住宅ローンが払えない、あるいは払えなくなりそうだと感じたとき、最初に知りたいのは「あと何か月なら間に合うのか」「制度に申し込むと毎月いくら下がるのか」という具体的な数字だと思います。この記事は、返済日に落とせなかった方、督促状が届いた方、代位弁済や競売の通知を受け取った方に向けて、滞納の月数ごとに何が起き、どの選択肢がまだ残っているかを、一次データと法令の条文で整理したものです。2026年時点で確認できる公的統計と、住宅金融支援機構・各金融機関の公表値だけを使います。
結論から申し上げます。金融機関に返済条件の変更を申し込んだ住宅資金借入者のうち、93.5%が実行されています(金融庁、令和7年4月1日〜令和8年6月末)。相談は「してもどうせ通らないもの」ではありません。一方で、期限の利益を失った後は遅延損害金の計算対象が毎月の返済額から残高全額に切り替わり、負担は桁違いに増えます。動ける期限は、滞納が3か月に達する前です。
この記事のポイント
- 返済条件変更の実行率は93.5%。申込み9,414件に対して実行7,691件、謝絶はわずか536件です(金融庁)。
- 地方銀行の住宅ローンのデフォルト率は年0.163%。1,000人に1〜2人という水準で、決して珍しい事態ではありません(金融庁、2024年度)。
- 遅延損害金は期限の利益を失う前は「遅れている返済額」に、失った後は「残高全額」にかかります。年14.0%なら残高3,000万円で30日分が約34万円です。
- フラット35・機構融資には返済特例・中ゆとり・ボーナス返済の見直し・シルバー返済特例があり、いずれも変更手数料は無料です。
- 競売の買受可能価額は売却基準価額の80%以上(民事執行法60条3項)。落札後、買受人が引渡命令を申し立てられるのは代金納付日から6か月以内です(同83条2項)。
まず確認する3つの数字|滞納月数・返済負担率・収入減少割合
対処法を選ぶ前に、手元で確認しておきたい数字が3つあります。この3つが決まれば、使える制度と使えない制度がほぼ切り分けられます。
いま何か月滞納しているか|1回・1か月・3か月・6か月で選べる手が変わる
最初に数えていただきたいのは、返済できていない回数です。1回だけ落とせなかった段階と、3回続けて落とせなかった段階では、金融機関側の手続きがまったく違います。1〜2か月であれば返済条件の変更、借り換え、通常の売却まで選べます。3か月を超えると期限の利益を失い、残債の一括請求へ進むため、選べるのは任意売却か法的整理に寄っていきます。
通帳やアプリの引落履歴を開いて、直近で返済できた月を確認してください。この月数が、以降のすべての判断の起点になります。
滞納と延滞は何が違うのか
「延滞」は、約定返済日に返済が行われない状態そのものを指します。数日から1か月程度の遅れを指して使われることが多く、この段階で入金すれば大きな問題に発展しにくい局面です。
「滞納」は、延滞が長期化し、返済されない状態が続いていることを指します。金融機関の実務では、延滞が続いた結果として債権保全の手続きに移る段階を滞納と呼び分けます。契約書上の用語は金融機関によって異なりますが、読者にとって意味があるのは呼び方ではなく、何回分が未入金かという事実です。契約書の「期限の利益の喪失」条項に、何回分の遅延で一括請求になるかが書かれています。まずそこをご確認ください。
返済負担率と収入減少割合を出す|機構の返済特例が使えるかの分かれ目
住宅金融支援機構の返済特例(Aタイプ)を使えるかどうかは、2つの割合で決まります。計算式は次のとおりです。
- 返済負担率=住宅ローンの年間総返済額(機構分に加え、民間の住宅ローンを含む)÷ 年収 × 100
- 収入減少割合=(前々年の収入額 − 前年の収入額)÷ 前々年の収入額 × 100
たとえば年収450万円、住宅ローンの年間総返済額が200万円であれば返済負担率は44.4%です。年収400万円以上700万円未満の基準は40%ですから、これを超えています。あわせて前々年600万円・前年450万円であれば収入減少割合は25%となり、20%以上という条件も満たします。この2つがそろえば、機構への申請要件のひとつに該当します。源泉徴収票を2年分並べれば、5分で計算できます。
【2026年最新データ】住宅ローンの延滞率・デフォルト率はどのくらいか
結論として、住宅ローンのデフォルト率は年0.1〜0.2%台です。数としては少数ですが、返済に行き詰まる人が常に一定数いることを金融庁も機構も公表しています。自分だけが特殊な事態に陥っているわけではない、という前提で相談に臨んで差し支えありません。
地方銀行のデフォルト率は0.163%|地域別の数値
金融庁は2025年10月公表の分析ノートで、地方銀行の貸出明細データをもとにデフォルト率を算出しています。2024年3月末時点で正常先・要注意先だった債務者のうち、2025年3月末に要管理先以下へ下方遷移した割合です。
| 本店所在地域 | デフォルト率(2024年度) |
|---|---|
| 北海道・東北 | 0.226% |
| 関東 | 0.128% |
| 中部 | 0.163% |
| 近畿 | 0.162% |
| 中国・四国 | 0.177% |
| 九州・沖縄 | 0.169% |
| 全体 | 0.163% |
出典:金融庁「地方銀行の住宅ローンのデフォルト状況に関する分析」(FSA Analytical Notes 2025.10)。同分析では、貸出期間が長い先ほど、また金利水準が高い先ほどデフォルト率が高くなる傾向が確認されたと報告されています。35年超の長期返済を選び、かつ相対的に高い金利で借りている場合は、家計の余裕が薄い層に入っている可能性を意識しておきたいところです。
住宅金融支援機構のリスク管理債権比率は2.80%
フラット35を含む機構の債権では、返済に問題を抱えた債権の規模がより具体的に公表されています。
| 区分(2024年度) | 金額 | 債権額合計に対する比率 |
|---|---|---|
| 三月以上延滞債権 | 680億円 | 約0.29% |
| 貸出条件緩和債権 | 3,408億円 | 約1.44% |
| 破産更生債権等・危険債権 | 2,561億円 | 約1.08% |
| リスク管理債権 合計 | 6,649億円 | 2.80% |
