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千歳烏山駅前広場南側地区再開発事業の概要と最新進捗

千歳烏山駅前広場南側地区の再開発事業概要と進捗状況、地域のランドマークとなる超高層複合ビルの計画を詳しく解説。

最終更新: 約14分で読めます

世田谷区ホームページより引用

千歳烏山駅南側の駅前広場周辺で、大規模な市街地再開発事業が計画されています。本事業では地上34階・地下2階、高さ約140メートルの超高層複合ビル建設を中心とした駅前再開発が予定されており、低層部に商業施設、高層部に住宅を配置する計画です。都市計画決定は2026年度、竣工は2034年度を目標としており、地域のランドマークとなる新施設の実現に向け準備が進んでいます。

再開発事業の正式名称と所在地・区域概要

本プロジェクトの正式名称は「千歳烏山駅前広場南側地区市街地再開発事業」です。計画地は東京都世田谷区南烏山五丁目、京王線「千歳烏山」駅南口の東側一帯で、東側を都市計画道路補助216号線(計画道路)、南西側を駅前通り、北側を現在計画中の駅前広場に囲まれたエリアに位置します。対象区域面積は約1.5ヘクタールに及び、駅前広場用地を含む駅南側区画全体が再開発の範囲となっています。

再開発の背景と目的

千歳烏山駅周辺では、京王線の連続立体交差化(笹塚駅~仙川駅間約7.2km)に伴い、駅前広場整備や都市計画道路(補助第216号線)の事業が進行中で、街の構造が大きく変わろうとしています。こうした動きを受け、当地権者らは平成27年(2015年)に「まちづくり勉強会」を発足し、令和2年(2020年)に「まちづくり準備会」へ移行、令和4年(2022年)12月には市街地再開発準備組合を設立して、本再開発事業の検討を本格化させました。再開発の目的は、老朽化した駅前市街地の刷新と公共空間の充実にあります。具体的には、安全に乗り換えできる駅前広場の新設、歩行者が歩きやすい動線確保のための建物セットバック、駅前における滞留空間や緑地の創出、防災性向上(耐震・不燃化建物と防災広場整備)などが掲げられています。これらにより、地域のにぎわい向上と安全・快適な駅前環境の実現を図る計画です。

事業主体と協力事業者

本事業は、地元権利者で構成する「千歳烏山駅前広場南側地区市街地再開発準備組合」が中心となり推進されています。将来的には都市再開発法に基づく第一種市街地再開発事業(組合施行)として正式に組合を設立し、事業施行者となる見込みです。事業協力者(デベロッパー)には大手不動産会社の三井不動産レジデンシャル株式会社および三井不動産株式会社が参画しており、コンサルタント業務は株式会社タカハ都市科学研究所が担当しています。官民連携のもと、地権者の合意形成や権利調整、行政手続きなどが進められています。

権利変換方式とは|再開発で「立ち退き」を強制されるのか

本事業が将来的に移行を目指す「第一種市街地再開発事業(組合施行)」は、都市再開発法に基づく「権利変換方式」を採用します。これは、従前の宅地・建物の所有権や借家権を、原則として等価で新しいビルの床(権利床)に置き換える仕組みで、権利者は再開発後もビルの一室・一区画の権利者として事業地内に残ることができます。権利変換を望まない場合は、組合設立や事業計画の認可公告後30日以内に金銭給付を受けて権利を手放すか、地区外への移転を選ぶことも可能です。強制的に一方的な立ち退きを迫る制度ではありませんが、権利床の面積・位置は従前資産の評価額に基づいて決まるため、権利者ごとに条件は異なります。

千歳烏山の当地区については、世田谷区と再開発準備組合が2025年6月に開催した説明会で、権利者数は約90名、うち約7割が都市計画案に同意していることが示されています。同説明会で準備組合は「権利変換という仕組みは、営業できなくなる・住むところがなくなるということがないように進めていく」「準備組合及びその関係者が地権者の方に対して立退きを迫る趣旨の発言をすることはない」と回答しています。なお、建物や土地の借家人・借地人に対する法に基づく正式な説明会は、都市計画決定・組合設立後に改めて開催される予定であり、2025年6月時点ではまだ実施されていません。

