盛りする場合の体積1㎥当たり8,000円
土止費土止めを必要とする場合の擁壁の面積1㎡当たり91,800円

出典:国税庁「令和8年分 財産評価基準書 東京都 宅地造成費の金額表」(掲載ページPDF

この表を見ると、費用の大部分を占めるのが土止費だとわかります。整地費の約115倍という単価ですから、擁壁が必要かどうかで総額は桁が変わります。道路より低い土地を検討している場合は、まず擁壁の長さと高さを測ることから始めてください。

傾斜地の造成費単価(傾斜度別・東京都・令和8年分)

傾斜のある土地は、費目ごとの積み上げではなく、傾斜度に応じた1㎡当たりの包括単価で計算します。

傾斜度金額(円/㎡)
3度超 5度以下24,300
5度超 10度以下29,000
10度超 15度以下45,600
15度超 20度以下63,400
20度超 25度以下70,200
25度超 30度以下76,500

出典:国税庁「令和8年分 財産評価基準書 東京都 宅地造成費の金額表」表2

この単価には、整地費・土盛費・土止費のすべてが含まれています。ただし伐採・抜根費は含まれていないため、樹木がある土地では平坦地の伐採・抜根費(東京都1,100円/㎡)を別途加算します。また傾斜度3度以下の土地は、傾斜地ではなく平坦地の単価で計算します。

自分の土地の傾斜度は、高低差と奥行から判定できます。国税庁の判定表は次のとおりです。

傾斜度高さ÷奥行奥行20mのときの高低差
3度超 5度以下0.0524超 0.0875以下約1.05m超 約1.75m以下
5度超 10度以下0.0875超 0.1763以下約1.75m超 約3.53m以下
10度超 15度以下0.1763超 0.2679以下約3.53m超 約5.36m以下
15度超 20度以下0.2679超 0.3640以下約5.36m超 約7.28m以下
20度超 25度以下0.3640超 0.4663以下約7.28m超 約9.33m以下
25度超 30度以下0.4663超 0.5774以下約9.33m超 約11.55m以下

測定の起点は、評価する土地に最も近い道路面の高さです。奥行20mの土地で道路面から3mの高低差があるなら3÷20=0.15で、5度超10度以下に該当します。

この単価表は何のための金額か|使うときの前提

正直にお伝えしておきたい点があります。この金額表は、あくまで相続税・贈与税の財産評価で控除する造成費の額を定めたものであり、実際の工事の見積額そのものではありません。根拠は財産評価基本通達の市街地農地等の評価規定にあります(国税庁「財産評価基本通達 第3節 農地及び農地の上に存する権利」)。

実際の工事費は、重機の搬入路の有無、残土の運搬距離、擁壁の構造、工期などで上下します。それでも、国税局が地域ごとに毎年設定した公的な数値であることに変わりはありません。私たちは、見積書を受け取ったときの「妥当性を検算する物差し」として使うことをおすすめしています。この単価から大きく乖離している項目があれば、その理由を業者に説明してもらう。それだけで交渉の質が変わります。

造成費用は都道府県でどれだけ違うか|8都道府県の単価比較

同じ工事でも、単価は都道府県ごとに設定されています。金額差が最も大きいのは土止費で、令和8年分は福岡県80,000円/㎡に対し東京都・神奈川県91,800円/㎡と、1㎡当たり11,800円(約1.15倍)の開きがあります。擁壁60mの工事なら、この差だけで約70万円動きます。

平坦地の宅地造成費 都道府県別比較(令和8年分)

都道府県整地費
(円/㎡)
伐採・抜根費
(円/㎡)
地盤改良費
(円/㎡)
土盛費
(円/㎥)
土止費
(円/㎡)
東京都8001,1002,3008,00091,800
神奈川県8001,1002,3008,00091,800
埼玉県8001,1002,3008,10090,600
愛知県8001,1002,2008,10089,200
大阪府7001,1002,2007,70084,200
兵庫県7001,1002,2007,70084,200
福岡県7001,1002,3007,70080,000
北海道7001,1002,6007,40088,800