| (参考)債権額合計 | 237,091億円 | ― |
出典:住宅金融支援機構「2025年度 投資家向け説明資料」(2025年7月)。比率は前年度から0.24ポイント低下しました。買取債権(フラット35)だけを取り出した比率は1.86%です。
ここで注目していただきたいのは、貸出条件緩和債権が3,408億円と、三月以上延滞債権の5倍規模である点です。貸出条件緩和債権とは、金利の減免や元金の返済猶予など、債務者に有利となる取決めを行った債権を指します。つまり機構の債権では、延滞が固定化するよりはるかに多くのケースが「返済方法の変更」で処理されています。制度は実際に使われています。
なぜ2026年に返済が苦しくなるのか|変動型75.0%という前提
金利のある世界に戻ったことで、返済計画の前提が変わりました。機構の住宅ローン利用者調査(2026年1月調査、回答1,237件)では次の結果が出ています。
- 利用した金利タイプは変動型が75.0%(2025年4月調査比 4.0ポイント減)、固定期間選択型14.9%、全期間固定型10.1%
- 今後1年間の金利見通しは「現状よりも上昇する」が73.7%(同8.0ポイント増)
- 金利リスクについて「理解しているか少し不安・よく理解していない・全く理解していない」の合計が52.0%
4人に3人が変動型を選び、その4人に3人が金利上昇を見込み、半数が金利上昇時の返済額増加を十分に把握できていない。この重なりが、いま返済が苦しくなる人が増えている背景です。金利タイプの仕組みそのものを整理し直したい方は、住宅ローンの基本と金利タイプの選び方もあわせてご覧ください。
【月別タイムライン】滞納1か月・3か月・6か月・12か月で何が起きるか
滞納から競売までの流れは、金融機関の裁量ではなく法律と契約で決まっている部分が大きく、段階ごとに残っている選択肢が変わります。下の表は、各段階で届く通知、その時点で使える手、根拠を並べたものです。
| 段階 | 届く通知・起きること | この時点で使える手 | 根拠・出典 |
|---|---|---|---|
| 滞納1回・〜1か月 | 電話連絡、督促状。遅延損害金が発生 | 入金、返済条件の変更、借り換え、通常売却 | 各金融機関の商品概要説明書 |
| 2か月 | 催告書。保証会社からの代位弁済予告 | 返済条件の変更(実行率93.5%)、通常売却 | 各金融機関の契約条項/金融庁「貸付条件の変更等の状況」 |
| 3か月前後 | 期限の利益の喪失通知。保証会社の代位弁済(機構融資は全額繰上償還請求) | 任意売却、個人再生(住宅資金特別条項) | 各金融機関の契約条項/機構「任意売却パンフレット」令和8年4月 |
| 4〜6か月 | 保証会社・債権回収会社から一括返済請求 | 任意売却、個人再生、自己破産 | 同上 |
| 6か月〜 | 競売の申立て、差押えの登記、執行官の現況調査 | 任意売却(実務上は開札日前日まで) | 民事執行法(188条により担保不動産競売に準用) |
| 申立てから平均9.1か月 | 期間入札・開札。買受可能価額は売却基準価額の80%以上 | 開札後の申立て取下げには買受人等の同意が必要 | 裁判所データブック2026/民事執行法60条3項・76条1項 |
| 売却許可決定後 | 買受人が代金を納付した時点で所有権が移転 | 引越し先の確保、残債務の返済協議 | 民事執行法78条1項・79条 |
| 代金納付後6か月以内 | 買受人が引渡命令を申し立てられる期間 | 明渡し時期の交渉、残債務の整理 | 民事執行法83条2項 |
滞納1回・1か月目|遅延損害金は発生するが、まだ何も失っていない
1回落としただけであれば、電話連絡と督促状が届く段階にとどまります。遅延損害金は発生しますが、この時点では期限の利益を失っておらず、返済条件の変更も借り換えも通常の売却も、すべて選択肢として残っています。この記事で扱う手のうち、最も多くが使えるのがこの1か月です。
ここで避けたいのは、金融機関からの電話に出ないことです。連絡が取れない債務者は、返済意思がないものとして扱われやすくなります。返済できる見込みの時期を伝えるだけでも、その後の交渉の前提が変わります。
2〜3か月目|期限の利益の喪失と代位弁済
2か月を過ぎると、保証会社からの代位弁済予告通知が届きます。代位弁済とは、保証会社が債務者に代わって金融機関へ残債を一括で返済することです。実行されると債権者が保証会社に移り、以後は分割返済の交渉ではなく、一括請求を前提とした回収手続きになります。
3か月前後で届く「期限の利益の喪失通知」は、分割で返す権利を失ったという意味です。ここから遅延損害金の計算対象が残高全額に変わります。フラット35など機構の融資では保証会社を介さず、機構が全額繰上償還を請求する形になります。なお、個人再生の住宅資金特別条項で家を残す道は、この段階でもまだ残っています。
6か月以降|競売申立てから開札まで
債権者が裁判所に競売を申し立てると、不動産登記簿に差押えの登記がなされ、執行官と評価人による現況調査が行われます。ここから開札までにどれくらいかかるのかは、裁判所が公表しています。
| 年次 | 不動産執行事件の平均審理期間 |
|---|---|
| 令和5年 | 8.4か月 |
| 令和6年 | 8.6か月 |
| 令和7年 | 9.1か月 |
出典:最高裁判所「裁判所データブック2026」。申立てから終局まで、直近では平均9.1か月かかっています。滞納開始からの通算では1年半前後を見込むことになりますが、あくまで平均であり、個別の事件で短くなることもあります。「まだ時間がある」と考えるより、選べる手が毎月ひとつずつ減っていく期間と捉えるほうが実態に近いです。
落札後|所有権はいつ移り、いつまで住めるのか
ここは現行の情報が不足しがちな論点なので、条文で整理します。
- 売却許可決定が確定すると、買受人は裁判所書記官の定める期限までに代金を納付します(民事執行法78条1項)。
- 買受人は、代金を納付した時に不動産を取得します(同79条)。この瞬間に所有権が移ります。
- 買受人が引渡命令を申し立てられるのは、代金を納付した日から6か月以内です。買受時に抵当建物使用者が占有していた建物の場合は9か月です(同83条2項)。
