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COLUMN

賃貸リフォームと減価償却|資本的支出と修繕費の違い・計算方法を解説

賃貸経営におけるリフォーム費用の減価償却を、資本的支出と修繕費の判定基準、定額法による計算方法、実務手続きまで体系的に整理して解説します。

最終更新: 約8分で読めます

賃貸経営を続けていれば、物件の老朽化に伴うリフォームやリノベーションは避けて通れないテーマです。リフォーム費用は会計上どのように扱われるのか、減価償却が必要なのか、必要だとしたら計算方法はどうなるのか。本記事では、賃貸経営における減価償却の基本から、対象となるリフォーム費用、計算方法、税務上の判断ポイントまでを整理して解説します。

私たちINA&Associates株式会社は、不動産投資を「人財投資カンパニー」としての視点で捉え、関わるオーナー様の長期的な資産形成を支えることを大切にしています。会計や税務の知識は、その判断を裏付ける土台です。なお、本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務判断は税理士へ相談されることを推奨します。

賃貸経営における減価償却の基本

減価償却とは何か

減価償却とは、長期間使用する固定資産の取得費用を、複数年にわたって経費計上する会計処理のことです。建物や設備のように時間の経過とともに価値が減少する資産が対象となります。土地は時間の経過で価値が下がる前提に立たないため、減価償却の対象外です。

法定耐用年数の考え方

減価償却を行ううえで重要なのが「法定耐用年数」です。これは、資産ごとに税法で定められた減価償却の期間を指します。同じ建物でも構造や用途によって耐用年数は大きく異なります。

  • 木造(住宅用):22年
  • 木造(店舗用):22年/(事務所用):24年
  • 軽量鉄骨造(住宅用、骨格材肉厚3mm以下):19年
  • 重量鉄骨造(住宅用、骨格材肉厚4mm超):34年
  • 鉄筋コンクリート造(住宅用):47年

法定耐用年数は、税法上の年数であり、建物の物理的寿命と完全に一致するわけではありません。あくまで会計・税務上の処理基準として位置づけられています。

リフォーム費用は「資本的支出」か「修繕費」かで扱いが変わる

賃貸物件のリフォーム費用は、税務上、「資本的支出」と「修繕費」のどちらに該当するかで処理方法が大きく変わります。この区分が、減価償却が必要かどうかの分かれ目になります。

資本的支出に該当するリフォーム

資本的支出とは、建物の価値を高めたり、耐久性を伸ばしたりする支出です。以下のような大規模リフォームが典型例です。

  • 間取りを大幅に変更する大規模リノベーション
  • 3点ユニットバスからセパレート型への変更
  • システムキッチンへのフルリプレース
  • 外壁塗装で機能性能を従来より向上させる工事
  • 増築・耐震補強

これらは、その年の経費として一括計上できず、減価償却を通じて複数年にわたり経費化していきます。

修繕費に該当するリフォーム

修繕費は、原状回復や現状維持を目的とした支出で、原則として支出した年の経費として一括計上できます。

  • 退去後の壁紙の張り替え
  • 畳の表替え
  • 定期的な外壁塗装(性能向上を伴わないもの)
  • 故障した設備の修理

判定が難しいときの基準

実務上、資本的支出と修繕費の境界はあいまいなケースが少なくありません。税務上は以下のような目安があります。

  • 1件20万円未満は修繕費として扱える
  • おおむね3年以内の周期で行われる定期的な修繕は修繕費とできる
  • 形式区分基準として「60万円未満」または「前期末取得価額の10%以下」のいずれかを満たせば修繕費とできるケースもある

判定に迷う場合は、工事の発注前に税理士へ相談しておくことを強くおすすめします。発注後の区分変更は実務的に難しく、後の税務調査で否認されるリスクもあるためです。

減価償却費の計算方法

定額法

建物本体に該当する資本的支出は、税法上「定額法」で計算します。計算式は次のとおりです。

取得価額 × 定額法の償却率(耐用年数ごとに国税庁が定めた率)

たとえば、鉄筋コンクリート造の住宅用建物(耐用年数47年、償却率0.022)に対し、100万円の資本的支出を行った場合、毎年22,000円が減価償却費として計上できます。

定率法(建物附属設備の一部)

建物附属設備のうち、定率法が選択可能な区分については、初年度に多めの償却費を計上し、年を追うごとに減額していく計算方法を選べます。ただし、平成28年(2016年)4月1日以降に取得した建物附属設備・構築物は定額法のみが適用されます。そのため、新規のリフォーム工事は実質的に定額法で考えることになります。

定額法・定率法のどちらを選ぶべきか

選択可能な範囲では、目的に応じた選択が可能です。

  • 資金を早期に回収したい場合:定率法(初年度の節税効果が大きい)
  • 毎年の収支を安定させたい場合:定額法
  • 融資審査で営業利益を厚く見せたい場合:減価償却の前倒しは控えめに

