アパートの共用廊下や駐輪場に防犯カメラを入れる場合、公式価格で確認できる機器費は屋外カメラ29,700円・屋内カメラ50,600円・PoEハブ13,200円の計93,500円、クラウド録画は1台あたり月2,200円(30日保存・税込)です。設置工事費だけは公表価格がなく、現地条件による個別見積りになります。この記事は、賃貸物件のオーナーが「いくらかかるのか」「法的に何をすればよいのか」「経費で落とせるのか」を自分で判断できるように、警察庁の統計、国土交通省・警察庁の設計指針、個人情報保護委員会の見解、事業者の公式価格を並べて整理したものです。入居者が自室の玄関先にカメラを付けてよいのかという論点も、後半の比較表で扱います。
この記事のポイント
- 令和7年の侵入窃盗は47,233件で前年比9.8%増。長期では大きく減っていますが、直近は増加局面に入っています(警察庁)。
- 3階建以下の共同住宅、つまり木造アパートの空き巣は10万世帯当たり18.2件で、4階建以上の共同住宅7.9件のおよそ2.3倍です。
- アパートの空き巣2,175件のうち無施錠が1,042件。合い鍵279件に対しピッキングはわずか1件で、対策の優先順位は「玄関側」と「無締り」にあります。
- 費用はクラウド型で機器93,500円+月額2,200円/台。工事費は公表価格がないため、6戸に2台なら5年総額は約38万〜86万円、1戸あたり月およそ1,053〜2,377円という幅で示します。
- 取得価額10万円未満は全額経費、20万円未満は3年均等償却。令和8年度税制改正の大綱では少額減価償却資産の特例が40万円未満に引き上げられるとされています。
アパート・賃貸物件の防犯カメラは、1台あたりいくらかかるのか
先に結論を出します。公的な単価の目安としては、東京都の防犯設備区市町村補助金が定める防犯カメラ1台あたり28万5千円という補助限度額があります(東京都「地域の安全確保に向けた防犯設備区市町村補助金」)。これは区市町村が街頭に設置する防犯カメラについて、機器と設置工事を含めた1台分の上限として行政が置いている数字です。
一方、民間のクラウド録画サービスなら、機器の価格は公式ストアで確認できます。セーフィー株式会社のオンラインストアでは、屋外向けバレット型カメラのエントリーモデルが29,700円、屋内向けの「Safie One」が50,600円、4ポートのPoEハブが13,200円です(いずれも税込)。クラウド録画は1台あたり月1,320円(7日保存)から7,700円(365日保存)まで選べ、30日保存なら月2,200円です。
ここは正直に書いておきます。設置工事費には、公表された価格がありません。セーフィーの場合、現地調査は無料ですが、工事については「設置工事が必要な場合は別途費用が発生します」とされているだけで、金額は現地の条件で決まります。ですから「初期費用は総額いくら」と一つの数字で言い切ることは、本来できません。この記事では、公式価格で確認できる機器費と、行政が置いている工事込みの上限額という二つの端から、費用の幅を示します。
数字で見る、アパートが狙われる理由
「うちの物件は大丈夫だろうか」という問いに、感覚ではなく数字で答えます。結論としては、木造アパートは分譲マンションよりも明確に狙われやすく、侵入口は玄関側に集中しています。
令和7年の侵入窃盗は47,233件、前年比9.8%増
警察庁「令和7年の犯罪情勢」によると、令和7年の侵入窃盗の認知件数は47,233件で、前年より4,197件(9.8%)増加しました。侵入犯罪全体は58,492件で、そのおよそ8割を侵入窃盗が占めています。
ただし、この数字を「増えている」の一言で片づけるのは正確ではありません。平成14年の33万件台をピークに侵入窃盗は長期にわたって減り続け、令和4年に36,588件まで下がりました。その後は令和5年に44,228件へ増え、令和6年は43,036件へわずかに減り、令和7年に再び47,233件へ増えています。長期の安全化と、ここ数年の高止まり。この二つを同時に見るのが実態に近い読み方です。
発生場所の内訳を見ると、令和7年の侵入窃盗47,233件のうち一戸建住宅が29.1%、3階建以下の共同住宅が5.7%、4階建以上の共同住宅が3.4%です。件数の絶対値では一戸建が圧倒的ですが、賃貸経営の判断に使うべきは件数ではなく、後述する世帯当たりの発生率です。
【数値表】住宅形態別の空き巣被害と10万世帯当たり発生率
住宅形態別の内訳は、警察庁「令和6年の刑法犯に関する統計資料」に載っています。令和6年に住宅で発生した空き巣は10,968件でした。
| 住宅形態 | 空き巣認知件数(令和6年) | 10万世帯当たり認知件数 |
|---|---|---|
| 一戸建住宅 | 7,588件 | 25.0件 |
| 共同住宅(3階建以下) | 2,175件 | 18.2件 |
| 共同住宅(4階建以上) | 1,205件 | 7.9件 |
| 住宅全体 | 10,968件 | 19.0件 |
出典:警察庁「令和6年の刑法犯に関する統計資料」図表2-2-1-2および図表2-2-1-3。10万世帯当たりの発生率は総務省「住宅・土地統計調査(令和5年)」の主世帯数をもとに算出されたもので、被害者の年齢が判明している事案に限った集計です。
ここが重要な点です。3階建以下の共同住宅、つまり多くのアパートは10万世帯当たり18.2件で、4階建以上の共同住宅7.9件のおよそ2.3倍にあたります。オートロックや管理員のいる中高層マンションと、外階段・外廊下の木造アパートでは、同じ「共同住宅」でもリスクの水準が違うということです。