つまり、代金納付の翌日に強制的に追い出されるわけではありませんが、買受人には6か月という申立期間があり、その中で明渡しを求めてきます。この6か月は交渉の余地がある期間であって、住み続けられる期間ではありません。落札が決まった段階で、転居先の確保に動く必要があります。
【計算例】遅延損害金はいくらになるか|年14.0%で試算する
遅延損害金でよくある誤解は、「滞納した瞬間から借入残高全体に年14%がかかる」というものです。実際は違います。期限の利益を失う前は、遅れている元利金(=落とせなかった返済額)に対してのみ計算されます。イオン銀行の商品概要説明書は「約定返済日の翌日から当該返済遅延元利金のご返済日までの期間で計算」、三井住友信託銀行のFAQは「遅延している元金に対して年14%」と明記しています。
計算式と、期限の利益喪失前の早見表
遅延損害金 = 遅延している元利金 × 年利 ÷ 365日 × 遅延日数
年14.0%、1年を365日とする日割計算で試算すると、次のようになります。
| 毎月の返済額(1回分) | 7日遅延 | 30日遅延 | 60日遅延 | 90日遅延 |
|---|---|---|---|---|
| 10万円 | 約269円 | 約1,151円 | 約2,301円 | 約3,452円 |
| 12万円 | 約322円 | 約1,381円 | 約2,762円 | 約4,142円 |
| 15万円 | 約403円 | 約1,726円 | 約3,452円 | 約5,178円 |
1回分の遅れであれば、遅延損害金そのものは数百円から数千円の規模です。1か月の遅れを過度に恐れる必要はありません。恐いのは、遅れを放置して次の段階へ進むことです。
期限の利益を失った後は、残高全額が計算対象になる
期限の利益を喪失すると、残債全額が期限到来したものとして扱われ、遅延損害金の計算対象が残高そのものに切り替わります。同じ年14.0%でも、金額の桁が変わります。
| ローン残高 | 7日 | 30日 | 90日 | 180日 |
|---|---|---|---|---|
| 2,000万円 | 約5万4千円 | 約23万円 | 約69万円 | 約138万円 |
| 3,000万円 | 約8万1千円 | 約34万円 | 約104万円 | 約207万円 |
| 4,000万円 | 約10万7千円 | 約46万円 | 約138万円 | 約276万円 |
年14.0%・1年365日の日割計算による試算値です。期限の利益の喪失は、遅延損害金の計算対象を「1回分の返済額」から「残高全額」へ切り替える分岐点です。同じ利率でも、金額の桁がいくつも変わります。3か月を境に急ぐ理由は、ここにあります。
利率は金融機関ごとに違う|自分の契約書で確認する
「住宅ローンの遅延損害金は年14.6%」という説明を見かけますが、公開されている事業者の数値は必ずしもそうではありません。イオン銀行は年14.0%、三井住友信託銀行は対象商品について年14%と公表しています。自分の契約の数字は、商品概要説明書か金銭消費貸借契約証書の「遅延損害金」欄に書かれています。手元にない場合は、金融機関に「遅延損害金の利率」を尋ねれば教えてもらえます。
任意売却では延滞損害金の減額相談に応じてもらえる場合がある
膨らんだ遅延損害金は、必ずしも満額が固定されるわけではありません。住宅金融支援機構の任意売却パンフレット(令和8年4月)には、パンフレットに定める手続に協力する場合、残債務の状況等により延滞損害金の減額の相談に応じられる場合があると記載されています。手続に協力する姿勢が、そのまま金銭的な条件に返ってくる場面です。
対処法1:金融機関への相談と返済条件変更|実行率93.5%という現実
最初に取る手は、借入先金融機関への相談です。「相談しても断られるのでは」という不安が動きを止めがちですが、公表データはその逆を示しています。
【数値表】金融庁「貸付条件の変更等の状況」住宅資金借入者データ
| 区分 | 申込み | 実行(A) | 謝絶(B) | 審査中 | 取下げ | 実行率 A/(A+B) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 主要行等(9行) | 1,709件 | 1,351件 | 133件 | 152件 | 261件 | 91.0% |
| 地域銀行(96行) | 7,390件 | 6,156件 | 386件 | 660件 | 825件 | 94.1% |
| その他の銀行(77行) | 315件 | 184件 | 17件 | 21件 | 105件 | 91.5% |
| 合計(182行) | 9,414件 | 7,691件 | 536件 | 833件 | 1,191件 | 93.5% |
出典:金融庁「貸付条件の変更等の状況について(令和8年6月末時点)」。令和7年4月1日から令和8年6月末までの実績で、この統計は月次で更新されています。謝絶は536件、申込みの5%程度にとどまります。審査はありますし、変更後も返済を継続できることが前提になりますが、「相談すれば大半は何らかの形で通っている」という事実は、最初の電話をかける後押しになるはずです。
【比較表】条件変更にかかる手数料は金融機関でこれだけ違う
条件変更には手数料がかかる場合があります。「5,000円から30,000円程度」という漠然とした説明ではなく、公表されている実額で比較します。
| 金融機関 | 返済条件の変更 | 金利タイプの変更 | 全額繰上返済(期限前完済) |
|---|---|---|---|
| 住宅金融支援機構(A・B・Cタイプ) | 無料 | ― | ― |
| 三菱UFJ銀行 | インターネット5,500円/店頭窓口11,000円(期間短縮・ボーナス返済額・ボーナス月・毎月の返済日・元利均等⇔元金均等) | 無料/11,000円 | 16,500円/33,000円(機構の住宅ローンは無料) |
| イオン銀行 | 11,000円〜33,000円(税込) | 無料 | 55,000円(税込) |
いずれも消費税込みの公表値です(三菱UFJ銀行「借入後に必要な住宅ローン手数料」、イオン銀行「住宅ローン商品概要説明書」2026年6月1日現在)。三菱UFJ銀行では債務者の変更が16,500円/33,000円、上記以外の変更内容は個別案内とされています。機構の返済方法変更が手数料無料である点は、フラット35利用者にとって明確な利点です。
