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令和8年度税制改正が不動産投資に与える影響【2026年版】

令和8年度税制改正は、不動産投資の相続対策・所得申告・住宅取得の前提を変えます。最大の論点は、令和9年1月から適用される「貸付用不動産の相続税評価の見直し(5年ルール)」です。青色申告特別控除の電子申告要件、少額減価償却資産40万円への引上げ、住宅ローン控除の5年延長まで、財務省・国土交通省の一次情報をもとに投資判断への影響を整理します。

最終更新: 約12分で読めます

賃貸用のマンションを一棟取得して相続税を圧縮する。長く使われてきたこの手法が、令和8年度税制改正で見直されます。結論から言えば、2026年の令和8年度税制改正で不動産投資に最も影響するのは、令和9年1月から始まる「貸付用不動産の相続税評価の見直し」、いわゆる5年ルールです。あわせて、青色申告特別控除の電子申告要件、少額減価償却資産の40万円未満への引上げ、住宅ローン控除の5年延長も、物件の取得・保有・申告・承継の判断に関わります。この記事では、財務省と国土交通省の一次情報をもとに、改正点が投資判断のどこに効くのかを整理します。

この記事のポイント

  • 不動産投資に最も影響する令和8年度税制改正は、令和9年1月から適用される貸付用不動産の相続税評価の見直し(5年ルール)です。
  • 相続開始前5年以内に取得・新築した貸付用不動産は、原則として通常の取引価額で評価される方向です。
  • 青色申告特別控除は、電子申告と電子帳簿保存の有無で75万円・65万円・10万円に分かれ、令和9年分から適用されます。
  • 住宅ローン控除は令和12年末入居まで5年延長され、少額減価償却資産の特例は40万円未満へ引き上げられます。

令和8年度税制改正で不動産投資に効く改正点はどこか

令和8年度税制改正の大綱は、令和7年12月26日に閣議決定されました。物価高への対応と経済の底上げを軸に、基礎控除の引上げや給与所得控除の最低保障額を65万円から69万円へ引き上げる措置などが並びます。ただし、不動産投資の判断に直接効く改正は、そのなかの一部に絞られます。

投資家として押さえるべきは、取得・保有・売却・承継のどこに影響するかを分けて見ることです。特に今回は、相続・承継の前提を変える改正が中心にあります。まず全体像を一覧で確認します。

改正項目主な内容適用時期
貸付用不動産の相続税評価の見直し(5年ルール)相続開始前5年以内に取得・新築した一定の貸付用不動産を、財産評価基本通達ではなく通常の取引価額で評価令和9年1月1日以後の相続・贈与
青色申告特別控除の見直し電子申告で65万円、電子帳簿保存まで満たすと75万円、紙申告は10万円に令和9年分の所得税から
少額減価償却資産の特例取得価額を30万円未満から40万円未満へ引上げ、適用期限を3年延長(中小企業者等が対象)大綱に基づき延長
住宅ローン控除適用期限を5年延長。省エネ既存住宅の借入限度額引上げ、控除期間13年拡充、床面積要件の緩和令和8年1月1日〜令和12年12月31日入居
新築住宅の固定資産税減額特例適用期限を5年延長、床面積要件を40〜240㎡に変更、災害ハザードエリアの立地要件見直し令和8年4月1日〜令和13年3月31日
不動産取得税の特例特例措置の対象を拡充のうえ適用期限を2年延長、床面積要件を40㎡以上に緩和大綱に基づき延長

詳しい条文の位置づけは、財務省が公表する令和8年度税制改正の大綱の概要で確認できます。以下では、投資家への影響が大きい順に中身を見ていきます。

貸付用不動産の相続税評価の見直し(5年ルール)とは何か

今回の改正で不動産投資に最も響くのが、貸付用不動産の相続税評価の見直しです。ひとことで言えば、相続の直前に買った賃貸物件の評価額を、時価に近づけるという内容です。適用は令和9年1月1日以後の相続・贈与からとされています。

これまでは、借入金で賃貸マンションを取得し、時価と相続税評価額の差(評価の乖離)を使って遺産の総額を圧縮する手法が広く使われてきました。改正後は、被相続人などが課税時期の前5年以内に対価を伴う取引で取得・新築した一定の貸付用不動産について、財産評価基本通達による評価ではなく、通常の取引価額で評価することになります。相続の直前に駆け込みで買っても、圧縮効果が働きにくくなる、という理解が出発点です。