出典:国税庁「令和8年分 財産評価基準書」各都道府県の宅地造成費の金額表(神奈川県埼玉県愛知県大阪府兵庫県福岡県北海道

興味深いのは北海道です。土盛費は8都道府県で最も安い7,400円/㎥ですが、地盤改良費は最も高い2,600円/㎡で、土止費も88,800円/㎡と首都圏に迫ります。寒冷地の凍上対策が地盤改良の単価に反映されていると読めます。単純に「地方は安い」とは言えないということです。

傾斜地の宅地造成費 都道府県別比較(令和8年分)

傾斜度東京都
神奈川県
埼玉県愛知県大阪府
兵庫県
福岡県北海道
3度超 5度以下24,30024,00022,80022,80022,50024,800
5度超 10度以下29,00028,60027,50027,20027,00030,100
10度超 15度以下45,60045,10044,00045,00044,60047,600
15度超 20度以下63,40062,90061,10063,20061,80066,700
20度超 25度以下70,20069,60067,50069,80068,30073,800
25度超 30度以下76,50075,10071,20073,90071,80076,900

単位は円/㎡。出典:同上の各都道府県 宅地造成費の金額表 表2

傾斜地では、すべての傾斜度で北海道が最も高く、福岡県または愛知県が最も安いという傾向が明確に出ています。5度超10度以下で比べると北海道30,100円に対し福岡県27,000円で、1㎡当たり3,100円の差です。500㎡の土地なら155万円の違いになります。

兵庫県・大阪府の単価|近畿圏で造成を検討する場合の基準値

近畿圏で造成を検討される方が多いため、大阪府と兵庫県の数値を改めて整理します。両府県の平坦地単価は同額で、整地費700円/㎡、伐採・抜根費1,100円/㎡、地盤改良費2,200円/㎡、土盛費7,700円/㎥、土止費84,200円/㎡です。傾斜地も同額で、5度超10度以下が27,200円/㎡となっています。

川西市をはじめとする兵庫県内の土地であれば、この兵庫県の単価が国税局の定めた基準値です。首都圏と比べると土止費で7,600円/㎡安く、傾斜地では1,800円/㎡安い水準になります。

造成費用はいくらになるか|面積と高さから総額を出す計算例

造成費用の総額は「数量×単価」の足し算です。国税庁のPDFには公式の計算例が掲載されているので、まずそれをそのまま見ていただきます。自分の土地の数字を入れ替えれば、そのまま概算になります。

計算例① 400㎡・土盛り1m・擁壁60mの場合(東京都・令和8年分)

一面が道路に面した間口20m・奥行20mの正方形の土地(400㎡)で、道路面まで1mの土盛りが必要、道路面を除いた三面(合計60m)に擁壁が必要というケースです。

費目計算式金額
整地費400㎡ × 800円320,000円
土盛費400㎡ × 1m × 8,000円3,200,000円
土止費60m × 1m × 91,800円5,508,000円
合計9,028,000円
1㎡当たり9,028,000円 ÷ 400㎡22,570円

出典:国税庁「令和8年分 財産評価基準書 東京都 宅地造成費の金額表」平坦地の宅地造成費の計算例

総額の61%を土止費が占めています。擁壁の長さと高さが総額を決めるという構造が、この一例からはっきり読み取れます。盛土工事の㎡単価と追加費用が発生するケースも併せてご覧いただくと、擁壁と残土の条件で総額がどう動くかが見えてきます。

計算例② 傾斜度9度・480㎡・全面伐採抜根の場合(東京都・令和8年分)

道路の地表に対して傾斜度9度、面積480㎡、全面積について伐採・抜根が必要な土地のケースです。

  1. 傾斜度に係る造成費:9度は「5度超10度以下」なので 29,000円/㎡
  2. 伐採・抜根費:480㎡ × 1,100円 = 528,000円
  3. 1㎡当たりの造成費:29,000円 +(528,000円 ÷ 480㎡)= 30,100円/㎡
  4. 総額:30,100円 × 480㎡ = 14,448,000円

