2025年度(令和7年度)に着工した賃貸マンションの建築工事費は、全国平均で鉄筋コンクリート造36.2万円/㎡(坪約120万円)、東京都で45.6万円/㎡(坪約151万円)です。総額は「敷地面積×容積率=延床面積」を出し、そこに構造別の単価を掛けて求めます。国土交通省の建築着工統計に基づく実績値です。
この記事は、手持ちの土地にマンションを建てるかどうかを決めたいオーナーと、金融機関に持ち込む事業計画の初期数値を自分で組み立てたい投資家に向けて書いています。「4階建てならいくらか」「25坪の敷地でも建つのか」「鉄骨造とRC造でどちらが安いのか」という具体的な問いに、一次統計の数値と計算手順でお答えします。相場観の話ではなく、明日の打ち合わせで使える数字を置いていきます。
この記事のポイント
- 賃貸マンションの工事費は全国平均でRC造36.2万円/㎡、鉄骨造35.2万円/㎡、木造22.2万円/㎡です(令和7年度・貸家・共同住宅)。
- RC造の単価はこの5年で24.9万円/㎡から36.2万円/㎡へ約1.45倍になりました。計画を先送りするほど工事費は重くなっています。
- 総額を決めるのは階数ではなく延床面積です。延床面積の上限は敷地面積と容積率、そして前面道路の幅員で決まります。
- 工事費の内訳は建築工事69.4%、電気設備工事12.9%、機械設備工事17.7%という構成が官庁の標準単価で示されています。
- 構造の選択は坪単価だけでなく、法定耐用年数(RC造47年・重量鉄骨34年・木造22年)を通じて毎年の減価償却費と手残りを左右します。
マンション建築費の相場はいくらか|構造別の坪単価【2026年最新】
結論から申し上げます。賃貸マンションの工事費は、全国平均でRC造36.2万円/㎡、坪単価にすると約120万円です。これは推計や体感ではなく、国土交通省が着工時の工事費予定額を集計した実績値です。まずこの数字を基準に置いてください。
構造別・1㎡あたり工事費と坪単価(令和7年度・貸家・共同住宅/全国)
下表は、国土交通省「建築着工統計調査 住宅着工統計 第34表(着工新築住宅 利用関係別、構造別、建て方別)」の令和7年度計から、利用関係が「貸家」、建て方が「共同住宅」の1㎡あたり工事費予定額を抜き出したものです。坪単価は1坪=3.30578㎡で換算しています。
| 構造 | 1㎡あたり工事費 | 坪単価(換算) | 1戸あたり工事費 | 1戸あたり面積(逆算) |
|---|---|---|---|---|
| 木造 | 22.2万円 | 約73.4万円 | 787.3万円 | 約35.5㎡ |
| 鉄骨造 | 35.2万円 | 約116.4万円 | 1,942.4万円 | 約55.2㎡ |
| 鉄筋コンクリート造(RC造) | 36.2万円 | 約119.7万円 | 1,654.2万円 | 約45.7㎡ |
| 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) | 33.8万円 | 約111.7万円 | 1,517.6万円 | 約44.9㎡ |
出典:国土交通省「建築着工統計調査 住宅着工統計」令和7年度計 第34表(e-Stat)
ここで多くの方が意外に感じるのが、鉄骨造とRC造の差が1㎡あたり1万円しかないという点です。坪単価にしても3.3万円ほどの差にとどまります。「鉄骨造ならRC造より2〜3割安く建つ」という説明を耳にすることがありますが、共同住宅の実績値ではその差は出ていません。マンション規模の鉄骨造は重量鉄骨とデッキプレート、耐火被覆が必要になり、RC造との価格差が縮むためです。
一方、木造は22.2万円/㎡と明確に安く、RC造の約6割の水準です。ただし木造で成立するのは主に2〜3階建てであり、後述する階数別の実績を見ると、4階以上の共同住宅はRC造と鉄骨造がほぼすべてを占めています。構造の選択は、狙う階数と容積率の消化度合いで実質的に決まります。
分譲マンションと賃貸マンションで単価はどう違うか
同じRC造の共同住宅でも、分譲住宅(分譲マンション)の1㎡あたり工事費は40.2万円、坪単価にして約132.9万円です。貸家の36.2万円/㎡と比べて11%ほど高い水準にあります。
差が生まれる理由は仕様グレードだけではありません。1戸あたり工事費と単価から住戸面積を逆算すると、賃貸RC造は約45.7㎡、分譲RC造は約68.3㎡です。分譲は住戸が広く、玄関まわりや水まわりの造作、共用部の仕上げに費用がかかるため、単価そのものが押し上げられます。賃貸事業の計画で分譲マンションの坪単価を参照すると、過大な見積もりになります。
1棟あたり・1戸あたりで見るといくらか
