アパート建築費は2026年時点で、本体工事費の坪単価が木造75〜95万円、軽量鉄骨造85〜105万円、RC造110〜145万円が目安です。土地70坪・建ぺい率60%・容積率200%の敷地なら、木造2階建てで延床は約71坪、住戸は8戸、付帯工事費と諸費用を含めた総額は6,700万〜8,500万円が目安になります。
土地はあるが、アパートを建てるといくらかかるのか。この問いに坪単価だけで答えると、たいてい実際より2〜3割低く見積もることになります。土地の坪数と延床の坪数は別物であり、坪単価には付帯工事費も諸費用も含まれていないからです。この記事では、土地の坪数・階数・戸数・予算という4つの入り口から、ご自身の計画の総額をご自身で計算できる状態を目指します。
この記事のポイント
- アパート建築費の目安は、本体工事費で木造75〜95万円/坪、RC造110〜145万円/坪。総額は本体工事費の1.25〜1.33倍になります。
- 土地の坪数から建てられる延床を出す順番は「土地坪数 → 建ぺい率で建築面積 → 階数と容積率で延床 → 実務上の有効率85%」です。土地70坪なら延床約71坪が目安になります。
- アパート建築費の1戸あたり単価は、4戸でも10戸でも約840万〜1,080万円でほぼ変わりません。規模を大きくしても建築費の単価は下がりにくい構造です。
- アパート建築費の総額が1億円なら、建つのは木造2階建てで約10戸、RC造3階建てで6〜7戸です。
- 国土交通省の建設工事費デフレーターでは、2020年度を100として2026年5月が木造126.7・RC造126.8・鉄骨造128.8。数年前の概算見積もりは、この指数比で割り戻せば現在価値に補正できます。
アパート建築費の坪単価は2026年でいくらか?【構造別】
2026年時点のアパート建築費の坪単価は、本体工事費ベースで木造75〜95万円、軽量鉄骨造85〜105万円、重量鉄骨造100〜130万円、RC造110〜145万円が目安です。ここで大事なのは、この数字が「本体工事費だけの単価」だという点です。実際に支払う総額は、地盤改良や外構などの付帯工事費と、税金・登記・保険などの諸費用を足した金額になります。
| 構造 | 本体工事費の坪単価目安 | 付帯工事費・諸費用込みの総額坪単価目安 | 適する階数 | 法定耐用年数(住宅用) |
|---|---|---|---|---|
| 木造 | 75〜95万円 | 95〜120万円 | 2〜3階 | 22年 |
| 軽量鉄骨造(骨格材3mm以下) | 85〜105万円 | 110〜135万円 | 2〜3階 | 19年 |
| 重量鉄骨造(骨格材4mm超) | 100〜130万円 | 130〜165万円 | 3〜5階 | 34年 |
| 鉄筋コンクリート造(RC造) | 110〜145万円 | 140〜185万円 | 3階以上 | 47年 |
坪単価のレンジは実勢の目安であり、公的統計から直接得られる数値ではありません。国土交通省が公表しているのは建築費の「指数」であって、坪単価そのものではないためです。一方、法定耐用年数は財務省令で定められた確定値で、国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」と減価償却資産の耐用年数等に関する省令が根拠になります。構造の選択は建築費だけでなく、減価償却の年数と金融機関が見る融資期間の目安にも直結します。
地域によって坪単価はどれくらい変わるか
同じ構造・同じ延床でも、地域によって坪単価は2割前後動きます。主な要因は職人の労務単価、資材の運搬距離、そして狭小地や搬入制約といった施工条件です。地域別の坪単価そのものを公表している公的統計はないため、以下は実務上の目安としてお読みください。
| 地域 | 全国の目安を100としたときの水準 | 主な変動要因 |
|---|---|---|
| 東京23区・都心部 | 110〜125 | 労務単価の高さ、狭小地の施工条件、資材搬入の制約 |
| 首都圏(23区外・神奈川・埼玉・千葉) | 103〜112 | 労務需給の逼迫 |
| 関西・東海の主要都市 | 98〜108 | 都市部の職人確保 |
| 地方中核都市 | 92〜102 | 地元工務店の稼働状況 |
| 地方郊外 | 88〜98 | 現場までの移動距離、職人の広域確保 |
都心部で計画される方は、全国平均の坪単価をそのまま使うと1割以上のずれが出ます。逆に地方郊外では、坪単価が下がる代わりに家賃も下がるため、利回りが自動的に良くなるわけではありません。低層のアパートではなく中高層のマンションを検討される場合は、坪単価の水準も、必要な設計・施工体制も変わります。
【坪数別】土地30坪・40坪・70坪・90坪・100坪でアパート建築費はいくらか?