1〜3は国税庁PDF掲載の公式計算例で、4は私たちがそれを面積で戻した金額です。平坦地の計算例(1㎡当たり22,570円)と比べると、傾斜度9度というわずかな傾きだけで1㎡当たり33%高くなることがわかります。傾斜地の取得判断では、この単価差を最初に確認してください。

計算例③ 同じ工事を大阪府の単価で計算すると

計算例①とまったく同じ条件(400㎡・土盛り1m・擁壁60m)を、大阪府・兵庫県の単価で計算します。

費目計算式金額
整地費400㎡ × 700円280,000円
土盛費400㎡ × 1m × 7,700円3,080,000円
土止費60m × 1m × 84,200円5,052,000円
合計8,412,000円
1㎡当たり8,412,000円 ÷ 400㎡21,030円

東京都の9,028,000円との差は616,000円、率にして約6.8%です。「地域が変われば造成費も変わる」という話は感覚論として語られがちですが、公表単価で計算すればこのとおり金額で示せます。

見積書を受け取ったときの検算手順

業者の見積書を手にしたら、次の順番で分解してください。

  1. 見積書の各行を「数量」と「単価」に分ける。一式計上の行があれば、内訳を出してもらう
  2. 整地・伐採抜根・地盤改良は「面積×円/㎡」、土盛りは「面積×高さ×円/㎥」、土止めは「擁壁長×高さ×円/㎡」に置き換わっているかを確認する
  3. 各単価を、当該都道府県の宅地造成費の金額表と突き合わせる
  4. 乖離が大きい項目について、その理由(搬入路が狭い、残土処分場が遠い、擁壁構造が特殊など)を書面で説明してもらう
  5. 残土処分費・仮設費・諸経費が、上記の単価と二重計上になっていないかを確認する

数量そのものが正しいかを確かめるには、境界と面積の確定が前提になります。面積が曖昧なまま見積を取ると検算の土台が崩れますので、確定測量の費用相場と費用差が生まれる理由も先に確認しておくと安心です。

造成費用は上がっているか|東京都の3年推移で見る値上がり

造成費の公表単価は上昇しています。東京都では令和6年分から令和8年分の2年間で、土止費が82,000円から91,800円へ約12.0%、地盤改良費が2,000円から2,300円へ15.0%上がりました。見積を取る時期がずれるだけで、実額が数十万円単位で動くということです。

東京都の宅地造成費 3年推移(令和6年分→令和8年分)

費目令和6年分令和7年分令和8年分2年間の変化
整地費(円/㎡)800800800±0%
伐採・抜根費(円/㎡)1,0001,1001,100+10.0%
地盤改良費(円/㎡)2,0002,1002,300+15.0%
土盛費(円/㎥)7,5007,8008,000+6.7%
土止費(円/㎡)82,00083,60091,800+12.0%
傾斜地 5度超10度以下(円/㎡)26,10027,40029,000+11.1%

出典:国税庁「財産評価基準書 東京都 宅地造成費の金額表」(令和6年分令和7年分令和8年分

この推移を計算例①の条件に当てはめると、変化がさらに具体的になります。400㎡・土盛り1m・擁壁60mの総額は、令和6年分の単価では8,240,000円でした。令和8年分では9,028,000円です。同じ土地・同じ工事で、2年間に788,000円(約9.6%)増えた計算になります。

見積の有効期限と着工時期をどう判断するか

単価が上昇局面にあるとき、見積書の有効期限は実質的なコストです。私たちは次の3点を確認するようにしています。

  • 有効期限の明記:「見積後3ヶ月」なのか「着工まで有効」なのかで、着工が遅れたときの追加負担が変わります
  • スライド条項の有無:資材価格や労務費の変動を工事代金に反映する条項があるか、あるなら発動条件は何かを確認します
  • 許可取得の所要期間:盛土規制法や開発許可の審査期間を織り込むと、見積から着工まで数ヶ月空くことがあります。許可申請と見積のどちらを先に動かすかは、この期間から逆算します

土地を売るときの造成費用|負担者と税金の扱い

造成してから売るか、現況のまま売るかは、造成費を売却価格に転嫁できるかどうかで判断します。そして造成した場合、支払った造成費用は譲渡所得の取得費に算入できます。これは売却時の手残りを大きく左右する論点です。

