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中古マンション値引き相場|2026年データと300万円の現実性

中古マンションの値引き相場を2026年のレインズ実績で検証。売り出しと成約の乖離は首都圏41%、東京都49%。300万円が何%にあたるかを地域別に示します。

最終更新: 約32分で読めます

中古マンションの値引き相場は、2026年時点では「売り出し価格の5〜10%」という通説だけでは説明できません。東日本レインズの2026年6月度データでは、首都圏の在庫㎡単価116.54万円/㎡に対し、実際に成約した㎡単価は82.64万円/㎡で、その開きは約41%あります。しかもこの開きは東京都に偏っており、千葉県では在庫のほうが成約より9.4%安い水準です。値引き余地は、いまエリアによって意味が正反対になっています。

この記事は、いま具体的な物件を前にして「いくらの指値を入れるか」を決めたい買主の方と、買主から値引きを求められて「応じるべきか、いつ価格を改定するか」を判断したい売主の方に向けて書いています。東日本レインズ・国土交通省・国税庁・住宅金融支援機構が公表している2026年時点の一次データだけを使い、300万円という具体的な指値が地域別に何%にあたるか、通ったときに諸費用がいくら減るか、そして交渉より先に見るべき金利と税制の条件までを数字で示します。

この記事のポイント

  • 首都圏の在庫㎡単価は成約㎡単価より41.0%高い水準です。レインズも2026年7月17日の資料で、成約㎡単価と新規登録㎡単価の乖離率が「約40%まで拡大」したと記しています。
  • 値引き余地は東京都に偏在します。東京都は在庫㎡単価が成約㎡単価より48.8%高い一方、千葉県は9.4%低く、同じ指値でも意味が反対になります。
  • 300万円の指値は、首都圏平均(5,202万円)なら5.8%、東京都区部(7,576万円)なら4.0%、千葉県(2,989万円)なら10.0%です。
  • 300万円値引いても減る諸費用は、仲介手数料9.90万円と、5,000万円の階級をまたぐ場合の印紙税2万円だけです。登録免許税と不動産取得税は1円も減りません。課税標準が固定資産課税台帳の価格だからです。
  • 交渉が通りやすい市場かは「在庫件数÷月間成約件数=在庫月数」で測れます。2026年6月は首都圏10.8ヶ月、東京都12.2ヶ月、千葉県7.7ヶ月でした。

中古マンションの値引き相場は何%か|2026年のデータで検証する

結論から申し上げます。2026年時点の首都圏では、「売り出し価格の何%引けるか」より「売り出し価格が成約水準からどれだけ離れているか」を先に測るほうが実務的です。売り出し価格の水準そのものが、実際に売れている価格から大きく離れているためです。

レインズが公表する「乖離率 約40%」が意味すること

東日本レインズの月例速報Market Watch(2026年6月度、2026年7月10日公表)によると、首都圏中古マンションの3つの系列は次のようになっています。成約は実際に売れた物件、新規登録はその月に新たに売りに出された物件、在庫は月末時点で売れ残っている物件です。

系列(2026年6月・首都圏)件数㎡単価価格専有面積築年数
成約(実際に売れた)4,241件(前年比-1.3%)82.64万円/㎡(-0.8%)5,208万円(-0.02%)63.02㎡27.48年
新規登録(新たに売り出し)16,277件(+1.7%)115.57万円/㎡(+22.0%)6,626万円(+20.8%)57.33㎡29.98年
在庫(月末時点で売れ残り)45,995件(+3.5%)116.54万円/㎡(+28.6%)6,745万円(+29.3%)57.88㎡29.24年

出典:東日本レインズ「月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年6月度」(2026年7月10日公表)

注目していただきたいのは、成約㎡単価が前年比マイナス0.8%とほぼ横ばいなのに対し、新規登録㎡単価は前年比プラス22.0%、在庫㎡単価はプラス28.6%と大きく上がっている点です。売れている価格は動いていないのに、売りに出される価格だけが上がり続けています。レインズはこの状態を、REINS TOPIC「首都圏中古マンション・中古戸建住宅 長期動向グラフ」(2026年7月17日)で「新規登録㎡単価の上昇に伴い、直近の㎡単価の乖離率は約40%まで拡大」と記しています。

