企業が持続的に成長し高い業績を維持していくためには、優れた経営戦略を立案するだけでは不十分です。それを実行に移す「人財」の戦略、すなわち人財戦略と経営戦略とをいかに連動させるかが極めて重要です。どんなに立派なビジネスモデルや計画を描いても、それを担い実現する人財がいなければ絵に描いた餅に終わってしまいます。ここでは、人財戦略と企業成長との関係について、なぜ密接に結びついているのか、そのポイントを探っていきます。
なぜ経営戦略と人財戦略の連動が企業成長に不可欠なのか?
経営戦略と人財戦略が一体となって機能している企業ほど、持続的な成長を実現しています。両者の整合性こそが企業価値向上の原動力です。
経済産業省の「人財版伊藤レポート」においても、経営陣が経営戦略と連動した人財戦略を策定・実行する必要性が強調されています。企業はそれぞれ事業内容や取り巻く環境が異なりますが、持続的成長を達成している企業に共通するのは、事業戦略と人財マネジメントが一体となって機能している点にあります。
具体的には、まず経営戦略に沿った人財戦略の策定が出発点となります。経営目標を達成するために必要なスキルや人員規模は何か、将来の事業ビジョンに見合う組織体制はどうあるべきか、といった観点から人財計画を立てます。人財戦略を自社の経営戦略に結び付けて策定・実施することが、持続的な企業価値向上に直結するのです。
また、この連動を実効性あるものにするには、経営トップの関与とコミットメントが欠かせません。人財戦略を人事部門任せにせず、経営陣自らが主導して人財マネジメントの舵取りを行う必要があります。将来必要となる人財像と現在の人的リソースとのギャップ(As isとTo beの差)を定量的に把握し、経営課題としてモニタリングする仕組みを導入することも有効です。トップマネジメントが積極的に人財戦略に関与する企業は、環境変化に対して迅速に人財面の手を打てるため、結果的に成長スピードを維持・加速できます。
人財戦略が企業成長を後押しした具体事例とは?
経営陣が主導する従業員参加型の施策は、社員のエンゲージメント向上と新規事業創出の両面で成果を生みます。
たとえば株式会社サイバーエージェントでは、若手から管理職まで役職や部署を超えて経営課題を討議する社内会議を2006年に導入しました。年に1〜2度、選抜された社員たちが合宿形式でチームを組み、新規事業の提案や会社の課題解決策を議論します。経営陣もその成果を真摯に受け止め実行に移すことで、社員のモチベーションとエンゲージメントが大きく向上しました。この取り組みから新規事業が次々と生まれ、売上増加といった具体的成果に結び付いています。
また、ソニーグループ株式会社では、多様な事業を展開するグループ各社にそれぞれCHRO(最高人事責任者)を配置し、各事業の人事施策をリードさせています。同時に、グループ全体の求心力として共通のパーパス(存在意義)を掲げ、社員のエンゲージメント向上を経営の重要指標に据えています。事業戦略の異なる各部門を共通の理念と戦略的人財マネジメントで束ねることで、巨大な組織でも一体感を持って成長に向かう体制を築いています。
以上の事例から明らかなように、人財戦略が企業成長に与える影響は極めて大きいのです。経営戦略と人財戦略が車の両輪のように噛み合えば、組織は戦略実現に必要な人財を適切に確保・育成でき、高い目標に向けて組織全体が推進力を持ちます。
人財戦略を経営に組み込むために何をすべきか?
経営者にとって、自社のビジョンを実現するためにどのような人財を、どう育成し、どう配置するかを考えることは、事業計画を練るのと同等かそれ以上に重要です。
人財戦略と企業成長の関係を正しく理解し、経営トップ自らが人的資本経営にコミットすることで、企業は持続的な成長軌道に乗ることができます。人財版伊藤レポートの提言にもある通り、人財戦略を経営戦略と車輪の両輪として位置付け、人を活かす経営を実践することが、これからの企業に求められる成長の条件なのです。
社員一人ひとりの力を結集し、戦略と人財が融合した時、企業は真の意味で強くしなやかに成長していくことでしょう。人財こそが企業価値の根幹であるという認識を、改めて経営の中心に据えることが大切です。
よくある質問(FAQ)
人財戦略と人事戦略の違いは何ですか?
人事戦略は採用・配置・評価といった管理業務が中心ですが、人財戦略は経営戦略と連動し、企業価値向上を目的とした人的資本の活用戦略です。より経営視点に立ったアプローチといえます。
中小企業でも人財戦略は必要ですか?
はい、むしろ中小企業こそ重要です。限られた人的リソースを最大限に活かすために、経営方針と人財の育成・配置を一体的に考えることが成長のカギとなります。
人財戦略を立てる際のステップは?
まず経営ビジョンから必要な人財像を明確化し、現状とのギャップを把握します。次に採用・育成・配置の計画を策定し、経営トップが主導して定期的にモニタリング・改善を行います。
人財戦略の成果はどう測定すればよいですか?
従業員エンゲージメントスコア、離職率、社内異動率、人材育成投資額、新規事業提案数など、定量的な指標でモニタリングすることが推奨されます。