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法人取引量指数とは?2025年11月の動向と不動産市場への影響を解説

国土交通省が試験運用する法人取引量指数の2025年11月データを解説。全国合計▲11.8%の背景と年間トレンド、都市圏別の動向から不動産オーナーが取るべきアクションまで分析します。

最終更新: 約8分で読めます

国土交通省が令和8年2月27日に発表した「法人取引量指数(試験運用)」の2025年11月分データでは、全国合計が264.4と前月比▲11.8%を記録しました。全カテゴリで前月比マイナスとなったこの結果を、どのように読み解くべきでしょうか。単月の変動に一喜一憂するのではなく、中長期のトレンドとあわせて冷静に分析していきます。

法人取引量指数とは?国土交通省が公表する不動産取引の指標

法人取引量指数は、法人が取得した既存建物の移転登記量をもとに算出される指標です。国土交通省が試験運用として公表しており、登記データから法人による不動産取引の動向を把握することを目的としています。基準値は平成22年(2010年)の年間平均を100としており、季節調整値が用いられています。

この指数が注目される理由は、法人の不動産取引が市場全体の方向性を示す「先行指標」としての性質を持つためです。個人の住宅購入と異なり、法人取引は投資判断や事業戦略に基づいて行われます。だからこそ、法人の動きを把握することは、不動産市場の今後を見通すうえで重要な手がかりとなります。

なお、試験運用段階であるため、今後集計方法や公表内容が変更される可能性がある点には留意が必要です。

2025年11月の全国動向はどうだったのか?全カテゴリで前月比マイナス

2025年11月の法人取引量指数は、住宅・非住宅を問わずすべてのカテゴリで前月比マイナスとなりました。以下が主要データです。

合計:前月比▲11.8%の264.4

全国合計の季節調整値は264.4で、10月の299.8から▲11.8%の下落を記録しました。10月が前月比+7.0%と高い伸びを見せた反動もあり、単月の振れ幅としては大きいものの、2010年基準の2.6倍超という水準自体は依然として高い位置にあります。

住宅:戸建住宅▲10.9%、マンション▲5.5%

住宅合計は295.0(前月比▲7.9%)でした。内訳を見ると、戸建住宅が339.6(▲10.9%)、マンションが252.8(▲5.5%)と、戸建住宅の下落幅がより大きくなっています。戸建住宅は2010年比で3.4倍近い水準にあり、法人による戸建取得が中長期的に活発であることがわかります。

非住宅:前月比▲17.6%の大幅減

非住宅は209.8と、前月比▲17.6%の大幅な下落を記録しました。オフィスビルや商業施設など事業用不動産の取引が一時的に減速した形です。しかし、非住宅は月ごとの振れ幅が大きい傾向があるため、単月の数値だけで「市場が冷え込んだ」と判断するのは早計です。

都市圏別の動向はどうなっているのか?名古屋圏の落ち込みが顕著

都市圏別に見ると、地域間で温度差が鮮明になっています。

南関東圏:▲5.5%の小幅減

南関東圏の合計は256.2(前月比▲5.5%)と、全国平均と比較して下落幅は限定的でした。東京都は250.7(▲6.8%)となっています。東京の不動産市場は引き続き底堅い需要に支えられており、法人取引においても相対的な安定感が見て取れます。

名古屋圏:▲26.4%の大幅減

名古屋圏は249.9(前月比▲26.4%)と、三大都市圏の中で最も大きな下落を記録しました。愛知県単体でも246.8(▲26.2%)と同様の傾向です。名古屋圏では大型の法人取引が特定の月に集中しやすく、その反動が翌月以降に出やすい特性があります。むしろ、指数が249.9と2010年比で約2.5倍の水準を維持している点に着目すべきでしょう。

京阪神圏:▲7.2%で比較的安定

京阪神圏は277.6(前月比▲7.2%)と、三大都市圏の中では最も安定した推移を示しました。大阪府は264.3(▲12.3%)とやや大きめの下落ですが、京阪神圏全体としては底堅さが確認できます。大阪・関西万博を控えたインフラ整備や再開発の進展が、法人の不動産取引を下支えしていると考えられます。

年間トレンドで見る法人取引量の推移はどうなっているのか?

単月の変動に惑わされないためには、年間トレンドの把握が欠かせません。2019年以降の推移を振り返ると、法人取引量は中長期的な増加基調にあることが明確です。

合計指数 前年比
2019 198.7 +0.7%
2020 181.6 ▲8.6%(コロナ影響)
2021 208.4 +14.8%
2022 230.2 +10.5%
2023 244.6 +6.3%
2024 261.7 +7.0%

2020年はコロナ禍で▲8.6%と落ち込んだものの、翌2021年には+14.8%のV字回復を遂げています。その後も毎年着実に上昇を続け、2024年は261.7と2010年比で約2.6倍に達しました。

2025年の月次推移を見ても、1月の277.3から4月の283.7、7月の285.5、10月の299.8と、年間を通じて概ね上昇基調を維持しています。11月の264.4はこの流れの中での一時的な調整と捉えるのが妥当です。投資用不動産市場全体の動向とも整合しており、法人の不動産投資意欲が構造的に衰退しているわけではありません。

法人取引量の変動がオーナーにとってどんな意味を持つのか?