1戸あたりの工事費予定額は、全国のRC造賃貸で1,654.2万円、東京都では2,042.9万円です。20戸のRC造賃貸マンションであれば、全国平均で約3.3億円、東京都では約4.1億円という規模感になります。
戸数から逆算するこの見方は、事業計画の初期段階で有効です。想定家賃×戸数から年間収入を置き、1戸あたり工事費で総投資額を置けば、粗い利回りが数分で出ます。ただし戸あたり面積が平均(賃貸RC造で約46㎡)から大きく外れる計画では、面積単価に戻して計算し直してください。
建築費はこの5年でどれだけ上がったのか
賃貸マンションのRC造工事費は、令和2年度の24.9万円/㎡から令和7年度の36.2万円/㎡へ、5年で約1.45倍になりました。金額にすると1㎡あたり11.3万円、坪あたり約37万円の上昇です。延床1,000㎡の計画なら、同じ建物が5年前より1億1,300万円高くなった計算になります。
構造別・年度別の1㎡あたり工事費の推移(貸家・共同住宅/全国)
| 構造 | 令和2年度 | 令和4年度 | 令和6年度※ | 令和7年度 | 5年間の上昇率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 鉄筋コンクリート造(全国) | 24.9万円 | 27.2万円 | 32.4万円 | 36.2万円 | +45.4% |
| 鉄骨造(全国) | 24.5万円 | 26.7万円 | 32.5万円 | 35.2万円 | +43.7% |
| 木造(全国) | 17.0万円 | 17.6万円 | 21.2万円 | 22.2万円 | +30.6% |
| 鉄筋コンクリート造(東京都) | 33.5万円 | 34.8万円 | 42.9万円 | 45.6万円 | +36.1% |
出典:国土交通省「建築着工統計調査 住宅着工統計」各年度計 第34表(e-Stat)。※令和6年度は統計表が「令和6年4月〜12月分」と「令和7年1月〜3月分」の2期間に分割して公表されているため、両期間の工事費予定額と床面積を合算して1㎡あたりの単価を算出しています。
注目していただきたいのは、令和4年度から令和6年度にかけての跳ね上がりです。RC造は2年間で27.2万円から32.4万円へ、19%上がっています。資材価格の上昇がこの時期に一気に工事費へ転嫁されました。建築費高騰が賃貸オーナーの収支に与える影響は、この2年で構造的なものになったと考えています。
上昇の要因を一次情報で確認する
建築費が上がっている理由は、資材と労務費、そして制度の3つに整理できます。いずれも一次情報で確認できるものです。
第一に労務費です。国土交通省は令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について、全国全職種単純平均で前年度比4.5%の引き上げ、全国全職種加重平均値25,834円と発表しました。平成25年度の改定から14年連続の引き上げで、加重平均値が25,000円を超えたのは初めてです。職人の人件費は、今後も緩やかに上がり続ける前提で計画を立てるのが現実的でしょう。
第二に制度です。2025年(令和7年)4月から、すべての新築住宅・非住宅に省エネ基準への適合が義務づけられました(建築物省エネ法)。断熱材、サッシ、給湯・空調設備の仕様が底上げされ、省エネ適合性判定の手続きも加わります。2025年4月以降に工事に着手する建築物が対象です。同じタイミングで木造戸建住宅の建築確認手続きと壁量計算の見直しも施行されましたが、賃貸マンションの計画に直接効いてくるのは省エネ基準適合の義務化のほうです。仕様基準で評価する場合は省エネ適合性判定が不要とされている点も、設計の進め方を決めるときの判断材料になります。
この図が示すとおり、これまで規模によって扱いが分かれていた住宅が、すべて適合義務の対象になりました。賃貸マンションの計画では、断熱仕様と設備仕様を基準に合わせる分の工事費と、省エネ適合性判定にかかる手続き期間の両方を、初期の見積とスケジュールに織り込んでおいてください。
第三に市場全体の縮小です。令和7年度の新設住宅着工戸数は711,171戸で前年度比12.9%減、うち貸家は308,906戸で13.5%減でした。建築物全体の工事費予定額は30兆234億円(前年度比1.2%減)で、構造別では鉄骨造12兆7,683億円、RC造7兆2,781億円です。着工量が減っているのに単価が上がっているという状況が、いまの建築市場の実像です。
地域で坪単価はどれだけ違うか|都道府県別のRC造マンション建築費
同じRC造の賃貸マンションでも、東京都は45.6万円/㎡(坪約151万円)、福岡県は28.2万円/㎡(坪約93万円)で、坪あたり約58万円の開きがあります。延床300坪なら総額で1.7億円以上の差です。地域差は「多少高い」という程度の話ではありません。