結論から申し上げると、土地70坪・建ぺい率60%・容積率200%の敷地に木造2階建てを建てる場合、延床は約71坪、建築費総額は6,700万〜8,500万円が目安です。ここで最初に押さえていただきたいのは、土地の坪数と延床の坪数はまったく違う数字だということです。
土地の坪数から延床の坪数を出す4ステップ
「70坪のアパートを建てるといくら」という言い方には、土地70坪の場合と延床70坪の場合の2通りがあります。総額は2倍近く変わりますので、まずご自身がどちらの話をしているのかを確定させてください。土地の坪数から延床を出す手順は次の4段階です。
- 登記簿の土地面積(㎡)を3.306で割り、坪数に直す
- 土地坪数 × 建ぺい率 = 1階部分に建てられる面積の上限(建築面積上限)
- 建築面積上限 × 階数 と、土地坪数 × 容積率 を比べ、小さいほうが延床の上限
- 延床上限 × 85% 前後を、実際に計画できる延床の目安とする
4段階目の85%という数字は、隣地との離隔、道路後退、駐車場や通路の確保、外壁後退などで建ぺい率の上限いっぱいには建てられないためです。設計が始まると、この差が最初の想定とのずれとして表れます。建ぺい率と容積率はご自身の土地の用途地域で決まりますので、あわせて用途地域13分類と第一種住居地域が賃貸に適する理由をご確認ください。
| 土地面積 | 建築面積の上限(建ぺい率60%) | 2階建ての延床上限 | 実際に計画しやすい延床の目安 | 木造2階建ての建築費総額目安 |
|---|---|---|---|---|
| 30坪(約99㎡) | 18坪 | 36坪 | 約30坪 | 約2,900万〜3,600万円 |
| 40坪(約132㎡) | 24坪 | 48坪 | 約41坪 | 約3,900万〜4,900万円 |
| 50坪(約165㎡) | 30坪 | 60坪 | 約51坪 | 約4,800万〜6,100万円 |
| 70坪(約231㎡) | 42坪 | 84坪 | 約71坪 | 約6,700万〜8,500万円 |
| 90坪(約297㎡) | 54坪 | 108坪 | 約92坪 | 約8,700万〜1億1,000万円 |
| 100坪(約330㎡) | 60坪 | 120坪 | 約102坪 | 約9,700万〜1億2,200万円 |
総額は、付帯工事費・諸費用込みの坪単価95〜120万円で計算しています。RC造で計画される場合は、同じ延床でも坪単価が140〜185万円になりますので、土地70坪なら約9,900万〜1億3,100万円が目安です。
建ぺい率・容積率が違う場合の読み替え方
上の表は建ぺい率60%・容積率200%という、住居系用途地域で最も多い組み合わせを前提にしています。条件が違う場合は次のように読み替えてください。
- 建ぺい率50%の場合:建築面積上限が0.83倍になります。土地70坪なら建築面積35坪、2階建ての延床上限70坪、実務上の目安は約59坪です。
- 建ぺい率80%の場合:土地70坪で建築面積56坪、2階建ての延床上限112坪。容積率200%が認める140坪には届かず、28坪分の容積が余ります。この余りを使うには3階建てを検討することになります。
- 容積率150%の場合:土地70坪で延床上限は105坪。2階建て(84坪)なら容積率が制約になりません。
- 角地緩和・防火地域の耐火建築物緩和:建ぺい率が10%ずつ加算される場合があります。役所の都市計画課で確認できます。
土地70坪をお持ちの方から「1億円くらいですか」とご相談をいただくことがあります。木造2階建てであれば6,700万〜8,500万円が目安で、1億円は3階建てやRC造を選んだ場合の水準です。数字の前提を1つ変えるだけで、必要な自己資金も借入額も変わります。ご自身の土地条件で総額のあたりをつけたい段階の方は、INAの無料相談で登記簿と用途地域から一緒に整理することもできます。
【階数別】2階建てと3階建てでアパート建築費はどう変わるか?