相談時に持っていく書類と、伝えるべき数字
相談の場で「返済が苦しい」とだけ伝えても、担当者は判断材料を持てません。次の3点を数字で示せると、話が具体的な変更案に進みます。
- 収入がどれだけ減ったか:源泉徴収票または確定申告書を2年分。収入減少割合を計算した結果も添えます。
- 毎月いくらなら払えるか:家計の収支表。手取りから生活費・教育費・他の借入返済を引いた残額を提示します。
- いつ回復する見込みか:再就職の予定、治療期間、子どもの卒業時期など、減額期間の設定根拠になります。
返済方法の変更は「今後の返済を継続できること」が審査の中心です。したがって、下げてほしい金額よりも、下げた後なら払い続けられるという根拠のほうが重要になります。
対処法2:フラット35・機構融資の返済方法変更メニュー【タイプ別比較表】
住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)の融資を利用中であれば、正式なメニューが用意されています。名称と条件を正確に把握しておくと、金融機関の窓口での話が早くなります。申請はいずれも、返済中の金融機関を経由して行います。
| メニュー | 対象となる状況 | 変更内容 | 上限 | 手数料 |
|---|---|---|---|---|
| 返済特例(Aタイプ) | 離職や病気等で返済が困難。収入基準に該当し、変更後は返済を継続できる方 | 返済期間の延長。失業中または収入が20%以上減少した方は元金支払いの一時休止も可 | 延長は最長15年。元金据置は最長3年。完済時年齢80歳まで | 無料 |
| 中ゆとり(Bタイプ) | 進学による教育費、入院による医療費など、一定期間の支出増が見込まれる場合 | 相談のうえ決めた期間、返済額を減額 | 期間は相談により決定(減額期間終了後は返済額が増加) | 無料 |
| ボーナス返済の見直し(Cタイプ) | ボーナス返済が負担になっている場合 | ボーナス返済月の変更、毎月分とボーナス分の内訳変更、ボーナス返済の取り止め | ― | 無料 |
| シルバー返済特例 | 満70歳以上で、他のメニューでは返済継続が見込めない方 | 毎月の支払を利息のみとし、債務者全員の死亡時に自宅売却で一括返済 | 返済開始から20年以上経過などの条件あり。団信は脱退が必要 | 無料 |
出典:住宅金融支援機構「月々の返済でお困りになったとき」(更新日2026年4月1日)、「タイプ別返済方法変更メニュー」、「(70歳以上の方)返済方法変更のご案内/シルバー返済特例のご案内」(令和8年4月)。AタイプとCタイプ、BタイプとCタイプは組み合わせて利用できます。AタイプとBタイプの組合せは、Aタイプで期間延長のみを利用する場合に限られます。
返済特例(Aタイプ)の適用条件
Aタイプは、次の3項目すべてに当てはまることが条件です。
- 離職や病気等の事情により返済が困難となっていること(倒産による解雇、リストラ、業績悪化による給与・ボーナスの減収、超過勤務減、自営業の受注減、病気やけが、家族の介護による減収・支出増などが該当)
- 次のいずれかに該当すること
- 年収が機構への年間総返済額の4倍以下
- 月収が世帯人員 × 64,000円以下
- 返済負担率が下表の率を超え、かつ収入減少割合が20%以上
- 返済方法の変更により、今後の返済を継続できること
| 年収 | 300万円未満 | 300万円以上400万円未満 | 400万円以上700万円未満 | 700万円以上 |
|---|---|---|---|---|
| 返済負担率の基準 | 30% | 35% | 40% | 45% |
返済期間の延長は最長15年(通算50年)まで可能ですが、機構は「必要最低限の延長」を勧めています。期間を延ばせば毎月は軽くなる一方、利息負担が増えて総返済額は増加するためです。なお、完済時の年齢が80歳を超える延長はできません。年齢と借入期間の関係は住宅ローンの年齢制限と借入期間の考え方で整理しています。
【計算例】中ゆとり(Bタイプ)で毎月いくら下がるのか
機構が公表している計算例です。融資額2,000万円、金利3.00%、35年返済、返済開始から4年経過した時点で適用した場合です。
- 減額前の毎月返済額:76,970円
- 減額期間中(3年間):50,000円
- 減額期間終了後:81,436円
3年間で毎月26,970円、合計およそ97万円の資金繰りを確保できる計算です。ただし減額期間後は81,436円へ上がり、総返済額も増加します。「3年で家計が立て直せるか」が、このメニューを選ぶかどうかの判断軸になります。立て直しに5年かかりそうなら、Aタイプでの期間延長を組み合わせる相談をしたほうが現実的です。
【計算例】ボーナス返済の見直し(Cタイプ)と、AとCの組合せ
ボーナスの支給が減った場合に効くのがCタイプです。融資額2,000万円(毎月分1,400万円・ボーナス分600万円)、金利3.00%、35年返済、返済開始4年経過時点の例です。
| パターン | 毎月の返済額 | ボーナス分 |
|---|---|---|
| 適用前 | 53,879円 | 139,034円 |
| ボーナス返済の取り止め | 76,964円 | 0円 |
| 毎月・ボーナス月の内訳変更 | 62,707円 | 85,861円 |
| Cタイプ+Aタイプ(15年延長・通算50年) | 50,719円 | 69,385円 |
ボーナス返済を取り止めると毎月は76,964円へ上がりますが、半年ごとの大きな支払いはなくなります。ボーナスが不安定な職種であれば、月々を平準化するほうが管理しやすくなります。組合せの例では、毎月もボーナス月も適用前より下がっています。単独のメニューで足りない場合は、組合せを前提に相談してみてください。
70歳以上のシルバー返済特例|利息のみ返済にできる条件と代償
他のメニューでは返済の継続が見込めない70歳以上の方には、シルバー返済特例があります。毎月の支払を利息のみとし、債務者全員が亡くなった時点で自宅を売却して残債務を一括返済する仕組みです。売却によって債務が一部残った場合、その部分を相続人に請求しないとされています。
主な利用条件は次のとおりです。