大綱では、課税上の弊害がないと認められる場合には、取得価額をもとに地価変動などを考慮して計算した金額の80%相当額で評価できる、とされています。ただし、これは大綱段階の方針であり、具体的な取扱いは今後の財産評価基本通達の改正で定められます。数値や範囲の細部は、通達の発令を待って確認する必要があります。

もう一つの要点が、保有期間です。対象はあくまで「5年以内」に取得・新築した物件であり、長く保有してきた不動産の評価をただちに変えるものではありません。相続対策としての不動産活用そのものが否定されたわけではなく、購入から相続までの時間軸を、これまで以上に意識する必要が出てきた、という位置づけです。相続を見据えた保有物件の棚卸しをお考えの方は、マンション経営における相続税対策の考え方もあわせてご確認ください。

青色申告特別控除の見直しと減価償却の実務

保有中の申告実務でまず確認したいのが、青色申告特別控除の見直しです。結論として、電子申告をしていれば65万円は維持されますが、紙で申告すると10万円まで下がります。適用は令和9年分の所得税からで、個人住民税は令和10年度からとされています。

改正後の区分は次のとおりです。正規の簿記の原則にしたがって記帳し、期限内にe-Taxで申告すれば65万円。これに加えて、仕訳帳や総勘定元帳を電子で保存する要件まで満たせば75万円になります。一方、紙で申告する場合は10万円にとどまります。不動産所得が事業的規模(いわゆる5棟10室が一つの目安)にあたる青色申告のオーナーにとって、電子申告への移行は実質的に避けにくくなります。会計ソフトと電子帳簿保存の準備を、令和8年のうちに進めておくと安心です。

取得まわりでは、少額減価償却資産の特例も変わります。取得価額の基準が30万円未満から40万円未満へ引き上げられ、適用期限も3年延長されます(中小企業者等が対象)。エアコンや給湯器など、これまで基準を少し超えていた設備を、取得年に一括で経費化しやすくなります。減価償却は保有期間中のキャッシュフローと税負担を左右する要素です。仕組みの基礎は、不動産投資における減価償却費の考え方で整理しています。設備更新の時期や規模でお悩みの方は、INAの無料相談で保有物件の収支とあわせてご検討いただけます。

住宅ローン控除・不動産取得税・固定資産税の延長と要件緩和

取得コストに関わる特例は、多くが延長・拡充されました。ただし、いずれも自己居住用や新築住宅が中心で、賃貸用の投資物件にそのまま使えるものではない点に注意が必要です。

住宅ローン控除は、適用期限が5年延長され、令和8年1月1日から令和12年12月31日までに入居した場合が対象になります。省エネ性能の高い既存住宅について借入限度額を引き上げ、控除期間を13年間に拡充し、子育て世帯・若者夫婦世帯への上乗せ措置も講じられます。床面積要件は40㎡以上への緩和が既存住宅にも適用されます(合計所得金額1,000万円超の方や上乗せ措置の利用者は50㎡以上)。詳細は国土交通省の報道発表で公表されています。

新築住宅に係る固定資産税の減額特例は、令和8年4月1日から令和13年3月31日までの5年間延長され、床面積要件が40㎡以上240㎡以下(従前は50㎡以上280㎡以下)に変わります。災害ハザードエリアの立地要件も見直されます。不動産取得税は、特例措置の対象を拡充したうえで適用期限が2年延長され、床面積要件が40㎡以上に緩和されます。登録免許税の住宅用家屋に係る軽減特例も延長されます。保有中の税負担の全体像は、不動産にかかる固定資産税の基礎知識とあわせて確認すると整理しやすくなります。

投資家目線では、これらの延長は自宅取得層や実需の下支えという文脈で読むのが実務的です。賃貸需要の裾野を支える要因ではありますが、投資物件の取得コストを直接下げるものではありません。

不動産投資家が令和8年度税制改正でとるべき判断

改正の全体像がわかったら、次は自分の立場でどこに効くかを見極めることです。投資家のタイプ別に、注目すべき改正と検討したい行動を整理しました。

投資家のタイプ主に効く改正検討したい行動
相続・承継を視野に入れるオーナー貸付用不動産の相続税評価の見直し(5年ルール)取得から相続までの時間軸を再確認。直前の駆け込み取得に頼らず、保有期間を含めた承継計画へ見直す
複数物件を持つ事業的規模のオーナー青色申告特別控除の見直し、少額減価償却資産の特例令和8年中に電子申告・電子帳簿保存へ移行。設備更新は40万円未満の一括経費化を意識して計画
売却(出口)を検討中のオーナー相続税評価の見直し、譲渡課税の枠組み相続対策としての保有継続か、売却かを税引後の手残りで比較。出口の時期を数字で検討
これから取得する投資家少額減価償却資産、取得コスト関連特例取得後の申告体制を先に設計。自宅取得なら住宅ローン控除の対象要件を確認

