三菱地所とTBSホールディングスが共同で推進する「赤坂二・六丁目地区開発計画」は、東京都港区赤坂に地上40階・高さ約207mの超高層タワーと劇場・ホテルを備えた複合棟の2棟を建設する大規模プロジェクトです。国家戦略特別区域の認定を受け、2024年1月に工事が着手された本計画は、2028年の全体完成に向けていよいよ本格化しています。赤坂駅と直結する「駅・まち一体」の開発として、赤坂エリアの不動産市場に大きな変革をもたらすと見られています。不動産オーナーにとっても見逃せない動向であり、今から戦略を立てる意義は大きいです。
赤坂二・六丁目地区開発計画とは — プロジェクトの全体像
事業主体と経緯 — 三菱地所×TBSホールディングスの共同開発
赤坂二・六丁目地区開発計画は、三菱地所株式会社とTBSホールディングスが事業主体となり、旧国際新赤坂ビル(西棟・東棟)の解体跡地を活用して進める複合開発プロジェクトです。設計は三菱地所設計が担当し、施工は東街区を鹿島建設、西街区を竹中工務店がそれぞれ受け持っています。TBSが長年にわたりこの地で放送・文化事業を営んできた実績を踏まえ、「エンタテインメントシティ」としての赤坂を更新・強化することが本計画の根幹にあります。
三菱地所とTBSという強力な事業体が組んだ背景には、赤坂エリアのポテンシャルを最大化しつつ、オフィス需要とエンタテインメント需要を一体的に取り込む戦略があります。だからこそ、単なるオフィスビル建て替えにとどまらず、劇場・ホテル・商業施設を融合させた複合開発として設計されているのです。
国家戦略特区認定と都市計画決定の経緯
本計画は2021年(令和3年)11月15日に都市計画決定の告示を受け、同時に国家戦略特別区域計画における国家戦略都市計画建築物等整備事業として認定されました。さらに2024年2月9日には国土交通大臣による民間都市再生事業計画の認定を取得し、国策として後押しされる形で事業が加速しています。
東京メトロによる赤坂駅の「駅・まち一体」開発も本計画に合わせて推進されており、公共交通との連携という観点からも極めて重要性の高いプロジェクトと位置づけられています。国家戦略特区という行政的な後ろ盾は、開発の確実性を高めるとともに、周辺エリアへの波及効果も大きく左右する要因です。
東街区・西街区の開発規模と用途構成
東街区(オフィスタワー)— 地上40階・約207m・延床約16.7万m²
東街区は地上40階・地下4階建て、高さ約207.30m、延床面積約167,642m²の超高層オフィスタワーです。主要用途はオフィス・店舗・インキュベーション施設であり、特にインキュベーション施設の設置はスタートアップ企業の集積を促す狙いがあります。延床面積約16.7万m²という規模は、虎ノ門や渋谷の大型再開発と肩を並べるものです。
赤坂周辺には従来から大使館・官公庁・外資系企業が集積していますが、本タワーの完成によって国際ビジネスの拠点としての求心力がさらに高まると見られています。しかし、こうした大規模オフィス供給は周辺の既存ビルにとっては競合要因にもなりえます。その影響の詳細については後段の「赤坂エリアの不動産市場への影響」で分析します。
西街区(エンタテインメント棟)— 劇場・ホール・キャノピー by ヒルトン
西街区は地上18階・地下3階建て、高さ約99.87m、延床面積約38,143m²のエンタテインメント棟です。TBSが整備する劇場・ホール(約11,000m²)と、7〜18階に入居する「キャノピー by ヒルトン東京赤坂」(全174室、スイート24室含む)が核となります。キャノピー by ヒルトンは関東初進出のライフスタイルホテルブランドであり、2028年の開業に向けて注目が集まっています。
TBSが手掛ける約11,000m²の劇場・ホールは、赤坂サカスに隣接する文化・エンターテインメント機能をさらに拡充するものです。むしろこの規模は、国内最大級の民間劇場に匹敵するレベルであり、国内外から集客力のある文化施設が出現することを意味しています。エンタテインメント産業の成長拠点として、周辺エリアの経済循環にも直接的な好影響をもたらすことが期待されます。
