財形住宅貯蓄とは、勤務先の福利厚生を使い、住宅の購入資金やリフォーム費用を給与天引きで積み立てる制度です。55歳未満の従業員が5年以上積み立てることが条件で、財形年金貯蓄と合わせて元利合計550万円以内なら利子が非課税になります。さらに1年以上続けると、残高の10倍以内・最高4,000万円まで公的な住宅ローン(財形持家転貸融資制度)を申し込めます。一方で金利は0.001〜0.02%程度と低く、お金を増やすための制度ではありません。
「頭金を貯めよう」と決めたのに、口座に残ったお金をつい別のことに使ってしまう。住宅購入のご相談で最も多く伺うのは、この話です。財形住宅貯蓄は、その使い込みを気持ちではなく仕組みで止める制度です。この記事では、制度の中身と利用条件、メリットとデメリット、向き不向き、そしてNISAやiDeCoなど他の資産形成方法との使い分けまでを、判断できる形に整理します。
この記事のポイント
- 財形住宅貯蓄は55歳未満の従業員が5年以上積み立てる制度で、財形年金貯蓄と合わせて元利合計550万円以内の利子が非課税になります。
- 勤務先が制度を導入していることが前提ですが、正社員に限らず契約社員・派遣社員・パートも対象です。
- 金額として大きいのは非課税より融資枠です。残高の10倍以内・最高4,000万円まで財形持家転貸融資制度を使えます。
- 金利は0.001〜0.02%程度と低く、増やす目的には向きません。増やすならNISA、貯める箱として財形、と役割を分けて考えます。
- 住宅以外の目的でも払い出しはできます。課税されるのは過去5年分の利子だけで、60歳まで引き出せないiDeCoより出口は柔軟です。
財形貯蓄制度とは?国と企業が一緒に支える給与天引きの貯蓄
財形貯蓄制度とは、会社に勤めている従業員が企業の協力を得て、給与から天引きで貯蓄する制度です。1971年に制定された勤労者財産形成促進法にもとづき、国と企業が連携して従業員の資産づくりを支えることを目的としています。財形住宅貯蓄は、その中の1つです。
誰が使えて、いくらから積み立てられるのか
ここでいう従業員とは、職業の種類や雇用形態を問わず、事業主に雇用されている人を指します。正社員だけでなく、契約社員、派遣社員、アルバイト・パートも対象に含まれます。ただし、勤務先が福利厚生として財形貯蓄制度を導入していなければ利用できません。まずは福利厚生担当に、制度の有無と提携先の金融機関を確認してください。
仕組みはシンプルです。給与から天引きされた一定額を、企業が毎月、財形貯蓄用の金融機関へ払い込みます。天引きする金額は自分で設定でき、商品によっては毎月1,000円から積み立てられます。積み立てた貯蓄には利息が付くため、受け取る際に元本より多く得られる場合もあります。
選べる金融商品は勤務先ごとに決まっている
財形貯蓄制度では、企業・団体ごとに利用できる金融商品が限られています。決められた商品の中から選んで契約し、天引きした給与から引き去りで積み立てる形です。一般的に対象となるのは次のような商品です。
- 定期預金・積立定期預金
- 定額貯金
- 投資信託
- 国債・社債
- 貯蓄型保険・損害保険
契約した商品が保険の場合は、積立金ではなく保険料として支払われます。同じ「財形」でも、預金を選ぶか投資信託を選ぶかで元本の安全性はまったく変わります。この選択が後述の元本割れリスクに直結しますので、契約前に必ず商品名を確認してください。
一般・年金・住宅の3種類はどう違うのか
財形貯蓄制度は、目的に合わせて3種類に分かれます。違いは「使いみちの縛り」と「非課税措置の有無」の2点に集約されます。
| 種類 | 積立期間・年齢 | 使いみち | 利子の非課税措置 |
| 一般財形貯蓄 | 原則3年以上。年齢制限なし | 制限なし。車の購入、結婚資金、医療費、引っ越し費用などに使える | 対象外 |
| 財形年金貯蓄 | 55歳未満の従業員が5年以上 | 60歳以降に年金形式で受け取る。受取期間は5年以上20年以内 | 財形住宅貯蓄との合計で元利合計550万円以内まで非課税 |
