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外国人投資家が日本不動産を買い続ける理由|円安後も続く構造的要因

2025年の外国人投資家による日本不動産投資額は過去最高の6兆2,180億円に達しました。円安が落ち着いた今もなぜ買い越しが続くのか、最新データと構造的要因を解説します。

最終更新: 約11分で読めます

2025年、外国人投資家による日本不動産の購入額は過去最高水準を更新しました。「円安だから日本の不動産が買われた」という説明が広まっていた時期から一歩進み、為替が落ち着いた局面でも買い越し傾向は続いています。なぜこの流れは止まらないのか。最新の統計データと構造的な背景を整理することで、日本の不動産オーナーが今後の保有・売却判断を行ううえで重要な視点が見えてきます。

外国人投資家による日本不動産買い越し、2025年は過去最高水準に

JLLの調査によると、2025年の日本不動産投資総額は約6兆2,180億円に達し、過去最高水準を記録しました。そのうち外国人投資家が占める比率は39%に達しており、2007年のバブル期に記録された34%を大きく上回っています。特に2025年の上半期(1〜6月)だけで外資による購入額は約1兆1,400億円となり、前年同期比でおよそ2倍の規模に拡大したと報じられています。

「買い越し」とは、ある主体が特定期間の売却額よりも購入額が多い状態を指します。外国人投資家が一方的に日本の不動産を購入し続けているという事実は、単なる一時的なブームではなく、継続的な需要構造の変化を示しています。ニッセイ基礎研究所の分析でも、2025年は事業法人と並んで海外投資家が買い越しの主体であることが確認されています。

なぜ世界の投資家は東京を目指すのか?円安だけではない、2025年以降の不動産投資戦略では、投資家が東京に向かう背景をより広い視点で解説しています。本記事では特に「円安が落ち着いた今も買い越しが続く理由」という逆説的な問いに焦点を当てます。

円安が「落ち着いた」今も買われ続ける理由とは?

2023年〜2024年にかけて、外国人投資家が日本不動産に殺到した直接的な要因の一つは円安でした。ドルやユーロから見て日本円が大幅に割安になった結果、日本の不動産は「お得な買い物」として映ったわけです。しかし、2025年以降は日銀の政策金利引き上げを背景に円高方向への調整が進みました。にもかかわらず、外国人投資家の購入意欲は衰えていません。

JLLの分析は、この変化を「投資判断の高度化」と位置づけています。かつては「円安ゆえの割安感」が主な動機でしたが、現在の外国人投資家は「為替が揺れても成立する投資かどうか」という基準で物件を評価しています。つまり、為替メリットが縮小したとしても投資収益が成立するだけの根拠が東京にはある、という判断がなされているのです。

この判断の背景には、東京のオフィス賃料が国際比較においてまだ割安であるという事実があります。日本経済新聞が2025年9月に報じたデータによると、東京のオフィス賃料は香港・シンガポール・ニューヨーク・ロンドンと比較してなお低水準にあります。この賃料の割安感が、海外機関投資家の購買意欲を支えているとされています。利回りと賃料水準という「ファンダメンタルズ」で評価したとき、東京は国際的にまだ割安に映るのです。

投資家は何を買っているのか——セクター別の実態は?

JLLの調査によると、外国人投資家がターゲットとするセクターはオフィス(42%)と賃貸住宅(27%)が中心を占めています。ただし、2025年以降は物流施設やホテルへの投資も拡大しており、単一セクターへの集中リスクを分散しながら日本市場への露出を高める動きが鮮明になっています。

住宅セクターに関しては、国土交通省が2025年11月に初めて公表した新築マンション取引調査が重要な一次データを提供しています。同調査によると、2025年1〜6月の東京23区における新築マンションの海外居住者取得率は3.5%でした。都心6区(千代田・中央・港・新宿・渋谷・文京)に限ると7.5%に達しており、2024年通年の取得率1.6%と比較すると、わずか1年余りで大幅に拡大しています。

国籍別では、台湾が最多の192戸(全体の6割超)を占め、次いで中国、欧米系機関投資家と続いています。台湾系投資家に関しては、個人富裕層だけでなく機関投資家による中規模・大規模物件の取得も増えています。単純な「外国人個人投資家による住宅購入」にとどまらない、構造的な投資フローが生まれているのです。

金利上昇局面でも崩れない海外マネーの流入構造とは?