さらに世帯構成別に見ると、単独世帯で30歳未満の入居者が住む3階建以下共同住宅は35.1件と、全区分の中で突出しています。学生や若い単身者を主なターゲットにしているアパートほど、共用部の防犯は入居者募集の要件に近づきます。
【数値表】アパートの空き巣は、どこから・どうやって入られるのか
台数と向きを決めるうえで、いちばん実務的な数字がここです。令和6年に3階建以下の共同住宅で発生した空き巣2,175件の内訳を示します。
| 区分 | 件数 | 2,175件に占める割合 |
|---|---|---|
| 侵入口:表出入口(玄関) | 1,000件 | 46.0% |
| 侵入口:窓 | 884件 | 40.6% |
| 侵入口:その他の出入口 | 41件 | 1.9% |
| 侵入手段:無締り(無施錠) | 1,042件 | 47.9% |
| 侵入手段:ガラス破り | 432件 | 19.9% |
| 侵入手段:施錠開け(合計) | 373件 | 17.1% |
| うち合い鍵 | 279件 | 12.8% |
| うちサムターン回し | 18件 | 0.8% |
| うちピッキング | 1件 | 0.05% |
出典:警察庁「令和6年の刑法犯に関する統計資料」図表2-2-1-5
読み取れることは三つあります。第一に、侵入口の46.0%が玄関です。共用廊下と各戸の玄関前を1台でなめるように撮る配置が、費用対効果としては最も高くなります。第二に、手段の47.9%が無施錠です。カメラを増やす前に、入居者への施錠の呼びかけと補助錠の整備が効きます。第三に、合い鍵279件に対してピッキングは1件です。ピッキング対策として高性能な鍵に交換するより、退去時の鍵交換を確実に行うほうが、この統計に対しては素直な対策になります。
空室・空き家の侵入窃盗が前年比28.4%増――空室を抱えるオーナーのリスク
もうひとつ、賃貸オーナーが見落としやすい数字があります。発生場所が「空き家」の窃盗犯は令和7年に13,971件となり、統計を取り始めた令和2年と比べて307.9%の増加です。うち侵入窃盗は11,958件で前年比2,644件(28.4%)の増加、敷地内などから盗む非侵入窃盗が1,934件で同494件(34.3%)の増加でした。
被害品の傾向も示唆的です。空き家の非侵入窃盗では室外機が被害品に含まれるものが702件、金属類が227件(前年比57.6%増)と伸びています。警察庁は、銅などの金属価格の高騰を背景に、金属くずとして売却するために盗まれていると分析しています。空室が続いている住戸のエアコン室外機や給湯器は、それ自体が狙われる資産だということです。
空室対策は収益の話であると同時に、防犯の話でもあります。空室対策の具体的なアイデアを整理した記事や、空き家管理で押さえるべき4つのポイントもあわせて確認いただくと、判断がつながりやすくなります。
防犯カメラの設置費用はいくらか【一次ソース付きの内訳表】
費用は「機器」「工事」「月額」「保守」の四つに分けて考えます。ここでは推計ではなく、行政が公表している補助限度額と、事業者が公式サイトで開示している価格だけを使います。工事費のように公表価格がないものは、ないと書きます。
【数値表】機器・工事・月額の実額
| 項目 | 金額 | 出典 |
|---|---|---|
| 防犯カメラ1台あたりの補助限度額(機器+設置工事の公的な上限目安) | 285,000円 | 東京都 防犯設備区市町村補助金 |
| 屋外カメラ本体(バレット型エントリーモデル・DXアンテナ CNE3CBF1S) | 29,700円(税込) | Safieストア |
| 屋外カメラ本体(コンパクトドーム型・i-PRO WV-S35302-F2L) | 67,870円(税込) | Safieストア |
| 屋内カメラ本体(Safie One) | 50,600円(税込) | Safieストア |
| 4ポートPoEハブ(VIVOTEK AW-FET-060P-060) | 13,200円(税込) | Safieストア |
| PoEインジェクタ(カメラ1台接続用・VIVOTEK AP-GIC-011A-030) | 7,700円(税込) | Safieストア |
| 設置工事費 | 公表価格なし(現地調査は無料、工事は個別見積り) | セーフィー「料金・利用開始までの流れ」 |
| クラウド録画 7日保存 | 月1,320円/台(税込) | セーフィー公式料金 |
| クラウド録画 14日保存 | 月1,815円/台(税込) | セーフィー公式料金 |
| クラウド録画 30日保存 | 月2,200円/台(税込) | セーフィー公式料金 |
| クラウド録画 60日保存 | 月2,750円/台(税込) | セーフィー公式料金 |
| クラウド録画 90日保存 | 月3,300円/台(税込) | セーフィー公式料金 |
| クラウド録画 180日保存 | 月4,950円/台(税込) | セーフィー公式料金 |
| クラウド録画 365日保存 | 月7,700円/台(税込) | セーフィー公式料金 |
出典:セーフィー株式会社 料金プラン、Safieストア 商品一覧、Safieストア「料金・利用開始までの流れ」、東京都「地域の安全確保に向けた防犯設備区市町村補助金」(いずれも2026年8月時点)。セーフィーの価格は一例で、同種のクラウド録画サービスは他社にもあります。見積もりを取る際の水準感として使ってください。
【数値表】ランニングコストと電気代の計算式