主要都府県のRC造・貸家共同住宅の坪単価比較
| 都道府県 | 1㎡あたり工事費(RC造・貸家・共同住宅) | 坪単価(換算) | 全国平均との差(坪) |
|---|---|---|---|
| 千葉県 | 46.7万円 | 約154.4万円 | +34.7万円 |
| 東京都 | 45.6万円 | 約150.7万円 | +31.0万円 |
| 埼玉県 | 41.5万円 | 約137.2万円 | +17.5万円 |
| 神奈川県 | 41.2万円 | 約136.2万円 | +16.5万円 |
| 全国 | 36.2万円 | 約119.7万円 | (基準) |
| 大阪府 | 34.7万円 | 約114.7万円 | −5.0万円 |
| 愛知県 | 31.4万円 | 約103.8万円 | −15.9万円 |
| 福岡県 | 28.2万円 | 約93.2万円 | −26.5万円 |
| 北海道 | 23.3万円 | 約77.0万円 | −42.7万円 |
出典:国土交通省「建築着工統計調査 住宅着工統計」令和7年度計 第34表(e-Stat)
東京と大阪の差は坪あたり約36万円です。旧来よく言われた「20〜30万円差」より広がっています。千葉県が東京都を上回っているのは、集計年度の着工案件の構成(大型・高仕様案件の比率)に左右されるためで、県全体の相場が東京より高いという意味ではありません。年度単位の統計を読むときは、この構成要因の影響を頭に置いてください。
官庁営繕の地域別工事費指数で見る地域差
着工統計の地域差には案件構成の影響が混ざります。純粋に「同じ建物を建てたときの地域差」を見たい場合は、国土交通省大臣官房官庁営繕部が毎年公表する「新営予算単価」の地域別工事費指数が参考になります。東京を100としたRC造の指数は次のとおりです。
- 北海道(道北)102/北海道(道央)100/宮城98
- 東京・埼玉・千葉・神奈川・山梨100
- 愛知97/京都96/大阪96/兵庫95
- 広島94/福岡94/沖縄96
出典:国土交通省大臣官房官庁営繕部「令和9年度 新営予算単価」(国土交通省)
同じ仕様の建物を建てる限り、地域による工事費の差はおおむね±6%の範囲に収まります。着工統計で見た大きな地域差は、地域ごとの物価差というより、その地域で建てられている建物の仕様・規模の違いを映していると読むのが妥当です。したがって、地方だから安く建つと考えるのは早計です。仕様を落とさなければ、費用は東京の94〜100%程度かかります。
4階建て・5階建て・6階建て・10階建て|階数別のマンション建築費の目安
階数別の建築費を知りたい方に、先に結論をお伝えします。総額を決めるのは階数そのものではなく延床面積です。実際に着工されている建物の平均延床面積から総額を逆算すると、RC造で4〜5階建てなら約3.8億円、6〜9階建てなら約9.9億円、10〜15階建てなら約13.5億円が目安になります。
階数別の1棟あたり平均延床面積と概算建築費
下表は、国土交通省「建築着工統計調査 建築物着工統計 第4表-1(用途別・地上の階数別・構造別/新築工事)」令和7年度計から、全国・居住専用住宅の1棟あたり平均を算出し、前掲の構造別単価(RC造36.2万円/㎡、鉄骨造35.2万円/㎡)を掛けたものです。
| 階数 | 構造 | 棟数 | 1棟平均の延床面積 | 1棟平均の敷地面積 | 概算建築費 |
|---|---|---|---|---|---|
| 3階 | RC造 | 732棟 | 689㎡(約208坪) | 668㎡(約202坪) | 約2.5億円 |
| 3階 | 鉄骨造 | 4,872棟 | 493㎡(約149坪) | 415㎡(約126坪) | 約1.7億円 |
| 4〜5階 | RC造 | 1,692棟 | 1,039㎡(約314坪) | 576㎡(約174坪) | 約3.8億円 |
| 4〜5階 | 鉄骨造 | 740棟 | 722㎡(約218坪) | 361㎡(約109坪) | 約2.5億円 |
| 6〜9階 | RC造 | 740棟 | 2,724㎡(約824坪) | 1,273㎡(約385坪) | 約9.9億円 |
| 6〜9階 | 鉄骨造 | 53棟 | 770㎡(約233坪) | 223㎡(約67坪) | 約2.7億円 |
| 10〜15階 | RC造 | 1,120棟 | 3,732㎡(約1,129坪) | 1,117㎡(約338坪) | 約13.5億円 |
| 10〜15階 | 鉄骨造 | 31棟 | 1,907㎡(約577坪) | 581㎡(約176坪) | 約6.7億円 |
出典:国土交通省「建築着工統計調査 建築物着工統計」令和7年度計 第4表-1(e-Stat)。概算建築費は延床面積に構造別の1㎡あたり工事費を乗じた本体工事費の目安です。