- 制度利用時点で満70歳以上であること
- 現に融資住宅に居住し、今後も居住を継続する予定であること
- 返済を開始してから20年以上経過していること
- 土地と建物に機構の抵当権が設定されていること
- 現在、遅れなく返済していること
- 一定の収入基準を満たすこと
代償も明示されています。団体信用生命保険に加入している方は、利用前に脱退が必要です。また元金残高は減らず、適用後にさらなる返済方法の変更はできません。適用後に返済が滞れば、残債務全額の一括返済を請求されます。推定相続人など利害関係人全員の同意も必要です。家族と話し合ってから申し出る類の制度だとご理解ください。老後の住まいの選択肢そのものを見直す場合は、高齢者向け住宅の種類と判断基準も参考になります。
対処法3:借り換えで下げられる人・下げられない人
結論として、借り換えは滞納が始まる前でなければ実質的に使えません。借り換えは新規の住宅ローン審査を受け直すことであり、返済状況は審査対象だからです。イオン銀行も商品概要説明書で「住宅ローンのお借換えの場合は、過去のご返済状況を確認させていただきます」と明記しています。
まだ延滞していない段階なら、次の3つを自分の数字で比べます。金利差による総返済額の減少幅、借り換え費用(事務手数料・保証料・登記費用など。定率型では借入金額の2.2%程度がかかる例もあります)、そして「費用 ÷ 年間の軽減額」で求める回収年数です。回収年数が残存期間より短ければ、借り換えに経済合理性があります。
金利タイプの変更だけで足りるケースもあります。三菱UFJ銀行では変動金利から固定金利への変更手数料がインターネットで無料、店頭窓口で11,000円です。借り換えより先に、いま借りている金融機関でできることを確認するのが順序として合理的です。損益分岐の考え方は、優遇金利の仕組みと借換えの判断基準で詳しく扱っています。
対処法4:任意売却と競売の違いを、法的根拠と手取りで比較する
返済条件の変更でも家計が回らない場合、住まいを手放す判断に入ります。任意売却と競売の差は「なんとなく任意売却のほうが高く売れる」という感覚の話ではなく、制度上の違いから生じます。
| 比較項目 | 任意売却 | 競売 |
|---|---|---|
| 売却の主体 | 売主(債務者)が仲介業者を選び、通常の不動産取引として販売 | 裁判所が主導する強制的な手続き |
| 価格の下限 | 債権者の同意が得られる水準 | 買受可能価額=売却基準価額から10分の2を控除した額以上(民事執行法60条3項) |
| 諸費用 | 状況により、売却代金から不動産仲介手数料・抹消登記費用等を控除して渡せる場合がある | 売却代金は配当に回る |
| 遅延損害金 | 残債務の状況等により減額の相談に応じられる場合がある | 個別の減額交渉の枠組みがない |
| 引渡し時期 | 買主との交渉により調整しやすい | 買受人は代金納付日から6か月以内に引渡命令を申立て可能(同83条2項) |
| 公開性 | 通常の売却物件として流通 | 裁判所の公告により公開される |
| 期限の利益 | 申出が期限の利益の放棄の意思表示となる場合がある | すでに喪失している |
出典:民事執行法、住宅金融支援機構「任意売却パンフレット(買取型)」令和8年4月。
競売の価格が下がりやすい理由は、法律で説明できる
「競売は市場価格の6〜7割」という数字がよく語られますが、公的に確認できるのは、買受けの申出額は売却基準価額から10分の2を控除した額(買受可能価額)以上でなければならないという民事執行法60条3項の規定です。売却基準価額そのものが、占有関係の制約や内覧ができないといった競売特有の事情を織り込んで評価されるうえ、さらにその80%まで申出が認められます。これが価格差の制度的な背景です(競売物件のリスクとトラブル事例)。
ただし具体的な相場は物件と地域によって幅があるため、一律の倍率で語ることは避けます。判断に必要なのは、自分の物件について任意売却でいくら見込めるかという個別の査定額です。売却の進め方そのものは不動産売却の手順と流れにまとめています。
任意売却の代償|期限の利益の放棄と、団信の脱退
任意売却にはメリットだけでなく、明示された代償があります。機構のパンフレットは次のように記載しています。
- 機構が全額繰上償還請求を行っていない段階で任意売却を申し出る場合、申出書の提出が返済継続を断念し、月々の返済を行う権利を放棄したことの意思表示となります。
- 借入申込日が平成29年10月1日以後のフラット35(買取型)で新機構団信に加入している場合、期限の利益の喪失が解約事由に該当し、全額繰上償還請求期限日をもって保障が終了(団信脱退)となります。借入申込受理日が令和2年10月1日以後の新機構団信(金利組込方式)も同様です。
- 任意売却による返済金が債権額に満たない場合、破産免責となっている方を除き、残債務の返済義務は残ります。ただし任意売却後の返済計画は、生活状況等を踏まえて返済可能な金額を決めていくとされています。
団信の保障が終わる点は見落とされがちです。健康面に不安がある方は、任意売却の申出前に家族と共有しておきたい情報です。
いつまで任意売却できるのか
競売の申立て後でも、実務上は開札日の前日までは任意売却の余地が残ります。開札で最高価買受申出人が決まった後は、競売の申立てを取り下げるのに買受人等の同意が必要になるためです(民事執行法76条1項、同188条により担保不動産競売に準用)。ただし、競売手続きが進むにつれて買主を確保する難易度は上がります。販売活動には内見や価格調整の時間が必要で、開札の直前に着手しても間に合いません。現実的な締切は、競売の申立てを知った時点だとお考えください。
機構の任意売却では、まず「任意売却に関する申出書」を提出し、仲介業者は原則としてご自身で選定します。仲介業者は物件調査のうえ、売出価格確認申請書と価格査定書を提出する流れです。物件の清掃や整理、内見への協力といった売主側の対応が、そのまま売却価格に効いてきます。
なお、売却して住み続ける方法としてリースバックが提案されることがありますが、条件面の確認事項が多い手法です。判断材料はリースバックの仕組みとリスクに整理しています。
対処法5:相談先の選び方【比較表】|誰に、いくらで、何を相談できるか