計画建物の規模・構造と施設構成

世田谷区ホームページより引用

計画中の再開発ビルは、駅前広場南側エリアに建設される超高層複合施設です。その主な計画概要は以下の通りです。

  • 建物規模:地上34階・地下2階、高さ約140m

  • 用途構成:共同住宅(高層部:4階~34階)、商業施設(低層部:地下1階~地上3階)を中心に、駐車場・機械室(地下2階~地上3階)など

  • 延床面積:約78,700㎡(2023年時点の計画案)

  • 敷地面積:約1.5ha(駅前広場用地等含む全区域)

低層部には駅利用者や地域住民の利便性を高める商業施設が入る計画で、物販店や飲食店など多様なテナント誘致が想定されています。住宅部は数百戸規模のタワーマンションとなる見込みで、最新の免震構造を採用し安全性にも配慮した設計となります。地下および低層部には来街者・居住者向けの駐車場も整備され、商業利用約120台、住宅利用約200台の収容を計画しています。なお駅前広場が再開発区域内に含まれているため、建物は敷地北側に寄せて配置される見通しで、広場部分と一体的な空間デザインが図られています。

住宅部は分譲・賃貸どちらになる?価格帯は?

計画中の住宅部(高層部4〜34階)について、分譲・賃貸いずれの形態になるか、また価格帯やマンションブランド名について、2026年9月現在、世田谷区・再開発準備組合・事業協力者(三井不動産、三井不動産レジデンシャル)のいずれからも公式な発表は確認されていません。本事業は現時点で都市計画決定前の準備組合段階にあり、権利変換計画の策定や組合設立認可を経てから具体的な住宅販売・賃貸の方針が固まる見込みです。分譲時期や価格帯に関する情報は、今後の世田谷区・準備組合の公式発表を確認してください。

駅前広場・公開空地の整備計画

本再開発では建物と併せて、周辺の公共空間整備も大きな柱となっています。計画区域の北側に、新設される駅前広場と一体化した「北側広場」を配置し、低層部商業テナントのオープンカフェやマルシェ(市場)等のイベントが開催できるにぎわい空間とする方針です。一方、南側には緑豊かで落ち着きのある「南側広場」を整備し、歩行者が休憩できる憩いの場を提供するとともに、災害時には一時避難や救護に活用できる防災広場として機能させる計画です。建物周辺の歩道も拡幅し、安全で快適な歩行者動線を確保します。これら広場・公開空地の整備により、駅北側に比べ広場が少なかった南口エリアに新たな滞留スペースを創出し、地域の回遊性と魅力向上が図られます。

京王線の駅ビル・連続立体交差事業との関係

「千歳烏山 駅ビル」という語で検索して来られた方向けに補足します。千歳烏山駅では、京王電鉄が事業主体となる「京王線連続立体交差事業」(笹塚駅〜仙川駅間、約7.2km)が別途進行しており、これにより駅と線路が高架化されます。一方、本稿で扱う「千歳烏山駅前広場南側地区市街地再開発事業」は、地元権利者が中心となって進める別事業であり、京王電鉄は本再開発の事業協力者としては参画していません。世田谷区・再開発準備組合が2025年6月に開催した説明会のQ&Aでは、「(再開発ビルの)商業施設と高架化後の駅舎を上階で結ぶ連絡通路はあるか」という質問に対し、準備組合は「鉄道駅舎と上階で連絡通路をつなげる計画はありません」と回答しています。既存の京王線千歳烏山駅(駅ビル)と再開発ビルは、地上部の駅前広場を介して接続される計画である点にご留意ください。

