大阪でアパート1棟を買うべきか迷っている方に向けて、2026年時点の公的データだけで収支を組み直した記事です。結論を先に書きます。大阪市内の木造アパートは表面利回り7%台で買えても、空室・経費・返済・税金を引いたあとの手残りは年20万円前後にしかなりません。投資家が求める期待利回りは大阪で4.2%、大阪府の賃貸ストックの空室率は約20%です。この2つを入れずに組んだ収支は、ほぼ確実に楽観側へ振れます。
この記事では、日本不動産研究所・大阪府不動産鑑定士協会・総務省・国土交通省・国税庁・大阪府・大阪市の一次データだけを使い、大阪の利回り相場、24区の空き家率、そして購入諸費用から税引後キャッシュフローまでを実額で積み上げます。数字にはすべて出典リンクを付けました。ご自身の物件条件に置き換えて検算できる形にしています。
この記事のポイント
- 2026年4月時点の大阪の賃貸住宅一棟の期待利回りはワンルーム4.2%・ファミリー4.3%で、東京・城南(3.6%/3.7%)との差は0.6ポイントまで縮んでいます。
- 大阪の「表面利回り5〜7%」と投資家調査の「4.2%」は矛盾しません。前者は満室想定の家賃収入ベース、後者は運営費控除後のNOIベースだからです。
- 大阪府の借家171万8,000戸に対し賃貸用の空き家は43万6,100戸あり、賃貸ストック全体の約20%が空いています。空室率10%はやや強気の前提です。
- 大阪市24区の空き家率は北区11.1%から西成区25.9%まで14.8ポイントの開きがあり、「大阪市内だから安心」という括り方は成立しません。
- 木造アパートの法定耐用年数は22年です。築年数によって減価償却費が数倍変わり、税引後の手残りは同じ運営でも年間100万円以上動きます。
結論:2026年の大阪は「利回りで勝つ市場」から「空室率と手残りで勝つ市場」へ
大阪でアパート経営を始めるかどうかは、表面利回りの高さでは決まりません。決めるのは、空室率をどこに置くか、いくらの金利と期間で借りるか、そして減価償却費がいくら残っているか、の3点です。
理由は単純です。大阪の地価と物件価格が上がり続けている一方で、家賃の伸びがそれに追いついていないからです。国土交通省の令和8年地価公示によれば、大阪市の住宅地は前年比6.5%上昇しました。これに対し、総務省の住宅・土地統計調査で見た大阪市の家賃は5年間で5.9%の上昇にとどまります。価格が先に上がると、同じ家賃でも利回りは下がります。
つまり2026年の大阪は、「安く買って高い利回りを取る」市場ではなくなりつつあります。むしろ、空室を出さない運営と、税引後にいくら残るかを設計できる人が勝つ市場です。以下、その根拠を数字で示していきます。
大阪のアパート経営の利回りは実際いくらか|2026年の一次データ
2026年4月時点で、大阪の賃貸住宅一棟に投資家が求める期待利回りはワンルームタイプ4.2%、ファミリータイプ4.3%です。日本不動産研究所が半期ごとに実施している「不動産投資家調査」の第54回(2026年4月現在、2026年5月27日公表)の数値です。
主要10都市の賃貸住宅一棟 期待利回り比較(2026年4月)
| 調査地区 | ワンルーム | 前回差 | ファミリー | 前回差 |
|---|---|---|---|---|
| 東京・城南 | 3.6% | -0.1㌽ | 3.7% | -0.1㌽ |
| 横浜 | 4.2% | -0.1㌽ | 4.3% | 0.0㌽ |
| 大阪 | 4.2% | -0.1㌽ | 4.3% | 0.0㌽ |
| 名古屋 | 4.5% | 0.0㌽ | 4.5% | 0.0㌽ |
| 福岡 | 4.5% | 0.0㌽ | 4.5% | 0.0㌽ |
| 京都 | 4.6% | 0.0㌽ | 4.6% | 0.0㌽ |
| 神戸 | 4.7% | 0.0㌽ | 4.7% | 0.0㌽ |
| 札幌 | 4.9% | -0.1㌽ | 5.0% | 0.0㌽ |
| 仙台 | 5.0% | 0.0㌽ | 5.0% | 0.0㌽ |
| 広島 | 5.0% | 0.0㌽ | 5.1% | 0.0㌽ |
出典:一般財団法人日本不動産研究所「第54回 不動産投資家調査(2026年4月現在)」。前回差は第53回(2025年10月)との比較です。
読み取るべき点は2つあります。ひとつは、大阪が横浜と並び、東京・城南との差が0.6ポイントまで縮まっていること。もうひとつは、同調査で「新規投資を積極的に行う」と答えた投資家が93%に達していることです。買い手が多い状態は、売却時には有利ですが、購入時には価格競争を意味します。
なぜ「期待利回り4.2%」と「表面利回り5〜7%」が併存するのか
この2つは測っているものが違うだけで、矛盾していません。整理しておきます。
| 指標 | 分子 | 分母 | 誰が使うか |
|---|---|---|---|
| 表面(グロス)利回り | 満室想定の年間家賃収入 | 物件価格 | 販売資料・ポータルサイト |
| NOI利回り(キャップレート) | 実効総収入−運営費用 | 物件価格 | 不動産鑑定・機関投資家 |
| 実質利回り | 実効総収入−運営費用 | 物件価格+購入諸費用 | 個人投資家の投資判断 |
| 自己資金利回り(CCR) | 税引前キャッシュフロー | 投下した自己資金 | 借入を使う投資家 |
販売図面に載る「表面利回り7%」は、満室で、経費がゼロで、税金も返済もない世界の数字です。投資家調査の4.2%は、空室損と運営費を引いたあとの数字です。後半のシミュレーションで示しますが、表面7.17%の物件を実際に回すと、NOIベースでは4.2%前後に落ち着きます。表面利回りと実質利回りの違いと物件選びの注意点もあわせて確認すると、販売資料の読み方が変わります。