同じ延床面積であれば、3階建ては2階建てより坪単価が10〜20%高くなります。階数が増えると床面積が増えるだけでなく、構造・避難・基礎の要求水準が一段上がるためです。逆に言えば、延床が同じなら3階建てにする理由はありません。3階建てを選ぶのは、土地が狭く容積率に余裕がある場合に限られます。
| 構造 | 2階建ての総額坪単価目安 | 延床60坪の総額 | 3階建ての総額坪単価目安 | 延床60坪の総額 |
|---|---|---|---|---|
| 木造 | 95〜120万円 | 5,700万〜7,200万円 | 110〜140万円 | 6,600万〜8,400万円 |
| 軽量鉄骨造 | 110〜135万円 | 6,600万〜8,100万円 | 122〜150万円 | 7,300万〜9,000万円 |
| 重量鉄骨造 | 2階建てでは選ばれにくい | 該当なし | 130〜165万円 | 7,800万〜9,900万円 |
| RC造 | 2階建てでは割高になる | 該当なし | 140〜185万円 | 8,400万〜1億1,100万円 |
3階建てで追加になるコスト項目
坪単価が上がる中身は、次の項目に分解できます。見積書を比較するときは、この項目が計上されているかを確認してください。
- 構造計算と構造計算適合性判定:木造3階建ては構造計算が必須で、規模によっては適合性判定も必要になります。設計期間が1〜2か月伸びます。
- 耐火・準耐火の規制:準防火地域の3階建て共同住宅では、耐火建築物または一定の準耐火仕様が求められ、外壁・軒裏・開口部の仕様が上がります。
- 2方向避難と直通階段:階段の位置と数が計画に効いてきます。共用部の面積が増え、専有面積の取り分が減ります。
- 基礎の割増と地盤改良:建物重量が増えるため、同じ地盤でも改良工法や杭が必要になる場合があります。
- 給水方式:3階以上では直結増圧または受水槽が必要になることがあり、設備費と保守費が増えます。
- 仮設・揚重:足場の段数とクレーン計画が変わり、仮設工事費が増えます。
3階建てにする価値があるかの判断軸
判断は「土地が狭いかどうか」ではなく、「容積率と斜線制限で3階分の床が取れるかどうか」で決まります。容積率200%の土地に建ぺい率60%で建てる場合、2階建てでは土地面積の120%しか床が取れず、容積率の80%分が余ります。ここを3階建てにすれば土地面積の180%まで床が使え、戸数を1.5倍に増やせます。
一方で、道路斜線・北側斜線・高度地区・日影規制がかかると、3階部分の一部が削られて計画が歪みます。土地40坪・容積率200%の敷地で3階建てを検討したものの、北側斜線で3階の居室が2室しか取れず、坪単価だけ上がって戸数が増えなかったという計画は珍しくありません。階数を増やす判断は、増える戸数の年間家賃と、増える建築費を並べて比べてください。目安として、増える建築費が増える年間家賃の12〜15年分を超えるなら、2階建てのほうが有利になります。
【戸数別】4戸・6戸・8戸アパートの建築費と1戸あたり単価
アパート4戸の建築費は木造で約3,400万〜4,300万円、8戸なら約6,700万〜8,500万円が目安です。ここで多くの方が意外に思われるのが、1戸あたりの建築費は戸数を増やしてもほとんど下がらないという点です。4戸でも10戸でも、1戸あたり約840万〜1,080万円の範囲に収まります。
| 戸数 | 専有面積合計(1戸25㎡) | 共用部込みの延床目安 | 木造2階建てで必要な土地の目安 | 建築費総額の目安(木造) | 1戸あたり建築費 |
|---|---|---|---|---|---|
| 4戸 | 100㎡(約30坪) | 約36坪 | 約35坪 | 約3,400万〜4,300万円 | 約850万〜1,080万円 |
| 6戸 | 150㎡(約45坪) | 約53坪 | 約52坪 | 約5,000万〜6,400万円 | 約840万〜1,060万円 |
| 8戸 | 200㎡(約61坪) | 約71坪 | 約70坪 | 約6,700万〜8,500万円 | 約840万〜1,060万円 |
| 10戸 | 250㎡(約76坪) | 約89坪 | 約87坪 | 約8,500万〜1億700万円 | 約850万〜1,070万円 |
戸数計算で見落としやすい共用部
専有面積の合計と延床面積は一致しません。階段、廊下、パイプスペース、メーターボックス、ゴミ置場などの共用部が加わるためです。低層のアパートでは、延床は専有面積合計の1.15〜1.2倍を見込んでください。この差を見落とすと、必要な土地を1割ほど小さく見積もることになります。
もう1つの落とし穴が、1戸あたりの専有面積の設定です。単身向け20㎡と25㎡では、必要な延床が2割違います。家賃が同じ地域なら20㎡のほうが利回りは高く出ますが、募集時の競合は増えます。ファミリー向け50㎡以上を狙う場合は、同じ延床で戸数が半分になるため、1戸あたりの建築費は1,700万〜2,100万円の水準になります。
【予算別】アパート建築費5,000万円・1億円でどんな規模が建つか?