ランニングコストは月額料金だけではありません。保守点検と修繕、そして電気代が乗ります。東京都は維持管理経費の補助限度額として、次の金額を置いています。
| 費目 | 1台あたり限度額 | 備考 |
|---|---|---|
| 保守点検費 | 10,000円 | 年次点検の公的な単価目安 |
| 修繕費 | 200,000円 | 故障時の上限目安 |
| 移設費 | 200,000円 | 設置位置を変える場合 |
出典:東京都「防犯設備維持管理経費補助事業」。なお、この補助自体は町会・自治会・商店街等が都または区市町村の補助を受けて設置した防犯カメラのみが対象で、賃貸オーナーが自己負担で設置したカメラは対象外です。金額は「維持管理にはこの程度がかかる」という行政の想定として参照しています。
電気代は自分で計算できます。全国家庭電気製品公正取引協議会が示す電力料金目安単価は31円/kWh(税込、令和4年7月22日改定)です。消費電力8Wのカメラを24時間365日動かした場合、次のようになります。
- 8W × 24時間 × 365日 ÷ 1,000 = 70.08kWh
- 70.08kWh × 31円 = 約2,172円/年・1台
- 2台なら約4,345円/年
出典:公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会。この単価は業界共通の目安であり、実際の電気料金は契約プランにより変わります。消費電力は機種によって異なるため、カタログ値で置き換えて計算してください。
【計算例】6戸アパートに2台設置した場合の初年度・5年総額
実際の数字に落とします。6戸の木造アパートで、共用玄関側に屋外カメラ1台、駐輪場側に屋内カメラ1台、合計2台を入れる想定です。録画は30日保存とします。
| 費目 | 金額 | 根拠 |
|---|---|---|
| 屋外カメラ1台(バレット型エントリーモデル) | 29,700円 | Safieストア公式価格 |
| 屋内カメラ1台(Safie One) | 50,600円 | Safieストア公式価格 |
| 4ポートPoEハブ | 13,200円 | Safieストア公式価格 |
| 機器費 計 | 93,500円 | 公式価格の合計 |
| 設置工事費 | 個別見積り | 公表価格なし。現地調査は無料 |
| 参考:機器+工事の公的な上限目安(28万5千円×2台) | 570,000円 | 東京都の補助限度額 |
| クラウド録画(2,200円×2台×12ヶ月) | 52,800円/年 | 30日保存プラン |
| 電気代(8W想定・2台) | 約4,345円/年 | 目安単価31円/kWh |
| ランニング 計 | 約57,145円/年 | クラウド録画+電気代 |
工事費が確定しない以上、総額は一つの数字にはなりません。そこで、機器費だけを見た下限と、行政が置く工事込みの上限額で置いた上限の、二つの端で示します。
| ケース | 初年度 | 5年総額 | 1戸あたり月額(6戸) |
|---|---|---|---|
| 下限:機器費のみ(自分で取り付ける場合) | 約150,645円 | 約379,225円 | 約1,053円 |
| 上限:機器+工事を1台28万5千円で置いた場合 | 約627,145円 | 約855,725円 | 約2,377円 |
つまり、6戸のアパートに2台入れる負担は、1戸あたり月およそ1,000円台前半から2,400円弱の幅に収まります。見積書を受け取ったら、工事費がこの上限28万5千円/台にどれだけ近いかを見てください。それが妥当性を判断する最初の物差しになります。
ここから先は経営判断です。この負担を家賃に転嫁するのか、募集条件の強化として自社負担にするのか。空室が1戸1ヶ月減れば、家賃6万円の物件なら6万円の回収です。5年総額38万〜86万円を、家賃1ヶ月分の空室6回から14回分と見るか、月1,000円台から2,000円台の設備投資と見るか。数字にすると、判断の軸がはっきりします。ただし家賃や入居率への効果は立地と競合状況で変わりますので、アパート経営の経費と収支の考え方とあわせて物件ごとの数字で検討してください。
【比較表】買切り・クラウド録画・警備会社リース、どれを選ぶか
方式の選択は、月額の安さではなく「誰が映像を保管し、壊れたとき誰が直すか」で決めるのが実務的です。三つの方式を並べます。
| 比較項目 | A:買切り+NVR自己録画 | B:クラウド録画サービス | C:警備会社リース・レンタル |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | 機器+工事。録画機(NVR)分だけ高くなる | 機器+工事。録画機は不要 | 低い。初期費用なしの契約もある |
| 月額 | 原則なし(電気代・保守のみ) | 保存日数に応じて1台1,320〜7,700円 | 契約期間で按分した月額 |
| 録画保存日数 | HDD容量と画質しだい。上書きされる | 契約プランで確定(7〜365日) | 契約仕様による |
| 機器の所有権 | オーナー | オーナー(機器を買う場合) | リース会社・警備会社 |
| 故障時の負担 | オーナー。HDDは消耗品で交換が必要 | 保守契約の範囲で対応 | 契約に含まれることが多い |
| 会計処理 | 取得価額に応じて資産計上または経費 | 機器は資産計上、月額は費用処理 | 原則としてリース料・賃借料を費用処理 |
| 解約・撤去時 | 機器はオーナーに残る | サービス解約後は録画が止まる | 返却。中途解約金が発生することがある |