大阪圏レジデンス エリア別期待利回り14エリア(2026年1月調査)
エリア単位ではもう一段細かいデータがあります。大阪府不動産鑑定士協会が半期ごとに公表している調査で、各駅徒歩圏内・築3年程度まで・1Kタイプのマンションを想定した期待利回りです。
| エリア | 期待利回り(2026年1月) | 前回(2025年7月) | 差 |
|---|---|---|---|
| 梅田 | 3.59% | 3.63% | -0.04㌽ |
| 本町 | 3.86% | 3.91% | -0.05㌽ |
| 福島 | 3.86% | 3.91% | -0.05㌽ |
| 天神橋筋六丁目 | 3.91% | 3.98% | -0.07㌽ |
| 京町堀 | 3.95% | 4.01% | -0.06㌽ |
| 堀江 | 3.96% | 3.97% | -0.01㌽ |
| 谷町四丁目 | 3.98% | 4.04% | -0.06㌽ |
| 京都 | 3.99% | 4.10% | -0.11㌽ |
| 難波 | 4.01% | 4.01% | 0.00㌽ |
| 新大阪 | 4.07% | 4.10% | -0.03㌽ |
| 阿倍野 | 4.11% | 4.16% | -0.05㌽ |
| 江坂 | 4.15% | 4.16% | -0.01㌽ |
| 西宮 | 4.28% | 4.31% | -0.03㌽ |
| 高槻 | 4.39% | 4.40% | -0.01㌽ |
出典:公益社団法人大阪府不動産鑑定士協会「第31回 大阪圏エリア別不動産利回り調査(2026年1月調査)」。想定条件は各駅徒歩圏内・築3年程度まで・1Kタイプです。
3%台のエリアが8つまで増え、調査開始以来もっとも多くなりました。梅田は3.59%で過去最低値を更新しています。ここで注意したいのは、これが築浅・駅徒歩圏・1Kという条件付きの数字だという点です。築20年の木造アパートに、この利回りをそのまま当てはめることはできません。エリア間の相対的な序列を見るための表として使ってください。
大阪の家賃相場を公的統計で確認する|シミュレーションの入力値をつくる
収支計算の出発点は家賃です。大阪府の借家(専用住宅)の1か月当たり家賃・間代は59,227円、大阪市は61,704円です。いずれも総務省「令和5年住宅・土地統計調査」の数値で、5年前の平成30年調査から6%前後上昇しました。
大阪府・大阪市と全国の家賃比較
| 区分 | 大阪府 | 大阪市 | 全国 |
|---|---|---|---|
| 借家1か月当たり家賃・間代 | 59,227円 | 61,704円 | 59,656円 |
| 前回(平成30年)比 | +3,557円/+6.4% | +3,458円/+5.9% | +7.1% |
| 民営借家(木造) | 56,018円 | - | 54,409円 |
| 民営借家(非木造) | 64,961円 | - | 68,548円 |
| 1畳当たり家賃 | 3,546円 | 4,134円 | 3,403円 |
| 共益費・管理費 | 3,878円 | - | - |
出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計」、大阪府「令和5年住宅・土地統計調査 結果の概要」、大阪市「令和5年住宅・土地統計調査結果(確報)<大阪市>」。
木造アパートの家賃は56,018円が起点になる
この表でアパート経営者が使うべき数字は、民営借家(木造)の56,018円です。大阪府全体の平均59,227円ではありません。木造と非木造の差は8,943円あり、この差を「大阪の平均家賃」として一括りにすると、収支は1戸あたり月9,000円近くずれます。8戸のアパートなら年間で約86万円の誤差です。
大阪市の1畳当たり家賃は4,134円で、前回調査から10.4%上昇しました。府平均の3,546円、全国の3,403円を大きく上回ります。面積が小さくても市内の駅近であれば単価は取れる、という構造です。逆に言えば、郊外で広い部屋をつくっても単価は伸びにくくなります。
なお大阪府は共同住宅の割合が57.4%で全国3位です。単身向けの供給が厚い地域であり、同じ間取りの競合が近隣に多いことを前提に家賃を置く必要があります。
大阪の空室リスクを数字で見る|「空室率10%」は強気の前提
収支シミュレーションで最も結果を左右するのが空室率です。多くの記事が慣例的に10%を置きますが、大阪の実態はそれより厳しい水準にあります。
大阪の賃貸ストックと賃貸用空き家
| 項目 | 大阪府 | 大阪市 |
|---|---|---|
| 借家(居住世帯あり) | 1,718,000戸 | 817,500戸 |
| 賃貸用の空き家 | 436,100戸 | 204,000戸 |
| 賃貸ストック合計 | 2,154,100戸 | 1,021,500戸 |
| 賃貸ストック空室率 | 20.2% | 20.0% |
| 空き家率(総住宅数比) | 14.2% | 16.1% |
計算式は「賃貸用の空き家 ÷(借家+賃貸用の空き家)」です。元データは大阪府および大阪市の令和5年住宅・土地統計調査結果によります。大阪府の借家は住宅総数の40.9%を占め、全国平均の35.0%より高い賃貸中心の市場です。その一方で、5戸に1戸が空いています。
ただし、この20%をそのまま自分の物件の空室率として使う必要はありません。賃貸用の空き家には、募集を止めた老朽物件や再建築が難しい長屋も含まれるためです。実務的には、基本ケースを10%、ストレスケースを20%として両方を計算し、20%でも返済が回るかを確認するのが安全な設計です。後半のシミュレーションでは、この2つを並べて示します。
