
大宮駅は埼玉県内で最多の1日利用者数を誇り、JR東日本、東武鉄道、埼玉新都市交通の3社が運営する12路線が乗り入れる首都圏有数のターミナル駅です。新幹線・在来線合わせて、東北・山形・秋田・北海道の東北系統と上越・北陸の上越系統の計6新幹線路線に加え、多数の在来線が接続し、埼玉県の交通の要衝となっています。この交通利便性の高さから、SUUMOが実施した「住みたい街ランキング2025 首都圏版」では横浜に次ぐ第2位を獲得し、注目を集めています。
本記事のうち大宮駅東口(大門町2丁目中地区・3丁目中地区)の事業スケジュールと計画概要は、2026年9月時点の公表情報(さいたま市の各事業ページ。3丁目中地区は2025年7月更新)にもとづいています。事業の進捗により時期は変動する可能性があります
大宮駅グランドセントラルステーション化構想(GCS構想)
この恵まれた立地条件と高い人気を背景に、さいたま市は「大宮駅グランドセントラルステーション化構想(大宮GCS構想)」を2018年に策定しました。この構想は、駅前広場を中心とした交通基盤整備、駅周辺街区のまちづくり、乗換改善等を含めた駅機能の更なる高度化を三位一体で推進するものです。目標は、東日本の玄関口としての拠点性を高め、交通の結節点としての機能を強化することにあります。実際、大宮駅周辺では現在複数の再開発プロジェクトが進行中または完了しており、都市基盤整備と民間開発が連携した街づくりが進んでいます。
主要再開発プロジェクト一覧
| エリア | プロジェクト名/街区 | 主な用途構成 | 規模(階数・延床面積) | 着工・竣工予定 | 特筆事項 |
|---|---|---|---|---|---|
| 東口 | 大門町3丁目中地区 再開発 | オフィス・商業・金融機関・駐車場 | 地下1/地上21階(最高約100m)延床 約4万㎡ | スケジュール見直し中 (組合設立・事業認可の時期は未定) |
ハイグレードオフィス、低層に銀行・商業、歩行者広場・防災機能 |
| 東口 | 大門町2丁目中地区 再開発 大宮門街(おおみやかどまち) |
公共ホール・商業 | 地下3/地上18階(約95m)延床 約8.2万㎡ | 2017年7月工事着手 2022年3月竣工済 |
市民会館〈レイボックホール〉を核とする文化複合施設 |
| 西口 | 第3-A・D地区 再開発 | 住宅(タワー約230戸)・オフィス・商業・駐車場 | 住宅棟 地上27階・地下2階 業務棟 地上21階・地下2階 延床 約8.5万㎡ |
2025年度着工予定(見直し中) 2027年度竣工予定(遅れあり) |
屋内通路「まちなかガレリア」・広場「まちなかプレイス」整備 |
| 西口 | 第3-B地区(大宮スカイ&スクエア) | 住宅・オフィス・商業・公共 | 住宅棟 28階/業務棟 13階 | 2021着工 2024年5月竣工済 |
分譲タワー完売、隣接道路拡幅により交通環境改善 |
| 西口 | 桜木駐車場用地活用事業(桜木PPJ) | 商業・オフィス・フィットネス・結婚式場・駐車場 | 5棟構成(延床 3万㎡超) | 2025年4月15日着工 2027年春竣工予定 |
コンセプト「Omiya Well-being Station」・鉄道車両展示「電車ひろば」 |
大宮駅東口では、駅近接地の「大門町3丁目中地区」において大規模再開発事業が進行中です。約0.6ヘクタールのこの地区は、老朽建築物や低未利用地が多く、都市計画道路の整備停滞や狭隘な道路事情により回遊性が低下していました。そこで、土地の高度利用による大規模複合ビル建設が計画され、2023年12月の都市計画決定を経て具体化しています。
地下1階・地上21階建て(最高約100m)の高層棟には、オフィス、銀行、商業施設、駐車場が計画されています。かつては2025年度の工事着手、2028年度の工事完了を目指すスケジュールが示されていましたが、さいたま市は2025年7月時点で「事業計画のスケジュールの見直しを行っている」としており、再開発組合の設立・事業認可の時期も未定です。低層部には銀行店舗や商業フロア、緑豊かなオープンスペースが設けられ、上層部は環境性能に優れたオフィスとする計画です。「ウォーカブルなまちづくり」や防災機能の強化にも配慮された先導的プロジェクトとなっています。