日銀は2025年から2026年にかけて政策金利を段階的に引き上げており、2026年中に政策金利が1%前後に達するとの見方もあります。国内の不動産投資家にとっては、借入コストの上昇が直接的なリスクとなります。しかし、外国人機関投資家の多くはエクイティ(自己資金)を主体とした投資スタンスをとっており、金利上昇の影響を受けにくい構造があります。

また、日本の金利水準は欧米と比較して依然として低く、グローバルな資本の目線では「低金利・低リスク市場としての日本」という位置づけはまだ揺らいでいません。JLLの分析では、政策金利が1%に達したとしても、東京のオフィスや賃貸住宅における投資利回りは欧米の主要都市と比較して十分な水準を保つと評価されています。

外国人富裕層による日本の高級不動産投資が加速—タワーマンション価格上昇の背景と投資戦略でも詳しく触れていますが、外国人投資家の流入は恩恵だけでなくリスクもはらんでいます。彼らが市場から引き上げるシナリオを含めて、複眼的に捉えることが重要です。

日本不動産オーナーへの影響と見通し

外国人投資家の買い越し傾向は、日本の不動産オーナーにとっていくつかの重要な意味を持ちます。まず、海外マネーの流入は地価・賃料に対する上昇圧力として機能しています。特に都心部や交通利便性の高いエリアでは、外国人投資家が高値での取得を厭わないため、国内の売却環境が良好に保たれています。

次に、売却・保有の判断において「買い手需要の厚み」という観点が新たに加わります。従来の売却先として想定されていた国内法人や個人投資家に加え、外国人機関投資家という大きな需要層が存在します。これにより、大型物件・優良立地の物件における流動性が高まり、売却タイミングの選択肢を広げる効果があります。

一方で、注意すべき点もあります。外国人不動産取得に対する規制強化の議論が国内外で浮上していることです。現時点では日本政府による追加規制は実施されていませんが、政策変更のリスクは常に意識しておく必要があります。長期的な視点から保有資産の評価と出口戦略を考えることが、不動産オーナーにとって賢明な姿勢です。

国際政治と為替変動が不動産投資を決める|地政学リスクと円安・円高の影響を徹底解説では、外部環境の変動が不動産価値に与える影響をより詳しく解説しています。

INA&Associatesの見解

私がこの一連のデータを見て感じるのは、外国人投資家の行動原理が本質的に変化しつつある、という点です。「為替メリットの享受」から「東京という都市の構造的価値への評価」へと転換が進んでいます。円安が主因であれば、円高になれば撤退するはずです。しかし実際には、円安が一服した後もマネーの流入は続いており、為替を超えた「東京の本源的な価値」が世界的に再評価されていることを示しています。

日本の不動産市場が持つ透明な法制度・世界有数の大都市圏としての安定性・割安な賃料水準という構造的優位性は、為替変動では打ち消せません。だからこそ、金利が上昇し割安感が薄れていく中でも買いが続いているのです。オーナーの方にとって大切なのは、こうした外部需要の変化を「追い風」として活用しつつも、過度に外部依存しない保有戦略を持つことです。私たちINA&Associatesは、国際的な市場動向を踏まえた資産戦略のご相談を随時お受けしています。

