ここ数年、マーケティングの現場で「ブランディング」という言葉を耳にする機会が増えました。ブランディングとは、ブランドを構築するためのあらゆる活動のことを指します。そもそもブランドとは、類似商品と差別化するための概念です。企業のロゴマーク、商品デザイン、キャッチフレーズ、名称など、すべてブランドを形づくる要素の一つ。ブランディングはこれらの要素を活用し、消費者にブランドを認知させる活動を指します。しかし、いざブランディングを実施しようとすると、なんとなくの理解だけでは応用できません。
そこで今回は、ブランディングの基礎から歴史、実施するメリット、成功に必要なポイントまでを解説します。
特にブランディングが重要といわれる中小企業の方をはじめ、ブランディングの実施を検討している方はぜひ参考にしてください。
ブランディングとは?基本の意味とマーケティングとの関係
ビジネスシーンやマーケティングにおいて「ブランディング」という言葉が頻繁に使われるようになりました。なんとなくイメージはつくものの、その内容を明確に説明できる方は少ないようです。まずはブランディングの意味と、マーケティングとの関係性を整理します。
ブランディングの意味
近年、多くの市場は飽和状態にあり、競争が激化しています。各市場で新規参入の余地は少なく、すでにシェアを確立している競合に勝つのは容易ではありません。たとえば新しくカフェを立ち上げる場合、「スターバックス」や「タリーズ」のような大手チェーン店をはじめ、多くのカフェがひしめいています。その中で消費者に選ばれるカフェへ成長するのは、難易度が高いといえるでしょう。
このような状況でシェアを獲得するには、ブランドの価値を高めることが重要です。高級ブランド業界はまさにブランド価値が明確だからこそ、高価格でも多くの消費者に支持されています。
ブランドとは、商品やサービスに付随する目に見えない価値、つまり消費者が抱くイメージです。そのイメージを具現化するために「ロゴマーク」「キャッチフレーズ」「デザイン」などが存在します。これらを活用して消費者にブランドを認知してもらう活動を総称して「ブランディング」と呼びます。ブランディングが成功し、消費者にブランド価値が浸透すると、市場でのポジショニングが確立します。その結果、競合との差別化が実現し、明確なブランド価値を提供できるようになるのです。
実はブランディングを意識していなくても、企業は集客や売上アップのために必然的にブランディングを行っています。なぜなら、競合との差別化を図り独自の価値を打ち出さなければ、類似商品が多い市場でシェアを獲得するのは困難だからです。無意識的に行われているブランディングですが、戦略的に取り組むことで、ブランド価値をさらに高め、市場でのポジション確立につなげられます。
ブランディングとマーケティングの関係
近年のブランディングは、マーケティングの一環として認識される傾向にあります。マーケティングとは、商品やサービスを「売るための仕組みづくり」のことです。市場の競争が激化する中、商品やサービスは「つくれば売れる時代」ではなくなり、売るための仕組みづくりが必須となりました。
マーケティングが当たり前となった今、その内容も多岐にわたります。市場調査だけでなく、広告配信などWeb上でのマーケティングも活発化。さらに事業拡大に向けた市場の成長性を見極めるためにも、マーケティングは欠かせません。マーケティングが機能していないと、商品を売ることだけでなく、事業の継続自体が難しくなるといえます。
ブランディングとマーケティングの関係性については、さまざまな定義がなされています。マーケティングの一環ともいえますし、独立した概念ともいえます。とはいえ、「商品やサービスを売ること」「事業を存続させること」という最終目的は共通しています。そのため「マーケティング施策の根底にブランディングを意識する」という考え方が、実務における「ブランディング」の意味合いに近いでしょう。
ブランディングの歴史を知る
ブランディングへの理解を深めるため、あまり知られていないブランディングの歴史をご紹介します。
旧時代のブランディング
ブランディングの歴史は長く、新石器時代にまで遡ります。始まりは農場動物への「焼印」です。放牧されている牛に焼印を押し、所有者を区別していたとされています。その後、焼印の習慣は個人の所有物へと拡大し、最終的には貿易において、商品の製造元や種類を示すためにバッジやタグがつけられるようになりました。個人の所有物を明確化する目的から始まり、大量生産や貿易の発展とともに、商業的なブランディングへと進化していったのです。
また当時のブランディングは、製品の品質を保証するためのものでもありました。中世ヨーロッパでは、製品の品質と基準を保証するために印をつけるシステムが確立されていました。
マーケティング視点で進化したブランディング
所有物の区別から始まり、品質保証のために用いられたブランディングは、現代ではマーケティングの文脈で語られるようになりました。
日本にマーケティングの概念が登場したのは、高度経済成長期の1955年頃といわれています。生産者中心だった市場が、マーケティングの登場により消費者中心へと転換。消費者のニーズに合わせた商品やサービスが次々と誕生し、経済も活性化していきました。
