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建設業政策はなぜ転換点にあるのか?人・経営・未来から読む解説

建設業政策の転換点を国交省の2026年4月とりまとめから解説します。不動産オーナー向けに、人財、経営、DX、CCUSの影響を整理します。

最終更新: 約8分で読めます

建設業の変化は、現場で働く人だけの問題ではありません。工期や品質、建築費の見通しにまで波及するため、不動産オーナーや発注者にとっても無視できないテーマです。国土交通省が2026年4月に公表したとりまとめは、その現実をかなり率直に示していました。

建設業はいま、単なる人手不足の業界ではなく、産業の形そのものを問い直されている局面にあります。だからこそ今回の議論は、業界内部の制度見直しにとどまらず、社会全体の供給力をどう守るかという問いでもあります。

建設業政策はいま、なぜ転換点にあるのか

今回のとりまとめでまず印象的なのは、建設業を「産業として重大な岐路に立っている」と位置づけている点です。生産年齢人口の減少、資機材価格の高騰、AIやデジタル技術の進展が同時に進む中で、従来のやり方をそのまま続けるのは難しくなっています。

建設業は、社会インフラを支える基幹産業です。しかし、現場を担う人が減り、若い世代が将来像を描きにくくなれば、持続性は揺らぎます。だからこそ、今回の議論は単なる業界改善ではなく、国の供給力をどう守るかというテーマでもあります。

こうした文脈を踏まえると、建設業の変化は不動産市場にも直結します。たとえば、建築費の上昇だけを見ても意味は十分ではありません。供給の担い手が減り、現場の働き方が変わり、元請から下請までの関係性が変われば、完成物件の品質や納期にも影響が出るからです。 不動産管理の現状とDXによる変革:次世代オーナーへの提言 でも触れたように、オーナー側は管理や運営だけでなく、供給を支える建設業の変化まで視野に入れる必要があります。

とりまとめが示した3つの視点とは何か

今回のとりまとめでは、今後の建設業が目指す姿として「人を大事にする」「真に経営力のある」「未来に続く」という3つの視点が示されています。私はこの整理が、とても本質的だと感じました。

第一に「人を大事にする」産業です。これは精神論ではありません。月給制への転換、処遇の見直し、技能や経験の見える化など、働く人の生活を安定させるための制度設計を含みます。現場で働く人が安心して働けなければ、採用も定着も前に進みません。

第二に「真に経営力のある」産業です。建設業は、技術だけでなく経営の力が問われる段階に入っています。受注の取り方、原価の見方、協力会社との関係、事業承継の進め方まで含めて、経営の質が競争力を左右します。 不動産管理会社の定義と役割・探し方・選び方【人財の重要性を中心に】 でも分かるように、持続可能な成長の前提には、人財投資を軸にした経営の再設計があります。

第三に「未来に続く」産業です。ここでは、重層下請構造の見直し、業界慣行の改善、女性や若手が働きやすい環境づくり、そして国際的な人財の活用まで含まれています。未来に続く産業とは、短期の利益だけではなく、次の世代が入りたくなる産業です。

建設業が抱える構造課題をどう見るか

とりまとめは、課題をかなり具体的に整理しています。代表的なのが多重下請構造と契約慣行です。総価一式の契約では、コストの内訳や責任の所在が見えにくくなり、しわ寄せが下流へ流れやすくなります。これでは、現場で頑張る人が報われにくい構造が残ります。

また、給与制度の問題も軽くありません。日給月給の慣行が残る一方で、現場は天候や繁忙の影響を受けやすく、収入の見通しが立ちにくいことがあります。これは若い世代にとって大きな不安材料です。働き方を変えるには、制度を変える必要があります。

さらに、事業承継も重要です。建設業は中小企業の比率が高く、経営者の交代がそのまま会社の存続に関わります。現場の技術だけでなく、管理、採用、取引先との信頼関係まで含めて引き継ぐ仕組みが必要です。 その前提として、不動産管理業ってなに?管理会社の仕事内容と誠実な価値提供 のように、人をコストではなく資産として見る姿勢が欠かせません。

月給制、CCUS、DX/AIで現場はどう変わるのか

今回の資料で、今後の変化を象徴するのが月給制とCCUSです。月給制は、単に支払い方を変える話ではありません。働く人の生活を安定させ、技能形成を長期で支えるための前提です。賃金が安定すれば、若手も将来を描きやすくなります。

CCUSは、技能や経験を見える化する仕組みです。現場でどんな経験を積み、どの技能を持っているかが可視化されれば、評価の納得感が高まります。これは採用にも定着にも効きます。見えない頑張りを見える評価に変えることが、処遇改善の第一歩です。

一方で、DXやAIは現場を置き換えるものではありません。むしろ、人が本来やるべき仕事に集中するための道具です。施工管理、情報共有、書類業務、工程調整などは、まだ改善余地が大きい領域です。ここを支えることで、現場の負担は下がり、生産性は上がります。 ここでも、不動産管理の現状とDXによる変革:次世代オーナーへの提言 が示すように、テクノロジーは目的ではなく、人財が力を発揮するための手段として使うことが重要です。

不動産オーナー・発注者は何を見るべきか?