| 財形住宅貯蓄 | 55歳未満の従業員が5年以上 | 住宅の購入資金・リフォーム費用 | 財形年金貯蓄との合計で元利合計550万円以内まで非課税 |
一般財形貯蓄は、貯蓄開始から1年経てば払い出しができ、1人で複数の金融商品を契約することもできます。自由度は高い代わりに、利子は課税されます。3種類は併用できますので、「使いみちが決まっていないお金は一般財形、住宅資金は財形住宅」といった分け方も可能です。
財形年金貯蓄には、退職しても年金の受け取りが終わるまで非課税措置を受けられるという利点があります。反対に、年金以外の目的で払い出すと非課税措置がなくなり、解約時に利子へ課税されます。非課税枠550万円は3種類の合計ではなく、年金と住宅の2つを合わせた枠である点に注意してください。
財形住宅貯蓄はどんな条件で使えるのか
財形住宅貯蓄は、55歳未満の従業員が5年以上定期的に積み立てることが前提で、複数の金融機関とは契約できず、原則1人1契約までです。加えて、払い出す住宅そのものにも条件があり、新築・中古・リフォームでそれぞれ内容が異なります。
| 区分 | 面積の条件 | 築年数・費用の条件 | 居住の条件 |
| 新築住宅 | 床面積50平米以上 | ― | 勤労者本人が住んでいること(単身赴任の場合は家族が暮らす拠点であること) |
| 中古住宅 | 床面積50平米以上 | 築20年以内(耐火構造は25年以内)、または一定の耐震基準を満たすこと | 勤労者本人が住んでいること(単身赴任の場合は家族が暮らす拠点であること) |
| リフォーム | 施工後の床面積50平米以上 | リフォーム費用が75万円を超えること | リフォーム後の住宅に勤労者本人が住んでいること |
払い出しのタイミングにも決まりがあります。住宅を取得した後で1回、または取得の前後で2回までに限られます。積立期間が5年以上と定められている以上、契約時点で「いつマイホームを買うのか、いつリフォームするのか」をおおよそ描いておく必要があります。3年後に買う予定なら、この制度は最初から選択肢に入りません。
なお、床面積や築年数の要件は住宅関連の他制度と数字が近く、混同しやすいところです。制度の運用は改正されることもありますので、契約前の最新の取扱いは勤務先の福利厚生担当と財形取扱金融機関でご確認ください。頭金と別に現金で必要になる費用の全体像は、マンション購入の初期費用の内訳と目安で確認できます。
財形住宅貯蓄のメリットは何か
最大のメリットは、手間をかけずに住宅資金が確実に積み上がることです。加えて、非課税措置、目的外払い出しの柔軟さ、低金利融資、給付金という4つの利点があります。順に見ていきます。
手間なく、着実に住宅資金が貯まる
お金を貯める基本は、先に一定額を貯蓄へ回し、残りで生活することです。しかし給与をわざわざ別口座へ移すのは手間がかかり、振込手数料が発生する場合もあります。財形住宅貯蓄なら、最初に手続きと商品選びを済ませれば、あとは毎月自動的に天引きされます。毎月1,000円から始められる商品もあり、負担の少ない金額から試せます。
元本550万円まで利子が非課税になる
一般財形貯蓄と異なり、財形住宅貯蓄は元本550万円まで利子などが非課税です。自分で銀行へ積み立てる場合より、税金の分だけ効率よくお金が残ります。対象商品に投資信託が含まれる場合、通常なら利益に課税されますが、非課税措置を受けられれば税金分を減らさずに運用できるため、手元に残る金額が増える可能性があります。
住宅目的でなくても払い出しはできる
財形住宅貯蓄は原則として住宅の購入かリフォームに使う制度ですが、それ以外の理由でまとまったお金が必要になったときも、払い出し自体はできます。目的外では払い戻せないiDeCoや個人年金保険とは、ここが決定的に違います。