相談先は「名前を知っているかどうか」ではなく、「自分が対象者に入るか」「費用がいくらか」で選びます。
| 相談先 | 対象 | できること | 費用 |
|---|---|---|---|
| 借入先の金融機関 | すべての借入者 | 返済条件の変更、金利タイプの変更、機構メニューの申請窓口 | 金融機関により無料〜33,000円 |
| 住宅金融支援機構 | 機構(旧公庫)融資・フラット35の利用者 | 返済特例・中ゆとり・ボーナス返済の見直し・シルバー返済特例、任意売却 | 変更手数料は無料 |
| 全国銀行協会 カウンセリングサービス | 銀行と取引がある個人で、住宅ローンやカードローン等(事業性資金を除く)の返済が困難な方 | 専門カウンセラーによる相談、必要に応じて他機関の紹介 | 無料 |
| 法テラス(民事法律扶助) | 資力基準に該当する方 | 弁護士・司法書士による法律相談、代理援助の費用立替 | 資力基準を満たせば相談は無料 |
全国銀行協会相談室の電話番号は0570-017003です。予約受付は月〜金曜日の午前9時〜午後5時、相談時間は月・火・木曜日が午前10時〜12時と午後1時〜5時、水・金曜日が午前10時〜12時と午後1時〜7時です(祝日および銀行の休業日を除く)。相談は無料で、秘密は厳守されます。
【数値表】法テラス民事法律扶助の資力基準(2026年3月現在)
弁護士への相談費用が心配な場合、法テラスの民事法律扶助を使えるかどうかを先に確認します。基準は公表されています。
| 家族人数 | 手取り月収の基準 | 家賃・住宅ローン加算の限度 | 資産(現金・預貯金)の基準 |
|---|---|---|---|
| 単身者 | 182,000円以下(200,200円以下) | 41,000円以下(53,000円以下) | 180万円以下 |
| 2人家族 | 251,000円以下(276,100円以下) | 53,000円以下(68,000円以下) | 250万円以下 |
| 3人家族 | 272,000円以下(299,200円以下) | 66,000円以下(85,000円以下) | 270万円以下 |
| 4人家族以上 | 299,000円以下(328,900円以下) | 71,000円以下(92,000円以下) | 300万円以下 |
出典:法テラス「民事法律扶助のしおり」(2026年3月)。収入基準の括弧内は東京都特別区や大阪市など生活保護一級地の基準、家賃・住宅ローン加算の括弧内は東京都特別区の基準です。5人家族以上は同居家族1名増ごとに30,000円(33,000円)を加算します。
ここが実務上の要点です。住宅ローンを負担している場合、その負担額を上限の範囲で収入基準に加算できます。単身で手取り月収20万円でも、住宅ローンを月41,000円以上負担していれば基準内に収まる可能性があります。「収入が基準を超えているから無理だろう」と自己判断せず、加算後の数字で確認してみてください。なお代理援助・書類作成援助では不動産等も資産に含めて判断されますが、生活のために必要な住宅は除外できるとされています。
それでも返せないとき|個人再生・自己破産という選択肢
法的整理は、特別な人だけが使う手続きではありません。個人の破産事件は3年連続で増え、個人再生も直近2年は増加しています。
| 年次 | 個人の破産事件 新受 | 個人再生事件 新受 |
|---|---|---|
| 令和5年 | 70,745件 | 9,440件 |
| 令和6年 | 76,454件 | 10,524件 |
| 令和7年 | 83,255件 | 11,415件 |
出典:最高裁判所「裁判所データブック2026」。令和7年の個人再生11,415件の内訳は、小規模個人再生10,753件、給与所得者等再生662件です。個人の破産事件は令和4年の64,982件を底に、3年で約1.3倍に増えています。
住宅資金特別条項で家を残せる条件
個人再生には住宅資金特別条項(いわゆる住宅ローン特則)があり、住宅ローンは約定どおり払い続けながら、他の債務を圧縮して家を残す道があります。住宅ローン以外の借入が膨らんで返済が回らなくなっている方に向いた手続きです。
ただし、住宅に住宅ローン以外の担保が設定されている場合や、すでに代位弁済から一定期間が経過している場合など、使えない条件もあります。適用の可否は個別事情に左右されるため、弁護士または司法書士に確認してください。機構も「機構への返済の他にも返済を抱え、返済の継続が難しいと思われる方は、個人版民事再生法を利用する方法もある」として、法律の専門家への相談を案内しています。
家を手放したあとのお金|税金と信用情報の整理
売却して終わりではありません。翌年の確定申告と、その後の借入に効いてくる論点が残ります。ここは知っているかどうかで手取りが変わる部分です。
特定のマイホームの譲渡損失の損益通算・繰越控除
住宅ローンが残るマイホームを、ローン残高を下回る価額で売って損失が出た場合、一定の要件を満たせば、その譲渡損失を給与所得など他の所得から控除(損益通算)できます。控除しきれない分は、譲渡の年の翌年以後3年間繰り越せます。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 所有期間 | 売った年の1月1日において、家屋・敷地ともに5年超 |
| 住宅ローン | 売買契約日の前日において、償還期間10年以上の住宅ローン残高があること |
| 譲渡価額 | 住宅ローン残高を下回っていること |
| 損益通算の限度額 | 売買契約日の前日の住宅ローン残高から売却価額を差し引いた金額 |
| 繰越控除の制限 | 合計所得金額が3,000万円を超える年は、その年のみ適用できない |
| 除外 | 親子や夫婦など特別の関係がある人への売却は対象外 |
出典:国税庁 No.3390。適用期限について補足します。国税庁のタックスアンサーには「令和7年12月31日まで」と記載されていますが、令和8年度税制改正でこの特例は2年間(令和8年1月1日〜令和9年12月31日)延長されています(国土交通省「令和8年度税制改正概要」)。申告前に最新の記載をご確認ください。なお、一定のハザードエリア内に所在する買換資産は対象外とされています。
3,000万円特別控除と、資力喪失時の債務免除益