法人の動きは市場全体の先行指標

法人は個人と比べて、金利動向・経済環境・政策変更に対する感応度が高い傾向にあります。法人取引量が減少に転じた場合、数ヶ月後に個人の取引にも影響が波及する可能性が出てきます。だからこそ、この指数を定期的にチェックし、市場の方向感を早期に察知することが大切です。

ただし、今回の11月データは前月の急伸からの反動という側面が強く、「トレンドの転換」を示すものではありません。複数月にわたって下落が続くかどうかを注視する必要があります。

売却・賃料戦略への示唆

法人取引の活発さは、オフィスビルや商業施設の売買だけでなく、その周辺の賃貸市場にも波及します。法人が積極的に物件を取得するエリアでは、テナント需要の増加や賃料の上昇が期待できます。

売却を検討しているオーナーにとっては、法人取引量が高水準を維持している現在の環境は、買い手候補が多い状態であることを意味します。むしろ、法人取引量が本格的に減少に転じる前に、売却タイミングを見極めることがポイントになるでしょう。

私の考え — データに基づく冷静な判断を

2025年11月の法人取引量指数は、全カテゴリで前月比マイナスという結果でした。見出しだけを追えば「市場は失速した」と受け取ることもできるでしょう。しかし、年間トレンドを見れば2010年比で2.6倍超の水準にあり、不動産市場に対する法人の投資意欲は依然として旺盛です。

不動産経営で最も危険なのは、短期データに過剰反応して判断を誤ることです。「今月は大幅減だから売り急ごう」「来月も下がるかもしれないから買い控えよう」——こうした感情的な判断は、長い目で見ると最適な選択にはなりにくいものです。

私が大切にしているのは、単月のデータではなく、複数の指標を組み合わせた中長期の視点です。法人取引量指数に加えて、不動産価格指数や地価公示、金利動向といった複数のデータを重ね合わせることで、より立体的に市場を捉えることができます。

INA&Associatesでは、こうした公的データを丁寧に読み解き、オーナーの皆さまにとって本当に役立つ情報をお伝えしていきたいと考えています。市場環境が変化するときこそ、データに基づいた冷静な判断が求められます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 法人取引量指数は一般の不動産取引にも影響がありますか?

法人取引量指数は法人による既存建物の取得を対象としていますが、法人の動向は市場全体の先行指標として機能します。法人取引の増減は、数ヶ月後に個人の取引動向にも影響を及ぼす傾向があるため、個人のオーナーや投資家にとっても注目すべき指標です。

Q2. 2025年11月の前月比▲11.8%は異常な下落ですか?

法人取引量指数は月ごとの振れ幅が大きい傾向にあります。10月が前月比+7.0%と高い伸びを見せた反動もあり、単月のマイナスだけで市場全体の悪化と判断する必要はありません。年間トレンドでは2010年比2.6倍超の高水準を維持しています。

Q3. この指数はどこで確認できますか?

国土交通省のウェブサイトで公表されています。「法人取引量指数」と検索するか、国土交通省の「不動産取引量指数」のページからアクセスできます。現在は試験運用段階のため、今後の公表方法が変更される可能性があります。

Q4. 名古屋圏の▲26.4%は大丈夫でしょうか?

名古屋圏は大型の法人取引が特定月に集中しやすく、月次の変動幅が大きい傾向にあります。指数自体は249.9と2010年比で約2.5倍の水準を維持しており、構造的な市場の悪化を示すものではないと考えられます。複数月の推移を見て判断することが大切です。

引用・参考資料

Daisuke Inazawa, President & CEO of INA&Associates Inc.

著者

代表取締役社長 / CEOINA&Associates株式会社

INA&Associates株式会社 代表取締役社長。首都圏・近畿圏を中心に不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントを統括。収益不動産投資戦略と超富裕層向け不動産コンサルティングを専門領域とする。

稲澤 大輔(いなざわ・だいすけ)は、INA&Associates株式会社の代表取締役社長(CEO)。大阪本店・東京営業所を拠点に、首都圏・近畿圏における不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントの三事業を統括する。

専門領域は、収益不動産の投資戦略立案、賃貸経営の収支最適化、超富裕層(UHNWI)・機関投資家向け不動産コンサルティング、およびクロスボーダー不動産投資。国内外の投資家に対し、データと長期視点に基づくアドバイザリーを提供している。

「企業の最も重要な資産は人財である」を経営理念に掲げ、人財投資カンパニーとして持続可能な企業価値の創造に取り組む。経営者として、変化の時代におけるリーダーシップのあり方と組織文化についても積極的に発信を続けている。

合格・取得資格は11種:宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、管理業務主任者、賃貸不動産経営管理士、行政書士、個人情報保護士、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者。

  • 宅地建物取引士
  • 公認不動産コンサルティングマスター
  • マンション管理士
  • 管理業務主任者
  • 賃貸不動産経営管理士
  • 行政書士
  • 個人情報保護士
  • 甲種防火管理者
  • 競売不動産取扱主任者
  • マンション維持修繕技術者
  • 貸金業務取扱主任者