「在庫は良い物件が残っているから単価が高いのでは」と考えたくなりますが、データはその説明を支えていません。在庫の平均築年数は29.24年で成約の27.48年より古く、平均専有面積も57.88㎡で成約の63.02㎡より狭いからです。より古く、より狭い在庫が、より高い㎡単価で並んでいるという構図です。同じ市場の中で、売り手が想定する価格と買い手が払っている価格が離れている状態と言えます。

「値引き率5〜10%」という通説をどう扱うか

「中古マンションの値引きは5〜10%」という目安は、売り出し価格が成約水準に近い物件でだけ意味を持つ数字です。値引き率は売り出し価格に対する率なので、売り出し価格の置き方が甘ければ、率をいくら議論しても実際の相場には届きません。

2026年6月の首都圏平均で確かめてみます。在庫の平均価格は6,745万円です。ここから通説どおり5〜10%を引くと6,071万円〜6,408万円になります。しかし同じ月の成約平均価格は5,208万円です。通説の上限である10%を引いてもなお、実際に売れている水準より863万円高い計算になります。成約平均まで下げるには22.8%の引き下げが必要です。

ただしこれは、同じ1件の物件で22.8%値引きできるという意味ではありません。在庫と成約は物件の構成が異なる別の母集団であり、都心の高額物件が在庫に長く滞留すれば在庫平均は自然に上がります。ここから読み取るべきは、「売り出し価格に一律の率を掛ける」という発想そのものが、いまの市場では出発点として弱いということです。率ではなく、狙う物件と条件が近い成約事例の㎡単価を起点に置くほうが、根拠のある金額になります。

この考え方の前提として、売り出し価格がどのように決まり、どこまでの情報が買主に開示されるのかを知っておくと交渉の見通しが立てやすくなります。情報の非対称性については、「未公開物件」と呼ばれる不動産情報の実態でも整理しています。

値引き余地は東京都に偏在している

ここが、この記事で最もお伝えしたい論点です。乖離率を都県別に分解すると、値引き余地は東京都に集中しており、埼玉県・千葉県・神奈川県では逆転しています。

都県(2026年6月)成約㎡単価在庫㎡単価乖離率在庫月数
東京都116.91万円/㎡173.94万円/㎡+48.8%12.2ヶ月
神奈川県60.35万円/㎡59.55万円/㎡-1.3%10.0ヶ月
埼玉県45.97万円/㎡44.49万円/㎡-3.2%9.9ヶ月
千葉県44.05万円/㎡39.90万円/㎡-9.4%7.7ヶ月
首都圏合計82.64万円/㎡116.54万円/㎡+41.0%10.8ヶ月

成約㎡単価は月例速報Market Watch サマリーレポート2026年6月度、在庫㎡単価と在庫件数は同データ編2026年6月度より。乖離率と在庫月数は当社にて算出しました。

読み方を整理します。東京都は、いま並んでいる在庫の平均単価が、実際に売れている単価より48.8%高い状態です。つまり東京都では、売り出し価格をそのまま受け入れると成約水準から大きく離れた買い物になりやすいということです。一方、千葉県は在庫の平均単価のほうが成約より9.4%低く、売り出し価格が市場水準に近い、あるいは下回っている物件が多いことを示します。この状況で首都圏平均の感覚のまま大幅な指値を入れると、話が進まないまま他の買主に先を越されます。

なお、在庫と成約は物件の構成(面積・築年数・立地)が異なる別集計です。この表は「同じ物件が何%下がる」ことを示すものではなく、売り出し価格の水準が成約水準からどれだけ離れているかという地域差を見るためのものとしてお使いください。市場全体の流れは首都圏中古マンション市場の成約動向とあわせてご覧いただくと把握しやすくなります。

300万円の値引きはどこまで現実的か

300万円という金額は、首都圏平均では5.8%、東京都区部では4.0%、千葉県では10.0%にあたります。同じ300万円でも、地域によって「端数の調整」から「相場を大きく外れる要求」まで意味が変わります。

300万円はエリア別に何%にあたるか

下表は、2026年4〜6月の地域別成約価格を基準に、300万円が何%にあたるかを計算したものです。基準となる成約価格はREINS TOPIC「首都圏中古マンション・中古戸建住宅 地域別・築年帯別成約状況【2026年04〜06月】」(2026年7月17日)によります。

