アパートやマンションの貯水槽は、住民の生活用水の品質を左右する重要な設備です。貯水槽清掃は法律で義務化されており、怠ると罰則を科せられる可能性があります。この記事では、貯水槽の種類から清掃の手順、料金相場、信頼できる業者の選び方まで、管理者が知っておくべき情報を網羅的に解説します。
集合住宅の給水方式にはどんな種類があるのか?
集合住宅の給水方式は、大きく「直結給水方式」と「受水槽方式」の2種類に分かれます。それぞれの特徴を理解しておきましょう。
直結給水方式
貯水槽を使わず各戸に直接給水する方式です。2つのタイプがあります。
- 増圧直結方式:増圧ポンプを使って各階に水を届ける方法。高層マンションでも安定した水圧を確保でき、省スペースで設置可能です。
- 直圧直結方式:水道管の圧力だけで給水する方法。ポンプ不要のため省エネですが、水量の変動が大きい場合は周辺に悪影響を及ぼすことがあります。
受水槽方式
水道管から供給された水を貯水槽に貯めてから各戸に給水する方式です。
- 高置水槽方式:屋上の高置水槽から自然流下で各戸に給水する方法。
- ポンプ圧送方式:地上の貯水槽からポンプで各戸に給水する方法。1980年代から普及しています。
受水槽方式は災害時の備蓄として1〜2日分の水を確保できるメリットがあります。一方、定期的な点検・清掃のメンテナンスが必要で、清掃時は断水が発生するデメリットがあります。
なぜ貯水槽清掃は法律で義務化されているのか?
貯水槽は密閉空間であっても空気に触れるため、カビ・雑菌・虫の死骸などが発生する可能性があり、衛生的な状態を長期間保つことが困難です。そのため、法律で清掃・管理が義務付けられています。
法律で定められた清掃基準
- 簡易専用水道:水道法第34条の2により、清掃と検査を1年以内に1回ずつ実施することが義務付けられています。
- 小規模貯水槽水道:各自治体の管理基準に従い、年1回以上の清掃・点検が必要です。
清掃を怠るとどうなるのか?
貯水槽清掃を怠ると、水質悪化・クレーム・罰則など深刻な問題につながります。
- 水の異臭・変色:清掃不足により安全でない水を供給してしまい、健康被害のリスクが生じます。
- 入居者からのクレーム:水質の異変は退去の原因にもなりかねません。
- コスト増大:汚れがこびりつくと通常より清掃費用が高額になり、最悪の場合は貯水槽自体の交換が必要になります。
- 罰則・罰金:建築物衛生法・水道法・自治体条例で管理が義務化されており、違反するとペナルティを科せられます。
貯水槽清掃はどのような手順で行われるのか?
貯水槽清掃は、事前点検→清掃→消毒→水質検査→報告書作成の流れで行われます。
清掃を行うタイミング
法律では「1年以内に1回」の清掃が定められています。「1年に1回」ではなく「1年以内に1回」であるため、複数回実施が望ましいとされています。修理・入れ替え・新設時や長期的な滞水があった場合にも清掃が必要です。
作業体制
貯水槽清掃は、貯水槽清掃作業監督者を責任者とし、3名以上で構成された作業班が行います。使用器具は専用のものとし、揚水ポンプ・高圧洗浄機・残留塩素測定器などが法律で定められています。
事前点検
施設図面を使った構造確認、貯水槽周辺の状況チェック、マンホールの施錠確認、各種機器の作動確認などを実施します。安全対策として酸素濃度測定や感電防止対策も行います。
清掃作業
入水バルブを閉め、排水後にスポンジやたわしで水垢・バクテリアを除去します。洗浄で生じる残水は確実に除去し、清掃前後の状態を写真で記録します。
消毒作業
次亜塩素酸ナトリウム等で消毒し、30分以上放置してから仕上げ消毒を行います。再度30分以上放置した後、水洗いして注水します。
水質検査
清掃後の水質検査は必須です。以下の基準を満たす必要があります。
- 濁度:2度以下
- 色度:5度以下
- 残留塩素:0.2mg/L以上
- 臭気・味:異常がないこと
報告書の作成・提出
建物名・所在地、作業日時、作業者名、水質検査結果、作業前後の写真などを記載した報告書を作成・提出します。
貯水槽は清掃以外にどんな点検が必要なのか?