この表からは、階数以外の情報も読み取れます。6階以上の共同住宅では、鉄骨造の棟数が極端に少なくなります。6〜9階の居住専用住宅はRC造740棟に対して鉄骨造53棟、10〜15階ではRC造1,120棟に対して鉄骨造31棟です。中高層の賃貸マンションは、実務上ほぼRC造で建てられていると理解してください。
なぜ階数そのものより延床面積で決まるのか
工事費は、床を何㎡つくるかでほぼ決まります。同じ延床1,000㎡なら、5階建てでも8階建てでも本体工事費の桁は変わりません。階数が増えると1階あたりの床が小さくなり、外壁面積とエレベーターの停止階が増えるため、単価はやや上がりますが、総額を決める主因ではありません。
階数別表の敷地面積を見てください。RC造4〜5階建ての平均敷地は576㎡(約174坪)で、延床は1,039㎡です。延床÷敷地は約180%、つまり容積率200%前後の土地に建てられていることが分かります。6〜9階建ては敷地1,273㎡に延床2,724㎡で約214%、10〜15階建ては敷地1,117㎡に延床3,732㎡で約334%です。階数は、容積率と敷地の広さが決めた延床面積を積み上げた結果に過ぎません。
階数が上がるとコストが跳ねる4つの法的な閾値
とはいえ、階数と高さには単価が段階的に跳ねるポイントがあります。設計を詰める前に、次の閾値を越えるかどうかを確認しておくと、後戻りが減ります。
| 閾値 | 求められること | 根拠 | おおよその該当階数 |
|---|---|---|---|
| 高さ20m超 | 避雷設備の設置 | 建築基準法33条 | 7階建て前後 |
| 地階を除く階数4以上の鉄骨造/高さ20m超のRC造・SRC造 | 構造計算の要求水準が上がる(許容応力度等計算以上) | 建築基準法20条1項2号 | 4階建て以上 |
| 高さ31m超 | 非常用の昇降機(非常用エレベーター)の設置 | 建築基準法34条2項 | 11階建て前後 |
| 11階以上の階 | スプリンクラー設備の設置 | 消防法施行令12条1項12号 | 11階建て以上 |
| 高さ60m超 | 時刻歴応答解析による国土交通大臣の認定 | 建築基準法20条1項1号 | 20階建て前後 |
出典:e-Gov法令検索 建築基準法、e-Gov法令検索 消防法施行令
実務で効くのは、10階建てと11階建ての境目です。11階以上の階にはスプリンクラー設備が必要になり、高さ31mを超えれば非常用エレベーターも加わります。設備投資額とその後の点検費用が段違いになるため、容積率を消化しきるためだけに11階へ上げる判断は、収支を悪化させることがあります。私たちは、10階で収まる計画と11階に上げる計画を並べて比較することをおすすめしています。
敷地からマンション建築費を計算する3ステップ
ここからは、手元の土地の数字を入れれば総額が出る手順をお示しします。使うのは「敷地面積」「容積率」「前面道路の幅員」「構造別の単価」の4つだけです。
ステップ1:敷地面積×容積率で延床面積の上限を出す
容積率とは、建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合の上限で、建築基準法52条に定められています。用途地域ごとに都市計画で10分の5から10分の130の範囲で指定されます。商業地域では10分の20から10分の130、第一種住居地域などでは10分の10から10分の50が指定されうる範囲です。
ここで見落とされやすいのが前面道路の幅員による制限です。前面道路の幅員が12m未満の場合、容積率は「道路幅員(m)×一定の数値」以下に抑えられます(建築基準法52条2項)。住居系の用途地域では10分の4、その他の用途地域では10分の6が原則です。
- 第一種住居地域・容積率200%・前面道路6m → 6×0.4=2.4(240%)。指定の200%が適用されます。
- 第一種住居地域・容積率200%・前面道路4m → 4×0.4=1.6(160%)。160%に制限されます。
- 商業地域・容積率400%・前面道路6m → 6×0.6=3.6(360%)。360%に制限されます。
敷地100坪・容積率200%の土地でも、前面道路が4mなら延床は660㎡ではなく528㎡です。本体工事費に直すと約4,800万円の差になります。建ぺい率と容積率の基本と計算方法を押さえたうえで、前面道路の幅員もあわせて確認してください。
ステップ2:延床面積×構造別の坪単価で本体工事費を出す
延床面積の上限が出たら、前掲の構造別単価を掛けます。全国で計画するならRC造36.2万円/㎡、東京都なら45.6万円/㎡を使います。より正確を期すなら、都道府県別の表から該当地域の数値を使ってください。