まとめ

  • 2025年の外資不動産投資額は過去最高の約6兆2,180億円、海外投資家比率39%(JLL)
  • 円安一服後も買い越しが続く背景には、東京の「構造的割安感」と「ファンダメンタルズの強さ」がある
  • 国交省初調査で東京都心6区の新築マンション海外居住者取得率が2025年上半期7.5%と判明
  • 投資セクターはオフィス(42%)・賃貸住宅(27%)が中心、物流・ホテルへも拡大
  • 金利上昇局面でも多くの外国人機関投資家はエクイティ主体で影響を受けにくい
  • 外国人買い越しは地価・賃料の下支えになる一方、規制強化リスクも注視が必要
  • オーナーは外部需要を追い風に活かしつつ、過度な外部依存を避けた保有戦略を持つことが重要

よくある質問(FAQ)

Q1. 外国人投資家による日本不動産購入は、今後も続くと考えてよいですか?

A. 現時点のデータと市場構造を踏まえると、短期的には継続する可能性が高いと見ています。ただし、外国人不動産取得に対する規制強化、日本の金利上昇による利回り圧縮、円高の急速な進行などがリスク要因として挙げられます。「今後も必ず続く」と断言することはできません。長期的な視点で複数のシナリオを想定しておくことをお勧めします。

Q2. 外国人投資家が買っているのはどのエリア・物件が多いですか?

A. 国土交通省の調査によると、新築マンションの海外居住者取得は東京都心6区(千代田・中央・港・新宿・渋谷・文京)に集中しており、2025年上半期の取得率は7.5%に達しています。機関投資家はオフィスや大型賃貸住宅への投資が中心で、都心・主要駅近くの物件が対象になるケースが多い傾向があります。

Q3. 私が所有する物件に外国人投資家からの需要はありますか?

A. 物件の立地・規模・築年数によって大きく異なります。都心部や交通利便性の高いエリアの大型・優良物件は、外国人機関投資家の購入対象となる可能性があります。一方、郊外の小規模物件は国内需要が中心となるため、外国人投資家の動向が直接影響するケースは少ない傾向があります。個別の物件についてはご相談ください。

Q4. 外国人投資家の買い越しが続くと、私の不動産の資産価値は上がりますか?

A. 外国人マネーの流入は、特に都心の地価・賃料に上昇圧力をかける方向で働いています。ただし、これは「必ず資産価値が上がる」ことを意味するものではありません。将来の価格・収益予測は様々な要因に左右されるため、断定的な見通しはお伝えできません。保有資産の現在価値や出口戦略については、市場動向を踏まえた個別のご相談をお勧めします。

引用・参考資料

Daisuke Inazawa, President & CEO of INA&Associates Inc.

著者

代表取締役社長 / CEOINA&Associates株式会社

INA&Associates株式会社 代表取締役社長。首都圏・近畿圏を中心に不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントを統括。収益不動産投資戦略と超富裕層向け不動産コンサルティングを専門領域とする。

稲澤 大輔(いなざわ・だいすけ)は、INA&Associates株式会社の代表取締役社長(CEO)。大阪本店・東京営業所を拠点に、首都圏・近畿圏における不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントの三事業を統括する。

専門領域は、収益不動産の投資戦略立案、賃貸経営の収支最適化、超富裕層(UHNWI)・機関投資家向け不動産コンサルティング、およびクロスボーダー不動産投資。国内外の投資家に対し、データと長期視点に基づくアドバイザリーを提供している。

「企業の最も重要な資産は人財である」を経営理念に掲げ、人財投資カンパニーとして持続可能な企業価値の創造に取り組む。経営者として、変化の時代におけるリーダーシップのあり方と組織文化についても積極的に発信を続けている。

合格・取得資格は11種:宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、管理業務主任者、賃貸不動産経営管理士、行政書士、個人情報保護士、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者。

  • 宅地建物取引士
  • 公認不動産コンサルティングマスター
  • マンション管理士
  • 管理業務主任者
  • 賃貸不動産経営管理士
  • 行政書士
  • 個人情報保護士
  • 甲種防火管理者
  • 競売不動産取扱主任者
  • マンション維持修繕技術者
  • 貸金業務取扱主任者