減価償却を計上する際の手続き

個人事業主の場合

確定申告書に添付する「青色申告決算書(不動産所得用)」または「収支内訳書」の減価償却費欄に、対象資産・取得価額・耐用年数・償却率・本年分償却費を記入します。リフォーム工事の請求書、領収書、契約書は保管が必要です。

法人の場合

法人税申告書の別表16で減価償却資産の明細を記載します。固定資産台帳に資本的支出として登録し、本体資産とは別に管理することが一般的です。

長期視点から見たリフォーム計画

賃貸経営におけるリフォームは、短期的なキャッシュアウトと長期的な資産価値・収益力のバランスで判断する必要があります。私たちは、目先の節税のみを軸にリフォームの方法や規模を決めることはおすすめしていません。むしろ、入居者にとっての住環境の質、長期的な空室率、出口戦略まで含めた総合判断が重要です。

「修繕費でまとめて落とせるから」「資本的支出にして数年後に節税効果を出したいから」といった会計的観点だけで意思決定すると、本来重視すべき物件価値の議論が後回しになる恐れがあります。会計処理は経営判断の結果として整えるべきものであって、経営判断そのものではないという視点を大切にしたいところです。

INA&Associatesの考え方

私たちは、不動産経営を短期的な利益追求ではなく、関わる全ての方の幸せにつながる持続可能な事業として捉えています。リフォームの会計処理は、その持続性を支える実務知識の一つです。減価償却を正しく理解することで、税負担の最適化と資産価値の維持の両立が可能になります。

具体的な税務処理は、必ず顧問税理士と相談のうえで進めてください。本記事は概念整理のための一般情報であり、個別事案の判断材料ではありません。

まとめ

  • 建物のリフォーム費用は「資本的支出」と「修繕費」のいずれかに区分される
  • 資本的支出は減価償却を通じて複数年にわたり経費化する
  • 建物本体・附属設備(H28.4以降取得分)は定額法で計算する
  • 20万円未満や周期的修繕は修繕費として一括計上できる場合がある
  • 区分判定は工事発注前に税理士へ相談することが望ましい

よくある質問(FAQ)

Q1. 退去後の壁紙張り替えは減価償却が必要ですか?

原則として原状回復にあたるため、修繕費として一括計上できることが一般的です。ただし、グレードを大幅に上げて建物の価値を高める場合は、資本的支出とみなされる可能性があります。

Q2. 同じ年に複数のリフォームを行った場合、合算で判断しますか?

原則は工事ごとに判断しますが、一連の工事として行われた場合は合算評価される場合があります。請求書の分割では区分が変わらないと判断されるケースが多く、契約書の単位で考えるほうが安全です。

Q3. リフォームで耐用年数は延長されますか?

建物本体への大規模な資本的支出を行うと、本体とは別に新たな減価償却が始まります。この場合、リフォーム部分の耐用年数は新築相当として計算されます。

Q4. 自分で判断するのが難しい場合はどうすれば良いですか?

必ず税理士に相談することをおすすめします。とくに資本的支出と修繕費の境界判定、定額法・定率法の選択、固定資産税への影響など、専門知識が必要な論点が多いためです。

Daisuke Inazawa, President & CEO of INA&Associates Inc.

著者

代表取締役社長 / CEOINA&Associates株式会社

INA&Associates株式会社 代表取締役社長。首都圏・近畿圏を中心に不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントを統括。収益不動産投資戦略と超富裕層向け不動産コンサルティングを専門領域とする。

稲澤 大輔(いなざわ・だいすけ)は、INA&Associates株式会社の代表取締役社長(CEO)。大阪本店・東京営業所を拠点に、首都圏・近畿圏における不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントの三事業を統括する。

専門領域は、収益不動産の投資戦略立案、賃貸経営の収支最適化、超富裕層(UHNWI)・機関投資家向け不動産コンサルティング、およびクロスボーダー不動産投資。国内外の投資家に対し、データと長期視点に基づくアドバイザリーを提供している。

「企業の最も重要な資産は人財である」を経営理念に掲げ、人財投資カンパニーとして持続可能な企業価値の創造に取り組む。経営者として、変化の時代におけるリーダーシップのあり方と組織文化についても積極的に発信を続けている。

合格・取得資格は11種:宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、管理業務主任者、賃貸不動産経営管理士、行政書士、個人情報保護士、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者。

  • 宅地建物取引士
  • 公認不動産コンサルティングマスター
  • マンション管理士
  • 管理業務主任者
  • 賃貸不動産経営管理士
  • 行政書士
  • 個人情報保護士
  • 甲種防火管理者
  • 競売不動産取扱主任者
  • マンション維持修繕技術者
  • 貸金業務取扱主任者