この段階で出るのは本体工事費です。官庁の標準単価では建築工事に加えて電気設備工事・機械設備工事が含まれた合計が示されており、着工統計の工事費予定額もこれらを含んだ工事費です。ただし、設計監理料、地盤改良、外構、解体、近隣対策などは含まれません。
ステップ3:付帯工事費・諸費用を上乗せして総事業費にする
本体工事費に上乗せする項目は、敷地の条件で大きく変わります。地盤が悪ければ杭工事だけで数千万円、旧建物があれば解体費、道路付けが悪ければ仮設・搬入費が膨らみます。「本体の何%」という比率で当て込まず、項目ごとに見積を取って積み上げてください。比率で置いた概算が最も外れるのがこの部分です。
一方、税金と登記費用は税率が法令で決まっているため、計画段階でも正確に計算できます。次の章で税率と計算方法を整理します。
計算例A|敷地100坪・容積率200%でRC造5階建てを建てる場合
第一種住居地域、敷地面積100坪(330㎡)、容積率200%、前面道路6mの土地を想定します。
- 延床面積の上限:330㎡×200%=660㎡(約200坪)。前面道路6mによる制限は240%相当のため、指定の200%が適用されます。
- 本体工事費(全国平均):660㎡×36.2万円=約2億3,892万円
- 本体工事費(東京都):660㎡×45.6万円=約3億0,096万円
- 戸数の目安:賃貸RC造の平均住戸面積(約46㎡)で割ると、共用部を除いて11〜12戸程度
- 建設工事請負契約書の印紙税:契約金額1億円超5億円以下のため、軽減後6万円
もし前面道路が4mだった場合、延床上限は528㎡に下がり、本体工事費は全国平均で約1億9,114万円になります。同じ100坪の土地でも、道路が2m狭いだけで事業規模が約2割縮むということです。土地を選ぶ段階で、この確認を後回しにしないでください。
計算例B|敷地25坪・容積率400%の商業地でRC造6階建てを建てる場合
「25坪の敷地で6階建てマンションは建つのか」というご相談は少なくありません。商業地域、敷地面積25坪(82.6㎡)、建ぺい率80%、容積率400%、前面道路8mの土地で計算します。
- 建築面積の上限:82.6㎡×80%=66.1㎡(約20坪)
- 延床面積の上限:82.6㎡×400%=330.4㎡(約100坪)。前面道路8mによる制限は480%相当のため、指定の400%が適用されます。
- 本体工事費(全国平均):330.4㎡×36.2万円=約1億1,960万円
- 本体工事費(東京都):330.4㎡×45.6万円=約1億5,066万円
ここで重要なのは、66.1㎡の建築面積で330.4㎡の延床を消化すると、ちょうど5層分にしかならないという事実です。6階建てにすること自体は可能ですが、上階を小さくするか、各階の面積を絞ることになり、延床の合計は容積率で頭打ちになります。つまり総額は6階建てにしても増えません。
狭小地では、階数を1つ増やす発想より、容積率の消化率を上げる設計のほうが効きます。階段・エレベーター・共用廊下が延床に占める割合が大きくなるため、賃貸面積の効率も落ちます。25坪の敷地で総額を決めるのは階数ではなく容積率です。そして前面道路が6mなら容積率は360%に制限され、延床上限は297㎡、本体工事費は全国平均で約1億766万円まで下がります。
マンション建築費の内訳|建築工事・電気設備工事・機械設備工事
工事費の内訳は、建築工事が約7割、電気設備工事が約13%、機械設備工事が約18%という構成です。これは国土交通省大臣官房官庁営繕部が公表する「新営予算単価」から確認できます。
官庁営繕の標準単価で見る工事区分別の内訳
下表は「令和9年度 新営予算単価」の寄宿舎(RC造3階建て・概略延べ面積3,000㎡)の標準予算単価です。東京(地域別工事費指数100)における1㎡あたりの単価で、共通費相当分を含み消費税相当分を除いています。集合住宅型の建物として、マンションの工事費構成を読むうえで実用的な指標です。
| 工事区分 | 1㎡あたり単価 | 構成比 | 主な内訳 |
|---|---|---|---|
| 建築工事 | 265,210円 | 69.4% | 躯体152,010円/仕上113,200円(地業・その他は別途計上) |
| 電気設備工事 | 49,500円 | 12.9% | 電力設備43,240円/通信設備6,260円 |
| 機械設備工事 | 67,670円 | 17.7% | 空気調和等設備43,600円/給排水衛生設備24,070円 |
| 合計 | 382,380円 | 100% | 坪単価に換算すると約126.4万円 |
出典:国土交通省大臣官房官庁営繕部「令和9年度 新営予算単価」(国土交通省)。同単価表で「○」と表示されている項目(地業、受変電・自家発電設備、消火設備など)は、通常その建物に必要とされつつも実情に応じて別途計上する扱いのため、上表の金額には含まれていません。