大阪市24区の空き家率ランキング
「大阪市内なら大丈夫」という判断は成立しません。24区の空き家率には14.8ポイントの開きがあります。
| 順位 | 区 | 空き家率(令和5年) | 平成30年 |
|---|---|---|---|
| 1 | 北 | 11.1% | 13.6% |
| 2 | 鶴見 | 11.3% | 11.7% |
| 3 | 西 | 11.5% | 13.9% |
| 4 | 城東 | 12.6% | 12.7% |
| 5 | 福島 | 13.0% | 12.0% |
| 6 | 西淀川 | 13.4% | 16.8% |
| 7 | 住之江 | 13.6% | 14.7% |
| 8 | 阿倍野 | 13.8% | 16.1% |
| 9 | 淀川 | 14.6% | 16.7% |
| 10 | 天王寺 | 14.7% | 13.1% |
| 11 | 東成 | 14.8% | 19.6% |
| 12 | 平野 | 16.4% | 15.8% |
| 12 | 東淀川 | 16.4% | 18.4% |
| 14 | 此花 | 16.9% | 17.8% |
| 14 | 住吉 | 16.9% | 20.0% |
| 16 | 都島 | 17.0% | 17.4% |
| 17 | 大正 | 17.7% | 19.6% |
| 18 | 浪速 | 17.9% | 17.3% |
| 19 | 港 | 18.0% | 20.3% |
| 20 | 旭 | 18.1% | 18.1% |
| 21 | 東住吉 | 18.2% | 21.8% |
| 22 | 中央 | 18.4% | 17.8% |
| 23 | 生野 | 22.8% | 19.8% |
| 24 | 西成 | 25.9% | 22.5% |
出典:大阪市「令和5年住宅・土地統計調査結果(確報)<大阪市>」。空き家率は総住宅数に占める空き家の割合で、大阪市全体では空き家294,600戸のうち204,000戸(69.2%)が賃貸用です。
注目すべきは、平成30年より空き家率が上昇した区です。西成(+3.4㌽)、生野(+3.0㌽)、天王寺(+1.6㌽)、福島(+1.0㌽)、平野(+0.6㌽)、浪速(+0.6㌽)、中央(+0.6㌽)が該当します。中央区・浪速区・福島区は地価も家賃も上昇している人気エリアですが、同時に新築供給が進んで空き家も増えました。「人気エリアなら空室が出ない」とは言えない、というのがこのデータの示すところです。
府内主要市の空き家率と賃貸用空き家
| 市 | 総住宅数 | 賃貸用の空き家 | 空き家率 |
|---|---|---|---|
| 茨木市 | 140,100戸 | 8,350戸 | 9.1% |
| 高槻市 | 168,900戸 | 8,560戸 | 9.6% |
| 交野市 | 33,460戸 | 1,770戸 | 11.0% |
| 枚方市 | 195,260戸 | 12,170戸 | 11.4% |
| 吹田市 | 211,860戸 | 12,050戸 | 12.0% |
| 堺市 | 427,800戸 | 30,500戸 | 12.9% |
| 豊中市 | 207,120戸 | 16,840戸 | 13.7% |
| 八尾市 | 132,670戸 | 11,500戸 | 13.9% |
| 大阪市 | 1,827,900戸 | 204,000戸 | 16.1% |
| 東大阪市 | 281,720戸 | 29,950戸 | 16.3% |
| 門真市 | 68,670戸 | 7,330戸 | 17.0% |
| 守口市 | 80,980戸 | 8,170戸 | 17.1% |
| 柏原市 | 39,210戸 | 5,150戸 | 20.8% |
出典:大阪府「令和5年住宅・土地統計調査 結果の概要」市町村別空き家数・空き家率。
「大阪のどこがおすすめか」に数字で答える3軸スクリーニング
エリアを絞るときは、次の3つを掛け合わせると判断がぶれにくくなります。
- 空き家率:市内なら11〜14%台の区(北・鶴見・西・城東・福島・西淀川・住之江・阿倍野)、府内なら茨木・高槻・枚方・吹田が下位に位置します。
- 家賃水準:大阪市の1畳当たり4,134円は府平均の1.17倍です。市内は単価で稼ぎ、郊外は物件価格の安さで利回りを取る、と役割を分けます。
- 地価の方向:大阪市の住宅地は前年比6.5%上昇(令和8年地価公示)。上昇は出口では有利、購入時には不利に働きます。
この3軸で見ると、市内で空き家率が低く単価も取れるのは北区・西区・福島区・阿倍野区あたりですが、いずれも物件価格が高く、表面利回りは5%台まで落ちます。逆に高利回りが出やすい西成区・生野区は空き家率が20%を超え、しかも上昇傾向にあります。「利回りが高いエリア」と「空きにくいエリア」は、大阪ではきれいに逆相関していると考えてください。中間帯にある城東区・淀川区・東淀川区・住之江区あたりが、実務上は検討対象になりやすい層です。
【計算例①】大阪市内の木造アパート1棟|表面利回りから税引後キャッシュフローまで
ここからは実額で積み上げます。結論を先に言うと、表面利回り7.17%の物件でも、税引前の手残りは年19.5万円、税引後は年12.6万円にしかなりません。
前提条件と、その根拠にした公的データ
| 項目 | 設定 | 根拠 |
|---|---|---|
| 物件 | 大阪市内・木造アパート1棟・8戸(1K)・築10年 | - |
| 物件価格 | 7,500万円(土地5,100万円/建物2,400万円) | 建物按分は固定資産税評価額の比率 |
| 家賃 | 56,000円/戸・月 | 大阪府 民営借家(木造)56,018円(住宅・土地統計調査) |