戸数の少ないアパートでは、録画機を置く場所と管理の手間がそのまま負担になります。管理会社に管理を委託していて、現地に管理員がいない物件なら、Bのクラウド型が運用しやすい方式です。逆に、複数棟を自主管理していて機器の扱いに慣れているなら、Aの買切りが5年以上のスパンでは安くなります。
リースやレンタルについて「何ヶ月以上ならどちらが得」という一般則が語られることがありますが、契約条件で結論が変わるため、この記事では断定しません。見積書に総支払額と中途解約条項が書かれているかを確認してください。
台数の決め方――共用玄関、廊下、駐輪場、ゴミ置場のどこを優先するか
予算が限られる場合の優先順位は、統計から素直に決まります。
- 共用の出入口と共用廊下:空き巣の侵入口の46.0%が玄関です。各戸の玄関前を斜めから撮れる位置が第一候補になります。
- 駐輪場・バイク置場:令和7年の自転車盗は172,654件、オートバイ盗は14,552件(前年比25.0%増)で、街頭犯罪の中でも件数が大きい類型です(警察庁「令和7年の犯罪情勢」)。入居者からの苦情にも直結します。
- ゴミ置場:不法投棄と分別違反はカメラの効果が出やすい領域で、清掃費の削減にもつながります。
- 駐車場・空室住戸まわり:室外機や金属類の盗難が増えている以上、空室が続く棟では優先順位が上がります。
1台で複数の目的を兼ねさせようとして、結果的にどれも判別できない映像になるのが最もよくある失敗です。1台につき目的を一つに絞るほうが、結果的に台数あたりの価値は高くなります。
台数と設置位置は「照度」で決まる――国交省・警察庁の設計指針
カメラの仕様を決める前に確認すべきものがあります。国土交通省と警察庁が策定した「防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針」です。この指針は、共同住宅の各部について確保すべき明るさを具体的な数値で示しています。
【数値表】共用部の照度基準
| 場所 | 確保すべき平均水平面照度 |
|---|---|
| 共用玄関(内側の床面) | 概ね50ルクス以上 |
| 共用玄関(外側の床面) | 概ね20ルクス以上 |
| 共用玄関以外の共用出入口 | 概ね20ルクス以上 |
| 共用メールコーナー | 概ね50ルクス以上 |
| 共用玄関の存する階のエレベーターホール | 概ね50ルクス以上 |
| その他の階のエレベーターホール | 概ね20ルクス以上 |
| エレベーターのかご内 | 概ね50ルクス以上 |
| 共用廊下・共用階段 | 概ね20ルクス以上 |
| 自転車置場・オートバイ置場 | 概ね3ルクス以上 |
| 駐車場 | 概ね3ルクス以上 |
| 通路 | 概ね3ルクス以上 |
| 児童遊園・広場・緑地等 | 概ね3ルクス以上 |
出典:国土交通省・警察庁「防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針」
見通しが確保できない箇所にカメラを設置するという考え方
この指針が示すカメラの位置づけは明快です。共用玄関について「道路等からの見通しが確保されない場合には、防犯カメラの設置等の見通しを補完する対策を実施する」とし、共用廊下・共用階段・エレベーターホールについても「死角となる箇所については、防犯カメラの設置等の見通しを補完する対策を講じたものとすることが望ましい」としています。
つまり、カメラは見通しの代わりに置くものであって、見通しがある場所に足しても効果は薄いということです。既存物件の改修についても、指針は「共用出入口、共用メールコーナー、エレベーターホール、屋内共用階段、自転車置場・オートバイ置場、駐車場等の改修において、防犯上必要な見通しの確保が困難な場合には、防犯カメラを設置することが望ましい」と述べています。手順としては、まず敷地内を歩いて死角を洗い出し、そこにだけカメラを置くのが正しい順序です。
配置についても「見通しの補完、犯意の抑制等の観点から有効な位置、台数等を検討し適切に配置する」とあり、記録装置の設置が望ましいとされています。撮っているだけで残らない構成では、犯罪発生時に役に立ちません。
画素数を上げる前に、照明を直したほうが安い理由
指針には、見落とされがちな一文があります。「防犯カメラを設置する部分の照明設備は、当該防犯カメラが有効に機能するため必要となる照度を確保したものとする」という規定です。
暗い場所に高画素のカメラを置いても、顔は判別できません。共用廊下の照度が20ルクスに届いていないなら、カメラのグレードを一段上げる前に照明器具を交換するほうが安く効きます。LED化は電気代の削減になり、共用部の明るさは内見時の印象そのものですから、募集にも効いてくる投資です。
順序としては、①死角の洗い出し、②照度の確保、③カメラの配置、④録画と運用の設計、という流れが合理的です。共同住宅の防犯対策を体系的に整理した記事も参考になります。
賃貸物件の防犯カメラは違法になるのか――大家と入居者で答えが違う
結論から言えば、賃貸オーナーが自分の所有する共用部に防犯目的でカメラを設置することは違法ではありません。ただし、個人情報取扱事業者として守るべき手順があります。一方、入居者が専有部に設置する場合は適用される枠組みが異なります。この二つを混同した説明が広く出回っているため、順に整理します。
【比較表】オーナーが共用部に設置する場合と、入居者が専有部に設置する場合
| 論点 | オーナー(大家)が設置 | 入居者が設置 |
