品川駅の北側、国道15号(第一京浜)沿いで、高さ約115mのツインタワーを建設する「品川駅北周辺地区第一種市街地再開発事業」が動き出しています。JR高輪ゲートウェイ駅と高輪地区をつなぐ戦略的な位置に計画されたこの事業は、すでに2024年度に着工し、2029〜2031年度の竣工を目指しています。本稿では事業の全容・施設構成・スケジュールを整理したうえで、地価動向と不動産投資家・資産オーナーが今取るべきアクションを私の考えとともにお伝えします。
品川駅北周辺地区第一種市街地再開発事業とは何か?
品川駅北周辺地区第一種市街地再開発事業は、東京都港区高輪二丁目・港南二丁目の各一部を対象とする大規模な都市開発プロジェクトです。施行者は「品川駅北周辺地区市街地再開発組合(予定)」で、事業協力者として東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)と日鉄興和不動産株式会社が名を連ねています。
この地区がなぜ再開発の対象となったのか、その背景は明確です。国道15号に面した細長い区域は、奥行きの浅い敷地が多く、細分化されたまま老朽化が進んでいました。旧耐震基準の建物も含まれており、耐震性の強化が急務であるとともに、駅前にもかかわらず賑わい空間やオープンスペースが極めて不足している状況でした。だからこそ、土地の集約と高度利用を図りながら、JR高輪ゲートウェイ駅周辺の開発エリアと高輪地区という「二つの核」をつなぐ役割を担う再開発として計画されました。
2棟のツインタワーが生み出す施設構成とは?
本事業は、国道15号を挟む形で北側街区(区域4-2B)と南側街区(区域4-2C)の2棟からなるツインタワー構成をとります。建物高さはいずれも約115mで、地区のシンボルとなる存在です。
北側街区(区域4-2B)は地上25階・地下2階、延床面積約26,600㎡の規模で、宿泊施設(ホテル)と店舗で構成されます。敷地面積は約0.3ヘクタールと比較的コンパクトですが、高輪ゲートウェイシティとの近接性を活かし、国際的な訪問者を受け入れる機能が期待されています。竣工目標は2031年度です。
南側街区(区域4-2C)は地上23階・地下2階、延床面積約39,900㎡の規模で、事務所(オフィス)・共同住宅(レジデンス)・店舗という複合用途で構成されます。敷地面積は約0.4ヘクタール。こちらはより広い用途ミックスにより、多様なユーザーを取り込む設計となっています。竣工目標は2029年度です。
2棟の間には約1,400㎡の「広場5号」が整備される予定です。この広場には、高輪ゲートウェイ駅の開発工事中に出土した歴史的遺構「高輪築堤」の信号機部分などが移築保存されます。日本最初の鉄道遺産の一部を現代の再開発の中に組み込むという、文化的価値を継承する試みは、このエリアのブランド形成においても重要な意味を持ちます。
事業スケジュールと現在の進捗状況は?
本事業のスケジュールは以下の通りです。
- 2023年度: 品川駅北周辺地区市街地再開発組合の設立認可
- 2024年度: 工事着工
- 2029年度: 区域4-2C(南側・オフィス・住宅棟)竣工予定
- 2031年度: 区域4-2B(北側・ホテル棟)竣工予定
本稿執筆時点(2026年3月)では着工から約1年が経過しており、工事が本格的に進行中の段階です。竣工まで数年を残しているこのタイミングは、不動産投資家にとって重要な「先読み期間」に当たります。
品川エリア再開発全体像との連携はどうなっているのか?
品川駅北周辺地区第一種市街地再開発事業を単独で捉えることは、本質を見誤るリスクがあります。この事業は、品川駅周辺で進む複数の大規模プロジェクトが有機的につながる都市再生戦略の一部です。
隣接する高輪ゲートウェイシティ(JR東日本「品川開発プロジェクト第I期」)は、延床面積約84万5,000㎡に及ぶ巨大開発で、2025年3月のまちびらきから100日で延べ200万人以上が訪れています。2026年春にはグランドオープンを迎え、住宅棟・文化創造棟・複合棟IIが全て揃う予定です。品川駅北周辺地区の再開発は、この高輪ゲートウェイシティと一体となって、国道15号の西側に広がる高輪地区との「架け橋」を担います。
さらに南方向には、品川駅街区地区の開発(品川駅線路上空の巨大デッキ計画)が2030年代の完成を目指して動いています。加えて、リニア中央新幹線の品川始発駅が開業すれば、このエリアは東京・名古屋・大阪を結ぶ「超広域交通結節点」として世界的な注目を集めることになります。
地価・不動産投資への影響をどう分析するか?
