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伴走型仲介の未来像|多様性とテクノロジーが切り拓く業界変革

未来を多様性とテクノロジーの観点から解説。外国語対応・建築士出身・異業種経験者など多様な人材の価値、VR内見・AI・電子契約の活用、シニア市場の拡大まで、業界変革の全体像を紹介します。

約14分で読めます

かつて不動産取引では物件そのものの情報や価格が重視され、仲介会社や営業担当者の役割は「物件を紹介する人」にとどまる傾向がありました。しかし現代では、インターネットで誰もが簡単に物件情報を入手できるようになり、顧客は「どんな物件を買うか」だけでなく「誰から買うか」を重視するようになっています。本記事では、伴走型仲介の未来を「多様性」と「テクノロジー」という二つの軸から考察し、これからの業界に必要な変化と可能性について掘り下げます。

伴走型仲介の可能性と役割の再定義

不動産業界は長らく「物件ありき」のビジネスモデルが主流でした。良い物件を多く抱え、素早く紹介できる会社が選ばれる——そんな時代が続いてきたのです。しかし、ポータルサイトやSNSの普及により物件情報の非対称性は急速に解消されつつあります。顧客自身がインターネットで物件を探し、相場を調べ、口コミを確認できる現在、担当者に求められる価値は大きく変化しています。

実際、住宅購入者への調査では担当者に求める資質として「信頼性・誠実さ」が他の要素を大きく上回って最重視されています。これは、物件情報の提供だけではもはや差別化にならないことを如実に示しています。顧客は人生の大きな決断において、単なる仲介者ではなく、自分の将来設計を一緒に考えてくれる信頼できるパートナーを求めているのです。

こうした時代の変化を受け、伴走型仲介の役割は「物件紹介者」から「住まいと暮らしの総合コンサルタント」へと進化しています。資金計画の相談、将来のライフプランに合わせた住み替え提案、地域コミュニティの情報提供など、顧客の暮らし全体を見据えた提案力が問われるようになりました。従来の「仲介人」から伴走型仲介へと役割を変え、幅広いスキルと知見で顧客を支援できる担当者こそが、これからの業界をリードしていくでしょう。

INA&Associatesでは、まさにこのサービスモデルを推進しています。一人ひとりが専門性と人間力を兼ね備え、顧客にとって唯一無二の存在となること。それが私たちの目指す姿です。

多様性が生み出す新たな価値

伴走型仲介に多様な人材が参入することで生まれる付加価値は計り知れません。画一的なバックグラウンドを持つ営業担当者だけでは、多様化する顧客ニーズに応えきれない時代が到来しています。ここでは、多様な人材がもたらす具体的な価値について見ていきましょう。

外国語ネイティブの担当者

グローバル化が進む現在、日本国内の不動産市場にも海外からの投資家や居住者が増加しています。東京都心の高額マンション購入者の約20%は外国人投資家であり、2023年には在留外国人数が全国で初めて300万人を超えました。こうした状況下で、英語や中国語での対応が可能な担当者の存在は極めて大きな強みとなります。

言語の壁を取り払えるだけではありません。外国語ネイティブの担当者は、海外の商習慣や文化的背景を理解した上でコミュニケーションを取ることができます。たとえば、海外投資家が日本の不動産を購入する際には、日本特有の権利関係の仕組みや税制、管理組合の運営方法など、母国とは異なる多くの制度を理解してもらう必要があります。こうした複雑な情報を、顧客の母国語で丁寧に説明できる担当者がいれば、安心して取引を進めてもらうことができるのです。その結果、国内の売り手も従来接点のなかった海外の買い手層に物件をアピールでき、市場自体の拡大につながります。

建築士・施工管理出身の担当者

技術系バックグラウンドを持つ担当者がもたらす価値も見逃せません。建築士や施工管理の経験を持つ彼らは、物件の構造や施工品質について専門的視点でアドバイスできます。中古住宅購入時によくある「この家はどこまでリフォーム可能か」「将来の修繕費用はどの程度か」といった不安にも、建築知識がある担当者であれば的確に答えられ、顧客の安心感につながります。

日本では2018年の宅建業法改正以降、住宅購入時に建物状況調査(ホームインスペクション)を利用するケースが徐々に増えています。建築のプロである担当者であれば、こうした調査結果を踏まえた適切なアドバイスやリノベーションの提案まで一貫して行えるため、単なる仲介以上の付加サービスを提供できます。特に築年数の経った物件が多い日本の中古住宅市場において、構造面の安全性を専門的に評価できる担当者の存在は、買い手の大きな安心材料になるはずです。

異業種出身者の強み

異業種出身者が前職の経験を活かすことで、従来にはなかった新しいサービスも生まれています。たとえば金融業界出身者なら住宅ローンや資産運用の知見を活かして顧客の資金計画を助言できますし、IT業界出身者ならデータ分析やオンラインマーケティングに強く、物件の魅力を効果的に発信できます。医療・介護業界の出身者であれば、高齢の顧客に対して介護施設へのアクセスや住環境のバリアフリー対応について、実体験に基づくアドバイスが可能です。