|---|---|---|
| 主な設置場所 | 共用玄関、共用廊下、駐輪場、ゴミ置場、駐車場 | 専有部の玄関内側、室内、ベランダ(専用使用部分) |
| 許可の要否 | 不要(自己の所有物)。ただし入居者への周知は行う | 必要。賃貸借契約上の造作・原状回復に関わるため貸主の承諾を得る |
| 個人情報保護法の位置づけ | 賃貸経営は事業のため、個人情報取扱事業者としての義務が及ぶと整理されるのが一般的 | 私生活の用に供する目的であれば、事業者としての義務が直ちに及ぶものではない |
| 必要な掲示 | 入口や設置場所への「防犯カメラ作動中」等の掲示 | 法律上の掲示義務は想定されないが、周囲への配慮として有効 |
| 費用負担 | オーナー。経費・減価償却の対象 | 入居者。個人の家計負担 |
| 退去・原状回復 | 建物設備として残る | ビス穴・配線の跡は原状回復の対象になり得る。契約時に取り決める |
| 撮影範囲の制約 | 他人の敷地・道路・各戸の室内が過度に映らないよう調整 | 他の住戸の玄関・共用廊下・隣室のベランダを継続的に撮らない |
| 映像の開示請求 | 保有個人データに該当する場合、法に基づく手続で対応 | 個人の管理。第三者への提供は慎重に |
入居者が自室の玄関内側やインターホン一体型のカメラを使う場合、大きな争点にはなりません。問題になるのは、玄関ドアの外側に取り付けて共用廊下や向かいの住戸の玄関が継続的に映るケースです。この形は他の入居者のプライバシーを侵害するものとして、撤去や損害賠償を求められるリスクがあります。賃貸借契約上も、建物への穴あけを伴う設置は貸主の承諾が前提です。
オーナー側の実務としては、この論点を曖昧なままにせず、募集条件や重要事項の説明段階で「専有部への設置は事前承諾制、共用部を撮影する向きは不可」と決めておくと、後の紛争が減ります。入居者が設置したセキュリティ機器と原状回復の考え方も、契約書の文言を決めるときの参考になります。
大家が守るべき個人情報保護法の4点
個人情報保護委員会の見解に沿って整理すると、押さえるべきは次の4点です。
- 利用目的の通知・公表:カメラの設置状況から防犯目的が明らかな場合は「取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合」(法第21条第4項第4号)に該当し、通知・公表は不要と考えられます。
- 本人が認識できる措置:本人が容易に認識できない場合には、法第20条第1項との関係で、入口やカメラ設置場所への掲示など、撮影されていることを認識できる措置が必要です。
- 保存期間の設定と消去:法第22条に基づき、利用の必要性を考慮して保存期間を設定し、必要がなくなったときは遅滞なく消去するよう努めます。
- 安全管理措置:法第23条に基づき、取り扱える者を限定し責任者を定める(組織的)、記録媒体の盗難・紛失を防ぐ(物理的)、ネットワークカメラのアクセス制御やパスワード設定を行う(技術的)といった措置が求められます。
出典:個人情報保護委員会 ガイドラインQ&A Q1-13、個人情報保護委員会「カメラに関するQ&A」
ここで訂正しておきたいことがあります。「個人情報保護法があるので無断でカメラを設置すると違法になる」という説明を目にすることがありますが、これは正確ではありません。防犯目的が明らかであれば利用目的の通知・公表は不要で、求められているのは撮影されていることを本人が認識できる状態にすることです。禁止ではなく、手順の問題だと理解してください。
「防犯カメラ作動中」の掲示が法律上の意味を持つ理由
掲示は、単なるマナーではありません。法第20条第1項は偽りその他不正の手段による個人情報の取得を禁じており、本人が撮影を認識できないまま画像を取得する状態を避けるために掲示が求められます。個人情報保護委員会は、外観上カメラが明らかな場合でも、掲示等によってより容易に認識可能とすることが望ましいとしています。
文言は「防犯カメラ作動中(管理者:〇〇/目的:防犯および施設管理)」のように、誰が何のために撮っているかがわかる形が望ましいと考えます。抑止効果という観点でも、掲示は費用のかからない対策です。
入居者から映像の開示を求められたとき、警察から照会が来たとき
運用を始めれば、この二つはいずれ起きます。あらかじめ決めておくと、現場が迷いません。
- 入居者からの開示請求:映像が保有個人データに該当する場合、法に基づく開示等の請求の対象になり得ます。手続の窓口と、本人確認の方法、他の入居者が映り込んでいる部分の扱いを決めておきます。
- 警察からの照会:捜査関係事項照会など、法令に基づく照会であれば第三者提供の例外に当たり得ます。書面での照会を受け、提供した日時・範囲・相手方を記録に残します。
- 入居者からの「隣の人を撮ってほしい」という要望:特定個人の監視を目的とした運用は、当初の利用目的から外れます。断る理由を運用基準に書いておくと、対応がぶれません。
- SNSへの公開:映像を管理者の判断でインターネットに公開する行為は、名誉毀損やプライバシー侵害の問題を生じさせます。犯罪が疑われる場合は警察に相談してください。
設置前に決めておく運用ルールと、入居者への周知の進め方
カメラは設置した日ではなく、運用を決めた日から機能します。ここが最も手薄になりやすい部分です。
管理規程に書く7項目
- 管理責任者:オーナー本人か管理会社か。氏名または部署名まで特定します。
- 設置目的:防犯および施設管理、と目的を明示します。特定個人の監視は目的に含めません。