では、この再開発は不動産市場にどのような影響をもたらすのでしょうか。データを基に考察します。
東京都港区の公示地価によると、品川駅周辺の2025年公示地価は502万円/㎡(前年比+12.77%)と著しい上昇を示しています。港区全体でみると、過去5年間で約39%の上昇(商業地では約47%)と、東京都区部平均の19%を大幅に上回っています。高輪ゲートウェイシティ周辺の高輪エリアでは、賃料が3年連続で上昇傾向にあるという健美家の調査結果も出ています。
参考事例として注目したいのが、麻布台ヒルズ開業後の効果です。開業後、半径500m圏内の物件価格は平均+18.7%上昇し、隣接エリアでも+12.3%の波及効果が確認されています。品川エリアでは高輪ゲートウェイシティ、品川駅北周辺地区再開発、品川駅街区地区という複数の大規模開発が同時進行しており、単一施設開業の場合を上回る複合効果が生じる可能性があります。
しかし、投資家として注意すべき点もあります。現時点でいくつかの再開発に関する情報は「計画段階」または「着工直後」であり、竣工後の供給増加による需給バランスの変化が生じることも考えられます。短期的なキャピタルゲインのみを狙った投資は、慎重な判断が必要です。
オーナー・投資家が今取るべきアクション
品川エリアの資産価値向上から具体的なメリットを得るために、オーナーと投資家が今考えるべきアクションを整理します。
竣工前の仕込みタイミングを逃さないという点が最重要です。区域4-2Cの竣工は2029年度、区域4-2Bは2031年度の予定です。過去の大規模再開発事例をみると、竣工2〜3年前から周辺相場が先行して上昇するパターンが多く見られます。本稿執筆時点はその「先行期間」の初期段階にあたります。
また、賃貸需要の変化に備えた物件管理戦略の見直しも重要です。ホテル棟(4-2B)の開業後は、観光・ビジネス訪問者の流入が増加し、短期滞在型の需要が高まることが予想されます。一方、オフィス・住宅複合棟(4-2C)の完成は、IT・金融系企業の集積を促し、高所得層の居住需要を引き込む可能性があります。周辺の賃貸物件オーナーは、これらの需要変化を先読みしたリノベーション・設備投資の検討を始める時期です。
さらに、品川エリアには法人需要の高まりも見込まれます。高輪エリアの賃料上昇は今後も継続する見通しであり、「持ち続ける」という選択肢の価値も増しています。
私の考え:再開発は「点」ではなく「面」で見る
私がこの品川駅北周辺地区再開発を注目している最大の理由は、「点」の開発ではなく、品川エリア全体が「面」として機能し始めるという確信があるからです。
個別の再開発プロジェクトは、それ単体では一定の価値創造にとどまります。しかし品川エリアでは、高輪ゲートウェイシティ(2025〜2026年完成)、品川駅北周辺地区(2029〜2031年竣工)、品川駅街区地区(2030年代)、リニア中央新幹線(開業時期調整中)という連鎖が起きています。これらが完成したとき、品川は日本最大の国際的交通・ビジネス・居住エリアに変貌します。
長期的視野で不動産資産を運用するオーナーにとって、このエリアの動向を継続的にウォッチし、適切なタイミングで資産配分を考え直すことは、資産価値の持続的な向上につながります。不確実な情報には「現時点での計画」という留保を付けながら、しかし確実に動き始めているこの大きな潮流を、私たちINA&Associatesは丁寧に伝え続けていきたいと考えています。信頼と正直さを根幹にした情報発信が、皆さんの資産形成における長期的パートナーシップの礎だと信じています。
まとめ
本稿の重要ポイントを整理します。
- 事業概要: 港区高輪二丁目・港南二丁目に高さ約115mのツインタワー2棟を建設。施行者は市街地再開発組合(予定)、事業協力者はJR東日本・日鉄興和不動産
- 施設構成: 北側街区(4-2B)ホテル・店舗+南側街区(4-2C)オフィス・住宅・店舗の複合開発。棟間に約1,400㎡の広場と高輪築堤移築保存
- スケジュール: 2024年度着工・2029年度(4-2C)・2031年度(4-2B)竣工予定
- 地価動向: 港区の公示地価は5年間で約39%上昇。高輪エリア賃料は3年連続上昇中
- 投資戦略: 竣工2〜3年前の先行期間を活用した資産配分の見直しが有効。賃貸需要の変化を先読みした物件管理戦略の更新が重要
- 長期視点: 品川北周辺、高輪ゲートウェイシティ、品川駅街区、リニアが連鎖する「面」の再生として捉えることが本質
よくある質問(FAQ)
Q1. 品川駅北周辺地区第一種市街地再開発事業はいつ完成しますか?
現在の計画では、南側街区(区域4-2C:オフィス・住宅・店舗複合)が2029年度、北側街区(区域4-2B:ホテル・店舗)が2031年度の竣工を目指しています。2024年度に着工しており、工事は進行中です。ただし都市開発事業は工期の変更が生じることもありますので、東京都都市整備局の最新情報をご確認ください。
Q2. 高輪ゲートウェイシティと品川駅北周辺地区再開発はどう違いますか?
高輪ゲートウェイシティはJR東日本が施行者となる「品川開発プロジェクト第I期」で、延床面積約84万5,000㎡の超大規模開発です(2025〜2026年完成)。一方、品川駅北周辺地区再開発(区域4-2)は市街地再開発組合が施行者となる別事業で、国道15号に面した高輪二丁目・港南二丁目の細長い区域が対象です。両者は位置的に近接しており、まち全体として連携しながら高輪地区と品川駅をつなぐ役割を分担しています。
Q3. 品川エリアで不動産投資をするならどのタイミングが最適ですか?
一般論として、大規模再開発エリアでは竣工2〜3年前から周辺相場が先行上昇するケースが多く見られます。品川駅北周辺地区の竣工予定(2029〜2031年度)を踏まえると、2026〜2027年頃が「先行期間」の中期にあたります。ただし個別物件の価値は立地・用途・物件状況により大きく異なります。INA&Associatesでは具体的な物件選定・エリア分析のご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
Q4. 高輪築堤とはどのようなものですか?再開発との関係は?
高輪築堤は、1872年(明治5年)に日本で初めての鉄道が開業した際、東京湾の海上に建設された石積みの堤防線路跡です。高輪ゲートウェイ駅の工事中に出土し、日本遺産に認定されました。品川駅北周辺地区再開発では、2棟のタワー間に整備される「広場5号」に、信号機部分など一部の遺構が移築保存される予定です。都市開発と歴史保存を両立する取り組みとして、このエリアのブランド価値を高める重要な要素となっています。