この内訳が示す実務上の示唆は3つあります。
第一に、設備工事だけで全体の30.6%を占めるということです。坪単価の交渉というと躯体や仕上げに目が行きますが、金額の3割は電気と機械です。空調・給湯・給排水の仕様を1グレード動かすだけで、総額は数千万円動きます。
第二に、躯体(152,010円)と仕上(113,200円)はほぼ6対4です。建物形状を単純化して外壁面積を減らす効果は、この仕上部分に効きます。凹凸の多い形状は、仕上げの数量とバルコニー・防水の納まりを増やします。
第三に、この単価が消費税を含まない点です。2億円の本体工事費なら消費税は2,000万円です。融資額の設定で見落とすと、自己資金が足りなくなります。
本体工事費以外にかかる費用
本体工事費に含まれない主な費用は次のとおりです。いずれも敷地固有の条件で金額が変わるため、比率ではなく見積で押さえてください。
- 設計監理料:設計事務所に依頼する場合、設計と工事監理は別料金です。
- 地盤調査・地盤改良・杭工事:軟弱地盤では総額を大きく押し上げます。土地の売買前にボーリングデータの有無を確認してください。
- 解体費・アスベスト調査:既存建物がある場合に必要です。
- 外構・造成・擁壁:高低差のある敷地では想定外の金額になりがちです。
- 近隣対策・電波障害対策・仮設:中高層になるほど比重が増します。
- 消費税:本体・付帯工事のいずれにもかかります。
建築費以外にかかる税金と諸費用【2026年時点】
マンションを建てると、不動産取得税・登録免許税・印紙税がかかります。税率は法令で定まっているため、事業計画の段階で計算できます。ここは概算で済ませず、金額を出しておく価値があります。
不動産取得税・登録免許税・印紙税の税率と軽減措置
| 税目 | 本則税率 | 特例・軽減 | 賃貸マンションでの注意点 |
|---|---|---|---|
| 不動産取得税 | 標準税率4% | 住宅および土地は3%(令和9年3月31日まで)。新築住宅は1戸につき課税標準から1,200万円を控除 | 控除は共同住宅の各住戸ごとに適用されます。免税点は家屋(建築分)66万円 |
| 登録免許税(所有権保存登記) | 不動産の価額×1,000分の4 | 住宅用家屋の軽減1,000分の1.5は、個人が自己の居住の用に供する場合が要件 | 賃貸マンションには軽減が適用されず、本則の1,000分の4です |
| 登録免許税(抵当権設定登記) | 債権金額×1,000分の4 | 住宅取得資金の貸付けに係る軽減1,000分の1は自己居住用が要件 | 2億円を借りる場合、80万円 |
| 印紙税(建設工事請負契約書) | 契約金額により階段的に決まります | 軽減後:5,000万円超1億円以下は3万円、1億円超5億円以下は6万円、5億円超10億円以下は16万円(令和9年3月31日まで) | 契約書を2通作成すればそれぞれに課税されます |
出典:総務省「不動産取得税」、国税庁 タックスアンサーNo.7191、国税庁 タックスアンサーNo.7108
賃貸マンションの計画で見逃されやすい点を2つ補足します。
ひとつは不動産取得税の1,200万円控除が「1戸につき」適用されることです。地方税法73条の14第1項は、共同住宅等については「居住の用に供するために独立的に区画された一の部分」ごとに1,200万円を控除すると定めています。20戸のマンションなら控除枠は最大2億4,000万円です。要件は、共用部分を按分した各住戸の床面積が40㎡以上240㎡以下であること(地方税法施行令37条の16第2号)。この特例は都道府県への申告があった場合に限り適用するのが原則です(地方税法73条の14第4項)。申告がなくても要件に該当すると都道府県が認めれば適用できる規定は置かれていますが(同条第5項)、実務では申告を前提に手続きを進めてください。ワンルーム中心で各住戸が40㎡に届かない計画では、この控除が使えない点にもご注意ください。
もうひとつは登録免許税の住宅用家屋の軽減が賃貸には使えないことです。1,000分の1.5という軽減税率は、個人が住宅用家屋を新築して自己の居住の用に供した場合の措置です。賃貸事業用の建物は本則の1,000分の4で計算してください。ここを軽減税率で見積もると、資金計画がずれます。なお、登録免許税の課税標準は工事費ではなく固定資産課税台帳に登録された価格(新築時は登記官が認定した価額)です。工事費に税率を掛けないよう気をつけてください。
総事業費で見たときの自己資金と融資の考え方
総事業費は「本体工事費+消費税+付帯工事費+設計監理料+税金・登記費用+融資関連費用」で構成されます。計算例Aの東京都ケース(本体約3億円)であれば、消費税だけで3,000万円が乗ります。
