マンション投資の利回りは、2026年4月時点で東京・城南の賃貸住宅一棟(ワンルーム)が期待利回り3.6%、地方主要都市が4.2〜5.0%です。理想の利回りは「何%あればよいか」という固定値ではなく、借入金利にどれだけ上乗せできるかで決まります。この記事は、購入を検討している物件の価格と家賃を手元に置いて「この物件は買っていいのか」を判断したい方に向けて、最新の相場表、実質利回りに入れる経費の単価、そして首都圏の平均的な中古マンション(5,208万円・63.02㎡・築27.48年)を使った4段階の計算例を、すべて一次情報の出典付きでまとめたものです。
この記事のポイント
- 2026年4月現在の賃貸住宅一棟の期待利回りは、東京・城南3.6%、大阪・横浜4.2%、札幌4.9%、仙台・広島5.0%です(日本不動産研究所 第54回 不動産投資家調査)。
- 同じ東京・城南でも、投資家が求める「期待利回り」3.6%に対し、実際に成立した「取引利回り」は3.4%です。この0.2ポイントの差が、買い手が値段を譲っている幅を示します。
- 実質利回りの経費には根拠のある単価があります。管理費は月11,503円/戸、修繕積立金は月13,054円/戸が全国平均です(国土交通省 令和5年度マンション総合調査)。
- 首都圏の平均的な中古マンション(5,208万円)で計算すると、表面利回り3.92%が、経費と諸費用と空室を織り込むと総投資額ベースで2.40%まで下がります。
- 政策金利が1.0%になった今、判断軸は利回りの絶対値ではなく「実質利回りがローン定数を上回るか」です。上回らなければ、借りるほど手残りは減ります。
マンション投資の利回り相場は2026年時点でどのくらいか
結論から書きます。2026年4月現在、賃貸住宅一棟の期待利回りは東京・城南が3.6%、地方主要都市が4.2〜5.0%です。区分所有のマンション1戸を買う場合も、この一棟の水準が価格の基準になります。売主は「一棟で回っている利回り」を意識して値付けをするからです。
数字の出どころは、一般財団法人日本不動産研究所が年2回公表している「不動産投資家調査」です。2026年5月27日に公表された第54回調査(2026年4月現在、回答数111社)が最新版にあたります。投資家自身が回答した数字であり、業者の広告値ではないため、相場の基準として使えます。
東京都内(城南・城東)の期待利回りと取引利回り
東京都内については、期待利回りと取引利回りが対で公表されています。想定物件は、最寄り駅から徒歩10分以内、築5年未満、総戸数50戸程度の賃貸住宅一棟です。
| 住宅の種類 | 地区 | 期待利回り | 取引利回り |
|---|---|---|---|
| ワンルーム(25〜30㎡) | 城南(目黒区・世田谷区) | 3.6% | 3.4% |
| ワンルーム(25〜30㎡) | 城東(墨田区・江東区) | 3.8% | 3.5% |
| ファミリー向け(50〜80㎡) | 城南(目黒区・世田谷区) | 3.7% | 3.4% |
| ファミリー向け(50〜80㎡) | 城東(墨田区・江東区) | 3.9% | 3.6% |
| 外国人向け高級賃貸(低層型) | 港区 麻布・赤坂・青山 | 3.9% | 3.5% |
| 外国人向け高級賃貸(超高層型) | 港区 麻布・赤坂・青山 | 3.9% | 3.5% |
出典:日本不動産研究所「第54回 不動産投資家調査」(2026年4月現在)。
この表で最初に見ていただきたいのは、期待利回りと取引利回りの差です。城南のワンルームでは0.2ポイント、城東では0.3ポイントの開きがあります。投資家が「これくらい欲しい」と考えている水準より、実際の成約は0.2〜0.3ポイント低い利回りで決まっているということです。つまり、買い手が競り合って値段を上げ、その分だけ利回りを譲っています。
全国12地区の期待利回り一覧(ワンルーム/ファミリー向け)
東京以外の11地区についても、同じ条件の賃貸住宅一棟の期待利回りが公表されています。前回調査(第53回・2025年10月)との差も並べました。
| 地区 | ワンルーム | 前回差 | ファミリー向け | 前回差 |
|---|---|---|---|---|
| 東京 城南 | 3.6% | −0.1 | 3.7% | −0.1 |
| 大阪 | 4.2% | −0.1 | 4.3% | 0.0 |
| 横浜 | 4.2% | −0.1 | 4.3% | 0.0 |
| さいたま | 4.5% | 非公表 | 4.5% | 非公表 |
| 千葉 | 4.5% | 非公表 | 4.6% | 非公表 |
| 名古屋 | 4.5% | 0.0 | 4.5% | 0.0 |
| 福岡 | 4.5% | 0.0 | 4.5% | 0.0 |