アパート建築費の予算が決まっている場合は、逆算で規模を出せます。アパート建築費5,000万円なら木造2階建てで延床約47坪・5戸、1億円なら延床約93坪・10戸が目安です。同じ1億円でもRC造3階建てを選べば延床は約62坪、戸数は6〜7戸まで下がります。
| 建築費の予算(総額) | 木造2階建て | 軽量鉄骨造3階建て | RC造3階建て |
|---|---|---|---|
| 3,000万円 | 延床約28坪/3戸 | 延床約23坪/2戸 | 延床約18坪/2戸 |
| 5,000万円 | 延床約47坪/5戸 | 延床約38坪/4戸 | 延床約31坪/3戸 |
| 8,000万円 | 延床約75坪/8戸 | 延床約60坪/6戸 | 延床約49坪/5戸 |
| 1億円 | 延床約93坪/10戸 | 延床約75坪/8戸 | 延床約62坪/6〜7戸 |
延床は、付帯工事費・諸費用込みの総額坪単価を木造2階建て107万円、軽量鉄骨造3階建て133万円、RC造3階建て162万円として予算を割ったものです。戸数は1戸25㎡、共用部を含めて延床を専有合計の1.175倍として算出しています。ご自身の見積もりの坪単価が分かっていれば、同じ手順で数字を置き換えて計算できます。予算に土地代は含んでいません。
アパート建築費1億円は木造とRC造でどう違うか
1億円という予算で最も判断が分かれるのが構造です。木造を選べば戸数が増えて表面利回りが高く出ますが、法定耐用年数が22年しかありません。RC造は戸数が減る代わりに47年の耐用年数を持ち、減価償却を長く配分でき、金融機関が見る融資期間も長く取りやすい傾向があります。
| 項目 | 木造2階建て10戸 | RC造3階建て7戸 |
|---|---|---|
| 延床面積 | 約93坪(約307㎡) | 約62坪(約205㎡) |
| 1戸あたり専有面積 | 約25㎡ | 約25㎡ |
| 想定月額家賃(1戸) | 6.5万円 | 7.5万円 |
| 満室時の年間家賃 | 780万円 | 630万円 |
| 建築費に対する表面利回り | 7.8% | 6.3% |
| 法定耐用年数 | 22年 | 47年 |
| 年間の減価償却費(定額法・簡便計算) | 約455万円 | 約213万円 |
| 建物の固定資産税評価の目減り | 早い | 緩やか |
減価償却費は建物取得価額を法定耐用年数で単純に割った概算です。実務では建物本体と建物附属設備を分けて計上するため、金額は変わります。表の見方としては、木造は短期の手残りが厚く、RC造は保有期間を通じた安定性と出口の評価が取りやすいという整理になります。どちらが正解かは、保有予定年数と相続の予定によって変わります。
アパート建築費の内訳|本体工事費・付帯工事費・諸費用の比率と中身
アパート建築費の総額は、本体工事費75〜80%、付帯工事費15〜20%、諸費用5〜7%の3区分で構成されます。ハウスメーカーや工務店が最初に提示する坪単価は、ほぼ例外なく本体工事費だけの数字です。総額は本体工事費の1.25〜1.33倍になると覚えておくと、初回の提案書を見た時点でずれを防げます。
| 区分 | 総額に占める比率の目安 | 主な中身 |
|---|---|---|
| 本体工事費 | 75〜80% | 仮設、基礎、躯体、屋根、外壁、防水、内装、建具、住戸設備(キッチン・浴室・洗面・トイレ)、電気・給排水の屋内配管 |
| 付帯工事費 | 15〜20% | 地盤調査・地盤改良、既存建物の解体、造成・擁壁、屋外給排水・ガスの引込、電気引込、外構(駐車場・駐輪場・フェンス・植栽)、ゴミ置場、屋外照明、看板・集合ポスト |
| 諸費用 | 5〜7% | 設計料・工事監理料、建築確認申請手数料、建物表題登記・所有権保存登記の登録免許税と司法書士報酬、不動産取得税、印紙税、火災保険・地震保険、ローン事務手数料・保証料、地鎮祭・上棟式、確定測量 |
設計料は発注方式で大きく変わる