目的外で払い出した場合に課税されるのは、過去5年分の利子に限られます。そのため、住宅購入をまだ具体的に決めていない方でも、一般財形貯蓄より有利に非課税措置を受けられる可能性があります。使いみちが固まっていないことを理由に見送る必要は、必ずしもありません。
財形持家転貸融資制度という公的な住宅ローンを使える
財形貯蓄を1年以上利用していると、財形持家転貸融資制度を申し込めます。新築・購入・リフォームの際に受けられる公的な住宅ローンで、財形貯蓄残高の10倍以内、上限4,000万円まで融資を受けられます。対象となる財形貯蓄は住宅に限らず、一般・年金でも構いません。
返済期間は購入で35年、リフォームで20年まで設定でき、財形住宅貯蓄と組み合わせることで民間の住宅ローンより低い利率で借りられます。たとえば300万円が貯まっていれば、最高3,000万円まで融資を受けられる計算です。ただし、借入の申し込み日までに50万円以上の財形貯蓄残高があることを証明するなど、いくつか条件があります。
申し込み窓口は、勤務先が制度をどう導入しているかで変わります。次の表で自社がどれに当たるかを確認してください。
| 勤務先における負担軽減措置の導入形態 | 申し込み窓口 |
| 負担軽減措置あり/融資制度あり | 財形持家転貸融資の利用が可能。福利厚生担当に申し込む |
| 負担軽減措置あり/融資制度なし | 住宅金融支援機構の財形住宅融資を検討する |
| 財形住宅金融株式会社に出資 | 財形住宅金融株式会社に申し込む |
頭金を確保しておけば借入額そのものが減り、返済負担も軽くなります。金利タイプの選び方や控除制度との関係は、住宅ローンの基本と金利の種類で整理しています。民間ローンと財形融資のどちらが有利かは条件次第ですので、両方の見積もりを並べて比べてください。
企業からの財形給付金を受け取れる
財形貯蓄を利用していると、勤務先の制度によっては財形給付金制度・財形基金制度の対象になります。いずれも、企業側が財形貯蓄を利用する従業員に給付金を支払う制度です。拠出金の運用方法は異なりますが、一定年ごとに給付金が支払われる点は共通しています。
財形給付制度では、従業員1人に対して上限10万円の拠出を行い、7年が経過すると拠出金と運用益の合計が支給されます。この給付金は、給与から天引きして積み立てている貯蓄とは別に、企業が積み立てていたものです。拠出金は損金・経費として認められるため、企業側にも導入する理由があります。従業員から見れば、財形貯蓄を利用しているだけで受け取れるお金です。制度があるかどうかは、就業規則か福利厚生担当で確認できます。
財形住宅貯蓄のデメリットは何か
デメリットは、金利の低さと、そこから派生するインフレへの弱さに集約されます。元本割れのリスクは、選ぶ商品次第で避けられます。
他の金融商品と比べて金利が低い
金融機関によって異なるものの、財形住宅貯蓄の金利は0.001〜0.02%程度にとどまります。非課税措置があっても、そもそも受け取る利子が少なければ恩恵は限定的です。
数字で確かめます。金利が0.02%だった場合、550万円を貯めたときに付く利子は1,100円です。この1,100円が非課税になりますが、仮に課税されたとしても税率20.315%をかけた223円にすぎません。非課税措置で守られる金額は、年間で数百円という水準です。非課税という言葉の響きだけで判断すると、実際の効果を過大に見積もることになります。
なお、金利水準は市場環境で動きます。契約時点の適用利率は、勤務先が提携する金融機関で確認してください。
商品によっては元本割れが起こりうる
財形住宅貯蓄で選べる商品には、保険や投資信託も含まれます。これらは返戻率や基準価額が変動するため、払い出しのタイミング次第では元本を下回ることがあります。10年後にマイホームを建てるつもりで投資信託を積み立てていたところ、その年に価格が下落していれば、積み立てた掛け金より受け取り額が少なくなります。