地域(2026年4〜6月)成約価格300万円は何%か通説5〜10%との関係
東京都区部7,576万円4.0%通説の下限にも届かない小幅
横浜・川崎市4,394万円6.8%通説の中間
首都圏平均5,202万円5.8%通説の下限付近
東京都多摩3,882万円7.7%通説の中間より上
神奈川県他3,095万円9.7%通説の上限に近い
埼玉県3,048万円9.8%通説の上限に近い
千葉県2,989万円10.0%通説の上限そのもの

この表からは、2つの実務的な示唆が得られます。ひとつは、東京都区部で300万円の指値は「相場の4.0%」にすぎず、交渉としてはむしろ穏当な部類だということです。前節の乖離率48.8%と合わせて考えると、東京都では300万円という金額自体が過大な要求になりにくい環境にあります。

もうひとつは、埼玉県・千葉県・神奈川県他では、300万円が平均価格の1割に達するという点です。しかもこれらの県は在庫㎡単価が成約㎡単価を下回っており、在庫月数も首都圏平均より短くなっています。売り出し価格に上乗せの余地が少ない地域で1割の指値を入れると、売主が別の買主を選ぶ理由をつくってしまいます。

築年帯で価格の起点が変わる

同じ地域でも、築年帯が変われば価格の起点が数倍変わります。300万円が何%にあたるかも、築年帯によって3.2%から10.8%まで開きます。

築年帯(首都圏・2026年4〜6月)成約価格成約㎡単価300万円は何%か
〜築5年9,448万円153.1万円/㎡3.2%
〜築10年7,757万円130.9万円/㎡3.9%
〜築15年7,916万円124.4万円/㎡3.8%
〜築20年6,536万円97.7万円/㎡4.6%
〜築25年6,512万円93.1万円/㎡4.6%
〜築30年5,211万円76.7万円/㎡5.8%
築30年〜2,767万円47.1万円/㎡10.8%
合計5,202万円83.1万円/㎡5.8%

出典:REINS TOPIC「地域別・築年帯別成約状況【2026年04〜06月】」(2026年7月17日)。「300万円は何%か」は当社にて算出しました。なお同資料には、合計値が月例速報Market Watch等の成約件数と一致しない旨が注記されています。

レインズは同じ資料で「首都圏の築25年超の成約件数は、成約件数全体の50%以上を占める」と記しています。いま実際に売れている中古マンションの過半は築25年超であり、この帯では300万円が相場の5.8%から10.8%に相当します。築浅物件と同じ感覚で「300万円くらいは」と考えると、築古物件では相場の1割を要求していることになります。

逆に、築5年以内の物件で300万円を求めることは、相場の3.2%にあたる小幅な調整です。値引き交渉が難しいと言われる築浅物件でも、金額の絶対値としては決して小さくありません。率で語るか金額で語るかによって、同じ交渉の印象がここまで変わります。売主側に提示するときは、率ではなく「この築年帯・この面積の成約㎡単価から逆算するとこの金額になる」という形にすると、話が具体的になります。

300万円値引きで実際に減る費用・減らない費用

値引きが通ったとき、諸費用がどれだけ連動して減るかは費目によって大きく異なります。減るのは仲介手数料と印紙税だけで、登録免許税と不動産取得税は1円も減りません。成約平均5,208万円が4,908万円になったと仮定して試算します。

費目5,208万円のとき4,908万円のとき増減連動する理由
物件価格5,208万円4,908万円▲300万円交渉の対象そのもの
仲介手数料(上限額)178.464万円168.564万円▲9.90万円400万円超の部分は代金の3.3%
印紙税(軽減後)3万円1万円▲2万円5,000万円の階級をまたぐため
登録免許税変わらず変わらず±0円課税標準は固定資産課税台帳の価格
不動産取得税変わらず変わらず±0円課税標準は固定資産評価基準による価格
支出の減少 合計▲311.9万円物件価格300万円+諸費用11.9万円

仲介手数料の計算根拠を示します。建設省告示第1552号(最終改正 令和6年6月21日国土交通省告示第949号)は、売買の媒介で依頼者の一方から受けられる報酬の上限を、200万円以下の部分に5.5%、200万円超400万円以下の部分に4.4%、400万円超の部分に3.3%(いずれも消費税等相当額を含む)と定めています。5,208万円なら11万円+8.8万円+158.664万円=178.464万円、4,908万円なら11万円+8.8万円+148.764万円=168.564万円です。差額の9.90万円は、値引き額300万円の3.3%にあたります。