金融機関の審査では、事業計画の収支と自己資金比率が見られます。ここで大切なのは、建築費が上がった分をそのまま借入額の増加で吸収しないことです。5年で1.45倍になった工事費に対して賃料が同じ幅で上がっているとは限りません。返済比率と空室率のストレスをかけた収支で、耐えられるかを先に確かめてください。
構造の選択は耐用年数を通じて収支にも効く
構造の比較を坪単価だけで行うと、判断を誤ります。構造は法定耐用年数を決め、法定耐用年数は毎年の減価償却費、つまり課税所得と手残りを決めるからです。そして融資期間も、実務上は耐用年数と結びついています。
構造別の法定耐用年数と減価償却の比較
| 構造(住宅用) | 法定耐用年数 | 坪単価(貸家・共同住宅/全国) | 建物1億円あたりの年間償却額の目安 |
|---|---|---|---|
| 鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 | 47年 | 約111.7万円/約119.7万円 | 約213万円 |
| れんが造・石造・ブロック造 | 38年 | 統計上の区分なし | 約263万円 |
| 金属造(骨格材の肉厚4mm超) | 34年 | 約116.4万円(鉄骨造全体) | 約294万円 |
| 金属造(骨格材の肉厚3mm超4mm以下) | 27年 | 同上 | 約370万円 |
| 金属造(骨格材の肉厚3mm以下) | 19年 | 同上 | 約526万円 |
| 木造・合成樹脂造 | 22年 | 約73.4万円 | 約455万円 |
| 木骨モルタル造 | 20年 | 統計上の区分なし | 約500万円 |
出典:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」(国税庁)。年間償却額は建物価格を耐用年数で単純に割った目安で、実際の計算は定額法の償却率によります。
この表を縦に読むと、坪単価が安い構造ほど耐用年数が短く、年間の償却額は大きくなるという関係が見えます。木造は初期投資が軽く、償却も早く進みます。RC造は初期投資が重い代わりに、47年にわたって費用化が続きます。どちらが有利かは、その方の所得水準、保有期間、出口の想定によって変わります。建物の耐用年数と減価償却の考え方は、構造を決める前に押さえておきたい論点です。
坪単価が高くても賃料と耐用年数で回収できるかを見る
鉄骨造とRC造の坪単価差は約3.3万円でした。延床300坪なら約1,000万円の差です。この差を、遮音性能や設備仕様の違いによる賃料差、空室期間の短さ、そして47年と34年という耐用年数の差でどう回収するか。これが構造選択の実際の論点になります。
私たちは、この判断を「安く建てられるか」ではなく「35年後にどういう建物として残るか」で見ています。建築費が上がったいま、建て替えのハードルはさらに高くなりました。インフレ・建築費高騰時代の不動産出口戦略を先に描いてから、構造と規模を決める順番をおすすめします。
私たちがオーナーにお伝えしていること
建築費の相談を受けるとき、私たちが最初に確認するのは坪単価ではありません。その土地で容積率をどれだけ消化できるかです。前面道路の幅員、道路斜線、日影規制、用途地域。これらが延床面積を決め、延床面積が総額と収入の両方を決めます。坪単価の交渉で数%を削る努力より、容積率の消化率を10%上げる設計のほうが、事業に与える影響は大きくなります。
次にお伝えするのは、建築費が上がった局面では「建てない」も同じ重さの選択肢であるということです。5年で1.45倍になった工事費を、賃料がすぐに追いかけてくれる保証はありません。売却、等価交換、定期借地での貸地、暫定利用。土地の活かし方は建築だけではありません。デメリットも含めて数字を並べ、そのうえでオーナーご自身が決める。これが長期的な信頼につながると考えています。
そして、建物は建てて終わりではありません。建築費の判断は、その後30年以上の管理・修繕・入居付けを担う人財の体制まで含めて考える必要があります。安く建てた建物が、結果として運営の手間と修繕費で高くつくことは珍しくありません。初期費用と保有期間中のコストを合わせて見る視点を、計画の最初から持っていただきたいと思います。
まとめ
マンション建築費の相場と計算方法を、一次統計に基づいて整理しました。要点を振り返ります。
- 賃貸マンションの工事費は全国平均でRC造36.2万円/㎡(坪約120万円)、鉄骨造35.2万円/㎡、木造22.2万円/㎡です。鉄骨造とRC造の差は坪あたり3.3万円ほどしかありません。