ただし、運用先を預貯金や定期預金にしておけば元本割れのリスクは避けられます。財形住宅貯蓄は使う時期がほぼ決まっているお金です。使う日が近いお金ほど、値動きのある商品から遠ざけるという原則が当てはまります。
インフレに弱い
金利が低いことは、物価が上がる局面での弱さにつながります。現在1万円で買えるものが1年後に11,000円になっていれば、貨幣の価値はその分下がったことになります。値動きのある金融商品なら利息や運用益で目減りを賄える可能性がありますが、財形住宅貯蓄は金利が低い分、インフレによる目減りを利息で埋めることが難しくなります。
住宅価格自体が上がっている局面では、この弱点がそのまま計画のずれとして現れます。5年かけて500万円を貯めている間に、目当ての物件価格が上がることもあります。目標額は物件価格に対する割合で持っておくほうが、現実に追随しやすくなります。
財形住宅貯蓄が向いているのはどのような人か
向いているのは、住宅購入が5年以上先で、増やすより確実に貯めることを優先する人です。反対に、リターンを求める人や、勤務先に制度がない人には別の手段が向きます。次の表でご自身がどこに当てはまるかを確認してください。
| 判断の軸 | 向いている | 向いていない |
| 貯蓄の習慣 | 残ったお金をつい使ってしまい、引き出しにくい仕組みが欲しい | すでに毎月の自動積立が続いており、使い込む心配がない |
| 住宅購入の時期 | 5年以上先を想定している | 2〜3年以内に購入する予定がある(積立期間5年以上を満たせない) |
| 求めるリターン | 元本を守りながら確実に貯めたい | 運用で大きく増やしたい |
| 借入の考え方 | 低い利率の融資枠を確保しておきたい | 自己資金中心で、借入を予定していない |
| 他の非課税制度 | NISAやiDeCoにまだ手をつけていない、または住宅資金だけ分けたい | すでにNISA・iDeCoを活用しており、税制優遇の枠が足りている |
| 勤務先の制度 | 財形貯蓄制度が導入されている | 導入されていない(そもそも利用できない) |
iDeCoやNISAには、財形住宅貯蓄以上に大きい税制上の優遇が用意されています。すでにこれらを活用している方が、非課税枠の狭い財形住宅貯蓄に魅力を感じにくいのは自然なことです。ただし、財形住宅貯蓄の本当の価値は非課税より融資枠にあります。低い利率で借りられる選択肢を持っておきたいなら、NISAと併用する形で残高を作っておく意味は残ります。
財形住宅貯蓄以外の資産形成方法と、どう使い分けるか
住宅資金を貯める方法は財形住宅貯蓄だけではありません。積立預金、定期預金、NISA、保険、投資信託、そしてiDeCoが選択肢になります。使いみちの縛り、税制、元本の安全性、引き出しやすさの4点で並べると、役割の違いがはっきりします。
| 手段 | 使いみちの縛り | 税制上の扱い | 元本の安全性 | 引き出しやすさ |
| 財形住宅貯蓄 | 住宅の購入・リフォーム | 財形年金貯蓄と合計で元利合計550万円まで利子非課税 | 預金型なら守られる。投資信託・保険型は変動 | 目的外でも払い出し可。過去5年分の利子が課税 |
| 積立預金 | なし | 利子に課税 | 守られる | 目標額の前でも引き出せる商品が多い |
| 定期預金 | なし | 利子に課税 | 守られる | 原則は満期まで不可。中途解約は利息が減る |
| NISA | なし | 運用益が非課税(通常は約20%課税) | 変動する | いつでも売却できる |
| iDeCo | 老後資金 | 財形住宅貯蓄より優遇が大きい | 商品による | 目的外の払い戻しはできない |
| 貯蓄型保険 | なし(保障とセット) | 生命保険料控除(上限12万円)の対象 | 早期解約では下回ることがある | 長期加入が前提 |
| 投資信託(課税口座) | なし | 運用益に課税 | 変動する | いつでも売却できる |
積立預金と定期預金|勤務先に制度がない場合の受け皿