| 京都 | 4.6% | 0.0 | 4.6% | 0.0 |
| 神戸 | 4.7% | 0.0 | 4.7% | 0.0 |
| 札幌 | 4.9% | −0.1 | 5.0% | 0.0 |
| 仙台 | 5.0% | 0.0 | 5.0% | 0.0 |
| 広島 | 5.0% | 0.0 | 5.1% | 0.0 |
出典:日本不動産研究所「第54回 不動産投資家調査」(2026年4月現在)。さいたま・千葉は冊子版にのみ掲載されており、前回差は公表されていません。
読み取れることは3つあります。第一に、「東京と地方」で一律に差が開いているわけではありません。東京・城南3.6%と最も高い仙台・広島5.0%の差は1.4ポイントですが、大阪・横浜4.2%との差は0.6ポイントしかありません。第二に、ワンルームとファミリー向けの差は0.0〜0.1ポイントにとどまります。間取りより地区のほうが利回りを大きく動かしています。第三に、今回低下したのは東京城南・札幌・横浜・大阪のワンルームと、東京城南のファミリー向けだけで、地方のファミリー向けは全地区が横ばいでした。
「期待利回り」と「取引利回り」は何が違うのか
期待利回りは、投資家が「この物件ならこれくらいの採算がないと買わない」と考えている水準です。買い手側の希望値と言い換えられます。一方の取引利回りは、実際に売買が成立したときの利回りです。市場で成立した結果の数字になります。
両者が離れているとき、市場は買い手優勢か売り手優勢かのどちらかに傾いています。2026年4月調査では取引利回りが期待利回りを下回りました。希望より低い利回りでも買われている、つまり売り手優勢で価格が高いということです。実際、同調査で「新規投資を積極的に行う」と答えた投資家は93%にのぼります。
物件を検討するときは、この2つを分けて使ってください。期待利回りは「自分が最低限確保すべきライン」、取引利回りは「今の市場でどこまで譲れば買えるか」の目安です。
なぜ利回りは下がり続けているのか
利回りが下がっている理由は単純で、家賃より価格の上昇が速いからです。国土交通省の不動産価格指数(2010年平均=100)では、マンション(区分所有)の季節調整値が令和7年12月分で225.1に達しました。前年同月は207.7ですから、1年で8.4%上がった計算になります。住宅総合の148.0と比べると、区分マンションだけが突出しています。
商業用不動産のマンション・アパート(一棟)も176.1で、前期比1.2%の上昇です。分母である価格がこれだけ上がれば、家賃が同じペースで上がらない限り利回りは下がります。利回りの低下は市況の悪化ではなく、価格上昇の裏返しです。なお同指数は、令和8年4月以降に公表を予定していた令和8年1月分以降について、算出プログラムの不具合により公表が延期されています(令和8年7月29日 国土交通省お知らせ)。そのため、令和8年3月31日に公表された令和7年12月・令和7年第4四半期分が最新の公表値です。
利回りには4種類ある|表面・実質・総投資額ベース・CCRの比較
利回りという言葉は、4つの別々の指標をまとめて指しています。どれを見ているかで結論が変わるため、まず整理します。
| 指標 | 計算式 | 分母に入るもの | どの判断に使うか |
|---|---|---|---|
| 表面利回り(グロス) | 年間家賃収入 ÷ 物件価格 | 物件価格のみ | 物件を横に並べて一次スクリーニングする |
| 実質利回り(NOI利回り) | (年間家賃収入 − 年間運営経費)÷ 物件価格 | 物件価格のみ | 物件そのものの収益力を測る |
| 総投資額ベース利回り(FCR) | 年間NOI ÷(物件価格 + 購入時諸費用) | 物件価格+仲介手数料・税・登記費用 | 借入金利・ローン定数と比べて借入の可否を決める |
| CCR(自己資金利回り) | 年間税引前キャッシュフロー ÷ 自己資金 | 実際に出した現金のみ | 自己資金をどこに置くのが有利かを比べる |
実務でいちばん軽視されているのが、上から3番目の総投資額ベース利回りです。購入時にかかる諸費用は物件価格の5%前後になりますが、これを分母に入れないまま借入金利と比べてしまうと、判断を誤ります。2つの利回りの定義そのものについては、表面利回りと実質利回りの違いと物件選びの注意点でも整理しています。
広告の「利回り10%」は表面利回り|分母に何が入っていないかを見る
販売図面やポータルサイトに載っている利回りは、ほぼすべて表面利回りです。年間家賃収入を物件価格で割っただけの数字であり、管理費も修繕積立金も税金も引かれていません。購入時の仲介手数料や不動産取得税も分母に入っていません。