反対に譲渡益が出た場合は、マイホームを売ったときの3,000万円特別控除があります。所有期間の長短を問わず、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例です。以前に住んでいた家屋については、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが条件です。売った年の前年・前々年にこの特例や譲渡損失の特例を受けていないことも要件になります(国税庁 No.3302)。
任意売却や競売の後に残債務の免除を受けた場合の課税関係も、押さえておきたい論点です。国税庁は、債務者が資力を喪失して債務の弁済が著しく困難である場合に債務の免除を受けたときは、弁済することが困難な部分の金額について贈与により取得したものとみなされないとしています(No.4424)。免除を受けたら常に非課税になるという意味ではないため、該当しそうな場合は税務署または税理士にご確認ください。
【比較表】CIC・JICC・KSCの登録内容と登録期間
「61日以上または3回以上の延滞で異動情報として記録され、完済後5年」という説明が広く流通していますが、各機関が公表している保有期間はもう少し細かく分かれています。3機関の公表内容を並べます。
| 機関 | 主な登録情報 | 登録・保有期間 |
|---|---|---|
| CIC(指定信用情報機関) | クレジット情報(契約内容と支払状況。入金履歴、異動(延滞・保証履行・破産)の有無、異動発生日、延滞解消日を含む) | 契約期間中および契約終了後5年以内 |
| 申込情報 | 照会日より6か月間 | |
| 利用記録 | 利用日より6か月間 | |
| JICC(日本信用情報機構) | 契約内容・返済状況(契約日2019年10月1日以降) | 契約継続中および契約終了後5年以内 |
| 延滞情報(契約日2019年9月30日以前) | 延滞継続中。延滞解消の事実は発生日から1年を超えない期間 | |
| 申込みに関する情報 | 照会日から6か月以内 | |
| KSC(全国銀行個人信用情報センター) | 取引情報(契約内容と返済状況。延滞・代位弁済・強制回収手続等の事実を含む) | 契約期間中および契約終了日(完済されていない場合は完済日)から5年を超えない期間 |
| 官報情報(破産・民事再生開始決定等) | 決定日から7年を超えない期間 | |
| 照会記録情報 | 利用日から、会員への提供は6か月を超えない期間 |
出典:CIC「CICが保有する信用情報」、JICC「信用情報の内容と登録期間」、全国銀行協会「全国銀行個人信用情報センターのご案内」(2026年4月)。
KSCについては、2022年11月4日をもって不渡情報の登録・提供が取りやめられ、官報情報の登録期間が10年間から7年間に短縮されています。古い解説記事では10年と書かれていることがあるため、注意が必要です。なお、KSCは免責決定等の情報を登録しないとしています。自分の登録内容は各機関の本人開示で確認できます。
滞納歴があると、次の住宅ローン審査はどうなるか
結論として、返済履歴は審査項目のひとつですが、最上位の項目ではありません。国土交通省の令和7年度調査(令和8年3月公表)から、審査項目を採用している金融機関の割合を挙げます。
| 審査項目 | 採用機関の割合 | 補足 |
|---|---|---|
| 完済時年齢 | 98.4%(978機関) | 「80歳未満」が716機関 |
| 借入時年齢 | 96.2%(956機関) | ― |
| 健康状態 | 96.1%(955機関) | 団信加入が必要が834機関 |
| 年収 | 94.2%(936機関) | ― |
| 勤続年数 | 93.9%(933機関) | 「1年以上」が612機関 |
| 担保評価 | 91.0%(905機関) | 融資判断に影響が498機関 |
| 返済負担率 | 90.9%(904機関) | ― |
| 金融機関の営業エリア | 89.2%(887機関) | ― |
| 連帯保証 | 84.7%(842機関) | ― |
| カードローン等の他の債務の状況や返済履歴 | 72.5%(721機関) | ― |
出典:国土交通省住宅局「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」(令和8年3月)。
返済履歴を審査項目とする機関は72.5%で、完済時年齢や年収より低い水準です。裏を返せば、4分の1以上の機関は返済履歴を審査項目として挙げていません。滞納歴があるからといって、住宅ローンが永久に組めなくなるわけではありません。
信用情報が回復するまでの間にやっておきたいことは、次の3つです。第一に、現在の借入をすべて把握し、遅れなく返済する実績を積むこと。第二に、他の債務を整理し、返済負担率を下げること。第三に、頭金を厚くして借入額そのものを抑えることです。返済負担率と担保評価は9割の機関が見ています。ここを改善しておけば、次の審査で交渉できる材料になります。完済後の抵当権抹消など、手続き面は抵当権抹消登記の必要書類と手順にまとめています。
まとめ|滞納月数から逆算する行動チェックリスト
住宅ローンの返済に行き詰まったとき、判断を分けるのは知識量ではなく、動いた時期です。滞納の月数ごとに、今日できることを整理します。
- まだ滞納していない/1回だけ:借入先に電話し、返済条件の変更を相談します。源泉徴収票2年分と家計の収支表を用意します。金利タイプの変更や借り換えも、この段階なら選べます。
- 2か月:代位弁済予告が届く前に相談を済ませます。機構融資であれば、返済特例・中ゆとり・ボーナス返済の見直しを名指しで確認します。手数料は無料です。
- 3か月前後:期限の利益の喪失で遅延損害金の計算対象が残高全額に変わります。返済条件の変更が難しい場合、任意売却と個人再生のどちらを選ぶかの検討に入ります。
- 4〜6か月:任意売却の申出と仲介業者の選定を進めます。売却代金から仲介手数料等を控除できる場合や、延滞損害金の減額相談に応じてもらえる場合があります。
- 競売の申立て後:実務上は開札日前日まで任意売却の余地が残りますが、買主確保に時間が必要です。並行して転居先の確保を進めます。