諸費用の中で最も差が出るのが設計料です。ハウスメーカーのように設計と施工を一括で発注する場合、設計料は本体工事費の1〜3%程度が実質的に内包されています。一方、設計事務所に設計監理を分離発注する場合は、本体工事費の5〜8%程度が別途必要になります。
分離発注は費用が上がる代わりに、施工会社を相見積もりで選べる、施工品質を第三者がチェックする、という利点があります。土地の形状が特殊で規格プランが合わない場合や、延床100坪を超える計画では、設計料を払っても総額が下がることがあります。
アパート建築費はどこまで上がったのか?|建設工事費デフレーターで読む2026年
国土交通省の建設工事費デフレーターによると、2020年度を100としたとき、2026年5月の指数は木造住宅126.7、鉄筋コンクリート造住宅126.8、鉄骨造住宅128.8です。この6年ほどで、建築費は構造を問わず27〜29%上がったということになります。木造だけが安く済むという前提は、現在では成り立ちにくくなっています。
| 時点 | 木造住宅 | 鉄筋コンクリート造住宅 | 鉄骨造住宅 |
|---|---|---|---|
| 2019年度 | 100.1 | 100.2 | 100.2 |
| 2020年度(基準) | 100.0 | 100.0 | 100.0 |
| 2021年度 | 110.3 | 105.2 | 108.3 |
| 2022年度 | 116.7 | 111.7 | 116.4 |
| 2023年度(暫定) | 114.8 | 113.9 | 117.0 |
| 2024年度(暫定) | 118.8 | 118.9 | 121.4 |
| 2025年度(暫定) | 122.3 | 122.1 | 124.3 |
| 2026年5月 | 126.7 | 126.8 | 128.8 |
表を上から下へ追うと、木造だけは2023年度に前年度を下回っています。指数は一本調子で上がるわけではなく、年度によって足踏みや反落があるという点は、次の補正計算で効いてきます。
直近1年でも上昇は続いています。2025年5月から2026年5月の1年間で、木造は120.4から126.7へ5.2%、RC造は120.3から126.8へ5.4%、鉄骨造は123.0から128.8へ4.7%上がりました。なお、このデフレーターは2026年4月分から2020年度基準に改定されています。以前の2015年度基準の数値と並べて比較することはできませんので、他社資料の指数と突き合わせる際は基準年をご確認ください。値上がりの背景と今後の見通しについては、アパート建築費が高騰した背景といつまで続くかの見通しで整理しています。
数年前の概算見積もりを現在価値に補正する方法
ここが本記事で最もお使いいただきたい部分です。土地活用の相談で数年前に受け取った概算見積もりが手元に残っている方は多いはずですが、その金額をそのまま予算の前提にすると計画が破綻します。デフレーターを使えば、その見積もりが現在いくらに相当するかを自分で計算できます。
補正後の金額 = 当時の見積額 × (2026年5月の指数 ÷ 見積時点の指数)
たとえば2021年度に木造アパートの概算として6,000万円という数字を受け取っていた場合、126.7 ÷ 110.3 で補正係数は約1.15倍。現在の相当額は約6,900万円になります。差額は約900万円で、これは自己資金の想定を根底から変える金額です。構造別の補正係数は次のとおりです。
| 見積もりを受け取った時点 | 木造の補正係数 | RC造の補正係数 | 鉄骨造の補正係数 |
|---|---|---|---|
| 2020年度 | 約1.27倍 | 約1.27倍 | 約1.29倍 |
| 2021年度 | 約1.15倍 | 約1.21倍 | 約1.19倍 |
| 2022年度 | 約1.09倍 | 約1.14倍 | 約1.11倍 |
| 2023年度 | 約1.10倍 | 約1.11倍 | 約1.10倍 |
| 2024年度 | 約1.07倍 | 約1.07倍 | 約1.06倍 |
| 2025年度 | 約1.04倍 | 約1.04倍 | 約1.04倍 |