- RC造の単価は令和2年度から令和7年度で約1.45倍になりました。労務単価は14年連続で上昇し、2025年4月からは全新築で省エネ基準適合が義務化されています。
- 地域差は東京都45.6万円/㎡に対し福岡県28.2万円/㎡ですが、同一仕様で比べた官庁の地域別指数では差は±6%程度です。
- 階数別のRC造の概算は、4〜5階建てで約3.8億円、6〜9階建てで約9.9億円、10〜15階建てで約13.5億円です。総額を決めるのは階数ではなく延床面積です。
- 延床面積は敷地面積×容積率で求めますが、前面道路が12m未満なら幅員による制限がかかります。25坪の狭小地では、階数より容積率が総額を決めます。
- 工事費の内訳は建築工事69.4%、電気設備工事12.9%、機械設備工事17.7%。設備が3割を占めるため、仕様の見直しは設備から検討する価値があります。
- 不動産取得税の1,200万円控除は住戸ごとに適用され、申告が条件です。登録免許税の住宅用家屋の軽減は賃貸には使えません。
建築費の数字は、事業の入口にすぎません。その土地でどれだけの床がつくれるか、建てた建物を何年運営するのか、出口でどう評価されるのか。ここまで含めて設計するために、この記事の数値を使っていただければ幸いです。
よくある質問(FAQ)
5階建てマンションの建築費はいくらですか
RC造の4〜5階建て共同住宅は、1棟平均で延床1,039㎡(約314坪)、概算の本体工事費は約3.8億円です(令和7年度・全国)。ご自身の敷地で計算するなら、敷地面積×容積率で延床面積を出し、36.2万円/㎡(東京都は45.6万円/㎡)を掛けてください。敷地100坪・容積率200%なら延床660㎡で約2.4億円が目安です。
鉄骨造とRC造ではどちらが安く建てられますか
共同住宅の実績では、鉄骨造35.2万円/㎡、RC造36.2万円/㎡で、坪あたり約3.3万円の差にとどまります。「鉄骨造なら大幅に安い」とは言えません。加えて6階建て以上ではRC造の棟数が圧倒的で、10〜15階建てではRC造1,120棟に対し鉄骨造は31棟です。中高層の賃貸マンションでは、実質的にRC造が標準と考えてください。
25坪の狭小地でもマンションは建てられますか
建てられますが、総額と規模を決めるのは階数ではなく容積率です。敷地25坪・商業地域・建ぺい率80%・容積率400%なら、延床上限は330㎡(約100坪)で本体工事費は全国平均で約1.2億円、東京都で約1.5億円です。建築面積66㎡で330㎡を消化するとちょうど5層分になるため、6階建てにしても延床は増えません。前面道路が6mなら容積率は360%に制限され、さらに規模が下がります。
建築費が高い今、建てるべきではないのでしょうか
一律の答えはありません。RC造の工事費は5年で約1.45倍になり、労務単価も14年連続で上昇しています。この上昇に賃料が追いつくかは立地によって差が出ます。判断材料は、容積率をどれだけ消化できるか、想定賃料が地域相場に対して妥当か、返済比率にストレスをかけても耐えられるか、の3点です。売却や定期借地といった建築以外の選択肢と並べて比較したうえで、決めていただくのが確実です。
引用・参考資料
- 国土交通省「建築着工統計調査 住宅着工統計」令和7年度計 第34表(着工新築住宅 利用関係別、構造別、建て方別)(e-Stat)
- 国土交通省「建築着工統計調査 建築物着工統計」令和7年度計 第4表-1(用途別(大分類)、地上の階数別(~15階)、構造別(新築工事))(e-Stat)
- 国土交通省「建築着工統計調査報告(令和7年度計分)」(令和8年4月30日公表)
- 国土交通省大臣官房官庁営繕部「令和9年度 新営予算単価」(令和8年5月20日 国営計第42号)
- 国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」(令和8年2月17日)
- 国土交通省「【建築物省エネ法第10条】省エネ基準適合義務の対象拡大について」
- 国土交通省「2025年4月からルールを改正します(全ての新築で省エネ基準適合を義務化)」
- e-Gov法令検索「建築基準法」(第20条・第33条・第34条・第52条・第53条)
- e-Gov法令検索「消防法施行令」(第12条第1項第12号)
- 総務省「地方税制度|不動産取得税」
- e-Gov法令検索「地方税法」(第73条の14)
- e-Gov法令検索「地方税法施行令」(第37条の16)
- 国税庁 タックスアンサーNo.7191「登録免許税の税額表」
- 国税庁 タックスアンサーNo.7108「不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」
- 国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」