性別や年齢の多様性もまた然りです。子育て経験を持つ女性担当者が母親目線で住環境を提案する、若い世代の担当者がSNSを駆使した情報発信で新たな顧客層を開拓するなど、これまで汲み取りにくかったニーズに応えることも可能になります。このように多彩なバックグラウンドを持つ担当者それぞれが独自の強みを発揮すれば、顧客体験の質は一層高まっていくでしょう。

技術革新と伴走型仲介の未来

テクノロジーの進歩は伴走型仲介の役割を脅かすものではなく、むしろその可能性を広げるものです。デジタル化の波は、取引プロセスや顧客との接点に大きな革新をもたらしています。重要なのは、テクノロジーをいかに「道具」として使いこなし、人間にしかできない価値を高めていくかという視点です。

オンライン内覧・VR内見の普及

オンライン内覧やVR内見の普及は、不動産業界のデジタル化を象徴する事例です。遠方にいながら物件の下見が可能になったことで、担当者と顧客双方の選択肢が大きく広がりました。コロナ禍も相まって対面案内に代わるオンラインでの物件見学ニーズが急拡大し、首都圏の2020年度賃貸契約者では一度も現地を見ずに契約した人が23.4%に達し、そのうち13.5%はオンライン内見のみだったとの調査結果もあります。

今や写真や動画に加え360度カメラによるVRツアーを導入する会社も増えており、自宅にいながら臨場感ある内覧ができる時代です。たとえば海外に住む投資家が日本の物件に関心を持った場合でも、現地に来ることなくVRで細部まで確認し購入判断ができるようになっています。担当者にとっては、VR内見をきっかけに全国あるいは海外の顧客ともつながれるようになり、商圏が飛躍的に拡大する可能性があります。

契約手続きのデジタル化

契約手続きのデジタル化も大きく進みました。かつて重要事項説明や契約締結のためには対面と書面が必須でしたが、今ではテレビ会議を使ったIT重説(オンライン重要事項説明)や電子契約が認められ、離れた場所からでも取引を完結できるようになりました。これにより、多忙な顧客や地方・海外在住の顧客ともスムーズに契約可能となり、担当者は物理的制約にとらわれずサービスを提供できます。

紙の書類や対面手続きに費やしていた時間が削減されることで、担当者はその分を顧客とのコミュニケーションやコンサルティングに充てることができます。事務的な作業の効率化は、担当者の本来の価値——顧客に寄り添い、最適な選択を支援すること——に集中するための環境を整えてくれるのです。

AIの活用と人間の役割

AI(人工知能)の活用も仲介業務に変化をもたらしています。AIが物件の価格査定を瞬時に行ったり、チャットボットが問い合わせに24時間対応したりと、定型業務の一部は自動化が進んでいます。物件のレコメンデーションや市場動向の分析といった領域でも、AIの精度は日々向上しています。

しかしAIが発達しても、担当者の存在意義が失われるわけではありません。むしろAIが膨大なデータ分析や事務作業を担うことで、担当者は人間にしかできないきめ細かなコンサルティングや交渉、信頼構築に集中できるようになります。住宅購入は多くの人にとって人生最大の買い物であり、そこには数字やデータだけでは測れない感情や価値観が深く関わっています。VRやAIによって「物件を見る・選ぶ」部分が効率化されても、最終的に「どの物件で人生を築くか」を決める際には人間同士の信頼関係が不可欠であり、そこに担当者の腕の見せ所が残るでしょう。

シニア市場の拡大と新たなニーズ

シニア市場の拡大は、伴走型仲介にとって見逃せない重要なテーマです。日本では2025年に人口の約3人に1人が65歳以上になると予測されており、高齢者向け住宅ニーズは今後一段と増えていきます。

たとえば段差のないバリアフリー住宅への住み替え、子世帯と同居するための二世帯住宅購入、あるいは介護施設に近い立地への転居など、高齢者やその家族が関わる不動産相談は多岐にわたります。さらに、相続に伴う不動産の売却・活用、空き家問題への対応なども含めると、シニア世代をめぐる不動産課題は非常に幅広いものとなっています。

その対応には、介護施設や医療機関へのアクセス知識、相続・資産活用に関する助言、バリアフリー改修の技術的知見など、従来以上に幅広い知識が求められます。介護業界の経験者や福祉住環境コーディネーターの資格保持者などを担当者に迎えれば、シニア顧客にも安心してもらえる体制を整えられるはずです。ここにも、多様なバックグラウンドを持つ人材が担当者として活躍する意義があります。

未来に向けた提言

以上のような多様性と技術革新の潮流を踏まえ、伴走型仲介個人および業界全体が取るべきアクションを提言します。

担当者自身のスキルセット拡充

第一に、担当者自身のスキルセット拡充です。従来の不動産知識・交渉力に加え、異業種の知見やITリテラシーを積極的に身につけることが求められます。たとえば語学を習得して海外顧客にも対応できるようにしたり、建築士やFP(ファイナンシャルプランナー)の資格取得で専門性を高めたりといった努力が有効です。

