外国人による日本の不動産取引は増加していますが、多くの不動産会社にとってハードルが高いのも事実です。言語の壁、文化の違い、法制度への不安。いきなりフル対応するのは現実的ではありません。
重要なのは、段階的に経験を積むことです。最初から売買取引を目指す必要はなく、身近なところから一歩ずつ進めていく方法があります。
ステップ1:外国人の賃借人から相談を受けてみる
自社で賃貸仲介や管理を行っている場合、賃借人の中に外国人の方がいるケースは増えています。在留外国人数は過去最高を更新しており、特に大都市圏には多く居住しています。
賃貸の場面で外国人に対する重要事項説明や契約書の読み合わせを経験された方もいるでしょう。その延長として、生活上の困り事や相談を受けてみることで、外国人の考え方や文化・習慣・生活スタイルを理解する機会が得られます。
すぐに売買に結びつくものではなくても、相互理解の土台を作ることが第一歩です。
ステップ2:売物件を外国人取引に強い業者に紹介する
売却不動産の依頼を受けた際、物件によっては日本人よりも外国人の購入意欲が強いエリアや種類があります。
「分かれ」の取引で、客付け側に外国人取引が得意な業者に入ってもらう方法が効果的です。媒介の当事者として間近で外国人取引の実務を学べます。わからないことは相手方業者にどんどん質問してください。取引を通じて多くのことが学べるはずです。
ステップ3:業界の交流会で外国人取引に強い業者とつながる
外国人取引が得意な業者の知り合いがいない場合は、不動産協会等の交流会・懇親会に参加してみましょう。
最近の注目すべきデータとして、新たに不動産業登録をする会社の約2割は、外国籍の方が代表者等となっています。日本語が堪能な方も多く、新規開業の方は知り合いを増やすために交流会に積極的に参加しています。
こうした場で人脈を築くことが、将来の取引機会につながります。
ステップ4:言語と文化を少しずつ学ぶ
英語や中国語に苦手意識がある方も多いと思いますが、言葉はコミュニケーション手段であり、その国の文化そのものです。
今はYouTubeやポッドキャスト、オンラインレッスンなど手軽で安価なサービスがたくさんあります。少し覗いてみる、ちょっぴり試してみるというところからで十分です。少しでも理解ができれば、今後のチャンスが確実に増えます。
外国人取引で知っておくべき課題
外国人との不動産取引には、日本の不動産業者から見た特有の課題があります。事前に把握しておくことで対策が立てやすくなります。
言語面
- 契約書・重要事項説明書の説明が困難
- 口頭での一般的な事項の説明が難しい
- 外国語の文書作成の負担
契約慣習の違い
- 不動産用語や取引慣習が異なる
- 価格交渉のスタイルの違い
- 仲介を通さず直接所有者に掛け合おうとするケース
費用面
- 取引銀行の選定が難しい
- 海外送金の手数料・日数の問題
- 税金や各種費用への支払い意識の違い
これらは「課題」であると同時に「改善・対応の余地がある領域」です。日本の不動産を購入したいと考える外国人は、日本に対する一定の理解と敬意を持っている方が多いです。その方々を支援することが、新たな業容拡大の機会になります。
外国人を理由とした取引拒絶のリスク
一点注意が必要なのは、外国人であることを理由とした取引拒絶は法的リスクを伴うという点です。
日本は人種差別撤廃条約に加入しており、憲法の法の下の平等の趣旨は外国人にも類推適用されると最高裁が判断しています(昭和39年判決)。民法の信義則や不法行為の解釈においても間接適用され、差別に基づく取引拒絶は損害賠償請求の対象となり得ます。
国土交通省も「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」において、人権問題に対する意識の向上と差別解消を求めています。
よくある質問(FAQ)
Q. 外国語が全くできなくても外国人取引に関われますか?
はい。まずは外国人取引に強い業者との「分かれ」取引から始めれば、相手方業者が言語面をカバーしてくれます。実務を間近で学びながら、徐々に対応力を上げていく方法が現実的です。
Q. 外国人の賃借人からの相談で多いものは何ですか?
在留資格に関すること、生活ルール(ゴミ出し・騒音等)の確認、契約更新の手続き、退去時の原状回復についてなどが多い傾向です。これらの対応経験が、売買取引への橋渡しになります。