広告の利回りを見たら、次の3つを販売担当者に確認してください。「その家賃は現況か満室想定か」「管理費・修繕積立金は月いくらか」「固定資産税・都市計画税の年額はいくらか」。この3点が埋まれば、実質利回りはご自身で計算できます。
満室想定賃料と現況賃料の違いが利回りを1ポイント動かす
一棟物件の広告利回りは、空室部分にも「これくらいで貸せるはず」という想定賃料を入れて計算されていることがあります。10戸のうち2戸が空いている物件で満室想定を使えば、実際の収入より2割多い家賃で利回りが表示されます。
表面利回り8%の物件でも、稼働率が80%なら実収ベースでは6.4%です。1.6ポイントの差は、この物件を買うかどうかの結論を変える大きさです。レントロール(賃貸借条件一覧表)を取り寄せ、各住戸の契約日・賃料・契約期間まで見てから計算し直してください。
実質利回りの経費はいくら見込むのか
実質利回りを出すには、年間の運営経費を金額で置く必要があります。ここで「だいたい家賃の20%」といった感覚値を使うと、物件ごとの差が消えてしまいます。国が公表している実額の平均値があるので、それを起点にしてください。
| 費目 | 単価・税率 | 出典 |
|---|---|---|
| 管理費(月/戸) | 平均11,503円(駐車場使用料等からの充当額を除く。充当額を含む総額は17,103円) | 国土交通省 令和5年度マンション総合調査 |
| 修繕積立金(月/戸) | 平均13,054円(充当額を含む総額13,378円。平成30年度は12,268円) | 国土交通省 令和5年度マンション総合調査 |
| 修繕積立金の目安(月/㎡) | 20階未満・延床5,000〜10,000㎡未満で平均252円(幅170〜320円)、20階以上で平均338円(幅240〜410円) | 国土交通省 マンションの修繕積立金に関するガイドライン(令和6年6月改定) |
| 固定資産税 | 標準税率1.4%(課税標準は固定資産評価額。賦課期日は1月1日) | 総務省 固定資産税の概要 |
| 都市計画税 | 市町村条例で定めるが0.3%を超えられない(制限税率)。課税団体は639団体 | 総務省 都市計画税 |
| 賃貸管理委託料 | 家賃の一定割合。管理会社との契約で決まるため、契約書の実額を使う | 管理委託契約書 |
| 損害保険料・修繕費 | 不動産所得の必要経費に算入できる(固定資産税・損害保険料・減価償却費・修繕費) | 国税庁 No.1370 不動産収入を受け取ったとき |
管理費11,503円・修繕積立金13,054円が全国平均
国土交通省は5年に一度、マンション管理の実態調査を行っています。最新は令和5年度調査で、令和6年6月21日に結果が公表されました。ここでの月/戸当たりの管理費の額は平均11,503円、修繕積立金の額は平均13,054円です。この2つだけで年間29万4,684円になります。
年間家賃が200万円の区分マンションなら、管理費と修繕積立金だけで家賃の14.7%が消える計算です。ここに固定資産税・都市計画税、賃貸管理委託料、火災保険料、退去時の原状回復費が加わります。
修繕積立金は将来上がる前提で見る
実質利回りを見るときに見落としがちなのが、修繕積立金の値上げです。同じ調査で、修繕積立金が不足しているマンションは36.6%にのぼります。不足している以上、どこかで値上げか一時金の徴収が起きます。
国土交通省のガイドライン(平成23年4月策定、令和6年6月改定)は、長期修繕計画366事例をもとに、計画期間全体における修繕積立金の平均額の目安を示しています。20階未満で延床5,000〜10,000㎡未満なら月252円/㎡、20階以上なら月338円/㎡です。
専有63㎡の住戸に当てはめると、月252円/㎡なら約15,900円、月338円/㎡なら約21,300円になります。現在の全国平均13,054円は、この目安を下回っています。購入前に長期修繕計画書と積立金の残高を取り寄せ、値上げが予定されているかを確認してください。判断の手順は修繕積立金の相場・経費処理・値上がりリスクにまとめています。
固定資産税1.4%・都市計画税0.3%以下と評価額の関係
固定資産税の標準税率は1.4%で、課税標準は固定資産課税台帳に登録された評価額です。宅地は地価公示価格等の7割を目途に評価されます。都市計画税は市街化区域内の土地・家屋にかかり、税率は市町村が条例で定めますが0.3%を超えられません。2025年4月1日現在、都市計画税を課税しているのは全国1,719市町村のうち639団体です。
区分マンションでは住宅用地の課税標準の特例が働くため、土地分の税額は評価額から単純に計算した額より小さくなります。したがって、税額は推計せず、売主から固定資産税・都市計画税の課税明細書をもらって実額を使ってください。これは物件ごとの差が最も大きい費目です。
購入時の初期費用を入れると利回りは何ポイント下がるか