印紙税は、国税庁タックスアンサー No.7108(不動産の譲渡に関する契約書の軽減措置)により、1,000万円超5,000万円以下が1万円、5,000万円超1億円以下が3万円です。5,208万円から4,908万円へ下がると階級をまたぐため2万円減ります。逆に言えば、5,000万円をわずかに超える売り出し価格の物件では、5,000万円以下まで下げられるかどうかで印紙税が3倍変わることになります。

一方、登録免許税は国税庁タックスアンサー No.7191のとおり、課税標準が「固定資産課税台帳に登録された価格」です。不動産取得税も東京都主税局の解説が「不動産の購入価格や建築工事費ではありません」と明記しているとおり、固定資産評価基準による評価額が基礎です。売買代金をいくら下げても、この2つの税額は動きません。「値引きすれば諸費用も比例して減る」という理解は、この2費目については当てはまらないことになります。

交渉が通りやすい市場かを「在庫月数」で判断する

「売り出しから3〜6ヶ月経った物件を狙う」という目安は、体感としてはよく語られますが、根拠を確かめる手段があります。在庫月数、つまり「いま並んでいる在庫が、いまのペースで売れると何ヶ月分あるか」という指標です。公表データから誰でも計算できます。

在庫月数の計算方法

計算は3ステップです。ご自身が狙うエリアで同じ手順を踏めば、交渉環境を数字で把握できます。

  1. レインズの月例速報Market Watch「データ編」から、対象都県の月末在庫件数を取ります。
  2. 同じ月の成約件数を、同じ資料またはサマリーレポートから取ります。
  3. 在庫件数を成約件数で割ります。これが在庫月数です。

2026年6月の実数で計算すると次のようになります。首都圏は45,995件÷4,241件=10.8ヶ月、東京都は26,120件÷2,136件=12.2ヶ月、千葉県は3,909件÷508件=7.7ヶ月です。埼玉県は5,209件÷524件=9.9ヶ月、神奈川県は10,757件÷1,073件=10.0ヶ月でした。

読み方はシンプルです。在庫月数が長いほど、売主は「他にも同じような物件が並んでいる」状況に置かれます。逆に短いほど、売主は次の買主が現れる見込みを持てるため、指値に応じる理由が弱くなります。首都圏の中では、東京都(12.2ヶ月)と千葉県(7.7ヶ月)の差が4.5ヶ月分あります。同じ「首都圏の中古マンション」でも、交渉の土俵が違うということです。

東京都は在庫が積み上がり、埼玉・千葉・神奈川では減っている

もう一段、方向性も見ておきます。在庫件数の前年同月比は、東京都だけがプラスで、他の3県はマイナスです。

都県(2026年6月)在庫件数(前年同月比)成約件数(前年同月比)買主から見た交渉環境
東京都26,120件(+12.6%2,136件(-9.5%)在庫が増え成約が減る。交渉余地が広がりやすい
神奈川県10,757件(-6.7%)1,073件(+7.0%)在庫が減り成約が増える。指値は慎重に
埼玉県5,209件(-3.6%)524件(+2.9%)在庫が減り成約が増える。指値は慎重に
千葉県3,909件(-9.1%)508件(+19.0%在庫が最も減り成約が最も伸びる。売主優位

出典:在庫は月例速報Market Watch データ編2026年6月度、成約は同サマリーレポート2026年6月度

東京都は、なかでも都区部の成約件数が1,716件で前年比マイナス12.8%と6ヶ月連続の減少です。在庫が積み上がりながら成約が減っている都区部は、買主にとって選択肢が増えている局面だと読めます。一方、千葉県は成約件数が前年比プラス19.0%で5ヶ月連続の増加、在庫は前年比マイナス9.1%です。売れる速度が上がり、並んでいる在庫は減っています。

もう一つ、市場全体の局面も押さえておきます。季報Market Watch 2026年4〜6月期(2026年7月17日公表)によると、成約件数は11,853件で前年同期比マイナス2.0%と7四半期ぶりに減少しました。成約価格は5,201万円で前年同期比プラス0.2%と55四半期連続の上昇ですが、前期比ではマイナス5.3%です。長い上昇局面が続きながら、直近では踊り場に入った形と言えます。この局面変化が、買主にとっての交渉環境をゆっくり変えつつあります。