当時は市場の成長期であり、商品はつくれば売れる時代でした。しかし技術の発展や情報化社会への変化に伴い、市場は成熟期に突入。新規参入の事業は成長が難しい状態になりました。4P(Product・Price・Place・Promotion)中心のマーケティングも限界を見せ始めたのがここ数年の動きです。そこで注目されたのがブランディングです。類似する競合が増える中、他社との差別化を図り、ブランド価値を確立することで、中長期的に売れ続ける仕組みが求められるようになりました。
地域別に見るブランディングの考え方の違い
日本は他国と比べてブランディングへの意識が低く、なかなか取り組みが進まない状態にありました。ここ数年でようやくブランディングが意識されるようになった背景には、歴史的・文化的な要因があります。ここでは地域ごとのブランディングの考え方の違いを見ていきます。
欧州のブランディング
欧州は「ルイ・ヴィトン」「エルメス」「フェラガモ」など、数多くの高級ブランドを輩出している地域です。欧州ではブランドに歴史的な価値を求める傾向があり、中長期的なブランド価値を維持するために古くからブランディングが重視されてきました。そのため新興ブランドであっても、ブランディングに重きを置いたマーケティングを展開しています。
欧米のブランディング
欧米は多民族国家であるため、人種も言語も異なる多様な消費者とコミュニケーションを取る必要があります。さらに商品・サービスもあふれているため、継続的な売上にはリピーターの獲得が不可欠です。そのためには、消費者に強い印象を持ってもらう必要があります。欧米ではリピーター獲得のための手段として、ブランディングが積極的に取り入れられています。
日本のブランディング
日本でブランディングが浸透しにくかった背景には「のれん文化」の存在があります。のれんを掲げていれば自然と客が集まるという考え方が根づいていたのです。このような暗黙のコミュニケーションでビジネスが成り立っていた背景には、島国という地理的特性や日本人の控えめな気質が関係しています。日本ではブランドは掲げるだけのものと考えられ、積極的にブランド価値を高める必要性が認識されていませんでした。この考え方が、ブランディングの発展を遅らせた一因と考えられます。
中小企業がブランディングで得られる3つのメリット
市場の成熟期にある今、ブランディングの重要性は高まっています。ここではブランディングの重要性がより理解できるよう、実施する3つのメリットをお伝えします。
メリット1:利益向上
市場が成熟しているということは、類似商品・サービスが多いということ。利益を向上させるには、その中から消費者に選ばれる必要があります。つくれば売れる時代ではない今、消費者に価値を理解してもらい、中長期的な関係を築くことが不可欠です。顧客との中長期的な関係構築は「顧客ロイヤルティ」や「LTV」の向上とも呼ばれ、その実現にブランディングは欠かせません。ブランディングにより認知を獲得し、ブランドに価値を感じてもらうことで、安定的な利益向上が期待できます。
またブランディングが成功すれば、広告に多額の費用をかけなくても消費者に選ばれるようになります。企業側からアプローチしなくても、消費者自らがブランドを見つけてくれるからです。広告費の削減はCPAの改善につながり、利益向上に直結します。
メリット2:人材確保
少子高齢化の進行に伴い、働き手の減少は深刻な問題です。商品やサービス、そして利益は人材あってこそ生み出されるもの。働き手が減少し売り手市場になると、求職者が企業を選ぶ立場になります。知名度の高い企業に応募が集中し、そうでない企業は採用に苦戦する状態になりかねません。知名度の高い企業には優秀な人材も集まるため、数だけでなく質の面でも優位に立てます。人材の差は利益にも直結するため、企業自体のブランディングで認知を広め、優秀な人材の確保につなげることが重要です。
メリット3:競合との差別化
ブランディング最大のメリットは、競合との差別化です。消費者は「価格」「デザイン」「機能」「性能」などを比較検討して購入を決定します。しかしこの観点だけでは、ブランド価値は考慮されていません。たとえば価格重視の消費者は、より安い類似商品が登場すればすぐに乗り換えてしまうでしょう。
一方、ブランディングによりブランドそのものが購入の決め手になっていれば、価格や機能が購入の決定的要因にはなりません。競合より価格が高く、欲しい機能がなくても、「このブランドだから」という理由で選ばれるのです。ブランドは、すべての企業が持つ唯一無二の価値です。そのブランド価値が消費者の心に根づけば、競合と比較されなくなります。比較されなくなれば市場での明確なポジションが確立し、安定的なシェア維持が期待できるのです。
ブランディングの成功と失敗の分かれ目
ブランディングは概念的であり、一般的なマーケティング施策のように数値で測りにくいものです。そのため成功と失敗の区別がつきにくい点が注意すべきポイントです。
ブランディングの成功とは?