赤坂駅直結「駅・まち一体」の歩行者ネットワーク
本計画の特筆すべき点の一つが、東京メトロ千代田線赤坂駅との直結です。B2Fから地上にかけて約4,900m²の広場空間を創出し、TBS赤坂サカス方面への回遊性も向上させます。溜池山王駅・赤坂見附駅エリアとのアクセスも改善され、エリア全体が一体的な歩行者ネットワークで結ばれます。
駅直結という立地優位性は、オフィスビルにとって入居テナントの獲得において決定的な差別化要因となります。特に外資系企業や大手日系企業のオフィス選定において、雨天でも濡れずに通勤・移動できる環境は高い評価を受けます。
赤坂エリアの不動産市場への影響
大規模オフィス供給がもたらすテナント需要の変化
約16.7万m²という大規模なオフィス床面積の供給は、赤坂・溜池山王エリアのオフィス市場において2028年前後に一定の需給変動を引き起こす可能性があります。特に竣工前後の一時的な空室率上昇は、周辺の既存オフィスビルオーナーにとって注意が必要です。しかし、国家戦略特区のインキュベーション施設が新たなスタートアップ・テナントを創出することで、エリア全体のオフィス需要底上げにつながる面もあります。
東京再開発エリア主要プロジェクト調査レポートでも示されているとおり、大規模オフィス供給が集中するエリアでは、グレードAビルへの「フライト・トゥ・クオリティ」現象が起きやすくなります。既存の中規模ビルオーナーは、テナント維持のための付加価値向上策を早急に検討する必要があります。
ヒルトン系ホテル進出による周辺地価・賃料への波及効果
キャノピー by ヒルトンの関東初進出は、赤坂エリアのブランドイメージを国際的に押し上げる効果があります。国際的ホテルブランドの進出は、周辺の高級賃貸マンション・サービスアパートメントの需要を刺激し、賃料水準の維持・上昇に寄与します。外資系企業の駐在員や富裕層インバウンド客が集まる拠点ができることで、エリア全体の消費購買力も高まります。
港区内の他のホテル立地事例を見ても、国際ホテルブランドの進出後には周辺の住宅賃料が平均5〜10%程度の上昇圧力を受けるケースが報告されています。だからこそ、今のタイミングで赤坂エリアの資産を保有・取得することには一定の戦略的意義があります。
赤坂サカスとの連携 — エリア全体の回遊性向上
本計画はTBS赤坂サカスに隣接し、エンタテインメント機能の相互補完を図っています。2028年の完成後には、赤坂サカス・本計画の劇場ホール・広場空間が一体となり、都内有数のエンタテインメントゾーンが形成されます。飲食・商業テナントにとっても集客力が飛躍的に高まる環境であり、商業施設の賃料水準にもポジティブな影響が期待されます。
また、赤坂七丁目2番地区再開発プロジェクト完全ガイドで取り上げた住宅系再開発と本計画が同時進行することで、赤坂全体の街としての総合力が底上げされます。住宅・オフィス・ホテル・エンタテインメントが揃ったエリアとして、国内外からの評価が高まることは間違いありません。
不動産オーナーが注目すべきポイント
賃貸オフィス市場への影響と対応策
赤坂・溜池山王エリアで賃貸オフィスを保有するオーナーにとって、2026〜2028年にかけての準備が重要です。竣工前後はテナントの移転検討が活発化するため、既存テナントとのリレーション強化と、ビル設備のアップグレードを先行して実施することが求められます。具体的には、ICT対応・省エネ設備の更新、フレキシブルオフィス化の検討などが有効です。
しかし、単に設備投資をするだけでは不十分です。テナントが新築タワーへ流出するリスクを真剣に評価し、「このビルにとどまる理由」をテナントに示せるか否かが勝負の分かれ目になります。立地の固有性や賃料競争力の見直し、長期契約インセンティブの設計など、戦略的な賃貸管理が求められます。
住宅賃貸市場における利便性向上の恩恵
赤坂周辺の住宅賃貸オーナーにとっては、総じてポジティブな影響が見込まれます。駅直結・広場整備・商業充実によって赤坂エリアの生活利便性が向上し、賃料水準の維持・上昇が期待できます。特に赤坂駅徒歩圏内の物件は、通勤利便性と商業環境の改善を訴求できるポイントが増えます。