交渉前に相場を自分で確かめる3つの公的データベース

「同エリアの成約価格を調べる」と言われても、どこを見るのかが分からなければ動けません。一般の方が無料で使える公的なデータベースが3つあります。役割が違うので、順番に使い分けるのが実務的です。

レインズ・マーケット・インフォメーション(実際の成約価格)

指定流通機構が保有する実際の成約価格を、マンション・戸建に分けて公開しているサイトです。地域・最寄駅・専有面積・築年数などで絞り込めるため、「自分が狙う物件と条件が近い物件が、実際にいくらで売れたか」を最初に確かめる場所として使えます。売り出し価格ではなく成約価格が載っている点が、ポータルサイトとの決定的な違いです。

URL:レインズ・マーケット・インフォメーション(不動産取引情報提供サイト)

国土交通省 不動産情報ライブラリ(取引価格・地価・災害リスク)

国土交通省が運営し、不動産取引価格情報、地価公示・地価調査、都市計画や災害リスクの情報を地図上で重ねて見られるサイトです。価格の妥当性だけでなく、その立地が抱える条件まで同じ画面で確認できる点が特徴です。値引き交渉の材料を探すというより、「その価格で買ってよい立地か」を確かめる用途に向いています。

URL:国土交通省 不動産情報ライブラリ

国土交通省 不動産価格指数(長期の価格局面)

不動産価格指数は、2010年平均を100として不動産価格の推移を示す国土交通省の統計です。マンション(区分所有)の指数を時系列で見ることで、いまが長期的にどのあたりの局面かを把握できます。直近の公表値では、全国のマンション(区分所有)の季節調整値は2025年12月時点で225.1です。2010年平均の2.25倍という水準であり、個別物件の値付けには使えませんが、「高値圏で買うのか、調整局面で買うのか」という自分の立ち位置を確認する材料になります。

ただし2026年8月時点では、公表済みの最新データは2025年12月・第4四半期分(2026年3月31日公表)までです。国土交通省は算出プログラムの不具合を理由に、2026年1月分以降の公表を延期しています。直近の局面を確認する用途では、月次で更新されるレインズの月例Market Watchを併用してください。

URL:国土交通省 不動産価格指数

データベース分かること使うタイミング
レインズ・マーケット・インフォメーション類似条件の実際の成約価格・成約㎡単価指値の金額を決める直前
不動産情報ライブラリ取引価格、地価公示、都市計画、災害リスク物件を候補に残すかどうかの段階
不動産価格指数マンション価格の長期推移と現在の局面購入時期そのものを検討する段階
レインズ月例Market Watch都県別の成約・在庫・在庫月数交渉環境(売主優位か買主優位か)の判定

値引き交渉が失敗する典型パターンと回避策

値引き交渉の失敗は、金額が大きすぎたから起きるとはかぎりません。市場環境の読み違い、根拠の欠落、そして交渉の順番の誤りという3つに集約できます。

在庫月数の短いエリアで大幅指値を入れると二番手に回る

最も起きやすい失敗が、これです。千葉県のように在庫月数7.7ヶ月・成約件数前年比プラス19.0%という環境では、売主は次の買主が現れる見込みを持っています。ここで平均価格の1割にあたる300万円の指値を入れると、満額または小幅の調整で申し込む買主が現れた時点で、順番が入れ替わります。

回避策は、指値の前に在庫月数と成約件数の前年比を確認することです。在庫が減り成約が増えているエリアでは、金額の交渉より「引き渡し時期を売主の希望に合わせる」「残置物の処理を自分で引き受ける」といった条件面の提案のほうが通りやすくなります。逆に東京都区部のように在庫が積み上がり成約が減っている地域では、金額の交渉に踏み込む余地が相対的に広くなります。

値引き交渉が金利差に負けるケース

300万円の値引きに何ヶ月もかけている間に、金利が0.1ポイント上がってしまう。これは実際に起こりうる話です。両者を同じ土俵で比べておくと、どこに時間を使うべきかがはっきりします。

試算の前提は、成約平均5,208万円を全額借り入れ、返済期間35年・元利均等・年3.290%とした場合です。この金利は、住宅金融支援機構【フラット35】の2026年8月資金受取分のうち、借入期間21年以上35年以下・融資率9割以下で最も多い金利です。