物件価格だけを分母にした利回りは、実態より高く出ます。購入時には仲介手数料・登録免許税・不動産取得税・印紙税・司法書士報酬がかかり、合計で物件価格の5%前後になるためです。この分を分母に加えたものが総投資額ベース利回り(FCR)です。
| 費目 | 本則 | 投資用に適用される税率 | 期限 |
|---|---|---|---|
| 登録免許税|土地の所有権移転 | 2.0% | 1.5%(軽減あり) | 令和11年3月31日まで |
| 登録免許税|建物の所有権移転 | 2.0% | 2.0%(0.3%軽減は使えない) | 期限の定めなし |
| 登録免許税|抵当権設定 | 0.4% | 0.4%(0.1%軽減は使えない) | 期限の定めなし |
| 不動産取得税|住宅・土地 | 4% | 3% | 令和9年3月31日まで |
| 不動産取得税|宅地の課税標準 | 評価額 | 評価額の1/2 | 令和9年3月31日まで |
| 印紙税|売買契約書 | 5,000万円超1億円以下は6万円 | 1,000万円超5,000万円以下1万円/5,000万円超1億円以下3万円(軽減後) | 令和9年3月31日まで |
| 仲介手数料(媒介・上限) | 告示による上限規制 | 200万円以下5.5%/200万円超400万円以下4.4%/400万円超3.3%(消費税等相当額を含む) | 期限の定めなし |
登録免許税・不動産取得税・印紙税・仲介手数料の内訳と適用期限
土地の所有権移転登記にかかる登録免許税は、本則2.0%に対して1.5%に軽減されています。この特例は令和8年度税制改正で3年延長され、令和8年4月1日から令和11年3月31日までが適用期間です。信託登記も0.4%から0.3%に軽減されています。
不動産取得税は本則4%ですが、住宅および土地は3%です(令和9年3月31日まで)。宅地等については課税標準が評価額の1/2に圧縮されます。印紙税は不動産譲渡契約書について軽減措置があり、契約金額5,000万円超1億円以下なら3万円です(令和9年3月31日まで)。
仲介手数料の上限は、昭和45年建設省告示第1552号(最終改正 令和6年6月21日 国土交通省告示第949号)で定められています。400万円を超える部分は3.3%です。速算すると「物件価格×3%+6万円」に消費税等相当額を加えた額になります。
投資用マンションは住宅用家屋の登録免許税軽減を使えない
ここは見落とされやすい論点です。建物の所有権移転登記には、住宅用家屋について1,000分の3(0.3%)という大きな軽減があります。しかしこの特例は、国税庁の税額表に明記されているとおり「個人が住宅用家屋の取得をし、自己の居住の用に供した場合」に限られます。賃貸に出す投資用マンションは対象外で、本則の2.0%が適用されます。
抵当権設定登記の0.1%軽減も同じく自己居住用が要件です。投資用では0.4%になります。さらに、不動産取得税の中古住宅に係る課税標準の控除も「個人が自己の居住の用に供するもの」が条件のため、投資用の中古区分マンションでは使えません。
自宅購入の記事や試算ツールをそのまま流用すると、初期費用を数十万円単位で少なく見積もることになります。投資用は投資用の税率で計算してください。軽減の適用範囲は不動産取得税の軽減措置と還付申請の手順もあわせてご確認ください。
5,208万円の中古マンションで利回りを計算してみる
ここからは実際に計算します。前提は、東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が公表した2026年6月度の首都圏中古マンションの成約平均です。成約価格5,208万円、専有面積63.02㎡、築年数27.48年。成約件数は4,241件、成約㎡単価は82.64万円/㎡でした。
家賃は物件ごとに異なるため、ここでは月額17万円(年間204万円)と置きます。これは統計値ではなく、ご自身の物件の募集賃料に置き換えていただくための仮定値です。以下の計算はすべて、この数字を入れ替えれば同じ手順で再現できます。
ステップ1:表面利回りを出す
まず分母に物件価格だけを置いた表面利回りを計算します。
- 年間家賃収入:170,000円 × 12ヶ月 = 2,040,000円
- 表面利回り:2,040,000円 ÷ 52,080,000円 = 3.92%
3.92%という数字は、東京・城南のワンルーム期待利回り3.6%と城東3.8%のあいだにあります。相場から大きく外れてはいない、というのがこの段階の評価です。
ステップ2:年間経費を差し引いて実質利回りにする
次に運営経費を引きます。管理費と修繕積立金は令和5年度マンション総合調査の平均値、それ以外は仮定値として明示します。
| 費目 | 年額 | 置き方 |
|---|---|---|
