組織にとって本当に財産になるのは、すべてが100点の普通の人だけではありません。弱点はあるけれど、ある領域で120点を出せる尖った人財も、大きな財産です。
もちろん、弱点を放置してよいという意味ではありません。大切なのは、弱点を消して平均化することではなく、その人の強みが生きる場所を見つけることです。私は、人財経営の本質はそこにあると考えています。
この記事のポイント
- 100点の普通は安定を生みますが、120点の尖りは組織に新しい価値を生みます。
- 尖った人財の弱点は、本人の自覚と周囲の設計があれば、組織のリスクではなく個性になります。
- 弱点を消す採用より、強みがどこで生きるかを見極める採用が重要です。
- INAの人財経営では、平均点を求めるよりも、一人ひとりの強みが事業になる場所をつくることを重視します。
なぜ100点の普通だけでは組織は強くならないのか?
100点の普通は大切です。約束を守り、安定して仕事を進め、周囲に安心を与える人は、組織の土台になります。
しかし、組織が前に進むときには、平均点だけでは足りない場面があります。誰も見ていない課題に気づく人。新しい顧客接点をつくる人。難しい交渉を引き受ける人。数字では測りにくい違和感を拾える人。こうした人が、次の価値を生みます。
その人たちは、必ずしも全科目で100点ではありません。細かい整理が苦手かもしれません。慎重さに欠けるかもしれません。人よりこだわりが強く、扱いにくく見えることもあります。
けれど、その尖りがあるからこそ、普通では届かないところへ届くことがあります。
会社は、全員を同じ形に整える場所ではありません。人の違いを、事業の力に変える場所です。だから、弱点のない人だけを集めるより、強みがはっきりした人をどう活かすかを考える必要があります。
人財投資カンパニーの挑戦でも書いたように、INAにとって人は最大の資産です。資産であるなら、同じ形に揃えるのではなく、それぞれの価値が最も生きる場所を探すべきです。
尖った弱点は、本当に弱点なのか?
尖った弱点は、見方を変えると強みの裏側であることがあります。スピードが速い人は、細部を見落とすことがあります。深く考える人は、判断に時間がかかることがあります。
もちろん、弱点を美化してはいけません。お客様に迷惑をかける。約束を守らない。周囲への敬意を欠く。そうしたものは、個性ではなく改善すべき課題です。
ただ、すべての弱点を同じように消そうとすると、その人の強みまで削ってしまうことがあります。
たとえば、発想力のある人に対して、ミスを恐れて何度も確認する働き方だけを求めると、動きが止まります。慎重で品質に強い人に対して、常に即断即決だけを求めると、良さが消えます。
Gallupは、強みに基づく組織づくりでは弱点を無視するのではなく、強みとの関係で弱点を理解し、管理することが大切だと説明しています。これはとても現実的な考え方です。
弱点は、消すものではなく、扱うものです。
本人が自分の弱点を知り、責任を持つ。周囲がその人の強みを理解し、役割を設計する。この両方があって初めて、尖りは財産になります。
120点の強みを持つ人財を活かす3つの条件
尖った人財を活かすには、本人の努力だけでは足りません。組織側にも、強みを受け止める設計が必要です。
第一に、強みを言語化することです。「あの人はすごい」だけでは、組織では活かせません。何がすごいのか。提案力なのか、行動量なのか、分析力なのか、関係構築なのか。強みを言葉にすることで、任せる仕事が見えてきます。
第二に、弱点を責める前に、影響範囲を決めることです。弱点があること自体より、その弱点が誰にどんな影響を与えているかが大切です。影響が小さいなら補完できます。影響が大きいなら、本人と一緒に対策を考える必要があります。
第三に、補い合うチームをつくることです。尖った人財を一人で完結させようとすると、弱点が目立ちます。しかし、整理が得意な人、関係調整が得意な人、実行が得意な人が組むと、尖りは成果に変わります。
Gallupの強み研究でも、強みを日々の仕事に結びつける組織では、エンゲージメントや成果に良い影響があるとされています。数字の受け止めには注意が必要ですが、少なくとも「弱点を直すだけの育成」より、「強みを活かす育成」に意味があることは、現場感覚としてもよくわかります。
人は、自分の強みで誰かの役に立てたときに、仕事への誇りを持ちます。その誇りが、責任感を育てます。
INAが大切にしたい、尖りを財産に変える人財経営
INAが目指す人財経営は、全員を同じ型にはめることではありません。一人ひとりの強みが、事業の中で価値になる場所をつくることです。
もちろん、会社には最低限の基準があります。誠実であること。約束を守ること。お客様や仲間に敬意を持つこと。弱点があっても、この土台を外してはいけません。
そのうえで、私は「少し扱いにくいけれど、強みがある人」を簡単に手放したくありません。そういう人の中に、組織を次の段階へ進める力が眠っていることがあるからです。
たとえば、不動産の現場では、細かい事務処理が得意な人も必要です。一方で、オーナーの本音を引き出す人、入居者の不安を察する人、難しい交渉で空気を変える人も必要です。どれか一つだけで会社は成り立ちません。
だから、採用や育成では「欠点が少ないか」だけを見てはいけないと思っています。それよりも、「この人の120点はどこか」「その強みは誰の役に立つか」「弱点はチームで補えるか」を見たいのです。
中小企業の右腕人財を見極める5つの基準でも触れたように、組織に必要なのは単なる万能型ではありません。目的地に向かって、自分の強みで責任を果たせる人です。
尖った人財を活かすには、経営側にも覚悟が必要です。合わない仕事を無理に任せない。強みが生きる役割を探す。弱点を本人任せにせず、仕組みで支える。ここまでして初めて、人財投資と言えるのだと思います。
まとめ|弱点を消すより、強みが生きる場所をつくる
100点の普通は、組織に安定をもたらします。それは大切な価値です。
しかし、120点の尖りは、組織に新しい景色を見せてくれます。今まで届かなかったお客様に届く。見えていなかった課題に気づく。止まっていた仕事を前に進める。そうした力は、平均点だけでは生まれにくいものです。
弱点は、隠すものではありません。本人が自覚し、責任を持ち、周囲と補い合うものです。そうできるなら、弱点はその人を否定する理由ではなく、強みを正しく扱うための情報になります。
私は、会社を人の可能性を削る場所にしたくありません。人の強みが事業になり、事業が社会に価値を届ける場所にしたいと考えています。
100点の普通より、120点の尖った弱点を持つ人財。そうした人を財産に変えられる会社でありたいです。
誠実さは熟成する理由でも書いたように、スキルは変わります。しかし、誠実さと強みを活かす姿勢は積み重なります。人財経営とは、その積み重ねを信じることです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 尖った人財とはどのような人ですか?
A. すべてが平均的に高い人ではなく、特定の領域で大きな強みを発揮できる人です。弱点もありますが、強みが明確です。
Q2. 弱点がある人を採用するのは危険ではありませんか?
A. 弱点の内容によります。誠実さや約束を守る姿勢を欠く弱点は問題ですが、役割設計で補える弱点なら財産になります。
Q3. 強みを活かす経営で大切なことは何ですか?
A. 強みを言語化し、弱点の影響範囲を見極め、補い合うチームをつくることです。本人任せにしない設計が必要です。
Q4. INAの人財経営では何を重視しますか?
A. 平均点だけで人を見ず、その人の強みが誰の役に立つかを見ます。弱点を管理しながら、強みが事業になる場所をつくります。