2028年に向けてエリアの注目度が高まる局面では、空室期間の短縮や入居者の質向上も期待できます。むしろ、今後2年間は広告訴求の切り口として「2028年赤坂再開発エリア徒歩圏内」というフレーズが有効に機能する時期でもあります。
INAの見解
赤坂二・六丁目地区開発計画は、単なる大型ビル建設ではなく、赤坂エリアの都市ブランドを根本から作り替えるプロジェクトだと私は捉えています。オフィス・劇場・ホテルという三つの機能が国家戦略特区の枠組みで一体的に整備されることは、民間単独の開発では実現しえない水準の都市インフラを生み出します。
不動産管理の観点から言えば、2028年の竣工を一つの「変化点」として認識し、今から資産の棚卸しと戦略の見直しを進めることが不可欠です。赤坂エリアで物件を保有するオーナーには、ポジティブな波及効果を取り込むための能動的な行動を勧めたいと思います。一方で、旧来のオフィスビルを漠然と保有し続けることには相応のリスクが伴います。INA&Associatesでは、再開発エリアにおける賃料動向の分析や、資産の最適活用に向けたコンサルティングを提供しています。変化の波を「脅威」ではなく「機会」として捉えるためのパートナーとして、ぜひご相談ください。
まとめ
赤坂二・六丁目地区開発計画は、三菱地所×TBSという強力なタッグが国家戦略特区の認定を受け、2028年に東京・赤坂を根本から塗り替えるプロジェクトです。以下に要点を整理します。
- 東街区:地上40階・高さ約207m、延床約16.7万m²のオフィスタワー。赤坂駅直結・インキュベーション施設付き
- 西街区:地上18階、約11,000m²の劇場・ホールとキャノピー by ヒルトン(174室)が入居するエンタテインメント棟
- 竣工予定:2028年3月末(建物)/ 10月末(全体)
- 市場影響:グレードAオフィスの大規模供給・国際ホテルブランド進出・歩行者ネットワーク拡充による地価・賃料への複合的な波及
よくある質問(FAQ)
Q1. 赤坂二・六丁目地区開発計画の竣工はいつですか?
A. 建物の竣工は2028年3月末を予定しており、全体完成は2028年10月末の予定です。工事着手は2024年1月12日、起工式は同年3月13日に実施されています。Q2. キャノピー by ヒルトン東京赤坂の開業時期と客室数は?
A. 2028年の開業を予定しており、客室数は全174室(スイート24室含む)です。ヒルトングループのライフスタイルホテルブランド「キャノピー by ヒルトン」の関東初進出として注目されています。Q3. 赤坂駅との接続はどのようになりますか?
A. 東京メトロ千代田線赤坂駅と東街区が直結し、「駅・まち一体」の歩行者ネットワークが整備されます。B2Fから地上にかけて約4,900m²の広場空間が設けられ、TBS赤坂サカス方面への回遊性も向上します。Q4. 赤坂エリアの他の再開発計画との関係は?
A. 本計画は赤坂七丁目2番地区(住宅系再開発)や赤坂一丁目地区など、赤坂エリアの再開発ラッシュの一環として位置づけられます。複数の再開発が連動することで、溜池山王駅・赤坂見附駅を含むエリア全体の魅力度が底上げされます。詳細は赤坂七丁目2番地区再開発プロジェクト完全ガイドもご参照ください。参考・引用
- 三菱地所株式会社「赤坂エリアの新たなランドマークとなる2棟の建物が2028年に誕生 赤坂二・六丁目地区開発計画 新築工事着手/民間都市再生事業計画に認定」(2024年3月13日)
- 三菱地所株式会社「赤坂二・六丁目地区 開発計画 国家戦略特別区域計画認定」プレスリリースPDF(2021年11月)
- 東京メトロ「赤坂二・六丁目地区 開発計画に合わせ、東京メトロ赤坂駅で"駅・まち一体"の開発を実現」(2021年11月18日)
- 東京都都市整備局「赤坂二・六丁目地区開発計画|皇居周辺地域・都市再生特別地区の事前協議」
- 内閣府 地方創生推進事務局「都市再生特別地区(赤坂二・六丁目地区)都市計画(素案)」第19回東京都都市再生分科会 配布資料
- 三菱地所設計「赤坂二・六丁目地区開発計画」プロジェクトページ