不動産オーナーや発注者にとって大事なのは、建設業の変化をコストだけで見ないことです。処遇改善や制度改革は、短期的には負担に映るかもしれません。しかし、長期で見れば、品質の安定、工期の予見性、協力会社の継続性という形で返ってきます。

また、契約のあり方も見直しが必要です。価格の妥当性、変更時の協議、責任分担の明確化は、信頼の土台です。曖昧なまま進めるより、最初から正直に条件を確認したほうが、結果的にトラブルは少なくなります。私はここに、INAが大切にしている「信頼と正直さ」がよく表れていると思います。

さらに、オーナーは「今の建設費はいくらか」だけでなく、「この先も安定して施工を担える会社か」を見ておくべきです。経営力がある会社は、景気の波に左右されにくく、現場の再現性も高い傾向があります。これは賃貸経営でも同じです。長く付き合える相手かどうかが、資産の安定を左右します。

INAはどう見るべきか?

今回のとりまとめを読んで改めて感じるのは、建設業の課題は、突き詰めれば人財の課題だということです。どれだけ制度を整えても、最後に現場を支えるのは人です。そして、その人が安心して働ける環境をつくるのが経営の責任です。

だからこそ、私たちは「人を大事にする」ことを中心に置きます。短期的なコスト削減ではなく、人財投資を通じて持続可能な成長を目指す。これが、建設業にも不動産業にも共通する基本姿勢だと考えています。

建設業は、変わるべきところを変えれば、まだ強くなれます。むしろ今は、変わるチャンスです。まずは、取引先の見方や契約の置き方を一段深く見直すところから、読者の皆さまにも始めていただきたいと思います。

建設業政策でよくある質問は?

Q1. 今回の建設業政策のとりまとめで、最も重要な点は何ですか。

A. 最も重要なのは、建設業を「人を大事にする産業」として再設計しようとしている点です。処遇、働き方、経営力を同時に見直す姿勢が示されています。

Q2. 月給制は現場にどんな影響がありますか。

A. 収入の安定性が高まり、若手が将来を描きやすくなります。採用と定着の両方にプラスに働く可能性があります。

Q3. CCUSはなぜ必要なのですか。

A. 技能や経験を見える化し、評価の納得感を高めるためです。能力が正しく伝わることで、適切な処遇につながりやすくなります。

Q4. 不動産オーナーはこの政策をどう見ればよいですか。

A. 建築費だけでなく、工期、品質、施工会社の持続性まで含めて見る必要があります。建設業の健全性は、資産の安定にも直結します。

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引用・参考資料は?

Daisuke Inazawa, President & CEO of INA&Associates Inc.

著者

代表取締役社長 / CEOINA&Associates株式会社

INA&Associates株式会社 代表取締役社長。首都圏・近畿圏を中心に不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントを統括。収益不動産投資戦略と超富裕層向け不動産コンサルティングを専門領域とする。

稲澤 大輔(いなざわ・だいすけ)は、INA&Associates株式会社の代表取締役社長(CEO)。大阪本店・東京営業所を拠点に、首都圏・近畿圏における不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントの三事業を統括する。

専門領域は、収益不動産の投資戦略立案、賃貸経営の収支最適化、超富裕層(UHNWI)・機関投資家向け不動産コンサルティング、およびクロスボーダー不動産投資。国内外の投資家に対し、データと長期視点に基づくアドバイザリーを提供している。

「企業の最も重要な資産は人財である」を経営理念に掲げ、人財投資カンパニーとして持続可能な企業価値の創造に取り組む。経営者として、変化の時代におけるリーダーシップのあり方と組織文化についても積極的に発信を続けている。

合格・取得資格は11種:宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、管理業務主任者、賃貸不動産経営管理士、行政書士、個人情報保護士、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者。

  • 宅地建物取引士
  • 公認不動産コンサルティングマスター
  • マンション管理士
  • 管理業務主任者
  • 賃貸不動産経営管理士
  • 行政書士
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  • マンション維持修繕技術者
  • 貸金業務取扱主任者