- 落札後:代金納付で所有権が移り、買受人は6か月以内に引渡命令を申し立てられます。残債務の返済協議と、翌年の確定申告(譲渡損失の損益通算)を準備します。
私たちINA&Associates株式会社は、不動産の売却と管理の実務に携わる立場から、デメリットも含めて数字で示すことが長期的な信頼につながると考えています。この記事で扱った制度は、いずれも公的機関が公表しているものです。情報が足りないまま時間だけが過ぎることが、いちばん高くつきます。まずは借入先への1本の電話から始めてください。
よくある質問
Q1. 住宅ローンを1回滞納しただけでも大丈夫ですか
1回の遅れであれば、速やかに入金することで大きな問題に発展しにくい段階です。遅延損害金は発生しますが、期限の利益を失う前は遅れている元利金にのみかかるため、返済額10万円・30日の遅れで年14.0%なら約1,151円という規模です。ただし電話や督促状を放置すると次の段階に進みます。入金の見込み時期だけでも金融機関に伝えてください。
Q2. 返済条件の変更を申し込んでも、どうせ断られるのではありませんか
金融庁の集計では、住宅資金借入者の申込み9,414件に対して実行7,691件、謝絶536件で、実行率は93.5%です(令和7年4月1日〜令和8年6月末)。地域銀行では94.1%が実行されています。審査はありますが、断られる前提で相談を控える理由は乏しいと言えます。
Q3. フラット35を滞納しています。銀行のローンと何が違いますか
住宅金融支援機構の融資には、返済特例(Aタイプ)・中ゆとり(Bタイプ)・ボーナス返済の見直し(Cタイプ)という正式なメニューがあり、いずれも変更手数料は無料です。返済期間の延長は最長15年(完済時年齢80歳まで)、元金の据置は最長3年まで可能です。満70歳以上で他のメニューが使えない場合は、シルバー返済特例の対象になる可能性があります。申請は返済中の金融機関を経由します。
Q4. 遅延損害金は年14.6%だと聞きましたが、本当ですか
金融機関ごとに異なります。公表されている数値では、イオン銀行が年14.0%(1年を365日とする日割計算)、三井住友信託銀行が対象商品について年14%です。自分の契約の利率は、商品概要説明書または金銭消費貸借契約証書の「遅延損害金」欄に記載されています。分からない場合は金融機関に照会してください。
Q5. 競売で落札されたら、すぐに家を出なければなりませんか
所有権は買受人が代金を納付した時に移ります(民事執行法79条)。ただし買受人が引渡命令を申し立てられるのは代金納付日から6か月以内とされており(同83条2項)、その間に明渡しの交渉が行われるのが一般的です。即日退去を求められるものではありませんが、住み続けられる期間でもありません。落札が決まった時点で転居先の確保を進めてください。
Q6. 滞納した記録は、いつまで信用情報に残りますか
機関ごとに異なります。CICのクレジット情報は契約期間中および契約終了後5年以内、JICCの契約内容・返済状況(契約日2019年10月1日以降)は契約継続中および契約終了後5年以内、KSCの取引情報は契約終了日(完済されていない場合は完済日)から5年を超えない期間です。KSCの官報情報は決定日から7年を超えない期間で、2022年11月4日に10年間から7年間へ短縮されました。実際の登録内容は各機関の本人開示で確認できます。
Q7. 弁護士に相談したいのですが、費用を払えません
法テラスの民事法律扶助が使える可能性があります。資力基準は2026年3月現在で、単身者の手取り月収182,000円以下・現金預貯金180万円以下などとされています。ここで重要なのは、住宅ローンを負担している場合、その負担額を単身者41,000円などの限度で収入基準に加算できる点です。基準を超えていると自己判断せず、加算後の金額で確認することをお勧めします。
引用・参考資料
- 金融庁「地方銀行の住宅ローンのデフォルト状況に関する分析」(FSA Analytical Notes 2025.10)
- 金融庁「貸付条件の変更等の状況について(令和8年6月末時点)」
- 金融庁「金融機関における貸付条件の変更等の状況について」
- 住宅金融支援機構「2025年度 投資家向け説明資料」(2025年7月)
- 住宅金融支援機構「月々の返済でお困りになったとき」(更新日2026年4月1日)
- 住宅金融支援機構「タイプ別返済方法変更メニュー」
- 住宅金融支援機構「ご返済が困難になっているお客さまへ」
- 住宅金融支援機構「(70歳以上の方)返済方法変更のご案内/シルバー返済特例のご案内」(令和8年4月)
- 住宅金融支援機構「返済方法の変更を希望するとき」
- 住宅金融支援機構「任意売却パンフレット(買取型)」(令和8年4月)
- 住宅金融支援機構「融資物件の任意売却(ご返済の継続が困難となった場合)」
- 住宅金融支援機構「住宅ローン利用者調査(2026年1月調査)」(2026年2月)
- 最高裁判所「裁判所データブック2026」民事執行事件
- 最高裁判所「裁判所データブック2026」民事事件(倒産事件)
- e-Gov法令検索「民事執行法」
- イオン銀行「住宅ローン商品概要説明書」(2026年6月1日現在)
- 三菱UFJ銀行「借入後に必要な住宅ローン手数料」
- 三井住友信託銀行「住宅ローンの返済が遅れた場合、遅延損害金はいくらですか」
- 国土交通省住宅局「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」(令和8年3月)
- 国土交通省「令和8年度税制改正概要」(令和7年12月)
- 国税庁 No.3390「住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき」
- 国税庁 No.3302「マイホームを売ったときの特例」
- 国税庁 No.4424「債務免除等を受けた場合」
- CIC「CICが保有する信用情報」
- 日本信用情報機構(JICC)「信用情報の内容と登録期間」
- 全国銀行協会「一部情報の登録終了および登録期間の短縮について」
- 全国銀行協会「全国銀行個人信用情報センターのご案内」(2026年4月)
- 全国銀行協会「カウンセリングサービス」
- 法テラス「民事法律扶助のしおり」(2026年3月)