- 設置場所と撮影範囲:台数、向き、撮影される範囲を図面に落とします。
- 保存日数:クラウドなら契約プラン、録画機なら実測の上書き周期を記載します。
- 閲覧できる者と閲覧の条件:誰が、どんなときに、どの手続で見られるかを限定します。
- 第三者提供の手続:警察等からの照会への対応と記録の残し方を決めます。
- 廃棄・機器更新時の処理:HDDやSDカードの廃棄方法、リース返却時のデータ消去を決めます。
この7項目は、設置後に入居者やご家族から問い合わせを受けたときに、そのまま回答の材料になります。管理を委託している場合は、委託先との間で誰が何を判断するかを先に決めておくことをおすすめします。賃貸管理の仕組みづくりについてまとめた記事も、体制を考えるときの土台になります。
入居者向け通知文に入れる要素と、掲示物の設置場所
設置の1〜2週間前に、全戸へ書面で通知します。入れるべき要素は次の5つです。
- 設置する目的と、設置日
- 設置場所と、撮影される範囲(専有部の内部は撮影しないこと)
- 録画の保存日数と、保存後は消去されること
- 映像を見られる者と、見る条件
- 問い合わせ先
掲示物は、共用玄関・駐輪場・ゴミ置場・駐車場入口など、撮影範囲に入る手前に置きます。通知と掲示は、法令上の要請であると同時に、入居者に「守られている」と感じてもらうための説明でもあります。黙って設置して後から知られるのと、事前に説明するのとでは、同じ設備でも受け取られ方がまったく違います。
撮影範囲の調整――隣地・他室の玄関・道路を映さないための実務
設置工事の当日に、映像を見ながら向きを決めてください。実務上のポイントは次のとおりです。
- 隣地の敷地内や窓が画角に入る場合は、プライバシーマスク機能で該当部分を黒塗りにする
- 公道を広く映す必要はない。敷地の出入口までに範囲を絞る
- 各戸の玄関は「出入りが判別できる」程度にとどめ、ドアを開けた室内が写り込む角度は避ける
- 夜間と逆光時間帯の映像も確認する。昼だけ見て引き渡すと、実際に必要な時間帯で使えないことがある
防犯カメラの費用は経費で落とせるのか【取得価額別の税務処理】
アパート経営者にとって、ここが最も知りたい部分だと思います。結論は取得価額で分岐します。以下は一般的な整理であり、実際の適用は個別事情によりますので、顧問税理士に確認してください。
【数値表】取得価額別の4分岐
| 取得価額 | 取扱い | 根拠・備考 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | その年分の必要経費に全額算入 | 使用可能期間1年未満または取得価額10万円未満 |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産として3年間で均等償却 | 一括した取得価額の合計額の3分の1を、業務供用年以後3年間の各年分の必要経費に算入 |
| 20万円以上30万円未満 | 中小企業者等の少額減価償却資産の特例により、青色申告を要件に取得年で全額損金・必要経費算入(年間合計300万円が限度) | 特例自体は取得価額10万円以上30万円未満が対象で、10万〜20万円の資産は一括償却との選択になります。法人は常時使用する従業員500人以下(特定法人は300人以下)が要件。適用期限は令和8年3月31日まで |
| 30万円以上(改正後は40万円以上) | 耐用年数に応じて減価償却 | 器具備品の区分で判定 |
出典:国税庁 タックスアンサーNo.2100「減価償却のあらまし」、国税庁 タックスアンサーNo.5408「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」
耐用年数については、国税庁の耐用年数表(器具・備品)の「事務機器、通信機器」の区分で「インターホーン、放送用設備」が5年、「その他の事務機器」が5年とされています。防犯カメラは実務上5年で計算されることが多い設備です(国税庁 耐用年数表(器具・備品))。
2026年度税制改正で少額減価償却資産の特例が40万円未満に
ここは2026年時点の最新情報です。財務省「令和8年度税制改正の大綱」では、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例について、次の見直しが示されています。
- 対象となる減価償却資産の取得価額を40万円未満(現行:30万円未満)に引き上げる
- 適用期限を3年延長する
- 対象となる法人から、常時使用する従業員数が400人を超える法人を除外する
この改正が適用されると、機器と工事を合わせて30万円台になったカメラ一式も、特例の範囲に収まる可能性が出てきます。1台あたりの取得価額が30万円をわずかに超えるかどうかで処理が分かれていた領域が広がる、という意味です。なお、国税庁タックスアンサーNo.5408には現行の記載(30万円未満・令和8年3月31日まで・従業員500人以下)が載っていますので、適用時期と要件は国税庁の最新情報および税理士への確認をお願いします。
工事費を本体と分けられるか――建物附属設備になる場合の注意
実務でつまずきやすいのがここです。カメラ本体と設置工事費を分けて、本体だけを少額資産として処理したいと考えがちですが、原則として取得価額には引取運賃や据付費など事業供用に直接要した費用が含まれます。カメラ本体29,700円に工事費が乗れば、その合計額で10万円・20万円・30万円の線を判定するのが基本の考え方です。