造成してから売るか、現況のまま売るかの判断軸

判断軸造成してから売る現況のまま売る
想定される買主個人(自ら家を建てる層)不動産会社・建設会社などの事業者
価格への反映造成費を上乗せしやすいが、全額の転嫁は保証されない買主が自ら造成する前提で、造成費相当額を差し引いた価格になる
売主の資金負担先に工事費を支出する。売却まで回収できない支出なし
売却までの期間工事期間と許可取得期間が上乗せされる短い
売主が負うリスク造成後に想定価格で売れない、追加工事が発生する買主が限られ、価格交渉力が弱くなる

判断の順序としては、まず現況のままで買い手が付くかを不動産会社に確認し、その提示価格と「造成後の想定価格−造成費」を比べます。差が造成のリスクに見合わないなら、現況で売る選択が合理的です。土地の活用方法を先に整理したい場合は、収益性・節税・リスク・転用性の4軸で土地活用を比較する考え方が参考になります。

造成費用は譲渡所得の取得費に算入できる

国税庁のタックスアンサーNo.3252は、取得費に含まれるものとして「土地の埋立てや土盛り、地ならしをするために支払った造成費用」を明示しています(国税庁 No.3252 取得費となるもの)。ただし事業所得などの必要経費に算入したものは重複して計上できません。

一方、取得費が分からない場合には譲渡価額の5%を概算取得費とする方法があります(国税庁 No.3258 取得費が分からないとき)。実額(購入代金+造成費など)と概算取得費5%を比べ、有利な方を選ぶという構造です。造成費の領収書が残っているかどうかで、選べる選択肢そのものが変わります。

計算例④ 造成費を計上できるかどうかで税額はどれだけ変わるか

譲渡価額3,000万円、購入代金1,000万円(契約書あり)、造成費9,028,000円、譲渡費用は考慮しないという前提で計算します。税率は長期譲渡所得20.315%(所得税15%+復興特別所得税+住民税5%)と短期譲渡所得39.63%(所得税30%+復興特別所得税+住民税9%)です。

ケース取得費課税譲渡所得長期20.315%短期39.63%
A 造成費を計上しない1,000万円2,000万円4,063,000円7,926,000円
B 造成費902.8万円を加算1,902.8万円1,097.2万円2,228,962円4,348,204円
差額1,834,038円3,577,796円

領収書を保管していたかどうかだけで、長期譲渡なら約183.4万円、短期譲渡なら約357.8万円の差が生まれます。さらに、取得費を示す資料が一切なく概算取得費5%(150万円)で申告した場合、課税譲渡所得は2,850万円、長期の税額は5,789,775円です。実額を使えたケースBとの差は3,560,813円になります。

税率の根拠は国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算および国税庁 No.3211 短期譲渡所得の税額の計算です。実際の申告では特別控除や譲渡費用も影響しますので、不動産売却の譲渡所得と確定申告で必要になる書類を確認したうえで、税理士にご相談ください。

領収書・契約書・工事写真をいつまで保管するか

造成費を取得費に算入するには、支出を証明する資料が要ります。売却は工事の10年後、20年後になることも珍しくありません。次の資料は、その土地を手放すまで保管しておくことをおすすめします。

  • 工事請負契約書と、変更契約があればその書面
  • 領収書・振込明細(工事代金、設計費、許可申請の手数料)
  • 見積書と最終の出来高内訳書(工事内容が費目別にわかる資料)
  • 着工前・施工中・完了時の写真
  • 完了検査済証、許可通知書などの行政書類

造成工事に許可は要るか|規模の数値で判定する

盛土1m超の崖を生じる工事、切土2m超の崖を生じる工事、面積500㎡超の盛土または切土のいずれかに当てはまると、盛土規制法の許可が必要になります(宅地造成等工事規制区域内の場合)。ここからは、自分の工事が許可対象かどうかを数値で判定できるように整理します。

盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)の許可対象規模

正式名称は「宅地造成及び特定盛土等規制法」で、盛土規制法と略されます。令和4年5月27日公布、令和5年5月26日施行で、従来の宅地造成等規制法を改称・全面改正したものです(国土交通省 宅地造成及び特定盛土等規制法ポータル)。

工事の内容宅地造成等工事規制区域内特定盛土等規制区域内
崖を生ずる盛土高さ1m超高さ2m超
崖を生ずる切土高さ2m超高さ5m超
盛土と切土を同時に行い生じる崖高さ2m超高さ5m超
崖を生じない盛土高さ2m超高さ5m超
盛土または切土の面積500㎡超3,000㎡超
土石の堆積(高さと面積)最大高さ2m超かつ面積300㎡超最大高さ5m超かつ面積1,500㎡超
土石の堆積(面積のみ)最大堆積面積500㎡超最大堆積面積3,000㎡超

出典:国土交通省「盛土規制法の体系図」(政令3条・4条)。特定盛土等規制区域内の許可対象規模は、条例でこれより小さい規模に定めることができます(法32条)。

審査では、資力・信用、施工能力、土地所有者全員の同意(法12条・30条)、工事の技術的基準への適合(法13条・31条)が確認されます。また、工事に先立って周辺地域の住民への周知が求められます(法11条・29条)。

罰則は軽くありません。違反行為者に対して最大3年以下の拘禁刑または最大1,000万円以下の罰金、違反者の法人等に対して法人重科で最大3億円以下の罰金が定められています(法55条〜61条)。無許可で着工することのリスクは、工事費とは比較にならない大きさです。

都市計画法29条の開発許可の面積基準

造成が「主として建築物の建築の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更」に当たる場合は、都市計画法の開発許可も検討します。

区域開発許可が必要になる規模
市街化区域1,000㎡以上(三大都市圏の既成市街地・近郊整備地帯等は500㎡以上)。条例で300㎡まで引下げ可
市街化調整区域原則としてすべての開発行為
非線引き都市計画区域3,000㎡以上。条例で300㎡まで引下げ可
準都市計画区域3,000㎡以上。条例で300㎡まで引下げ可
都市計画区域及び準都市計画区域外1ha以上

出典:国土交通省「開発許可制度について」(法29条)

実務上重要なのは両制度の関係です。開発許可(都市計画法29条)を受けたときは、盛土規制法の許可・届出を受けたものとみなされます(法15条・27条・34条)。したがって開発許可が必要な規模であれば、そちらを軸に手続を組み立てることになります。自分の土地がどの区域にあるかは、用途地域13分類と土地活用の関係と合わせて都市計画図で確認してください。

農地を造成する場合の農地転用許可

造成の対象が農地であれば、造成工事の前に農地転用の手続が入ります。許可権者は都道府県知事または農林水産大臣が指定する市町村長で、4haを超える場合は農林水産大臣に協議することとされています。

農地区分該当する農地転用の可否
農用地区域内農地市町村の農業振興地域整備計画で設定された区域内の農地原則転用禁止。転用には農用地区域からの除外(区域変更)が必要
第1種農地集団農地、土地改良事業対象農地など生産性の高い優良農地原則不許可
第2種農地土地改良事業の対象となっていない小集団の生産力の低い農地など第3種農地に立地困難な場合に許可
第3種農地市街地にある農地など原則許可
市街化区域内農地市街化区域内の農地許可ではなく農業委員会への届出制

出典:農林水産省「農業振興地域制度と農地転用許可制度の概要」農林水産省「農地転用許可制度について」

自分で使うために転用する場合は農地法4条、売買や貸借を伴う場合は同5条の手続になります。転用後は地目の変更登記も生じますので、23種類の地目と変更手続きの実務も確認しておくと流れが読めます。