またSNS発信やデジタルマーケティング手法を学んで自己ブランディングに活用すれば、「この人に任せたい」と思われる存在感を築けます。物件紹介だけでなく、住宅ローンや税制のアドバイス、リフォーム提案までワンストップで行える担当者は、今後ますます重宝されるでしょう。さらに、不動産テック企業のサービスを積極的に取り入れたり、最新のITツールに習熟しておくことも重要です。学び続ける姿勢そのものが、顧客からの信頼につながります。

組織としての多様性推進

第二に、組織としての多様性推進です。不動産会社やチーム単位で多様な人材を受け入れる土壌を作ることが業界発展の鍵となります。採用において国籍・性別・年齢を問わず優秀な人材を登用し、組織内に異なる視点を持ち込むことでイノベーションが促進されます。

たとえば外国籍の担当者をチームに加えれば海外の商習慣に関する知見が共有され、海外投資家への対応力が高まります。異業種出身の社員同士がお互いの経験を共有し合うことで、チーム全体のサービスの幅も広がるでしょう。また、社内の事務作業をシステムで自動化し、担当者が顧客対応に専念できるよう支援する体制づくりも欠かせません。さらに働き方の柔軟性を高め、副業やリモートワークを許容することで、多彩な人材が能力を発揮し続けられる環境を整えることも大切です。

INA&Associatesでは、こうした多様性を組織の強みに変えることを経営の柱の一つに据えています。異なるバックグラウンドを持つ担当者同士が刺激し合い、互いに成長できる——そのような組織文化の醸成こそが、持続的な競争力の源泉であると考えています。

顧客との信頼構築とブランド価値の向上

第三に、顧客との信頼構築とブランド価値の向上です。多様な担当者がいる組織だからこそ、共通して「お客様本位」の姿勢を貫くことが重要となります。一人ひとりが専門性を発揮すると同時に、常に顧客の立場に立った誠実な対応を心掛けることで、「この人になら任せられる」という信頼が生まれます。

昨今は口コミサイトやSNSで担当担当者の評判が可視化される時代です。良い対応は感謝の声として広まり、ひいては会社や担当者個人のブランド力向上につながります。逆に不誠実な対応があれば瞬く間に悪評が広がってしまうでしょう。多様な人材が集まる組織では、互いの強みを活かしつつ高い倫理観とサービス品質を維持する企業文化を醸成することが欠かせません。顧客満足度を常に意識し、改善を続ける姿勢が結果的に強いブランドを築き、「顧客が誰から不動産を買うか」を考える際に真っ先に選ばれる存在へとつながります。

多様性が不動産業界の発展を加速させる

多様性を受け入れ技術革新に適応することは、伴走型仲介の未来を切り拓く上で不可欠な要素です。異なる強みを持つ担当者たちが協働し、それぞれの知見を出し合うことで、これまでになかったサービスや価値が創造されます。不動産取引は単に物件の売買に留まらず、顧客の人生設計やコミュニティづくりまで支援する総合的なサービスへと広がっていくでしょう。こうした前向きな変化は不動産業界に新風を吹き込み、発展を加速させる原動力となります。

多様な担当者がいることで、どんな顧客にも寄り添える懐の深い体制が生まれ、安心して相談できる市場環境が整っていきます。テクノロジーとの融合も相まって、効率化とサービス高度化の両立が可能となり、顧客満足度のさらなる向上が期待できます。担当者一人ひとりが自身のバックグラウンドを武器に活躍し、組織としても多様性を推進することで、業界はより開かれ創造性あふれるフィールドへと進化するはずです。

そして何より、「顧客に最良の体験を届けたい」という想いを共有することが、未来の伴走型仲介像の中心に据えられるべきでしょう。多様性と技術を味方につけた担当者は、顧客の夢の実現を支える心強いパートナーとして、明るい未来を築いていくに違いありません。

私はそのような未来がきっと訪れると信じています。

Daisuke Inazawa, President & CEO of INA&Associates Inc.

著者

代表取締役社長 / CEOINA&Associates株式会社

稲澤 大輔(いなざわ・だいすけ)は、INA&Associates株式会社の代表取締役社長(CEO)。大阪本店・東京営業所を拠点に、首都圏・近畿圏における不動産売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントの三事業を統括する。

専門領域は、収益不動産の投資戦略立案、賃貸経営の収支最適化、超富裕層(UHNWI)・機関投資家向け不動産コンサルティング、およびクロスボーダー不動産投資。国内外の投資家に対し、データと長期視点に基づくアドバイザリーを提供している。

「企業の最も重要な資産は人財である」を経営理念に掲げ、人財投資カンパニーとして持続可能な企業価値の創造に取り組む。経営者として、変化の時代におけるリーダーシップのあり方と組織文化についても積極的に発信を続けている。

保有資格は11種:宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、管理業務主任者、賃貸不動産経営管理士、行政書士、個人情報保護士、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者。

  • 宅地建物取引士
  • 公認不動産コンサルティングマスター
  • マンション管理士
  • 管理業務主任者
  • 賃貸不動産経営管理士
  • 行政書士
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