工期と現在の進捗状況

現在、本再開発事業は都市計画決定に向けた計画段階にあります。2025年1月には世田谷区と再開発準備組合の共催で地域住民向けの報告会が開催され、基本計画案や今後のスケジュールについて説明が行われました。事業スケジュール(目安)としては、2026年度に都市計画決定を目指し、その後正式な再開発組合設立認可や権利変換計画の策定を経て着工へ進み、2034年度の建物完成・供用開始を目標としています。現在は行政との協議や都市計画素案の作成、権利者間の合意形成など準備作業が進行中です。また、再開発準備組合は地域交流拠点「ちとからプラザ」を設置して情報発信や意見交換を継続しており、地元商店街のイベントへ出展するなど周知活動にも取り組んでいます。

「ちとからプラザ」とは|再開発の情報発信拠点

再開発準備組合が設置する地域交流拠点「ちとからプラザ」は、世田谷区南烏山五丁目11番6号に所在し、2025年5月17日にまちびらきイベントが開催され開設されました。再開発準備組合の事務所に併設されたオープンスペースで、事務局スタッフが常駐し、パネルや模型を用いて再開発事業の検討状況や千歳烏山駅周辺のまちづくりについて継続的に情報発信しています。誰でも気軽に立ち寄ることができ、地元商店街のイベントへの出展など周知活動の拠点にもなっています。

特徴的な設計・展望とテナント計画

本計画の建築デザインは、駅前という立地にふさわしく低層部と高層部で分節された構成となっており、大規模ながら周囲の景観に配慮したものとなる見込みです。低層部外装は歩行者目線で親しみやすいデザインとし、ガラス面の多い開放的なファサードや緑化テラスの導入なども検討されています(現段階のイメージパースより)。高層部は円滑な日照・通風に配慮しつつ、遠方からも視認性の高いランドマークとなるよう計画されています。構造面では免震技術の採用により超高層住宅としての安全性を確保し、非常用発電設備や防災備蓄倉庫の設置など災害対策も盛り込まれる予定です。テナント計画について具体的な発表はまだありませんが、駅前立地を活かして食料品スーパーや飲食店、サービス業態など地域の需要に合致した店舗の誘致が期待されます。事業協力者である三井不動産グループの豊富な実績を背景に、商業環境の魅力向上と利便性の高い施設構成が図られる見通しです。

取引価格は実際にどう動いているか

再開発への期待が実際の取引価格にどこまで表れているかを、国土交通省が公表している不動産取引価格データで確認しました。計画地がある世田谷区南烏山の中古マンションの取引(北烏山は含みません)を、世田谷区全体と並べたものが次の表です。

取引件数当エリアの㎡単価(中央値)世田谷区全体の㎡単価(中央値)
2023年95件77.8万円96.8万円
2024年62件89.0万円100.0万円
2025年95件77.8万円103.7万円
2026年(第1四半期のみ)16件80.7万円110.0万円

2023年から2025年にかけて、世田谷区全体が+7.1%上昇したのに対し、南烏山は±0.0%と横ばいでした。もともと区平均を2割ほど下回る水準で、その差はむしろ広がっています。

実額でみると、2025年以降の取引は中央値3,600万円・専有面積55㎡で、取引のおおむね半数が1,900万円から6,400万円の範囲に収まっています。55㎡で3,600万円は、世田谷区のなかでは手の届きやすい価格帯です。

出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(https://www.reinfolib.mlit.go.jp/)「不動産取引価格情報」(国土交通省)をもとにINA&Associates株式会社作成。2026年9月時点で取得できたデータによります。直近の四半期は後から取引が追加されるため暫定値です。

INAの見方(2026年9月時点)

ここからは公表資料ではなく、当社の見立てです。

千歳烏山の再開発は、まだ取引価格に効いていません。世田谷区全体が上昇するなかで横ばいにとどまり、区平均との差は広がっています。

理由は事業の段階にあると見ています。建物が形になっていない時点では、実需の買い手は「いまの街」を見て価格を判断します。京王線の連続立体交差事業も並行しており、完成までにはまだ時間があります。期待が価格に乗るのは、街の姿が目に見えて変わり始めてからです。

一方で、55㎡・3,600万円という水準は世田谷区内では割安な部類です。新宿へ20分という立地でこの価格帯が残っていること自体が、再開発前のエリアの特徴だと言えます。

投資家としての判断軸

  • 再開発の期待を価格に織り込まないで採算を見る。いまの賃料水準で成立する物件だけが検討対象になります。
  • 区平均との差が縮まり始めた時点が、市場が織り込みを開始した合図になります。取引価格データは四半期ごとに更新されるため、同じ手順で追えます。
  • 竣工までの保有期間を許容できるかが分かれ目です。効果が価格に表れるまでには数年かかる前提で考えるべきです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 千歳烏山駅前広場南側地区の再開発はいつ完成しますか?