積立預金は、毎月決まった金額を預け入れ、目標金額まで積み立てていく預金です。期間の定めがないものから20年以上の長期まで幅があり、金利は普通預金より少し高く、定期預金よりはやや低めです。満期まで金利が変わらず、目標額に届く前でも引き出せる商品が多いため、堅実に貯めたい方に向きます。勤務先が財形貯蓄制度を導入していない場合、まず検討したいのがこの積立預金です。
定期預金は、あらかじめ指定した期間お金を預け入れる預金です。期間は金融機関によって1カ月から10年程度まで幅があり、金利は普通預金・積立預金より高めに設定されます。固定金利と変動金利を選べる商品も多く、金利上昇局面では変動が有利に働くこともあります。ただし満期まで原則引き出せず、中途解約や一部解約をすると普通預金並みの利息しか受け取れない場合があります。
NISA|増やす役割を担う非課税制度
NISAとは、投資で得た利益に対して税金がかからない制度です。通常、投資で得た収益には約20%の税金がかかります。100万円の利益が出た場合、20万円が課税され、手元に残るのは80万円です。NISAで運用していれば、この100万円をそのまま受け取れます。
2014年に始まったNISAは、2024年から制度が変わりました。2023年末までは「一般NISA」と「つみたてNISA」に分かれ、年間投資枠や非課税保有期間、非課税保有限度額がそれぞれ異なっていました。2024年の新NISAでは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つに整理され、年間投資枠が増え、非課税保有期間も恒久化されました。以前は併用できなかった2つの枠を、同時に使えるようになった点も変わりました。
財形住宅貯蓄と比べると、NISAは元本が変動する代わりに増える可能性を持ちます。5年後に使うと決めている住宅資金を値動きのある商品に置くかどうかは、慎重に考えたいところです。年代別の考え方は、つみたてNISA・iDeCo・不動産投資の比較と選び方にまとめています。
保険と投資信託|保障や分散と引き換えに何を負うか
保険は本来、ケガや病気、万が一への備えです。ただし掛け捨てではない保険は、満期時に保険金を受け取れるため資産運用の役割も担います。終身保険、低解約返戻金型終身保険、学資保険、養老保険、個人年金保険、外貨建て保険、変額保険などが該当します。加入する商品と年間の支払保険料に応じて生命保険料控除を受けられ、上限は12万円です。所得税・住民税の負担軽減にもつながります。ただし原則として長期加入が前提で、保険料は掛け捨てより高めに設定されています。
投資信託は、投資家から集めた資金を運用の専門家が株式や債券などで運用する方法です。自分で株式や債券を売買するにはまとまった資金と学習が必要ですが、投資信託なら少額から始められ、分散投資によってリスクを抑えられます。一方で、基準価額は市場の動向で変動し、元本は保証されません。リスクの種類と大きさは商品ごとに異なりますので、購入前に目論見書で確認してください。
育休や転職で積立が止まるとどうなるか
財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄は、定期的な払い込みが2年間行われないと非課税措置を受けられなくなります。この2年という線引きが、育児休業と転職の場面で実際に問題になります。
出産や育児で休業している間は、財形貯蓄を休止できます。休止する際は、中断する旨の手続きを勤務先の担当者に依頼してください。ここで注意したいのが期間です。産休を含めて育休を2年間取得し、その間ずっと財形貯蓄を休止する場合は、企業から契約中の金融機関へ貯蓄継続適用申告書を提出する必要があります。この一枚を出さないまま2年が過ぎると、それまで積み上げた非課税の前提が崩れます。
職場に復帰したら、契約上で最初に積み立てるべき日に積立を再開します。復帰直後は手続きが重なる時期ですので、休止を申し出た時点で「再開日はいつか」まで担当者と決めておくと確実です。
