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賃貸契約書がない場合のリスクとトラブル対処法|オーナーが知るべき契約書の重要性

賃貸契約書なしでも口約束で賃貸借契約は成立しますが、リスクは大きい。修繕義務・禁止事項・解約条件など契約書に盛り込むべき項目とオーナー目線の活用法を詳しく解説します。

最終更新: 約6分で読めます

賃貸契約書は、物件を貸し借りする際の取引証拠であり、トラブル発生時の唯一の判断基準です。「口約束でも契約は成立する」とはいえ、契約書がない状態での賃貸経営は法的リスクを大きく高めます。

賃貸契約書はなぜトラブル回避に重要なのか?

賃貸契約書は物件の詳細・家賃・入居ルール・禁止事項・修繕義務の範囲を明文化したものです。署名捺印によって契約が成立し、その後に発生した問題はすべて契約書の内容に基づいて判断されます。重要事項説明書と契約書が相違する場合は契約書が優先されます。

使用賃貸契約との違い

家賃を受け取る「賃貸借契約」に対し、無償で物件を貸す契約を「使用賃貸契約」といいます。使用賃貸契約は口約束だけでも成立しますが、書面がないと問題解決の基準が曖昧になります。

賃貸契約書なしでも入居は可能か?

民法上、賃貸借契約は口頭でも成立します。ただし書面がない場合は証明力がなく、家賃額・退去条件・修繕負担などをめぐる争いに発展しやすいです。オーナーにとっては特約で有利な条件を設定できる機会を失うことにもなります。

賃貸契約書に盛り込むべき重要項目

賃貸契約書の基本項目は以下のとおりです。

  • 当事者情報・物件情報・使用目的
  • 契約期間と更新(一般的に2年ごと)
  • 賃料・賃料改訂条件
  • 保証金・遅延損害金
  • 解約予告期間(通常1〜2ヶ月前)
  • 禁止行為・原状回復義務

オーナーに有利な特約の活用

特約を設けることで民法の任意規定を修正できます。例えばエアコンなどの設備修繕を借主負担とする特約は有効です。ただし消費者契約法により一方的に不利な特約は無効とされるため、内容は慎重に設定する必要があります。

近年増えている禁止事項の例

民泊の無断営業・共用部への私物放置・ベランダでの喫煙など、新たなトラブルに対応した条項を明文化しておくことが重要です。

修繕費の負担範囲を明確に定める

民法606条・608条ではオーナーに修繕義務がありますが、任意規定のため特約で変更可能です。ただし雨漏りなど大規模修繕の入居者負担は認められません。修繕範囲を可能な限り具体的に記載することが、長期的なトラブル防止につながります。

賃貸経営の実務管理については、入居前チェック完全ガイドも参考にしてください。

賃貸契約書がない場合、原状回復費用は誰が負担するのか

結論として、契約書の有無にかかわらず、原状回復の基本ルールは民法で決まっています。民法第621条は、賃借人は賃借物を受け取った後に生じた損傷について原状回復義務を負うと定める一方、「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化」は原状回復義務の対象から除くと明記しています。日焼けによるクロスの変色や家具の設置跡、設備の経年劣化などは、契約書があってもなくても、原則として貸主(オーナー)側の負担です。

契約書がない場合にリスクが高まるのは、原状回復のルールそのものではなく、「入居時にどういう状態だったか」を証明する手段です。契約書や入居時のチェックリスト、写真記録がなければ、退去時にどこまでが入居後に生じた損傷なのかを客観的に示せず、貸主・借主どちらの言い分が通るかで水掛け論になりやすくなります。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」も、入居時の物件状況を記録しておくことをトラブル防止の基本として挙げています。

また、口頭契約であっても消費者契約法や民法の強行規定は適用されるため、契約書がないからといって借主に一方的に不利な扱いになるわけではありません。むしろ書面の特約が存在しない分、原状回復費用は民法の原則(通常損耗・経年変化は貸主負担)がそのまま適用されると考えるのが実務上の基本です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 口頭の賃貸契約は法的に有効ですか?

有効です。ただし証明が困難なため、必ず書面で契約書を作成することを推奨します。

Q2. 賃貸契約書と重要事項説明書はどちらが優先されますか?

内容が相違する場合は賃貸契約書が優先されます。重要事項説明書への署名だけでは契約は成立しません。

Q3. 特約で全ての修繕費を入居者に負担させられますか?

できません。消費者契約法により一方的に不利な特約は無効です。雨漏りなど大規模な修繕はオーナー負担が原則です。

Q4. 契約更新時は新たな契約書を作成する必要がありますか?

はい。一般的に更新時は新たな賃貸契約書を作成します。内容の見直しも可能です。

Q6. 契約書をもらっていない・なくした場合はどうすればよいですか?

契約時に不動産会社(宅建業者)が仲介していた場合は、その会社にまず相談してください。宅地建物取引業法第37条は、宅建業者が媒介して賃貸借契約が成立したときは、契約の当事者に遅滞なく契約内容を記載した書面を交付するよう義務付けています。書面を受け取っていなければ本来は交付されているはずのものですので、控えの写しを発行してもらえないか確認しましょう。契約書そのものの再発行(署名捺印のやり直し)は難しいことが多いですが、内容が分かる写しを入手できれば契約条件を確認する目的は果たせます。仲介会社を介さない個人間契約で書面自体が存在しない場合は、家賃の振込明細や物件のやり取りの記録など、契約の存在を示せる資料を残しておくことが次善の策になります。

Q5. 賃料改訂はどちらから申し出ができますか?

貸主・借主の両方に賃料交渉を申し出る権利があります。ただし一方的な値上げは入居者との信頼関係に影響するため丁寧な説明が必要です。

Daisuke Inazawa, President & CEO of INA&Associates Inc.

著者

代表取締役社長 / CEO — INA&Associates株式会社

INA&Associates株式会社 代表取締役社長。首都圏・近畿圏を中心に不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントを統括。収益不動産投資戦略と超富裕層向け不動産コンサルティングを専門領域とする。

稲澤 大輔(いなざわ・だいすけ)は、INA&Associates株式会社の代表取締役社長(CEO)。大阪本店・東京営業所を拠点に、首都圏・近畿圏における不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントの三事業を統括する。

専門領域は、収益不動産の投資戦略立案、賃貸経営の収支最適化、超富裕層(UHNWI)・機関投資家向け不動産コンサルティング、およびクロスボーダー不動産投資。国内外の投資家に対し、データと長期視点に基づくアドバイザリーを提供している。

「企業の最も重要な資産は人財である」を経営理念に掲げ、人財投資カンパニーとして持続可能な企業価値の創造に取り組む。経営者として、変化の時代におけるリーダーシップのあり方と組織文化についても積極的に発信を続けている。

合格・取得資格は11種:宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、管理業務主任者、賃貸不動産経営管理士、行政書士、個人情報保護士、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者。

  • 宅地建物取引士
  • 公認不動産コンサルティングマスター
  • マンション管理士
  • 管理業務主任者
  • 賃貸不動産経営管理士
  • 行政書士
  • 個人情報保護士
  • 甲種防火管理者
  • 競売不動産取扱主任者
  • マンション維持修繕技術者
  • 貸金業務取扱主任者