ケース借入額金利毎月返済額総返済額基準との差
基準(値引きなし)5,208万円年3.290%208,953円約8,776万円
300万円の値引きが通った場合4,908万円年3.290%196,917円約8,271万円▲505.5万円(月12,036円)
値引きなしで金利が0.1ポイント上昇5,208万円年3.390%211,936円約8,901万円+125.3万円(月2,982円)

この試算からは、2つのことが読み取れます。ひとつは、300万円の値引きは総返済額で505.5万円の効果があり、金利0.1ポイント分の約4倍にあたるということです。値引き交渉には確かに大きな意味があります。

もうひとつは、金利0.1ポイントの差でも総返済額が125.3万円動くということです。金融機関の選定や金利タイプの検討を後回しにしたまま値引きだけに時間を使うと、片方で得た分をもう片方で失いかねません。交渉と資金調達は、並行して進めるべき2本の柱です。なお上記は概算であり、団体信用生命保険の条件、融資手数料、保証料の有無で実際の負担は変わります。

交渉の順番を間違えない

金額の妥当性を整えても、順番を誤ると通るものも通りません。次の順で進めると、売主から見て判断しやすい申し込みになります。

  1. 住宅ローンの事前審査を先に通す。審査承認済みであることは、売主にとって「この人と契約すれば決済まで進む」という安心材料になります。指値の説得力は、この一点で大きく変わります。
  2. 成約事例で金額の根拠を示す。レインズ・マーケット・インフォメーションで確認した類似物件の成約㎡単価を添えて、「この㎡単価×専有面積からこの金額になる」と説明します。率ではなく計算で示すことが大切です。
  3. 売主にとっての利点をセットにする。引き渡し時期を売主の希望に合わせる、残置物の処理を引き受ける、契約から決済までの期間を短くするなど、金額以外の条件を差し出します。
  4. 仲介会社を通して交渉する。売主と直接やり取りすると、条件の食い違いや言った言わないの問題が起きやすくなります。書面に残る形で進めることが、双方の保護になります。

2026年は「値引き交渉」より「物件の性能区分」が効く場合がある

ここまで値引きの話をしてきましたが、2026年の中古マンション購入では、値引き交渉と同じかそれ以上の金額差が、物件の省エネ性能区分から生まれます。2026年1月入居分から住宅ローン減税が5年延長され、既存住宅の借入限度額と控除期間が拡充されたためです。

2026年入居分の住宅ローン減税・既存住宅の区分別最大控除額

控除率は0.7%で、性能区分ごとに借入限度額と控除期間が異なります。最大控除額を計算すると次のようになります。

既存住宅の性能区分借入限度額×控除期間最大控除額子育て世帯等の場合
長期優良住宅・低炭素住宅3,500万円×13年318.5万円4,500万円×13年=409.5万円
ZEH水準省エネ住宅3,500万円×13年318.5万円4,500万円×13年=409.5万円
省エネ基準適合住宅2,000万円×13年182万円3,000万円×13年=273万円
その他住宅2,000万円×10年140万円上乗せなし

出典:国土交通省「令和8年度国土交通省税制改正概要」(2025年12月)。同資料は控除率0.7%、所得要件2,000万円と明記しています。子育て世帯等とは「19歳未満の子を有する世帯」または「夫婦のいずれかが40歳未満の世帯」を指します。

最も控除の大きい区分と最も小さい区分の差は、409.5万円と140万円で約270万円です。これは、この記事で検証してきた300万円の値引きとほぼ同じ規模になります。値引き交渉で300万円を勝ち取ることと、性能区分の高い物件を選ぶことは、家計への効き方としては同じオーダーの話だということです。

ただし、この控除額はあくまで上限です。実際の控除額は年末のローン残高と納めた所得税額(および控除しきれない分の住民税)の範囲内にとどまります。また既存住宅では、昭和57年(1982年)1月1日以後に建築された住宅であれば、新耐震基準に適合しているものとして扱われます。それ以前に建築された住宅では、耐震基準適合証明書、建設住宅性能評価書の写し、既存住宅売買瑕疵担保責任保険の付保証明書のいずれかの提出が必要です(国土交通省 住宅ローン減税「既存住宅を取得する」)。首都圏の成約平均築年数が27.48年、築25年超が成約全体の50%以上という状況を踏まえると多くの物件は要件の範囲内ですが、1981年以前に建築された物件では、この証明書があるかどうかが控除の可否を分けます。所得要件は合計所得金額2,000万円以下、床面積要件は40㎡以上(合計所得金額1,000万円超の方および子育て世帯等への上乗せ措置を利用する方は50㎡以上)です。