木造の欄で、2023年度の係数が2022年度より大きくなっている点に違和感を持たれるかもしれません。これは先ほどの推移表のとおり、木造の指数が2023年度に一度下がっているためで、計算間違いではありません。ご自身の見積書の日付が年度をまたぐ場合は、年度ではなく月別の指数で割り戻すとより正確になります。
この補正は、建築会社と話す前に済ませておくことをおすすめします。古い金額を前提に相談を始めると、提示された見積もりが「高い」と感じられ、判断が感情に引っ張られます。あらかじめ現在価値に直しておけば、提示額の妥当性を落ち着いて評価できます。建築費の指数の読み方をさらに詳しく知りたい方は、RC造マンションの建築費指数の読み方と2026年の最新水準もご覧ください。
供給が細っているという環境も見ておく
国土交通省の建築着工統計調査報告によると、令和7年度の新設住宅着工戸数は711,171戸で前年度比12.9%減、うち貸家は308,906戸で前年度比13.5%減でした。令和6年度の貸家が357,074戸で前年度比4.9%増だったことを考えると、1年で急に細ったことになります。
この数字は、オーナーにとって2つの意味を持ちます。1つは、相見積もりが取りづらくなる可能性です。着工が減れば建築会社の受注も減りますが、同時に人員体制を縮小した会社は小規模案件を選別するようになります。もう1つは、工期が読みにくくなることです。契約から着工までの期間を、以前より余裕を持って見込んでください。
ローコストアパートで建築費を下げる方法と、下げてはいけない部分
アパート建築費を下げる手段は確かにありますが、削減効果と副作用はセットで見る必要があります。もっとも費用対効果が高いのは建物形状の単純化で、これは入居者にも出口にも影響しません。逆に、遮音・断熱・防水・給排水の更新性は、後から直すのに新築時の何倍もかかるため削ってはいけない領域です。
| 削減手法 | 削減効果の目安 | 出口・空室への副作用 |
|---|---|---|
| 建物形状を長方形の総2階に単純化する | 本体工事費の3〜7% | ほぼなし。最優先で検討してよい |
| 建築会社の規格プラン・標準仕様を採用する | 本体工事費の3〜8% | 近隣に似た外観が並ぶと、募集時に家賃で比較されやすくなる |
| 住戸設備を賃貸用の標準グレードに揃える | 本体工事費の2〜4% | 単身向けなら影響は小さい。ファミリー向けは内見時の印象に直結 |
| 外壁・屋根材のグレードを一段下げる | 本体工事費の1〜3% | 外装の更新周期が短くなり、10〜15年後の修繕費が前倒しになる |
| 1戸あたり専有面積を25㎡から20㎡に圧縮する | 戸数が同じなら総額の10〜15% | 家賃も下がるため、利回りが自動的に改善するわけではない |
| 3階建てを2階建てに変更する | 坪単価で10〜20% | 戸数が減って総収入が落ちる。容積率の余りは出口評価にも響く |
| 外構・植栽を最小限にする | 総額の1〜2% | 駐車場・駐輪場・ゴミ置場は削らない。募集条件に直結する |
専有面積を25㎡から20㎡に落とすと、延床は2割近く小さくなります。それでも総額の削減が10〜15%にとどまるのは、キッチン・浴室・洗面・トイレといった住戸設備の数が戸数に比例しており、面積を縮めても減らないためです。面積比のとおりに総額が下がると見込むと、資金計画がずれます。
削ってはいけない4つの領域
次の4つは、竣工後に手を入れようとすると入居者に退去いただく必要が出るか、建物を壊す工事になります。新築時に確保しておくのが結果的に安く済みます。
- 界壁と床の遮音性能:木造アパートの退去理由で上位に来るのが音の問題です。遮音等級を1段上げる費用は1戸あたり数万円ですが、後から改善するには内装の全面解体が必要になります。
- 断熱性能:光熱費は入居者が払いますが、寒い・暑いは更新拒否の理由になります。窓の仕様は特に効きます。
- 屋根とバルコニーの防水:漏水は建物の寿命そのものを縮めます。防水層の仕様と保証年数は、見積書の段階で確認しておいてください。