| 満室想定年収 | 5,376,000円 | 56,000円×8戸×12か月 |
| 空室・滞納損失 | 基本10%/ストレス20% | 大阪府の賃貸ストック空室率20.2% |
| 固定資産税評価額 | 土地2,500万円/建物1,200万円 | 本例の仮定値 |
| 借入 | 6,000万円・金利2.5%・25年・元利均等 | 本例の仮定値 |
| 自己資金 | 1,500万円+購入諸費用 | - |
金利と評価額は物件・金融機関・属性で変わるため、ここでは仮定として明示しています。実際の判断ではご自身の条件に置き換えて再計算してください。公的なベンチマークとしては住宅金融支援機構の賃貸住宅融資金利があり、35年固定・15年固定の2タイプが公表されています。同機構は「見直し後の適用利率による変動に上限又は下限はありません」と明記しており、固定期間終了後の返済額上昇は前提として織り込むべきリスクです。
購入諸費用の内訳|物件価格の8.0%を税率から積み上げる
販売資料でひとまとめにされがちな諸費用を、税率から積み上げます。
| 費目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 不動産取得税(土地) | 2,500万円×1/2×3% | 375,000円 |
| 不動産取得税(建物) | 1,200万円×3% | 360,000円 |
| 登録免許税(土地・所有権移転) | 2,500万円×1.5% | 375,000円 |
| 登録免許税(建物・所有権移転) | 1,200万円×2.0% | 240,000円 |
| 仲介手数料(上限) | 200万円×5.5%+200万円×4.4%+7,100万円×3.3% | 2,541,000円 |
| 印紙税(売買契約書) | 5,000万円超1億円以下の軽減税額 | 30,000円 |
| 司法書士報酬・抵当権設定関連 | 仮定値 | 390,000円 |
| 融資事務手数料 | 6,000万円×2.2%(仮定) | 1,320,000円 |
| 火災保険(5年一括・仮定) | - | 400,000円 |
| 合計 | - | 6,031,000円(価格の8.0%) |
税率の根拠は次のとおりです。不動産取得税は標準税率4%に対し、令和9年3月31日までの土地・住宅の取得は3%、宅地は課税標準が固定資産課税台帳価格の1/2になります(大阪府「不動産取得税」)。ここで見落としやすいのが、中古住宅の控除(新築年月日に応じ最大1,200万円)は「取得者個人が居住するもの」が要件である点です。賃貸用として取得する中古アパートには適用されません。登録免許税は土地と建物で扱いが分かれます。土地の売買による所有権移転登記は令和8年度税制改正で軽減措置の期限が令和11年3月31日まで3年延長され、本則2.0%に対して1.5%が適用されます。こちらは自己居住用という要件がないため、投資用のアパートでも使えます。一方、建物側の住宅用家屋の軽減税率(移転登記0.3%)は自己居住用が要件のため、賃貸用では本則の2.0%になります(国税庁 No.7191 登録免許税の税額表、国税庁「登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ」(令和8年4月))。不動産取得税の軽減措置と還付申請の手順で要件の全体像を確認しておくと、申告漏れを防げます。
仲介手数料は国土交通省告示の上限で計算しました。売買代金を200万円以下(5.5%)、200万円超400万円以下(4.4%)、400万円超(3.3%)に区分し、それぞれの割合を乗じて合計した金額が上限です(宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額)。印紙税は令和9年3月31日までに作成される不動産譲渡契約書の軽減措置により、契約金額5,000万円超1億円以下は3万円です(国税庁 No.7108)。
保有コスト|固定資産税1.4%+都市計画税0.3%を年額で計上する
大阪市の固定資産税は1.4%、都市計画税は0.3%です。大阪市はほぼ全域が市街化区域のため、両方が課税されます。ここで効いてくるのが住宅用地の課税標準の特例です。
| 対象 | 課税標準 | 税率 | 年税額 |
|---|---|---|---|
| 土地・固定資産税 | 2,500万円×1/6=416.7万円 | 1.4% | 58,333円 |
| 土地・都市計画税 | 2,500万円×1/3=833.3万円 | 0.3% | 25,000円 |
| 建物・固定資産税 | 1,200万円 | 1.4% | 168,000円 |
| 建物・都市計画税 | 1,200万円 | 0.3% | 36,000円 |
| 合計 | - | - | 287,333円 |
小規模住宅用地(住宅1戸あたり200㎡以下)は固定資産税の課税標準が価格の1/6、都市計画税は1/3になります。この特例率は住宅1戸ごとに設定されるため、8戸のアパートなら1,600㎡までが小規模住宅用地です(大阪市「住宅用地の課税標準の特例措置」、大阪市「固定資産税・都市計画税の概要」)。戸数が多いアパートほど土地の税負担が軽くなる構造です。もし特例がなければ土地だけで年42.5万円かかる計算で、34万円強の差になります。
表面利回り → NOI利回り → CCR → 税引後CFの4段階
| 段階 | 基本ケース(空室10%) | ストレス(空室20%) |
|---|---|---|
| 満室想定年収 | 5,376,000円 | 5,376,000円 |
| 実効総収入 | 4,838,400円 | 4,300,800円 |
| 管理委託料(実効総収入の5%) | 241,920円 | 215,040円 |