4ステップの許可要否チェックリスト

  1. 農地かどうかを確認する。登記地目と現況が農地なら、まず農地区分(農用地区域内/第1種/第2種/第3種/市街化区域内)を農業委員会で確認します。ここで止まる可能性があるため最初に調べます
  2. 都市計画区域の区分と面積を確認する。市街化区域で1,000㎡以上(三大都市圏の該当地域は500㎡以上)、市街化調整区域なら原則すべて、区域外なら1ha以上で開発許可の対象です。条例による引下げの有無も市町村に確認します
  3. 盛土規制法の規制区域内かを確認する。宅地造成等工事規制区域か特定盛土等規制区域かを、都道府県または市の担当課の指定図で調べます
  4. 高さと面積を基準に当てはめる。盛土1m超(特定盛土等規制区域は2m超)、切土2m超(同5m超)、面積500㎡超(同3,000㎡超)のいずれかに該当すれば許可が必要です。開発許可を受ける場合は、盛土規制法の許可・届出はみなしとなります

造成工事の手順と、発注前に確認する項目

着工から完了までの流れ

造成工事は、次の順序で進みます。各段階で確認すべき点を併せて示します。

  1. 現地調査と測量:境界、面積、高低差、傾斜度を確定します。この数字が見積の数量になります
  2. 許可申請:農地転用、開発許可、盛土規制法の許可を、上記のチェックリストに沿って申請します
  3. 重機搬入路の確認:大型重機が進入できるかどうかで工法と費用が変わります。進入できない場合は小型機による分割施工となり、工期と費用が増えます
  4. 伐採・抜根と残土処分:樹木の除去と、発生した土砂の搬出を行います
  5. 切土・盛土:設計高さに合わせて土を削り、盛ります
  6. 擁壁の施工:盛土の流出・崩壊を防ぐ土止めを構築します
  7. 転圧と整地:ローラーで地盤を締め固め、地面をならします
  8. 完了検査:盛土規制法では中間検査と完了検査・確認が定められています(法17条・18条・36条・37条)

残土処分とマニフェスト

造成工事では余剰土(残土)が発生します。土砂そのものは廃棄物に当たりませんが、コンクリート片や廃材などの異物が混入している場合は産業廃棄物として扱われ、処理の流れを産業廃棄物管理票(マニフェスト)で確認する必要が生じます。

不適切な処分が行われた場合、排出事業者としての責任を問われることがあります。契約段階で、残土の処分先、運搬距離、処分費の内訳、マニフェストの写しの交付方法を書面で確認しておいてください。処分費は工事費とは別に見積に上乗せされることが多く、後から判明すると総額が想定を超えます。

近隣説明と、盛土規制法が求める周辺住民への周知

盛土規制法は、工事主に対して周辺地域の住民への周知(説明会等)を求めています(法11条・29条)。これは法律上の手続であると同時に、工事期間中のトラブルを減らす実務でもあります。工事内容、期間、作業時間、工事車両の動線、騒音・振動の見込み、連絡先を、着工前に文書で伝えることをおすすめします。

また、現場には標識の掲示が求められます(法49条)。許可を受けた工事であることが外から見えることは、近隣の安心にもつながります。

まとめ|造成費用は「単価×数量」で自分で検算できる

造成工事の費用は、業者に聞くまで分からないものではありません。国税庁が毎年公表する宅地造成費の金額表を使えば、整地・伐採抜根・地盤改良・土盛り・土止めの5項目それぞれについて、地域ごとの公的な単価がわかります。あとは自分の土地の面積、盛土の高さ、擁壁の長さを掛け合わせるだけです。

令和8年分の東京都なら、400㎡・土盛り1m・擁壁60mで9,028,000円、1㎡当たり22,570円。大阪府・兵庫県の単価なら8,412,000円。この数字を持って見積書に向き合えば、どの項目が相場から離れているかを自分の言葉で質問できます。そして工事後は領収書を保管する。それだけで、売却時の税額が長期譲渡で約183.4万円変わります。

造成するかどうかの判断そのものに迷われている場合は、造成せずに保有し続けたときの負担も併せて比較してください。更地の固定資産税が最大6倍になる仕組みと軽減策を押さえておくと、保有コストと造成コストを同じ土俵で見られるようになります。

よくある質問(FAQ)