A. 世田谷区・再開発準備組合が示すスケジュール(目安)では、2026年度に都市計画決定を行い、その後組合設立認可・権利変換計画の策定を経て着工し、2034年度の建物完成・供用開始を目標としています。ただし現時点では都市計画決定前の準備段階であり、今後の手続き状況により変動する可能性があります。

Q2. 再開発で立ち退きを迫られますか?

A. 本事業が予定する権利変換方式では、従前の権利者は原則として新しいビルの床(権利床)に等価で権利を置き換え、事業地内に残ることができます。金銭給付を受けて権利を手放す・地区外へ移転するという選択も可能で、一方的な強制立ち退きではありません。借家人・借地人への正式な説明会は、都市計画決定・組合設立後に改めて開催される予定です。

Q3. 三井不動産はどのような役割を担っていますか?

A. 三井不動産株式会社および三井不動産レジデンシャル株式会社は、再開発準備組合による公募(コンペ)を経て事業協力者(デベロッパー)に選定されました。地権者の合意形成や事業計画づくりを、コンサルタントの株式会社タカハ都市科学研究所とともに支援しています。

Q4. 既存の京王線千歳烏山駅(駅ビル)とは別の計画ですか?

A. はい、別の計画です。京王電鉄が進める「京王線連続立体交差事業」による駅の高架化と、地元権利者が中心となって進める本再開発事業は別事業であり、両者を直結する連絡通路の計画も現時点ではありません。

今後、本再開発事業は都市計画の決定・事業認可を経て詳細計画の策定や権利変換手続きへと進み、実現段階へ移行していきます。千歳烏山駅周辺における最大規模の再開発プロジェクトとして、完成後は地域の暮らしとビジネス環境に大きなインパクトを与えることが期待されています。地元関係者や事業者からも注目が集まっており、今後公表される詳細設計やテナント情報、工事着手の動向に引き続き注目が寄せられます。今回の再開発によって千歳烏山駅南側エリアは大きく様変わりし、にぎわいと利便性の向上した新たな駅前空間へと生まれ変わる見通しです。

Daisuke Inazawa, President & CEO of INA&Associates Inc.

著者

代表取締役社長 / CEOINA&Associates株式会社

INA&Associates株式会社 代表取締役社長。首都圏・近畿圏を中心に不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントを統括。収益不動産投資戦略と超富裕層向け不動産コンサルティングを専門領域とする。

稲澤 大輔(いなざわ・だいすけ)は、INA&Associates株式会社の代表取締役社長(CEO)。大阪本店・東京営業所を拠点に、首都圏・近畿圏における不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントの三事業を統括する。

専門領域は、収益不動産の投資戦略立案、賃貸経営の収支最適化、超富裕層(UHNWI)・機関投資家向け不動産コンサルティング、およびクロスボーダー不動産投資。国内外の投資家に対し、データと長期視点に基づくアドバイザリーを提供している。

「企業の最も重要な資産は人財である」を経営理念に掲げ、人財投資カンパニーとして持続可能な企業価値の創造に取り組む。経営者として、変化の時代におけるリーダーシップのあり方と組織文化についても積極的に発信を続けている。

合格・取得資格は11種:宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、管理業務主任者、賃貸不動産経営管理士、行政書士、個人情報保護士、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者。

  • 宅地建物取引士
  • 公認不動産コンサルティングマスター
  • マンション管理士
  • 管理業務主任者
  • 賃貸不動産経営管理士
  • 行政書士
  • 個人情報保護士
  • 甲種防火管理者
  • 競売不動産取扱主任者
  • マンション維持修繕技術者
  • 貸金業務取扱主任者