東口ではすでに大門町2丁目中地区の市街地再開発事業による「大宮門街(おおみやかどまち)」(地下3階・地上18階)が2022年3月に竣工し、市民ホール等の公共施設と商業施設が稼働中です。大門町3丁目中地区の計画は、同じ東口で続く都市機能強化の取り組みとなります。
再開発はどう進むのか——「権利変換」という仕組みと地権者への影響
大宮駅周辺で進む大門町3丁目中地区や西口第3-A・D地区の事業は、いずれも都市再開発法に基づく「市街地再開発事業」として進められています。事業の中身を理解するうえで欠かせないのが「権利変換」という仕組みです。
市街地再開発事業のうち、権利変換手続きを用いる方式は「第一種市街地再開発事業」と呼ばれます。国土交通省の説明によれば、従前の土地・建物所有者等の権利は、原則として等価で新しい再開発ビルの床に関する権利へ置き換えられます。この置き換えによって取得する床は「権利床」と呼ばれ、高度利用によって新たに生み出され事業費に充てるために処分される床は「保留床」と呼ばれます。地権者は権利変換(床の取得)と転出(金銭補償)のいずれかを選択できます。
不動産オーナーにとっての実務的な意味は次の通りです。再開発地区内に土地・建物を所有している場合、事業が進むと自動的に権利変換の対象になるため、従前資産の評価額と、取得できる床の価値・立地・階数が見合っているかを事前に確認する必要があります。一方、再開発地区の外側で不動産を保有・検討しているオーナーにとっては、権利変換によって新たに生まれる保留床(分譲住宅やオフィス)が周辺相場の新たな指標になる点に注目すべきです。
西口エリアの再開発計画
大宮駅西口周辺でも大規模開発が並行して進められています。駅西側の「大宮西口第3地区」は複数のブロック(A~E)に区分され、このうち第3-A・D地区で市街地再開発事業が計画されています。老朽木造建物の密集やオープンスペース不足、狭い道路と複雑な交差点などの課題に対応するため、約9,500㎡の敷地に商業・業務・住宅・駐車場からなる大規模複合再開発が予定されています。
住宅は約230戸のタワーマンション(地上27階建て)、業務棟は21階建てのオフィスビルとなり、商業フロア約8,000㎡や駐車場約400台分も含めた延べ床面積約85,000㎡規模の計画です。敷地内には歩行者が通り抜け可能な「まちなかガレリア」(屋内通路)やイベントスペース「まちなかプレイス」も整備される予定です。この再開発は当初2025年度の着工、2027年度の完成を目指していましたが、現在はスケジュールの見直しが行われています。
一方、西口第3-B地区の再開発事業はすでに完了し、地上28階建ての住宅棟「大宮スカイ&スクエア ザ・タワー」と地上13階建ての業務・公益棟「大宮サクラスクエア」が建設され、2024年5月に竣工しました。7月には商業ゾーン(サクラスクエア・モール)が開業しています。この再開発に合わせ、駅西口北側では都市計画道路「桜木1号線・2号線」の新設や周辺道路の拡幅整備が行われ、2024年7月には同再開発ビル周囲の道路が暫定開通しました。従来の狭い道路は大きく拡張され、新たな五差路交差点が整備されるなど交通環境も改善されています。
さらに西口から徒歩10分ほど離れた桜木町三丁目の旧市営駐車場用地では、JR東日本と大和ハウスグループによる「桜木駐車場用地活用事業(桜木PPJ)」が2025年4月15日に着工しました。敷地面積約1.8万㎡に商業棟、オフィス棟、駐車場棟、フィットネス棟、MICE対応の結婚式場棟という5棟構成の複合施設を建設するもので、2027年春の竣工を目指しています。開発コンセプト「Omiya Well-being Station」のもと、新たなビジネス・文化・ライフスタイル拠点の創出を目指します。"鉄道のまち大宮"の特色を活かした「電車ひろば」の整備や、新幹線を活用した物産輸送サービスによる各地の食文化を繋ぐイベントなども計画されています。
大宮駅とさいたま新都心駅の間で進む「(仮称)大宮サウスゲート増築プロジェクト」