物件を比較する段階で、性能区分と証明書の有無を仲介会社に確認しておくことをおすすめします。値引き交渉は相手のある話ですが、性能区分の確認は自分の側だけで完結します。確実性という意味では、こちらのほうが先に手を付けられる論点です。取得後に省エネ改修や耐震改修を行う予定がある場合は、リフォーム減税の控除額早見表と申告手順もあわせて確認しておくと、購入後の負担まで含めて比較できます。

売主として価格交渉を受けたときの考え方

ここからは売主側の視点です。買主から値引きを求められたとき、あるいは反響が止まって価格改定を考えるとき、判断の材料になるのは「自分の物件が属する都県で、在庫が増えているか減っているか」です。

いつ・いくら価格を改定するか

2026年6月時点の首都圏は、都県によって置かれている状況が非対称です。東京都の在庫は前年同月比プラス12.6%で積み上がり、成約件数はマイナス9.5%(都区部はマイナス12.8%)で減っています。東京都で売り出している方は、競合物件が1年前より1割以上増えた市場で買主を待っていることになります。

一方、埼玉県は在庫マイナス3.6%・成約プラス2.9%、千葉県は在庫マイナス9.1%・成約プラス19.0%、神奈川県は在庫マイナス6.7%・成約プラス7.0%です。競合が減り、売れる速度が上がっている環境です。この3県で売り出している方は、買主からの指値に急いで応じる必要性が、東京都より低い状況にあります。

価格改定を検討するときの手順を整理します。

  1. 自分の都県の在庫月数を計算する。在庫件数÷月間成約件数です。2026年6月なら東京都12.2ヶ月、神奈川県10.0ヶ月、埼玉県9.9ヶ月、千葉県7.7ヶ月でした。
  2. 在庫件数の前年比が増加か減少かを見る。増加局面では競合が増えており、待つほど条件が悪くなる可能性があります。
  3. 自分の売り出し㎡単価を、同エリア・同築年帯の成約㎡単価と並べる。首都圏全体では在庫㎡単価が成約㎡単価より41.0%高い状態です。自分の物件がこの平均より上か下かで、買主から見た割高感が変わります。
  4. 反響数・内見数の推移を記録する。価格改定の効果を測るには、改定前の水準を残しておく必要があります。

買主からの指値をどう受けるかは、「その金額で売れなかった場合、次の買主までに何ヶ月かかるか」との比較で考えるのが合理的です。在庫月数が12ヶ月を超える市場では、次の買主を待つ間の管理費・修繕積立金・固定資産税の負担が積み上がります。逆に在庫月数が8ヶ月を下回る市場では、待つ選択に一定の合理性があります。感情ではなく、期間と金額の比較として整理していただきたい論点です。

INA&Associatesの見解|交渉は「値切る技術」ではなく「根拠を揃える仕事」です

私たちは日々、売主の方と買主の方の間に立って価格の話をしています。そのなかで確信していることがあります。まとまる交渉とまとまらない交渉の違いは、金額の大きさではなく、根拠が揃っているかどうかです。

「相場は5〜10%らしいので300万円下げてください」という申し込みと、「同じ最寄駅・築30年前後・65㎡前後の成約㎡単価が76.7万円/㎡なので、この物件は4,986万円が妥当だと考えています」という申し込みでは、売主が受け取る意味がまったく違います。前者は買主の希望ですが、後者は市場の事実に基づく提案です。売主の側にも、値下げを社内や家族に説明する必要があります。根拠のある金額は、その説明を助けます。

そしてもう一点、私たちが大切にしているのは、デメリットも含めて先にお伝えすることです。値引きが通っても登録免許税と不動産取得税は減らないこと、金利0.1ポイントで125.3万円動くこと、性能区分の違いで控除額が約270万円変わること。これらは、交渉が終わってから知ると後悔につながる情報です。先にお伝えして一緒に判断していただくことが、長い目で見た信頼につながると考えています。

不動産の取引は、一度きりの勝ち負けではありません。買った物件はいずれ売る日が来ますし、売った資金は次の住まいや投資に向かいます。だからこそ私たちは、その場の値引き額だけでなく、10年後にどう評価される買い物かという視点で情報をお出しします。人財こそが最大の資産だと考える会社として、担当者が数字の裏づけを自分の言葉で説明できることを、サービスの土台に置いています。

よくある質問(FAQ)

中古マンションの値引き相場は何パーセントですか?