| 管理費 | 138,036円 | 11,503円/月(国交省 全国平均) |
| 修繕積立金 | 156,648円 | 13,054円/月(国交省 全国平均) |
| 固定資産税・都市計画税 | 120,000円 | 仮定値。課税明細書の実額に差し替える |
| 賃貸管理委託料 | 102,000円 | 家賃の5%と仮定。契約書の実額に差し替える |
| 火災保険料 | 10,000円 | 仮定値 |
| 原状回復・設備更新の引当 | 100,000円 | 仮定値(家賃の約0.6ヶ月分を年割り) |
| 年間経費合計 | 626,684円 | 家賃の30.7% |
- 年間NOI:2,040,000円 − 626,684円 = 1,413,316円
- 実質利回り(物件価格ベース):1,413,316円 ÷ 52,080,000円 = 2.71%
表面3.92%が実質2.71%になりました。この時点で1.21ポイント落ちています。次に購入時諸費用を分母に加えます。
- 仲介手数料:(52,080,000円 × 3% + 60,000円)× 1.1 = 1,784,640円
- 登録免許税・土地:評価額1,000万円 × 1.5% = 150,000円
- 登録免許税・建物:評価額600万円 × 2.0% = 120,000円
- 登録免許税・抵当権設定:借入4,000万円 × 0.4% = 160,000円
- 不動産取得税・土地:1,000万円 × 1/2 × 3% = 150,000円
- 不動産取得税・建物:600万円 × 3% = 180,000円
- 印紙税:30,000円
- 司法書士報酬など:100,000円
- 諸費用合計:2,674,640円(物件価格の5.14%)
※固定資産税評価額(土地1,000万円・建物600万円)は仮定値です。実際は課税明細書の数字を使ってください。
- 総投資額:52,080,000円 + 2,674,640円 = 54,754,640円
- 総投資額ベース利回り(FCR、満室想定):1,413,316円 ÷ 54,754,640円 = 2.58%
ステップ3:空室率を織り込んで保守側に寄せる
ここまでは満室が続く前提です。区分マンション1戸の場合、空室は「あるかゼロか」のどちらかになりますが、複数年で均せば率で置けます。稼働率95%は、たとえば4年に1回退去が発生し、そのつど約2.4ヶ月空くのと同じ水準です。
| 稼働率 | 年間家賃収入 | 年間経費 | 年間NOI | FCR |
|---|---|---|---|---|
| 100%(満室想定) | 2,040,000円 | 626,684円 | 1,413,316円 | 2.58% |
| 95% | 1,938,000円 | 621,584円 | 1,316,416円 | 2.40% |
| 90% | 1,836,000円 | 616,484円 | 1,219,516円 | 2.23% |
※賃貸管理委託料は家賃連動のため、稼働率に応じて経費も減ります。
広告に載っていた3.92%は、経費・諸費用・空室を織り込むと2.40%になりました。差は1.52ポイントです。この2.40%が、この物件が生み出す本当の収益力です。
ステップ4:借入を入れてCCRとイールドギャップを見る
最後に借入の効果を見ます。日本銀行は2026年6月16日の金融政策決定会合で、無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.0%程度で推移するよう促す方針を決めました。補完当座預金制度の適用利率は1.0%、基準貸付利率は1.25%です。この水準を出発点に、投資用不動産ローンの金利を年2.5%、期間30年、元利均等返済と仮定します(実際の条件は金融機関・属性により異なります)。
ここで使うのがローン定数(K)です。年間返済額を借入残高で割った値で、金利だけでなく元金返済も含めた「借入のコスト率」を表します。
- 借入4,000万円・年2.5%・30年の年間返済額:1,896,580円
- ローン定数K:1,896,580円 ÷ 40,000,000円 = 4.741%
先ほど求めたFCR(稼働率95%)は2.40%でした。FCR 2.40%はローン定数4.741%を大きく下回っています。この状態で借入を増やすと、キャッシュフローは減ります。自己資金の入れ方を3通りで比べます。
| 借入額 | 自己資金 | 年間返済額 | 年間税引前CF | CCR |
|---|---|---|---|---|
| 0円(現金購入) | 54,754,640円 | 0円 | 1,316,416円 | 2.40% |
| 2,000万円 | 34,754,640円 | 948,290円 | 368,126円 | 1.06% |