特に承継を考える方は、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置が、適用期限(令和8年3月31日)をもって延長されない点も押さえておきたいところです。使える制度と、期限を迎える制度を分けて確認することが、承継設計の第一歩になります。売却か保有継続かで迷う場合は、不動産の出口戦略と売却タイミング・税金の考え方もご参照ください。

私たちINA&Associates株式会社は、税制改正を単なる節税情報としてではなく、不動産経営の意思決定に結びつく論点として捉えています。短期の節税効果だけでなく、5年後・10年後の承継や出口まで見据えること。そして、メリットだけでなく前提や制約も含めて正直にお伝えすること。長期の信頼は、その積み重ねから生まれると考えています。数字の意味を実務にどう落とし込むかでお悩みの際は、お気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 令和8年度税制改正で不動産投資に一番影響が大きいのはどれですか?

令和9年1月から適用される貸付用不動産の相続税評価の見直し(5年ルール)です。相続の直前に取得した賃貸物件の評価が時価に近づき、これまでの評価乖離を使った相続対策は効きにくくなります。取得から相続までの時間軸を、より意識する必要が出てきました。

Q2. 5年ルールは、すでに持っている賃貸物件にも適用されますか?

対象は相続開始(課税時期)前5年以内に取得・新築した一定の貸付用不動産です。保有が5年を超える物件は従来の評価が基本となる見込みで、通達の発令日までに所有していた土地に建てた建物などには経過措置が設けられる方向です。細部は今後の財産評価基本通達の改正で確定します。

Q3. 青色申告特別控除の65万円は今後も受けられますか?

e-Taxで期限内に申告すれば65万円は維持されます。仕訳帳などの電子帳簿保存まで満たすと75万円、紙で申告すると10万円に下がります。適用は令和9年分の所得税からです。事業的規模のオーナーは、令和8年中の電子申告への移行を検討しておくと安心です。

Q4. 住宅ローン控除は賃貸用の投資物件にも使えますか?

いいえ、住宅ローン控除は自ら居住する住宅が対象で、賃貸用の投資物件には使えません。今回の5年延長も自己居住用が前提です。ただし実需の下支え要因として、賃貸需要の背景を読むうえでは押さえておく価値があります。

引用・参考資料

本記事は、令和7年12月26日に閣議決定された大綱等の公表情報に基づく一般的な解説です。個別の税額計算や適用の可否は要件によって異なります。実際のご判断は、顧問税理士など専門家にご確認ください。

Daisuke Inazawa, President & CEO of INA&Associates Inc.

著者

代表取締役社長 / CEOINA&Associates株式会社

INA&Associates株式会社 代表取締役社長。首都圏・近畿圏を中心に不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントを統括。収益不動産投資戦略と超富裕層向け不動産コンサルティングを専門領域とする。

稲澤 大輔(いなざわ・だいすけ)は、INA&Associates株式会社の代表取締役社長(CEO)。大阪本店・東京営業所を拠点に、首都圏・近畿圏における不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントの三事業を統括する。

専門領域は、収益不動産の投資戦略立案、賃貸経営の収支最適化、超富裕層(UHNWI)・機関投資家向け不動産コンサルティング、およびクロスボーダー不動産投資。国内外の投資家に対し、データと長期視点に基づくアドバイザリーを提供している。

「企業の最も重要な資産は人財である」を経営理念に掲げ、人財投資カンパニーとして持続可能な企業価値の創造に取り組む。経営者として、変化の時代におけるリーダーシップのあり方と組織文化についても積極的に発信を続けている。

合格・取得資格は11種:宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、管理業務主任者、賃貸不動産経営管理士、行政書士、個人情報保護士、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者。

  • 宅地建物取引士
  • 公認不動産コンサルティングマスター
  • マンション管理士
  • 管理業務主任者
  • 賃貸不動産経営管理士
  • 行政書士
  • 個人情報保護士
  • 甲種防火管理者
  • 競売不動産取扱主任者
  • マンション維持修繕技術者
  • 貸金業務取扱主任者