- 給排水管の更新性:ヘッダー配管の採用と点検口の設置は、新築時ならわずかな追加費用です。壁内配管で点検口がないと、20年後の更新工事が大掛かりになります。
ローコストという言葉は「安い建物」ではなく「削る場所を選んだ建物」と捉えてください。削ってよいのは、入居者が退去する理由にならない部分だけです。私は、建築費を下げたいというご相談を受けたとき、まずこの線引きを一緒に引くところから始めます。
建築費から逆算する収支|利回り・返済比率・自己資金の目安
アパート建築費が妥当かどうかは、金額の大小ではなく収支が回るかで判断します。土地をすでにお持ちで、木造2階建て8戸・延床71坪・建築費7,500万円という計画を例に、数字を追ってみます。
| 項目 | 金額 | 算出根拠 |
|---|---|---|
| 満室時の月額家賃 | 52万円 | 6.5万円 × 8戸 |
| 満室時の年間家賃 | 624万円 | 52万円 × 12か月 |
| 建築費に対する表面利回り | 8.3% | 624万円 ÷ 7,500万円 |
| 運営費(管理料・共用光熱費・保険・小修繕) | △94万円 | 年間家賃の15% |
| 固定資産税・都市計画税(建物分) | △40万円 | 新築住宅の減額特例適用時の目安 |
| 空室損 | △31万円 | 稼働率95%想定 |
| 年間の実質手取り(NOI) | 459万円 | 624 − 94 − 40 − 31 |
| 建築費に対する実質利回り | 6.1% | 459万円 ÷ 7,500万円 |
表面利回りと実質利回りの差は2.2ポイントあります。建築会社の提案書に載っているのはほぼ表面利回りですので、ご自身で実質に引き直してください。計算方法の詳細はアパート経営の表面利回りと実質利回りの計算方法で解説しています。
自己資金比率で手残りはどう変わるか
同じ建築費7,500万円でも、自己資金の入れ方で毎年の手残りは変わります。ここでは金利2.5%・返済期間30年・元利均等という前提で試算します。実際の条件は金融機関と個別に決まるものですので、あくまで比較のための仮置きとしてご覧ください。
| 自己資金比率 | 自己資金 | 借入額 | 年間返済額 | 返済比率(満室家賃比) | 返済後の年間手残り |
|---|---|---|---|---|---|
| 10% | 750万円 | 6,750万円 | 約320万円 | 51.3% | 約139万円 |
| 20% | 1,500万円 | 6,000万円 | 約284万円 | 45.6% | 約175万円 |
| 30% | 2,250万円 | 5,250万円 | 約249万円 | 39.9% | 約210万円 |
返済比率は満室時の年間家賃に対する年間返済額の割合です。50%を超えると、稼働率が5ポイント落ちただけで手残りが大きく削られます。自己資金10%のケースでは、稼働率が90%まで下がると手残りは約108万円まで縮み、大規模修繕の積立が難しくなります。用意すべき自己資金は、建築費への充当分だけでなく、諸費用と着工から入居開始までの運転資金まで含めて考えてください。
なお、この試算には土地代も、10年目以降の外装修繕費も、20年目以降の設備更新費も入っていません。建築費だけを見て判断せず、保有期間全体のキャッシュフローで見てください。
建築会社の見積もりを比較するときのチェックポイント
相見積もりで最も多い失敗が、金額だけを並べて安いほうを選ぶことです。本体工事費に何を含めるかは会社ごとに違うため、そのままでは比較できません。同じ土俵に乗せる方法は1つで、延床面積・戸数・専有面積・設備グレードの4条件を先に固定して見積もりを依頼することです。
| 確認する項目 | 見積書での表れ方 | 抜けていた場合の追加額の目安 |
|---|---|---|
| 地盤調査・地盤改良 | 「別途」「地盤調査後に決定」 | 100万〜400万円 |
| 屋外給排水・ガス・電気の引込 | 本体に含むか付帯に含むかが会社で分かれる | 100万〜300万円 |
| 外構(駐車場・駐輪場・ゴミ置場) | 「別途」表記が多い | 150万〜500万円 |