清掃だけでなく、日常点検・水質確認・定期検査の3つが欠かせません。
日常的な点検
本体の亀裂・漏水・破損、防虫網の状態、マンホール蓋の施錠、水槽内の異物・汚れなどを日頃から確認しましょう。ストレスフリーな管理体制を構築することで、こうした日常点検も効率化できます。
水質確認
水の色・臭い・味・濁りを透明なガラスコップで確認します。貯水槽内に1日以上滞水すると塩素が薄まるため、水の使用量も併せてチェックしましょう。
異常時の対応
異常が見つかったら、直ちに給水を停止し、利用者へ通知した上で保健福祉センターまたは水道局に連絡します。
10立方メートル以上の貯水槽
容量が10立方メートル以上の貯水槽は、年1回の登録検査機関による検査が法律で義務付けられています。
貯水槽清掃で起こりやすいトラブルとは?
断水通知の不備、風評リスク、悪質業者の3つが代表的なトラブルです。
断水の通知が不十分だった
ポスティングと掲示の両方で周知し、1ヶ月前・1週間前と段階的に通知するのが効果的です。掲示のみでは見落とされやすく、ポスティングのみではチラシに紛れてしまいます。
風評による退去リスク
清掃時に異物混入が発覚した場合、入居者への信頼低下や退去率の上昇を招く可能性があります。徹底した点検・管理・清掃で予防しましょう。
悪質な清掃業者に依頼してしまった
清掃当日は必ず立ち会い、作業内容を確認することが重要です。貯水槽本体の汚れが落ちているか、傷がついていないか、水張り後に漏れがないかを目視でチェックしましょう。
貯水槽清掃の料金相場はいくらか?
貯水槽清掃の料金は容量に応じて変動します。一般的な相場は以下のとおりです。
- 5トン以下:35,000円〜
- 10トン以下:50,000円〜
- 15トン以下:70,000円〜
- 20トン以下:80,000円〜
- 30トン以下:100,000円〜
- 50トン以下:120,000円〜
料金を抑えるには、複数の業者から見積もりを取って比較するのがおすすめです。自治体のホームページに掲載されている業者も信頼性の高い選択肢となります。
信頼できる貯水槽清掃業者を選ぶポイントとは?
登録業者であること、実績の豊富さ、入居者への配慮が業者選びの重要な判断基準です。
登録を受けた業者を選ぶ
貯水槽清掃は厚生労働大臣の登録を受けた有資格者が行う義務があります。賃貸管理の法規制も踏まえ、都道府県知事の登録を受けた業者を選びましょう。
豊富な実績があるか
年間の施工実績数は、業者の信頼性を測る重要な指標です。ホームページに掲載がない場合は直接問い合わせて確認しましょう。
使用する器具・設備が充実しているか
貯水槽の形状・設置場所・汚れ具合は様々なため、対応できる器具・設備が多い業者ほど柔軟に対応してくれます。
入居者や近隣への配慮があるか
清掃前の準備段階から入居者・近隣への配慮を行う業者を選びましょう。通知のタイミング、養生の有無、注意喚起の実施などを事前に確認することが大切です。
アフターサービスと保証があるか
清掃後のトラブルに対応してくれるか、緊急時の連絡先があるかを確認しておきましょう。24時間対応の業者であれば、万が一の際にも安心です。
自社施工かどうか
下請け・孫請けになると品質にばらつきが出るリスクがあるため、自社施工を公言している業者がおすすめです。
貯水槽以外の清掃にも対応しているか
貯水槽周辺の点検・清掃や加圧給水装置の点検にも対応している業者なら、不具合の早期発見にもつながります。
よくある質問(FAQ)
Q. 貯水槽清掃はどのくらいの頻度で行うべきですか?
法律では「1年以内に1回」と定められています。修理や異常があった場合はその都度清掃が必要です。東京都・大阪府などでは年1回以上の実施が義務付けられています。
Q. 貯水槽清掃を怠るとどうなりますか?
水質悪化による健康被害のリスクに加え、建築物衛生法・水道法違反として罰則や罰金を科せられる可能性があります。
Q. 貯水槽清掃の費用はどのくらいですか?
容量により異なりますが、5トン以下で35,000円〜、10トン以下で50,000円〜が目安です。複数業者から見積もりを取って比較しましょう。
Q. 清掃中の断水はどのくらいの時間ですか?
貯水槽の規模や汚れ具合によりますが、一般的に数時間程度です。入居者には1ヶ月前から段階的に通知するのが望ましいです。
Q. 直結給水方式なら貯水槽清掃は不要ですか?
はい、直結給水方式は貯水槽を使わないため清掃の義務はありません。ただし、受水槽方式から直結給水方式への切り替えには自治体の承認と工事が必要です。