さらに、建物に配線を通し、電源工事を伴って恒久的に固定する場合は、器具備品ではなく建物附属設備として扱われることがあります。この場合は耐用年数の区分が変わります。見積書の段階で、機器費・配線工事費・電源工事費を分けて記載してもらい、その内訳を税理士に見せて判断を仰ぐのが確実です。減価償却と耐用年数の計算方法を整理した記事もあわせてご覧ください。
使える補助金・助成金と、賃貸オーナーが対象になるかの確認手順
防犯カメラの補助制度は各地にありますが、賃貸オーナーが自分の物件の共用部に入れる用途は、対象外になっていることが少なくありません。多くの制度が町会・自治会などの地域団体、または個人世帯を想定しているためです。実際の制度を見て、その線引きを確認します。
【数値表】東京都の3制度
| 制度 | 対象 | 補助限度額 | 負担割合 |
|---|---|---|---|
| 地域の安全確保に向けた防犯設備区市町村補助金 | 区市町村が設置する防犯カメラの整備経費(都が区市町村を補助) | 防犯カメラ1台あたり28万5千円 | 都3/4・区市町村1/4 |
| 防犯設備維持管理経費補助事業 | 上記または見守り活動支援事業の補助を受けて設置した防犯カメラの保守点検・修繕・移設 | 保守点検費1万円/台、修繕費20万円/台、移設費20万円/台 | 設置根拠事業により都1/2・区市町村1/3、または都1/3・区市町村1/3 |
| 令和8年度東京都防犯機器等購入緊急補助事業 | 都内に住民登録があり当該住所に居住している世帯主等 | 上限1万円/世帯 | 都1/2・都民1/2(自治体により異なる場合あり) |
出典:東京都 防犯設備区市町村補助金、東京都 防犯設備維持管理経費補助事業、令和8年度東京都防犯機器等購入緊急補助事業
三つ目の緊急補助は、防犯カメラ、カメラ付きインターホン、防犯フィルムなど侵入盗の被害防止に有用な機器が対象で、上限1万円・世帯単位です。対象は「その住所に居住している世帯主等」ですから、オーナーが居住していない所有物件の共用部は、そのままでは対象になりにくい設計です。むしろ、入居者ご自身が自室の防犯機器を買うときに使える制度として案内するほうが実態に合います。
自治体に問い合わせるときに聞くべき5つのこと
制度は自治体ごとに大きく違います。電話一本で確認できる項目に絞ると、次の5つです。
- 賃貸住宅のオーナー(個人・法人)が申請者になれるか。町会・自治会経由が条件か
- 共同住宅の共用部に設置するカメラが対象設備に含まれるか
- 補助率と上限額、1台あたりか1申請あたりか
- 申請の時期(着工前の申請が必要か、事後申請が可能か)と、今年度の受付期間
- 設置後の義務(掲示、運用基準の提出、稼働報告、設置年数の維持義務など)
特に4つ目は要注意です。多くの制度は着工前の交付決定を要件にしており、先に工事をしてしまうと対象外になります。見積もりを取る前に確認するのが順序として正しいやり方です。
カメラだけに頼らない――設計指針が示すもう一つの答え
ここまで費用と法令を整理してきましたが、防犯カメラは対策の一部にすぎません。設計指針も、カメラは見通しを補完する手段として位置づけています。
オートロック・防犯建物部品・宅配ボックスとの順序
限られた予算をどこから使うか。統計に沿って考えると、優先順位はこうなります。
- 照明の是正:数万円のLED交換で、既存カメラの実効性能が上がります。最も安く効きます。
- 退去時の鍵交換の徹底:合い鍵による侵入が279件に対しピッキングは1件です。鍵のグレードより、交換の運用が効きます。
- 玄関側の防犯カメラ:侵入口の46.0%が玄関である以上、優先度は高くなります。
- 窓の防犯フィルム・補助錠:侵入口の40.6%は窓、手段の19.9%はガラス破りです。1階住戸から優先します。
- オートロック・宅配ボックス:募集競争力にも効く投資です。オートロックのメリットとデメリットを整理した記事やアパートの宅配ボックス導入ガイドが判断材料になります。
- 集合ポストの防犯:郵便物の抜き取りは実害と不安の両方を生みます(集合ポストの防犯リスクと対策)。
入居者に伝える防犯の基本
アパートの空き巣2,175件のうち1,042件、47.9%が無施錠での侵入です。この一点だけでも入居者に伝わっていれば、被害はかなり減ります。入居時の書類や年1回のお知らせに、次の内容を短く入れてみてください。
- 短時間の外出でも施錠する。ゴミ出し・洗濯物を干す間も含む
- 2階以上でも、面格子のない窓や共用廊下側の小窓は施錠する
- 合い鍵を第三者に渡さない。紛失時はすぐに管理会社へ連絡する
- 不審者を見かけたら、直接声をかけずに管理会社または警察へ連絡する
設備投資より先に、この4行が届いているかどうか。ここを確かめるだけで、費用ゼロで打てる手が残っていることがわかります。
私たちが賃貸管理の現場で考えていること
防犯カメラのご相談をいただくとき、私たちが最初にお聞きするのは「何が起きたのですか」ということです。自転車が盗まれたのか、ゴミの分別違反が続いているのか、入居者から不安の声が出ているのか。原因によって、置くべき場所も台数も、そもそもカメラが答えかどうかも変わります。
台数を増やせば安心が増えるわけではありません。むしろ、映像を見る人が決まっていない、保存日数を誰も把握していない、掲示が剥がれたままになっている。そうした運用の穴のほうが、後から問題になります。設備は買った瞬間から劣化しますが、運用の設計は積み上がっていきます。