転職も同じ考え方です。転職先の企業でも財形貯蓄制度が導入されていれば、2年以内に再開の手続きを行うことで継続できます。転職先に制度がない場合は解約となり、非課税措置の対象から外れます。転職を検討する段階で、次の勤務先に財形貯蓄制度があるかどうかを確認しておくと、住宅資金の計画を組み直さずに済みます。
マイホームの「資産性」をどう考えるか
財形住宅貯蓄で資金を貯め、いずれマイホームを持ちたいと考える方の中には、購入することで資産が増えると捉えている方もいます。ここは冷静に整理しておきたい論点です。
家を選ぶ基準に「将来の資産性」を加える方は多く、利便性の高いエリア、駅近、広すぎず狭すぎない間取り、築20年前後のマンションなどが資産性の高い条件として挙げられます。多くの人が「欲しい」「住みたい」と思える家ほど、売却時に買い手がつきやすいため資産性が高いと言えます。
しかし、資産性ばかりを追うと、自分や家族の暮らし方に合わない家を選んでしまうことがあります。今は治安が良い街でも、将来の環境変化まで見通すことはできません。地価が下がる可能性も、上がる可能性と同じだけあります。資産性は判断材料の1つであって、判断の全部ではありません。
そもそも買うか借りるかから考え直したい場合は、賃貸か持ち家かを将来から逆算して選ぶ視点が参考になります。住まいの方針が固まらないうちに積立の目標額だけを決めても、途中で組み直すことになりがちです。方針の整理から相談したい方は、INAの無料相談をご活用ください。
まとめ|財形住宅貯蓄は「貯める箱」として使う
財形住宅貯蓄は、国と企業が連携して従業員の資産づくりを支える制度です。手間をかけずに住宅資金を積み上げられること、財形年金貯蓄と合わせて元利合計550万円以内の利子が非課税になること、そして残高の10倍以内・最高4,000万円まで低い利率で融資を受けられることが柱になります。
一方で、金利は0.001〜0.02%程度と低く、インフレ局面では資産が目減りする可能性があります。目的外で払い出すと過去5年分の利子が課税される点も、あらかじめ織り込んでおきたいところです。
増やす役割はNISAに、貯めて借入枠を作る役割は財形住宅貯蓄に。このように役割を分けて考えると、どちらか一方を選ぶ問題ではなくなります。まずは勤務先に制度があるかを確認し、購入時期を5年以上先に置けるかどうかで判断してください。住宅取得の全体像や資金計画の立て方については、INAでもご相談を承っています。
よくある質問(FAQ)
財形住宅貯蓄は転職したらどうなりますか?
転職先にも財形貯蓄制度があれば、2年以内に再開の手続きを行うことで継続できます。制度がない場合は解約となり、非課税措置の対象から外れます。転職を決める前に、次の勤務先の福利厚生を確認しておくと安心です。
財形住宅貯蓄と住宅ローン控除は併用できますか?
併用できます。財形住宅貯蓄で頭金を貯め、住宅ローンを組んだ場合、住宅ローン控除の適用条件を満たしていれば両方の利点を受けられます。控除の要件は改正されることがありますので、適用可否は購入時点の最新情報でご確認ください。
財形住宅貯蓄で中古マンションを買えますか?
条件を満たせば購入資金に充てられます。床面積50平米以上で、築20年以内(耐火構造は25年以内)または一定の耐震基準を満たしていることが条件です。あわせて、勤労者本人が住むことも求められます。
財形住宅貯蓄とNISAはどちらを優先すべきですか?
目的で決まります。住宅購入が5年以上先の明確な目標なら、財形住宅貯蓄は非課税措置と低い利率の融資枠という利点があります。より高いリターンを求める場合や使途を限定したくない場合はNISAが柔軟です。両方を併用する選択も有効です。
財形住宅貯蓄の積立額は途中で変更できますか?
変更できます。勤務先の担当者に申し出て手続きを行います。ただし、変更できるタイミングや回数は金融機関と企業の規定によって異なりますので、事前に確認してください。