売り出し価格に対する一律の相場は示せません。2026年6月時点の首都圏では、在庫㎡単価が成約㎡単価より41.0%高く、通説の5〜10%では成約水準に届かない物件が多数あります。エリア差も大きく、東京都は在庫のほうが48.8%高い一方、千葉県は9.4%低い状態です。率で決めるのではなく、類似条件の成約㎡単価から逆算した金額を提示することをおすすめします。

中古マンションで300万円の値引きは通りますか?

地域と築年帯によります。300万円は東京都区部の成約平均7,576万円に対して4.0%、千葉県の2,989万円に対して10.0%にあたります。首都圏平均では5.8%、築30年超では10.8%です。在庫が積み上がっている東京都区部では穏当な部類ですが、在庫月数7.7ヶ月で成約が前年比19.0%増えている千葉県では、相場の1割にあたる大幅な要求として扱われる可能性が高くなります。

値引きに成功すると諸費用はいくら減りますか?

5,208万円が4,908万円になる場合、減るのは仲介手数料9.90万円と印紙税2万円の合計11.9万円だけです。仲介手数料は400万円超の部分が代金の3.3%なので値引き額に連動し、印紙税は5,000万円の階級をまたぐため3万円から1万円になります。一方、登録免許税と不動産取得税は課税標準が固定資産税評価額なので変わりません。値引き300万円と合わせた支出減は311.9万円です。

売主として値引き要求にどう応じるべきですか?

自分の物件が属する都県の在庫月数と在庫件数の前年比で判断してください。2026年6月時点では、東京都は在庫が前年比プラス12.6%で積み上がり成約はマイナス9.5%、千葉県は在庫マイナス9.1%で成約プラス19.0%と、状況が正反対です。在庫が増えている市場では待つほど競合が増えます。指値を断って次の買主を待つ場合の期間と、その間の管理費・修繕積立金・固定資産税の負担を並べて比較すると判断しやすくなります。

引用・参考資料

本記事は2026年8月時点で公表されている統計・法令・金利情報に基づいて作成しています。市場データは月次で更新され、金利は毎月見直されます。税制の適用可否や控除額は個別の事情によって異なりますので、具体的な判断にあたっては最新の公表資料をご確認いただくとともに、税務は税務署または税理士、融資条件は金融機関にご相談ください。

Daisuke Inazawa, President & CEO of INA&Associates Inc.

著者

代表取締役社長 / CEOINA&Associates株式会社

INA&Associates株式会社 代表取締役社長。首都圏・近畿圏を中心に不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントを統括。収益不動産投資戦略と超富裕層向け不動産コンサルティングを専門領域とする。

稲澤 大輔(いなざわ・だいすけ)は、INA&Associates株式会社の代表取締役社長(CEO)。大阪本店・東京営業所を拠点に、首都圏・近畿圏における不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントの三事業を統括する。

専門領域は、収益不動産の投資戦略立案、賃貸経営の収支最適化、超富裕層(UHNWI)・機関投資家向け不動産コンサルティング、およびクロスボーダー不動産投資。国内外の投資家に対し、データと長期視点に基づくアドバイザリーを提供している。

「企業の最も重要な資産は人財である」を経営理念に掲げ、人財投資カンパニーとして持続可能な企業価値の創造に取り組む。経営者として、変化の時代におけるリーダーシップのあり方と組織文化についても積極的に発信を続けている。

合格・取得資格は11種:宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、管理業務主任者、賃貸不動産経営管理士、行政書士、個人情報保護士、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者。

  • 宅地建物取引士
  • 公認不動産コンサルティングマスター
  • マンション管理士
  • 管理業務主任者
  • 賃貸不動産経営管理士
  • 行政書士
  • 個人情報保護士
  • 甲種防火管理者
  • 競売不動産取扱主任者
  • マンション維持修繕技術者
  • 貸金業務取扱主任者