「大宮サウスゲート増築プロジェクト」は、大宮GCS構想の対象エリア(東口・西口)とは別に、さいたま新都心駅寄りのさいたま市中央区新都心7-2で進められた民間オフィスビルの増築事業です。大宮駅とさいたま新都心駅のちょうど中間に位置するため「大宮」の名を冠して呼ばれていますが、行政区は大宮区ではなく中央区にあたります。
大成建設のプレスリリースによれば、既存のオフィスビル「大宮サウスゲート」(2007年6月竣工)に隣接する形で、地下1階・地上12階・塔屋1階建、延床面積約29,930㎡のオフィス棟が増築されました。発注者は新都心プロパティー特定目的会社、設計・施工は大成建設が担当し、2024年1月16日に着工しました。当初は2025年秋頃の竣工を予定していましたが、実際には2025年12月に「大宮サウスゲートフロント」として竣工しています。ZEB Oriented相当の環境性能とCASBEE Sランク取得を目指す仕様で、駐車台数は482台です。
大宮駅周辺の再開発一覧(前掲の表)には含まれない案件ですが、大宮駅・さいたま新都心駅の両駅を利用できるエリアとしてオフィス需要の受け皿になっている点は、大宮エリア全体の再開発ラッシュを理解するうえで押さえておきたいポイントです。
交通インフラ整備と都市機能の強化
各再開発と連動して、駅周辺の交通インフラ整備も進められています。西口第3-B地区では新設道路の開通により駅北側の道路ネットワークが強化され、第3-A・D地区では「まちなかガレリア」や歩道状空地の整備によって歩行者の回遊性向上が図られる予定です。東口においても駅前広場と周辺道路の再編が検討されており、歩行者と車両の動線分離やバス・タクシー乗降場の機能向上が課題となっています。
大宮GCS構想では、鉄道事業者と連携して駅構内に新たな東西自由通路(延長約260m×幅員15m)を整備する計画や、老朽化した東武野田線(東武アーバンパークライン)大宮駅の改良(1面2線から2面3線に増強して橋上化)なども含まれています。これにより将来的には東西口の回遊性向上と各交通モードの乗り換え円滑化が期待されます。
大宮駅の駅舎そのものも変わる——自由通路・東武線橋上化を中心に
周辺の再開発ビルだけでなく、大宮駅の駅舎機能そのものの強化もGCS構想の柱です。さいたま市が公表した推進会議資料によれば、GCS構想の対象範囲は駅周辺の約190ヘクタールにおよび、駅前広場や周辺街区の整備、駅機能の高度化を三位一体で進める枠組みとして、学識経験者・地元まちづくり団体・JR東日本や東武鉄道等の鉄道事業者・埼玉県が参加する推進会議で継続的に議論されています。
駅機能の高度化として計画されているのが、前述のとおり延長約260m・幅員15mの新たな東西自由通路と、東武野田線(東武アーバンパークライン)大宮駅を1面2線から2面3線へ増強したうえでの橋上化です。これらが実現すれば、現在は改札を出て迂回する必要がある東西間の移動が駅構内で完結するようになり、乗り換え利便性が大きく向上します。ただし、着工・竣工の具体的な年度はさいたま市・JR東日本から個別には公表されておらず、東口・西口の各再開発事業の進捗と合わせて段階的に整備が進む見通しです。
地域経済への影響と不動産価値の展望
一連の再開発ラッシュは、大宮エリアの地域経済に多面的な好影響をもたらすと見込まれます。大型オフィス供給により企業ニーズを地元に呼び込み、雇用創出や関連ビジネス誘致の効果が期待されます。新たな商業施設や交流拠点の開業は来街者を増やし消費を喚起し、「鉄道の街」としての観光資源にも新たな魅力が加わることになります。
不動産市場においては、再開発による大宮駅周辺の不動産価値の底上げが見込まれます。大宮区の地価水準は市平均を大きく上回る水準で推移し、駅近辺の再開発タワーマンションも高い人気を集めています。良質な住宅ストックの拡大と交通利便性のさらなる向上により、「住みたい街」としての評価がますます高まることが予想されます。
大宮区の地価は実際どう動いているか——2026年地価公示のデータ
埼玉県が2026年3月17日に公表した令和8年地価公示によると、さいたま市大宮区の商業地平均価格は1㎡あたり140万3,300円で、県内63市区町村の中で最も高い水準です。前年からの変動率は+7.6%で、県内順位は4位でした。住宅地平均価格は35万8,900円/㎡で県内2位、変動率は+3.9%でした。これに対し、さいたま市全体の商業地平均変動率は+5.4%、埼玉県全体の商業地平均変動率は+3.2%(住宅地は+2.0%)にとどまっており、大宮区は県平均・市平均を明確に上回るペースで地価が上昇しています。