| 4,000万円 | 14,754,640円 | 1,896,580円 | −580,164円 | −3.93% |
借りるほどCCRが下がり、4,000万円を借りるとキャッシュフローがマイナスになります。これが逆レバレッジです。レバレッジは「効かせるもの」ではなく、FCRがローン定数を上回っているときだけ効くものです。イールドギャップの考え方はイールドギャップの定義と計算方法で詳しく整理しています。
この物件で借入をプラスに働かせるには、FCRが4.741%を超える必要があります。総投資額5,475万円に対してNOIが259万円必要という計算になり、現状の132万円のほぼ2倍です。家賃が同じなら価格が半分でなければ届きません。だからこそ、地方の期待利回り4.5〜5.0%の地区や、価格が抑えられた物件が選択肢に入ってきます。
なお、日本不動産研究所の同調査でも、今後のリスク要因として「金利の上昇」を挙げた投資家が122社と最多でした。次いで「建築費の高騰、管理費等ランニングコストの上昇」が73社です。市場全体が同じ論点を見ています。
空室率は何%で置くべきか
空室率の置き方に決まった正解はありませんが、感覚で「5%くらい」と置くのと、統計を踏まえて置くのとでは説得力が違います。判断材料になる公的データを3つ挙げます。
| 指標 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 空き家数・空き家率 | 900万2千戸・13.8%(いずれも過去最高) | 総務省 令和5年住宅・土地統計調査 |
| 賃貸用の空き家 | 443万6千戸 | 同上 |
| 借家数(うち民営借家) | 1,946万2千戸・住宅全体の35.0%(民営借家1,568万4千戸) | 同上 |
| 借家(専用住宅)の1か月当たり家賃 | 平均59,656円(民営借家・非木造68,548円、木造54,409円) | 同上 |
| 3ヶ月以上の空室があるマンション | 34.0%(うち空室戸数割合20%超は0.8%) | 国土交通省 令和5年度マンション総合調査 |
| 賃貸住戸のあるマンション | 77.8% | 同上 |
空き家率13.8%・賃貸用の空き家443万6千戸が意味すること
令和5年住宅・土地統計調査によると、総住宅数6,504万7千戸に対して空き家は900万2千戸、空き家率は13.8%でした。2018年の848万9千戸から51万3千戸増えており、いずれも過去最高です。このうち賃貸用の空き家は443万6千戸で、空き家全体のおよそ半分を占めます。
賃貸市場には、すでに借り手のついていない部屋が443万戸あるという事実は、空室率をゼロに近く置くことの危うさを示しています。ただしこれは全国値です。物件の所在地と間取りに近い賃貸市場の募集状況を、ポータルサイトの掲載件数や管理会社へのヒアリングで確認したうえで置いてください。
3ヶ月以上の空室があるマンションは34.0%
国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、3ヶ月以上の空室があるマンションは34.0%でした。平成30年度より減っていますが、それでも3棟に1棟です。空室戸数割合が20%を超えるマンションは0.8%にとどまります。
一方で、賃貸住戸のあるマンションは77.8%にのぼります。分譲マンションの多くが、すでに一部を賃貸として使われている状態です。同じ棟の中に競合する募集住戸があると、賃料を下げる圧力がかかります。購入前に、同じマンション内で何戸が募集に出ているかを確認してください。
新築と中古、一棟と区分で利回りはどう違うか
利回りの水準は、新築か中古か、一棟か区分かで構造的に変わります。それぞれの性格を1枚に整理しました。
| 区分 | 利回りの水準 | 減価償却の耐用年数(RC造住宅) | 経費のかかり方 | 出口(売却) |
|---|---|---|---|---|
| 新築・一棟 | 最も低い(東京城南3.6〜3.7%が基準) | 47年 | 当面の修繕は少ないが、修繕積立金は将来上がる | 買い手の裾野は広いが、新築プレミアム分の値下がりを見込む |
| 新築・区分 | 低い(一棟より価格が割高になりやすい) | 47年 | 管理費・修繕積立金が固定費として効く | 同じ棟の他住戸が競合になる |
| 中古・一棟 | 高い(地方主要都市4.2〜5.1%が基準) | 簡便法で短縮(築27年なら25年) | 大規模修繕・設備更新の負担を自分で負う | 土地の価値が残るため、建物が古くなっても売りやすい |
| 中古・区分 | 中程度(管理組合の状態で大きくぶれる) | 簡便法で短縮(築27年なら25年) | 修繕積立金の値上げ・一時金徴収のリスク | 管理状態と積立金残高が買い手の評価を左右する |
減価償却の年数が税引後の手残りを変える