| 固定資産税・都市計画税 | 287,333円 | 287,333円 |
| 修繕費・原状回復費 | 400,000円 | 400,000円 |
| 入居募集費用(広告料等) | 224,000円 | 224,000円 |
| 火災保険(年割)・共用光熱費・予備費 | 260,000円 | 260,000円 |
| 運営費用合計 | 1,413,253円 | 1,386,373円 |
| NOI(純営業収益) | 3,425,147円 | 2,914,427円 |
| 表面利回り | 7.17% | 7.17% |
| NOI利回り(÷物件価格) | 4.57% | 3.89% |
| 実質利回り(÷総投資額8,103万円) | 4.23% | 3.60% |
| 年間返済額(6,000万円・2.5%・25年) | 3,230,040円 | 3,230,040円 |
| 税引前キャッシュフロー | 195,107円 | -315,613円 |
| 自己資金利回り(CCR) | 0.93% | -1.50% |
ここで冒頭の疑問が解けます。表面7.17%の物件を実際に回すと、総投資額ベースの実質利回りは4.23%になり、日本不動産研究所の調査で投資家が答えた大阪の期待利回り4.2%とほぼ一致します。販売資料の7.17%と投資家調査の4.2%は、同じ物件の別の顔です。
そして空室率を20%に置くと、税引前キャッシュフローは年31.6万円の赤字に転落します。大阪の賃貸ストックの5戸に1戸が空いているという事実を、この計算は無視できません。
金利が1%上がると手残りはいくら減るか
| 金利 | 年間返済額 | 税引前キャッシュフロー |
|---|---|---|
| 1.5% | 2,879,542円 | 545,605円 |
| 2.0% | 3,051,751円 | 373,396円 |
| 2.5%(基本) | 3,230,040円 | 195,107円 |
| 3.0% | 3,414,321円 | 10,826円 |
| 3.5% | 3,604,490円 | -179,343円 |
金利が2.5%から3.5%へ1ポイント上がるだけで、手残りは年37.4万円減り、赤字になります。空室率10%を維持できていても、です。変動金利や固定期間終了後の見直しを使う場合、この感応度は先に確認しておく価値があります。
返済期間も同じくらい効きます。木造は法定耐用年数が22年と短く、融資期間が伸びにくい構造です。
| 返済期間 | 年間返済額 | 税引前キャッシュフロー |
|---|---|---|
| 15年 | 4,800,882円 | -1,375,735円 |
| 20年 | 3,815,301円 | -390,154円 |
| 22年 | 3,548,448円 | -123,301円 |
| 25年(基本) | 3,230,040円 | 195,107円 |
| 30年 | 2,844,870円 | 580,277円 |
期間22年以下では、この条件のアパートは赤字になります。木造アパートを検討するときは、価格交渉より先に「何年で組めるか」を金融機関に確認するほうが、収支への影響は大きくなります。
価格が手残りを決める|表面利回り別の比較
| 物件価格 | 表面利回り | 税引前CF | 自己資金 | CCR |
|---|---|---|---|---|
| 6,720万円 | 8.00% | 531,031円 | 1,884万円 | 2.82% |
| 7,168万円 | 7.50% | 338,090円 | 2,010万円 | 1.68% |
| 7,500万円 | 7.17% | 195,107円 | 2,103万円 | 0.93% |
| 8,064万円 | 6.67% | -47,793円 | 2,261万円 | -0.21% |
自己資金比率20%、金利2.5%、期間25年を固定して価格だけを動かした表です。自己資金には物件価格の8.0%を購入諸費用として上乗せしています。同じ家賃収入でも、表面6.67%で買うと赤字、8.00%で買えばCCR2.8%になります。大阪のアパート経営で手残りを決めているのは、運営の巧拙よりも先に取得価格です。
【計算例②】木造アパートの減価償却が税引後の手残りを決める
ここまでは税引前の話でした。最後の分岐は減価償却です。同じ物件・同じ運営でも、築年数によって税引後キャッシュフローは年間100万円以上変わります。
法定耐用年数22年と中古の簡便法
建物の法定耐用年数は構造・用途で決まっています。
| 構造 | 用途 | 法定耐用年数 |
|---|---|---|
| 木造・合成樹脂造 | 店舗用・住宅用 | 22年 |
| 木骨モルタル造 | 店舗用・住宅用 | 20年 |
| れんが造・石造・ブロック造 | 店舗用・住宅用 | 38年 |
| 鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 | 住宅用 | 47年 |
出典:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」。
中古で取得した場合は、使用可能期間の見積りが難しいときに簡便法が使えます。計算式は次のとおりです(国税庁 No.5404 中古資産の耐用年数)。
- 法定耐用年数の全部を経過した資産:法定耐用年数×20%
- 法定耐用年数の一部を経過した資産:(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%
- 1年未満の端数は切り捨て、2年に満たない場合は2年