ブランディングの成功とは、企業や商品・サービスのブランドが確立し、消費者が一定のイメージを持っている状態を指します。ロゴや色、デザインなどの視覚的要素も含まれますが、それだけでは購入の決め手になりません。「このブランドが良い」と唯一無二の感情を抱いてもらうことが重要です。つまり、競合との差別化が明確で、消費者が自ら選んで購入・利用している状態こそ、ブランディングの成功といえます。
たとえば「Apple」や「スターバックス」は、各市場で高い価格帯でありながら消費者に選ばれ続けています。その理由はブランド価値が認められているからです。商品・サービス自体の品質はもちろん、それを利用すること自体が一種のステータスとなっています。これこそブランドが消費者に与える価値であり、長期的に安定したシェアを維持できる要因なのです。
ブランディングの失敗とは?
ブランディングの失敗とは、企業が発信するイメージと消費者が抱くイメージが乖離している状態です。たとえば「希少な天然由来成分配合の高級化粧品」を販売しているのに、パッケージに安っぽさがあったらどうでしょう。企業が伝えたい「高級感」が消費者に届かず、ブランド価値が下がってしまいます。ビジュアルだけがブランドイメージをつくるわけではありませんが、消費者にブランドの概念が最も伝わりやすいのはデザインなどの視覚的訴求です。デザインやイメージカラー、ロゴマークは、消費者に伝えたい概念を具現化する役割を果たしています。
ブランディングの失敗を避けるには、デザインなどの視覚的要素も大切ですが、まず具現化したいイメージやブランド価値を明確にすることが重要です。
中小企業のブランディングに必要なポイント
ここまでブランディングについてさまざまな角度から解説してきました。ブランディングの概要と、実施することで何が実現できるかが見えてきたでしょう。ここではブランディングの基礎に立ち返り、成功に必要なポイントをお伝えします。
一貫性のある顧客体験をつくる
ブランディングではロゴや色、デザインに注目しがちですが、それらは一部の要素にすぎません。重要なのは、商品やサービスを通じた顧客体験全体です。顧客体験は、消費者がブランドと接するすべての場所で発生します。この観点で見れば、ビジュアルがブランディングの一要素であることが理解しやすいでしょう。商品やサービスはもちろん、「広告」「社員」「SNS」「店舗」「コールセンター」「Webサイト」など、あらゆる接点で一貫した顧客体験を提供することが真のブランディングです。「消費者がどう感じるか」を軸に、各接点で必要な施策を実行することがブランディング成功への道筋といえます。
中小企業にこそブランディングが必要な理由
ブランディングは、中小企業こそ取り組むべき施策です。大企業はすでに市場でのポジションが確立されているからこそ、大企業へと成長しています。まだポジションが確立されておらず、安定的にシェアを維持できていない中小企業だからこそ、ブランディングの効果が発揮されます。先述した「利益向上」「人材確保」「競合との差別化」は、すべて企業が成長する過程で必要な要素です。
またブランディングには特定の施策があるわけではなく、マーケティングの根底で意識すべきものです。そのため新たに莫大な費用を投じる必要はなく、通常のマーケティング活動の中で一貫性のある顧客体験を生み出すことに注力すればよいのです。もちろん漠然としたイメージではなく、企業が提供する本質的な価値を見出すことがブランディングの出発点となります。
中小企業のブランディング構築にはオウンドメディアが最適
ブランディングでは一貫性のある顧客体験をつくるため、顧客との接点すべてで実施すべきものです。中でも最優先で取り組むべき場所として、オウンドメディアが挙げられます。オウンドメディアとは、第三者に依存せず企業自らが発信するプラットフォームです。企業が消費者に伝えたいことを、自らの言葉で発信できます。
企業のオウンドメディアでは、商品やサービスに関連する有益な情報が発信されているケースが多く見られます。商品やサービスを最も理解している企業が発信するからこそ、消費者からの信用獲得が可能です。さらに発信を通じて、商品やサービスの認知拡大も期待できます。オウンドメディアは文章だけでなく視覚的な訴求もしやすいため、消費者の記憶に残りやすく、ブランディングに最適です。このように顧客体験に必要なポイントを多く集約しているのがオウンドメディアといえます。
またオウンドメディアに蓄積されたコンテンツは資産であり、企業イメージの一部として定着しやすいものです。ブランドは中長期的に変わらず存在し続けるからこそ価値が高まります。同様にオウンドメディアも長く存在し続ける資産であり、ブランドを体現する最適な場です。
つまりオウンドメディアは、効率的に一貫した顧客体験を提供でき、企業ブランドを体現する資産として長期にわたり機能するものです。ブランディングに取り組むなら、まずオウンドメディアの構築から始めてみることをおすすめします。
まとめ
今回はさまざまな観点から、ブランディングについて解説しました。
成熟する市場において、新たな事業の確立や事業拡大、安定的なシェアの確保を実現するには、ブランディングが重要なキーポイントとなります。しかし重要性はわかっていても、なぜ取り組むべきなのか、そもそもブランディングとは何かが曖昧な方も多いでしょう。まずはブランディングの本質を理解し、何を成し遂げたいのかを明確にすることが第一歩です。
ブランディングへの理解が不十分なまま実施しても、期待する成果は得られません。ぜひ本記事を参考に、必要なポイントを押さえてブランディングに取り組んでみてください。
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