再開発ラッシュが地価を押し上げている一因であることは間違いありませんが、オーナー・投資家にとって重要なのは、地価公示価格の上昇がそのまま相続税評価(路線価)や固定資産税評価にも波及する点です。大宮区内で不動産の売却・購入・相続を検討する場合は、地価公示の上昇トレンドが今後数年の税負担や資産評価にどう影響するかを含めて判断する必要があります。
公示地価だけでなく実際の取引価格も見る
公示地価は標準地の評価額です。実際に売買された価格がどう動いたかは、国土交通省が公表している不動産取引価格データで確認できます。大宮区の中古マンション取引を集計したものが次の表です。
| 年 | 取引件数 | 大宮区の㎡単価(中央値) |
|---|---|---|
| 2023年 | 250件 | 63.7万円 |
| 2024年 | 278件 | 75.0万円 |
| 2025年 | 353件 | 80.0万円 |
| 2026年(第1四半期のみ) | 76件 | 101.3万円 |
2023年から2025年にかけて+25.6%上昇し、2026年第1四半期はさらに101.3万円/㎡に達しています。2年半で㎡単価が6割近く上がった計算です。
実額でみると、2025年以降の取引は中央値5,400万円・専有面積70㎡で、取引のおおむね半数が2,700万円から7,500万円の範囲に収まっています。70㎡で5,400万円という水準は、都内23区の同規模と比べれば依然として手の届く価格帯です。
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(https://www.reinfolib.mlit.go.jp/)「不動産取引価格情報」(国土交通省)をもとにINA&Associates株式会社作成。2026年9月時点で取得できたデータによります。直近の四半期は後から取引が追加されるため暫定値です。
INAの見方(2026年9月時点)
ここからは公表資料ではなく、当社の見立てです。
大宮は、再開発の期待が実際の取引価格にはっきり表れているエリアです。2026年第1四半期の101.3万円/㎡は、2023年比で約6割の上昇にあたります。GCS構想という長期の枠組みが具体的な事業として動き始めたことを、市場が評価していると見ています。
ただし注意すべき点があります。大宮の再開発は完成までに10年以上かかる計画です。ここまでの上昇は期待の織り込みであり、実際の街の変化はこれからです。上昇率が高いということは、期待が外れたときの調整幅も大きいということでもあります。
投資家としての判断軸
- いま買うなら、2年半で6割上がった後の水準である前提で採算を組む。ここからさらに同じペースで伸びる想定は根拠が薄くなっています。
- 70㎡・5,400万円という価格帯はファミリー層の実需が支えています。投資マネー主導のエリアより値動きは安定しやすい一方、賃料の伸びは緩やかです。
- 2026年第1四半期の急伸が続くかを確認する。取引価格データは四半期ごとに更新されるため、同じ手順で追えます。
引用・参考資料
- 埼玉県「令和8年地価公示(埼玉県内分)の結果」(参照日:2026年9月2日)
- 国土交通省「市街地再開発事業」(参照日:2026年9月2日)
- 大成建設「オフィスビル『大宮サウスゲート』増築プロジェクト」着工に関するお知らせ(参照日:2026年9月2日)
- さいたま市「大宮駅グランドセントラルステーション化構想について」推進会議資料(参照日:2026年9月2日)
まとめ
大宮駅周辺の再開発事業は、鉄道結節点としての強みを最大限に活かした都市再生プロジェクトと言えます。駅を中心とした高度な都市機能集積により、ビジネスと居住の両面で魅力ある街づくりが進んでいます。都市開発と公共インフラ整備が両輪で進む大宮駅周辺は今後も発展が続くと見られ、進行中の再開発が順次完了すれば、「東日本の玄関口」にふさわしい新しい姿が現れることでしょう。