利回りが同じでも、減価償却費が違えば税引後の手残りは変わります。国税庁の耐用年数表では、鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造の住宅用は47年、れんが造・石造・ブロック造の住宅用は38年、木造の住宅用は22年です。
中古を取得した場合は、簡便法で耐用年数を短く見積もれます。法定耐用年数の一部が経過している資産なら「(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%」です。1年未満の端数は切り捨て、2年に満たない場合は2年になります。
- 築27年のRC造マンション:(47年 − 27年)+ 27年 × 20% = 20年 + 5.4年 = 25.4年 → 25年
- 建物価格を1,800万円と置いた場合の年間償却費の目安:新築(47年)で約38万円、中古(25年)で約72万円
中古のほうが年間の償却費が約1.9倍になります。その分だけ課税所得が圧縮され、税引後のキャッシュフローが改善します。ただし償却が終われば経費は消え、売却時には償却済みの分だけ譲渡所得が増えます。減価償却は税金を消すのではなく、払う時期をずらす仕組みだと理解してください。計算方法は不動産の減価償却と法定耐用年数の計算方法で詳しく扱っています。なお、取得価額の50%を超える資本的支出をした場合は簡便法を使えません。
利回りの高い物件が抱えている典型的なリスク
広島の期待利回り5.0%と東京・城南の3.6%、この1.4ポイントの差は、そのまま買い手が引き受けているリスクの対価です。利回りが高い物件には、たいてい理由があります。
- 賃貸需要が細い、あるいは特定の企業・大学に依存している
- 築年が古く、給排水管や外壁の更新時期が近い
- 管理組合の修繕積立金が不足していて、値上げか一時金が控えている
- 再建築が難しい、あるいは金融機関の担保評価が出にくい
- 出口で買い手が限られる(買い手も融資を受けにくい)
いずれも、買った直後ではなく5年後、10年後に表面化します。高い利回りを買うのではなく、その利回りが何のリスクの対価かを言葉で説明できるかを基準にしてください。一棟で検討する場合の手順は一棟マンション投資の始め方に整理しています。
理想の利回りをどう決めるか|INA&Associatesの考え方
「理想の利回りは何%ですか」と聞かれることがあります。私たちは、この問いには固定値では答えないようにしています。同じ4%でも、金利1%で借りるのと3%で借りるのとでは、まったく別の投資だからです。
「何%あればよいか」ではなく「借入金利+何%を確保できるか」で考える
判断の順番は次のとおりです。まず総投資額ベース利回り(FCR)を出す。次に、その物件に付けられるローンの条件からローン定数(K)を出す。そしてFCRがKを上回っているかを見る。上回っていれば借入は手残りを増やし、下回っていれば借入は手残りを減らします。
政策金利が1.0%になった環境では、この差が以前より詰まっています。かつて金利1%台前半で借りられた時代には、FCR 4%でも十分に差が取れました。今は同じFCRでも、差がほとんど残らない場面が出てきます。だからこそ、利回りの絶対値ではなく差で見る癖をつけていただきたいのです。差の作り方には、価格を下げる、経費を減らす、稼働率を上げる、自己資金比率を上げる、の4つしかありません。
そして、この4つのうち購入後も動かせるのは経費と稼働率です。私たちが管理の実務を軽く見ないのは、そこが投資の成否を分ける数少ない変数だからです。物件は買った瞬間に価格が決まりますが、稼働率と経費はその後の運営で変わり続けます。
利回りのほかに確認する5つの数字
利回りだけを見て判断すると、後から効いてくる要素を見落とします。私たちが物件を見るとき、利回りと並べて確認しているのは次の5つです。
- 稼働率の実績:想定ではなく、過去3年の実際の入居状況。レントロールと入退去履歴で確認します。
- 修繕積立金の残高と長期修繕計画:残高が計画に対していくら不足しているか。国交省調査では36.6%のマンションが不足しています。
- 管理費等の滞納状況:3ヶ月以上滞納している住戸があるマンションは30.1%。滞納は管理組合の体力を直接削ります。
- 築年数と構造:RC造47年の法定耐用年数に対する残存年数。融資期間と減価償却の両方に効きます。
- 出口の想定価格:10年後に売るとしたら、そのときの利回り水準で誰がいくらで買うか。買い手が融資を受けられるかまで含めて考えます。
この5つが埋まって初めて、利回りの数字に意味が出ます。中古マンションの維持費の構造や、不動産投資における利回りの最低ラインとあわせて、ご自身の判断基準を作っていただければと思います。
よくある質問(FAQ)