そして、防犯は入居者の生活の質そのものです。夜、共用廊下が明るいこと。ポストが荒らされていないこと。何かあったときに連絡できる相手がいること。この一つひとつが、退去を思いとどまらせ、次の入居者を呼びます。私たちが不動産管理を「物件の管理」ではなく「そこで暮らす人との関係の管理」と考えているのは、そのためです。短期の費用削減ではなく、長く住んでいただける建物にするための投資として、防犯設備を位置づけていただきたいと考えています。
まとめ|アパートの防犯カメラは「台数」ではなく「照度と運用」で決まる
アパートの防犯カメラについて、この記事で示した判断材料をまとめます。
- リスク:3階建以下の共同住宅の空き巣は10万世帯当たり18.2件。4階建以上の7.9件のおよそ2.3倍で、単独世帯30歳未満では35.1件に上ります。
- 向き:侵入口の46.0%は玄関、手段の47.9%は無施錠。合い鍵279件に対しピッキングは1件です。玄関側を撮り、施錠と鍵交換の運用を整えるのが先です。
- 費用:クラウド型の機器費は2台で93,500円、月額2,200円/台。工事費は公表価格がないため、6戸に2台なら5年総額は約38万〜86万円、1戸あたり月およそ1,053〜2,377円です。
- 設計:カメラは見通しを補完するもの。共用廊下20ルクス、駐輪場3ルクスという照度基準を満たしてから台数を考えます。
- 法令:防犯目的が明らかなら利用目的の通知・公表は不要。必要なのは掲示等による認識可能措置、保存期間の設定、安全管理措置です。
- 税務:10万円未満は全額経費、20万円未満は3年均等償却。令和8年度税制改正の大綱では少額減価償却資産の特例が40万円未満に引き上げられるとされています。
- 補助金:多くは地域団体や個人世帯向けです。賃貸オーナーが対象になるかは自治体ごとに分かれるため、着工前の照会が欠かせません。
防犯カメラの導入でお悩みの場合や、共用部の防犯設計・運用ルールの整備をご検討の場合は、INA&Associates株式会社までご相談ください。物件の状況を拝見したうえで、費用対効果の見える形でご提案します。
よくある質問(FAQ)
Q. アパートの防犯カメラは1台いくらが目安ですか?
公式価格で確認できるのは機器費だけです。クラウド録画型なら、屋外カメラ本体29,700円から、屋内カメラ本体50,600円、4ポートPoEハブ13,200円(いずれも税込)。月額は30日保存で1台2,200円です。設置工事費には公表価格がなく、個別見積りになります。公的な上限目安は、東京都の補助限度額である防犯カメラ1台あたり28万5千円(機器+工事込み)です。6戸に2台入れる場合の5年総額は、機器費のみなら約38万円、工事を上限額で置くと約86万円で、1戸あたり月およそ1,053〜2,377円が目安になります。
Q. 大家が共用廊下に防犯カメラを設置するのは違法ですか?
違法ではありません。設置状況から防犯目的が明らかな場合、個人情報保護法上の利用目的の通知・公表は不要とされています。必要なのは、入口などへの掲示によって撮影を認識できる状態にすること、保存期間を定めて不要になれば消去すること、映像を扱う者を限定するなどの安全管理措置を講じることです。
Q. 入居者が自分で玄関にカメラを設置してもよいですか?
貸主の承諾が前提です。専有部の内側やインターホン一体型であれば問題になりにくい一方、ドア外側に取り付けて共用廊下や他の住戸の玄関が継続的に映る形は、プライバシー侵害として撤去を求められるリスクがあります。ビス穴や配線跡は原状回復の対象になり得るため、設置前に条件を書面で確認してください。
Q. 防犯カメラの費用は一括で経費にできますか?
取得価額が10万円未満なら、その年分の必要経費に全額算入できます。10万円以上20万円未満は一括償却資産として3年間の均等償却、それ以上は青色申告を要件とする少額減価償却資産の特例(年間合計300万円が限度)か、耐用年数に応じた減価償却になります。工事費は原則として取得価額に含まれるため、本体だけで判定できない点にご注意ください。適用は個別事情によりますので、税理士にご確認ください。
引用・参考資料
- 警察庁「令和7年の犯罪情勢」(令和8年2月)
- 警察庁「令和6年の刑法犯に関する統計資料」(令和7年8月)
- 警察庁「住まいる防犯110番」侵入窃盗の発生状況
- 国土交通省・警察庁「防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針」
- 個人情報保護委員会 ガイドラインQ&A Q1-13(従来型防犯カメラ)
- 個人情報保護委員会「カメラに関するQ&A」
- 個人情報保護委員会「カメラと個人情報保護法(民間事業者向け)」(2023年12月)
- 東京都「地域の安全確保に向けた防犯設備区市町村補助金」
- 東京都「防犯設備維持管理経費補助事業」
- 「令和8年度東京都防犯機器等購入緊急補助事業」
- セーフィー株式会社 料金プラン
- Safieストア 全ての商品一覧(カメラ・周辺機器の税込価格)
- Safieストア「料金・利用開始までの流れ」
- 公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会 よくある質問(電力料金目安単価)
- 国税庁 タックスアンサーNo.2100「減価償却のあらまし」
- 国税庁 タックスアンサーNo.5408「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」
- 国税庁 耐用年数表(器具・備品)事務機器及び通信機器
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」