木造アパートに当てはめると、築10年なら(22−10)+10×20%=14年、築25年なら22×20%=4.4年で端数を切り捨てて4年です。なお、事業の用に供するために支出した資本的支出が取得価額の50%を超える場合、簡便法は使えません。耐用年数と経過年数から減価償却費を算出する手順で計算の型を押さえておくと、物件ごとの比較が速くなります。
築年数別の税引後キャッシュフロー
建物按分2,400万円、空室率10%、その他の条件をすべて同じにして、償却年数だけを変えた比較です。所得税・住民税の限界税率は合計30%(所得税20%+住民税10%、課税所得330万円超695万円以下の層)と仮定しました。
| 項目 | 新築(22年償却) | 築10年(14年償却) | 築25年(4年償却) |
|---|---|---|---|
| 年間減価償却費 | 1,090,909円 | 1,714,286円 | 6,000,000円 |
| 不動産所得(1年目) | 854,200円 | 230,823円 | -4,054,891円 |
| 所得税・住民税 | 256,260円 | 69,247円 | -914,540円(還付) |
| 税引前キャッシュフロー | 195,107円 | 195,107円 | 195,107円 |
| 税引後キャッシュフロー | -61,153円 | 125,860円 | 1,109,647円 |
築25年の欄で注意が必要な点があります。不動産所得の損失405.5万円のうち、土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分(本例では土地按分68%=100.6万円)は損益通算の対象になりません(国税庁 No.1391 不動産所得が赤字になったとき)。上表はこれを控除した304.8万円で還付額を計算しています。この論点を無視した試算は、還付額を1割前後過大に見せます。
所得税の税率は課税所得によって5%から45%の7段階に区分されており、限界税率が高い方ほど償却の効果は大きくなります(国税庁 No.2260 所得税の税率)。
デッドクロスはいつ来るか
築25年の年110万円は、4年で終わります。5年目に何が起きるかを見てください。
| 項目 | 1〜4年目 | 5年目以降 |
|---|---|---|
| 年間減価償却費 | 6,000,000円 | 0円 |
| 不動産所得 | -4,054,891円 | 2,128,957円 |
| 所得税・住民税 | -914,540円(還付) | 638,687円 |
| 税引後キャッシュフロー | 1,109,647円 | -443,580円 |
償却が終わった瞬間に、帳簿上の利益だけが立ち上がり、手元の現金は減ります。これがデッドクロスです。年110万円が年44万円のマイナスに変わり、差額は年153万円に達します。
だからこそ、築古の木造アパートを買うときは「償却が終わる年に売るのか、持ち続けるのか」を購入前に決めておくことをおすすめします。持ち続けるなら、5年目以降の赤字を吸収できる別の収益源か、繰上返済による利息圧縮の計画が要ります。売るなら、譲渡した年の1月1日時点で所有期間5年超が長期譲渡(所得税15%・住民税5%)、5年以下が短期譲渡(所得税30%・住民税9%)になる区分を先に確認してください(国税庁 No.3208・No.3211)。建物の取得費は所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算するため、償却を取り切った物件ほど売却益が大きく出る点も織り込んでおきます。
大阪で何を買うか|木造アパート・一棟RC・区分マンション・戸建賃貸
「賃貸経営を大阪で始めたい」という段階なら、木造アパート以外の選択肢も並べて比べたほうが判断は早くなります。
| 比較項目 | 木造アパート | 一棟RCマンション | 区分マンション | 戸建賃貸 |
|---|---|---|---|---|
| 法定耐用年数 | 22年 | 47年 | 47年(RCの場合) | 22年(木造) |
| 年間減価償却費 (建物2,400万円換算) | 約109万円 | 約51万円 | 約51万円 | 約109万円 |
| 短期の節税効果 | 大きい(築古ほど) | 小さい | 小さい | 大きい |
| 融資期間の伸びやすさ | 短い | 長い | 長い | 短い |
| 1戸あたり投資額 | 中 | 大 | 小 | 中 |
| 空室時の収入 | 他戸で補える | 他戸で補える | ゼロになる | ゼロになる |
| 出口の流動性 | 中(買主は投資家) | 中〜低(価格帯が高い) | 高(実需も買う) | 高(実需も買う) |
| 大阪での向き | 市内周辺区・府内主要市 | 市内中心部 | 梅田・本町・難波周辺 | 郊外のファミリー需要地 |
耐用年数の出典は国税庁の耐用年数表です。この表から読み取れる要点は、木造アパートは「短期に償却を取り、期間の短い融資で回す」商品であり、一棟RCは「長期の融資で長く持つ」商品だということです。前者は限界税率の高い方に向き、後者は返済比率を抑えて安定運用したい方に向きます。木造・鉄骨・RCの構造別の実務比較で、建築コストや遮音性を含めた違いも確認できます。
大阪の市況をどう読むか|地価・万博後・IRの現在地(2026年8月時点)
令和8年地価公示|大阪圏住宅地+2.5%、大阪市住宅地+6.5%
| 圏域・地域 | 住宅地変動率 | 商業地変動率 |
|---|---|---|
| 全国 | +2.1% | +4.3% |
| 東京圏 | +4.5% | +9.3% |
| 大阪圏 | +2.5% | +7.3% |
| 名古屋圏 | +1.9% | +3.3% |
| 大阪府 | +2.8% | +8.5% |