Q. 2026年時点でマンション投資の利回りの平均はどのくらいですか?
賃貸住宅一棟の期待利回りは、2026年4月現在で東京・城南3.6%、大阪・横浜4.2%、名古屋・福岡・さいたま・千葉4.5%、京都4.6%、神戸4.7%、札幌4.9%、仙台・広島5.0%です(日本不動産研究所 第54回 不動産投資家調査)。東京・城南の取引利回りは3.4%で、期待利回りより0.2ポイント低くなっています。
Q. 理想の利回りは何%と考えればよいですか?
固定の数値ではなく、総投資額ベース利回り(FCR)がローン定数(年間返済額÷借入額)を上回っているかで判断してください。無担保コールレート(オーバーナイト物)は2026年6月16日の金融政策決定会合で1.0%程度で推移するよう促す方針が決まっており、金利2.5%・30年の借入ならローン定数は約4.74%です。FCRがこれを下回ると、借りるほど手残りが減ります。
Q. 表面利回りと実質利回りではどのくらい差が出ますか?
首都圏の平均的な中古マンション(成約価格5,208万円・63.02㎡・築27.48年、家賃月17万円と仮定)で計算すると、表面3.92%、実質2.71%、諸費用を分母に入れると2.58%、稼働率95%で2.40%です。合計1.52ポイントの差が生まれます。
Q. 空室率は何%で見込むべきですか?
物件の所在地と間取りに近い賃貸市場を確認したうえで置いてください。判断材料として、全国の空き家率は13.8%、賃貸用の空き家は443万6千戸(総務省 令和5年住宅・土地統計調査)、3ヶ月以上の空室があるマンションは34.0%(国交省 令和5年度マンション総合調査)です。築年が古い物件ほど保守的に置くことをおすすめします。
Q. 投資用マンションでも登録免許税の軽減は使えますか?
建物の所有権移転登記の0.3%軽減と抵当権設定登記の0.1%軽減は、いずれも「個人が自己の居住の用に供した場合」が要件のため、投資用では使えません。建物は本則2.0%、抵当権設定は0.4%になります。土地の所有権移転登記の1.5%軽減(令和11年3月31日まで)は用途を問わず適用されます。
引用・参考資料
- 日本不動産研究所「第54回 不動産投資家調査®(2026年4月現在)」(2026年5月27日公表)
- 日本不動産研究所「第54回 不動産投資家調査®」冊子版(回答数111)
- 東日本不動産流通機構「月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年6月度」(2026年7月10日公表)
- 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果(とりまとめ)」(令和6年6月21日公表)
- 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」(別紙1)
- 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果概要」(別紙2)
- 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(平成23年4月策定/令和6年6月改定)
- 国土交通省「不動産価格指数(令和7年12月・令和7年第4四半期分)」(令和8年3月31日公表)
- 国土交通省「不動産価格指数」公表ページ(令和8年4月分以降の公表延期に関する注記)
- 国土交通省「令和8年度国土交通省税制改正結果概要」(土地の所有権移転登記等に係る特例措置の延長)
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」(登録免許税の税率軽減措置の適用期限3年延長)
- 日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2026年6月16日)
- 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計」
- 総務省「固定資産税の概要」
- 総務省「都市計画税」
- 総務省「不動産取得税」
- 東京都主税局「不動産取得税」(中古住宅の軽減制度は個人が自己の居住の用に供するものが要件)
- 国税庁 No.7191「登録免許税の税額表」
- 国税庁 No.7108「不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」
- 国税庁 No.1370「不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」
- 国税庁 No.2100「減価償却のあらまし」
- 国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」
- 国税庁 No.5404「中古資産の耐用年数」
- 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号/最終改正 令和6年6月21日)