Q. 造成工事の費用は1㎡いくらですか?

令和8年分の東京都では、整地費800円/㎡、伐採・抜根費1,100円/㎡、地盤改良費2,300円/㎡が公的な単価です。土盛費は8,000円/㎥(体積単価)、土止費は91,800円/㎡(擁壁面積単価)となります。これらを組み合わせた総額の目安は、400㎡・土盛り1m・擁壁60mの土地で9,028,000円、1㎡当たり22,570円です。単価は都道府県ごとに異なり、毎年改定されます。

Q. 傾斜地の造成費用はどう計算しますか?

傾斜地は費目の積み上げではなく、傾斜度に応じた1㎡単価で計算します。東京都・令和8年分なら5度超10度以下が29,000円/㎡です。この単価には整地費・土盛費・土止費が含まれますが伐採・抜根費は含まれないため、樹木がある場合は1,100円/㎡を加算します。傾斜度3度以下の土地は、傾斜地ではなく平坦地の単価で計算します。傾斜度は「高低差÷奥行」で判定でき、奥行20mで高低差3mなら0.15となり5度超10度以下に該当します。

Q. 造成費用は土地の売却価格に上乗せできますか?

全額の転嫁は保証されません。買主が個人であれば造成済みの土地に価値を認めやすい一方、買主が不動産会社などの事業者であれば、自ら造成する前提で造成費相当額を差し引いた価格提示になるのが一般的です。判断するときは、現況のままでの提示価格と「造成後の想定価格から造成費を引いた金額」を比べてください。なお造成費用は譲渡所得の取得費に算入できるため、領収書を保管しておけば売却時の税負担は軽くなります。

Q. 造成工事に許可が必要になるのはどんな規模ですか?

宅地造成等工事規制区域内では、高さ1m超の崖を生ずる盛土、高さ2m超の崖を生ずる切土、崖を生じない高さ2m超の盛土、面積500㎡超の盛土または切土のいずれかに該当すると盛土規制法の許可が必要です。特定盛土等規制区域内では、それぞれ2m超・5m超・5m超・3,000㎡超が基準になります。無許可工事には最大3年以下の拘禁刑または最大1,000万円以下の罰金、法人重科で最大3億円以下の罰金が定められています。

Q. 農地を宅地に造成する場合、何から始めますか?

農業委員会で農地区分を確認することから始めます。第3種農地なら原則許可、第2種農地なら第3種に立地困難な場合に許可、第1種農地は原則不許可、農用地区域内農地は転用禁止で区域からの除外が先に必要です。市街化区域内の農地は許可ではなく届出で足ります。許可権者は都道府県知事または指定市町村長で、4haを超える場合は農林水産大臣への協議が入ります。転用の見通しが立ってから、造成の見積を取る順序になります。

引用・参考資料

Daisuke Inazawa, President & CEO of INA&Associates Inc.

著者

代表取締役社長 / CEOINA&Associates株式会社

INA&Associates株式会社 代表取締役社長。首都圏・近畿圏を中心に不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントを統括。収益不動産投資戦略と超富裕層向け不動産コンサルティングを専門領域とする。

稲澤 大輔(いなざわ・だいすけ)は、INA&Associates株式会社の代表取締役社長(CEO)。大阪本店・東京営業所を拠点に、首都圏・近畿圏における不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントの三事業を統括する。

専門領域は、収益不動産の投資戦略立案、賃貸経営の収支最適化、超富裕層(UHNWI)・機関投資家向け不動産コンサルティング、およびクロスボーダー不動産投資。国内外の投資家に対し、データと長期視点に基づくアドバイザリーを提供している。

「企業の最も重要な資産は人財である」を経営理念に掲げ、人財投資カンパニーとして持続可能な企業価値の創造に取り組む。経営者として、変化の時代におけるリーダーシップのあり方と組織文化についても積極的に発信を続けている。

合格・取得資格は11種:宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、管理業務主任者、賃貸不動産経営管理士、行政書士、個人情報保護士、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者。

  • 宅地建物取引士
  • 公認不動産コンサルティングマスター
  • マンション管理士
  • 管理業務主任者
  • 賃貸不動産経営管理士
  • 行政書士
  • 個人情報保護士
  • 甲種防火管理者
  • 競売不動産取扱主任者
  • マンション維持修繕技術者
  • 貸金業務取扱主任者