| 大阪市 | +6.5% | +12.7% |
| 福岡県 | +3.7% | +5.2% |
出典:国土交通省「令和8年地価公示の概要」(2026年1月1日時点、2026年3月17日公表)、同報道発表。大阪圏住宅地の最高価格地点は大阪市福島区福島3丁目(1,470,000円/㎡、+8.9%)です。
大阪市の住宅地が年6.5%上昇しているということは、同じ家賃なら利回りが年6.5%分圧縮されているのと同じです。地価上昇は保有中の含み益と出口価格には効きますが、これから買う人にとっては逆風になります。
万博は2025年に閉幕、IRは2030年開業予定
大阪・関西万博は2025年に閉幕しました。今後の投資判断で「万博効果」を将来イベントとして織り込む段階ではありません。大阪IRについては、大阪府・大阪市および大阪IR株式会社が2030年秋頃の開業に向けて取り組みを進めており、2025年4月24日に起工式が開催され建設工事に着手しています(大阪府「大阪IR建設工事の着手及び起工式の開催について」)。
ただし、開業まで4年あります。4年後の需要を前提に、今の価格で買う判断はおすすめしません。期待はすでに価格に織り込まれている可能性が高く、開業後の賃貸需要がどの区にどれだけ及ぶかは、現時点では推計の域を出ないためです。IRやうめきたの効果は、買う理由ではなく、持ち続ける理由として扱うのが現実的です。
大阪府の世帯数は2030年がピーク
| 年 | 一般世帯総数 | 単独世帯 |
|---|---|---|
| 2020年 | 412万7千世帯 | 172万7千世帯 |
| 2025年 | 421万4千世帯 | 184万1千世帯 |
| 2030年 | 421万5千世帯(ピーク) | 190万0千世帯 |
| 2035年 | 415万0千世帯 | 191万2千世帯(ピーク) |
| 2040年 | 404万1千世帯 | 188万5千世帯 |
| 2050年 | 376万7千世帯 | 178万4千世帯 |
出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)令和6年推計」。
賃貸需要の母数である世帯数は、大阪府では2030年にピークを迎え、2050年には2020年比で8.7%減少する見通しです。単身世帯は2035年がピークで、そこから緩やかに減ります。2026年に買って10年持つなら需要のピーク帯に重なりますが、25年持つなら後半は縮小局面に入るということです。融資期間25年で組むなら、10年後・15年後の売却も選択肢に入れた出口設計をしておくと、判断が楽になります。
大阪でアパート経営を始める前に決めておく5つのこと
- 空室率を何%で組むか:基本10%、ストレス20%の2本立てで計算し、20%でも返済が回る価格帯だけを検討対象にします。
- 融資は何年組めるか:木造の法定耐用年数は22年です。金融機関に期間を確認してから価格交渉に入ります。22年以下なら、この記事の条件では赤字になります。
- 金利+1%に耐えられるか:2.5%を3.5%に置き換えても手残りが残るか確認します。固定期間終了後の見直しに上限はありません。
- 償却が終わる年に何をするか:築古なら4〜14年で償却は尽きます。デッドクロスの年に売るのか持つのかを、購入前に決めます。
- 誰に管理を任せるか:空室率10%と20%の差は、この記事の条件で年51万円です。運営の質が収支を左右します。
管理会社の選び方|賃貸住宅管理業の登録を確認する
管理会社を選ぶときの最初の確認事項は、賃貸住宅管理業の登録です。賃貸住宅管理業適正化法により、管理戸数200戸以上の事業者は国土交通大臣への登録が義務付けられています(200戸未満は任意登録)。登録業者には、営業所または事務所ごとに業務管理者を1名以上配置すること、オーナーとの管理受託契約の締結前に報酬や管理業務の内容・実施方法を書面で交付して説明することなどが義務づけられています(国土交通省「賃貸住宅管理業登録制度のポイント」)。
登録の有無、業務管理者の在籍、重要事項説明の実施。この3点は契約前に確認できます。そのうえで、大阪の各区の募集相場と入居付けの実績を、具体的な数字で説明できるかを見てください。賃貸管理会社の役割と種類・選び方に、仲介・管理・一括対応の違いを整理しています。
私たちINA&Associates株式会社は、人財こそが最大の資産という考えのもとで賃貸管理に取り組んでいます。空室を埋めるのは仕組みだけではなく、地域の相場と入居者の暮らしを知っている人だからです。管理の質は、この記事で見たとおり年間数十万円の差になって収支に表れます。
まとめ|大阪のアパート経営は「数字で入り、数字で出る」
2026年の大阪でアパート経営が儲かるかどうかは、エリアの人気度ではなく、次の4つの数字で決まります。取得価格(表面利回り)、空室率、融資条件、そして償却年数です。
この記事の条件では、表面7.17%・空室10%・金利2.5%・期間25年で税引前の手残りは年19.5万円でした。表面8.00%で買えれば年53.1万円、逆に6.67%なら赤字です。空室率を20%に置けば赤字、金利が3.5%になっても赤字になります。大阪の賃貸ストックの空室率が約20%であることを踏まえれば、この試算は決して悲観的な前提ではありません。
大阪は東京より利回りが取りやすく、賃貸需要の母数も大きい市場です。それでも、公的データを入れて計算すると手残りは薄くなります。だからこそ、価格・融資・空室・税金の4つを購入前に数字で確定させることが、長期的に資産を残す道だと私たちは考えています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 大阪のアパート経営の利回りは何%が目安ですか?
