世の中には建築基準法や条例に反して建てられている物件が存在します。投資家・オーナーにとって、容積率オーバー物件を誤って取得するリスクと、その売却戦略を正確に理解しておくことは重要な法務リスク管理です。今回は容積率がオーバーしている物件の種類・売れにくい理由・売却のポイントを投資家視点で解説します。
容積率オーバー物件とは何か?2つの種類を理解する
容積率オーバー物件は主に「違反建築物」と「既存不適格物件」の2種類に分類されます。投資判断において、この区別は極めて重要です。
違反建築物とは?
違反建築物とは、建築基準法や条例に定められた条件に違反して建設された建築物のことです。容積率オーバーのほか、確認申請と異なる内容での建設、許可外用途での使用なども該当します。申請のない増築・改装によって意図せず違反状態になるケースも多く、発覚した場合は罰則の対象となります。
既存不適格物件とは?
既存不適格物件とは、建築当初は建築基準法に適合していたにも関わらず、その後の法改正によって現行基準に適合しなくなった物件のことです。違反建築物とは異なり行政から是正命令を受けることはありませんが、延床面積を増やすリフォームや建て替えの際には現行基準に合わせる必要があります。
なぜ容積率オーバー物件は売却・融資調達が難しいのか?
容積率オーバー物件の流動性が低い理由は、不動産売買の仕組みと金融機関の審査基準に起因しています。
住宅ローン・融資が組めない
違反建築物の場合、住宅ローンの利用は実質不可能で、取引は現金のみとなります。既存不適格物件でも担保評価額が低く抑えられるため、融資調達が困難です。金融機関は抵当権設定の際に担保価値を重視するため、流動性・換金性が低い物件への融資を敬遠します。
建て替え時に同規模を再建できない
既存不適格物件は現状のまま使用し続けることは可能ですが、建て替えの際には現行の法令に従わなければなりません。その結果、以前と同規模の建物を建設することは難しく、物件価値の実質的な低下につながります。
容積率オーバー物件を売却するための4つのポイントとは?
容積率オーバーでも売却が全く不可能なわけではありません。以下の4つのアプローチを状況に応じて検討してください。
1. 再測量による容積率の確認
まず改めて容積率を測り直すことを検討してください。以前の測量精度が不十分だったために容積率が適合しているケースもあります。最初から違反と決めつけず、専門家による再測量を実施することが重要です。
2. 広さをメリットとしてアピール
既存不適格物件は是正命令の対象外であるため、消防法に反しない限りそのまま居住可能です。本来の建設基準より広い床面積を持つことをメリットとして訴求し、広さを重視する買い手へアプローチする戦略があります。
3. 減築リフォームで適法化
容積率は敷地面積に対する延床面積の割合であるため、延床面積を減らす「減築リフォーム」によって既存不適格状態を解消できる場合があります。適法化後は住宅ローン融資の対象となり、売却先が大幅に広がります。
4. 古家付き土地として売却
物件価値をゼロとして古家付き土地として売却する方法です。解体後の土地活用を前提とする買い手(投資家・買取業者など)にとっては魅力的な条件となります。ただし、空き家状態であることが条件です。
FAQ:容積率オーバー物件に関するよくある質問
Q. 容積率オーバーの物件はそのまま住んでいても問題ありませんか?
既存不適格物件であれば行政からの是正命令はなく、そのまま使用し続けることは可能です。ただし、増築・改装・建て替えの際は現行法令への適合が求められます。
Q. 違反建築物と既存不適格物件はどう違いますか?
違反建築物は建設当初から法令に違反している建物で、罰則の対象となります。既存不適格物件は建設時は適法でしたが法改正により現行基準を満たさなくなった物件で、行政処分の対象にはなりません。
Q. 容積率オーバーの物件は住宅ローンが全く使えませんか?
違反建築物は住宅ローン不可が一般的です。既存不適格物件は金融機関によって異なり、担保評価が低くなるため一般物件より融資条件が厳しくなります。
Q. 減築リフォームの費用はどれくらいかかりますか?
減築工事の費用は規模・構造・工法によって大きく異なります。一般的に増築より費用がかかるケースもあるため、売却益と改修費用のバランスを専門家と試算することをお勧めします。
Q. 古家付き土地として売却する場合の注意点は?
物件が空き家状態であることが条件です。また解体費用を売却価格に反映させる交渉が必要になるため、相場より低い価格設定となることを前提に計画を立ててください。