| 解体・造成・擁壁 | 更地でない土地では必須 | 200万〜1,000万円 |
| 設計料・工事監理料 | 本体に内包か別途か | 本体工事費の1〜8% |
| 建物表題登記・所有権保存登記 | 諸費用側に計上 | 20万〜40万円 |
| 不動産取得税・登録免許税 | 竣工後の請求になり見落としやすい | 建物評価額により変動 |
| 火災保険・地震保険 | 融資条件で加入必須になることが多い | 20万〜60万円(長期一括) |
発注先ごとの向き不向き
| 発注先 | 得意な規模・構造 | 価格の出方 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| ハウスメーカー | 木造・軽量鉄骨造の2〜3階建て | 規格化により金額が読みやすい。標準仕様の範囲外は割高になる | 工期と品質のばらつきを抑えたい、一括借上げも検討したい |
| 地域の建築会社・工務店 | 木造2〜3階建て | 交渉余地は大きいが、会社ごとの差も大きい | 土地の形状が特殊、仕様を細かく決めたい |
| 中堅ゼネコン | 重量鉄骨造・RC造の3階建て以上 | 実行予算の積み上げ。小規模だと管理費の比率が上がり割高 | 延床100坪超、RC造で長期保有する |
金額の比較ではなく、根拠の比較をしてください。坪単価が10万円安い提案でも、地盤改良と外構が別途になっていれば総額は逆転します。発注先の選び方については、ハウスメーカーと建築会社を投資家視点で比較する観点で詳しくまとめています。
アパート建築費は、坪単価という1つの数字ではなく、土地条件・階数・戸数・仕様・発注方式の積み重ねで決まります。数字の前提を1つずつ明らかにしていけば、提示された見積もりが妥当かどうかはご自身で判断できます。建築費は、建てた後の20年、30年を決める金額です。判断に迷う段階の方は、INAの無料相談で、お手元の見積書とご自身の土地条件を突き合わせるところからご一緒します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 土地70坪でアパートを建てると建築費はいくらですか?
建ぺい率60%・容積率200%の土地70坪なら、木造2階建てで延床約71坪、建築費総額は6,700万〜8,500万円が目安です。住戸は1戸25㎡で8戸程度になります。RC造3階建てを選ぶ場合は、同じ延床でも9,900万〜1億3,100万円の水準です。土地の坪数と延床の坪数は別の数字ですので、まず登記簿の面積と用途地域を確認し、建ぺい率で建築面積を出すところから始めてください。
Q2. アパート建築費1億円だと何戸建てられますか?
木造2階建てなら延床約93坪で10戸、RC造3階建てなら延床約62坪で6〜7戸が目安です。1戸25㎡を前提にした概算で、土地代は含みません。木造は戸数が増えて表面利回りが高く出ますが法定耐用年数は22年、RC造は戸数が減る代わりに47年です。保有予定年数と相続の予定によって、どちらが合うかは変わります。
Q3. 3階建てアパートは2階建てより坪単価がどれくらい高くなりますか?
同じ延床面積で比べた場合、3階建ては2階建てより坪単価が10〜20%高くなります。木造で延床60坪なら、2階建て5,700万〜7,200万円に対し、3階建ては6,600万〜8,400万円が目安です。構造計算適合性判定、耐火・準耐火の仕様、2方向避難、基礎の割増、給水加圧といった項目が加わるためです。3階建ての判断は、容積率と斜線制限で3階分の床が実際に取れるかで決めてください。
Q4. アパート4戸の建築費はいくらが目安ですか?
1戸25㎡の木造2階建て4戸なら、延床約36坪で建築費総額3,400万〜4,300万円が目安です。1戸あたりに直すと850万〜1,080万円になります。この1戸あたり単価は、6戸でも10戸でもほとんど変わりません。戸数を増やしても建築費の単価は下がりにくいため、規模の判断は建築費の効率ではなく、土地の広さと管理のしやすさで決めることになります。