投資家が求める期待利回りは、大阪の賃貸住宅一棟でワンルーム4.2%・ファミリー4.3%です(日本不動産研究所 第54回不動産投資家調査、2026年4月現在)。これは運営費控除後のNOIベースです。販売資料に載る表面利回りはこれより2〜3ポイント高く表示されるため、7%台の物件でも運営後は4%台に落ちると考えてください。
Q2. 大阪市でアパート経営をするなら、どの区がおすすめですか?
空き家率で見ると、北区11.1%、鶴見区11.3%、西区11.5%、城東区12.6%、福島区13.0%が低い順です(大阪市 令和5年住宅・土地統計調査)。ただし空き家率が低い区は物件価格も高く、表面利回りは5%台まで落ちます。利回りと空室リスクの中間帯として、城東区・淀川区・東淀川区・住之江区が検討対象になりやすい層です。府内の市では茨木市9.1%、高槻市9.6%が最も低くなっています。
Q3. 空室率は何%で計算すればよいですか?
基本ケース10%、ストレスケース20%の2本立てをおすすめします。大阪府の賃貸ストック(借家171万8,000戸+賃貸用の空き家43万6,100戸)の空室率は20.2%です。この20%には募集を止めた老朽物件も含まれるため、そのまま自分の物件に当てはめる必要はありませんが、20%でも返済が回る価格で買えているかは確認する価値があります。
Q4. 中古の木造アパートは何年で減価償却できますか?
木造の法定耐用年数は22年です。中古の場合は簡便法により、築10年なら(22−10)+10×20%=14年、法定耐用年数を超えた築25年なら22×20%=4年(端数切捨て)となります(国税庁 No.5404)。償却年数が短いほど1年あたりの減価償却費は大きくなり、節税効果も大きくなりますが、償却が終わった翌年から課税所得が跳ね上がるデッドクロスが早く訪れます。
Q5. 購入諸費用は物件価格の何%を見ておけばよいですか?
本記事の7,500万円の中古木造アパートの例では、不動産取得税73.5万円、登録免許税61.5万円、仲介手数料254.1万円、印紙税3万円などを積み上げて合計603.1万円、価格の8.0%でした。土地の登録免許税の軽減(1.5%)は投資用でも使えますが、中古住宅の不動産取得税の控除と建物の住宅用家屋軽減税率は自己居住用が要件のため、賃貸用では適用されません。控除が使える場合と比べると、建物分だけでも50万円以上重くなる計算です。
引用・参考資料
- 一般財団法人日本不動産研究所「第54回 不動産投資家調査(2026年4月現在)」(2026年5月27日公表)
- 公益社団法人大阪府不動産鑑定士協会「第31回 大阪圏エリア別不動産利回り調査(2026年1月調査)」(2026年5月18日公表)
- 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計」
- 大阪府「令和5年住宅・土地統計調査 結果の概要」
- 大阪市「令和5年住宅・土地統計調査結果(確報)<大阪市> 結果の概要」
- 国土交通省「令和8年地価公示の概要」(2026年3月17日公表)
- 国土交通省 報道発表「全国の地価動向は全用途平均で5年連続上昇~令和8年地価公示~」
- 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号)
- 国土交通省「賃貸住宅管理業登録制度のポイント(賃貸住宅管理業適正化法)」
- 国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」
- 国税庁 タックスアンサー No.5404「中古資産の耐用年数」
- 国税庁 タックスアンサー No.1370「不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」
- 国税庁 タックスアンサー No.1391「不動産所得が赤字になったとき」
- 国税庁 タックスアンサー No.2260「所得税の税率」
- 国税庁 タックスアンサー No.7191「登録免許税の税額表」
- 国税庁「土地の売買や住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ」(令和8年4月)
- 国税庁 タックスアンサー No.7108「不動産譲渡契約書及び建設工事請負契約書の印紙税の軽減措置」
- 国税庁 タックスアンサー No.3208「長期譲渡所得の税額の計算」
- 国税庁 タックスアンサー No.3211「短期譲渡所得の税額の計算」
- 大阪府「不動産取得税」
- 大阪市「固定資産税・都市計画税の概要」
- 大阪市「都市計画税」
- 大阪市「住宅用地の課税標準の特例措置」
- 住宅金融支援機構「賃貸住宅融資金利」
- 国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)令和6年推計」
- 大阪府「大阪IR建設工事の着手及び起工式の開催について」
- 大阪府「大阪IRについて」
本記事の計算例は公的データに基づく試算であり、個別の物件・所得状況における税務判断については税理士等の専門家にご確認ください。
